モンテヴェルディ 1567〜1643 MONTEVERDI C イタリア |
クラシック音楽の対象となるのは、主に1600年以降と言えます。江戸時代の始まりが16
03年ですから、ちょうど江戸時代以降と覚えておけば分かりやすいです。
もちろん、それ以前にも西洋には音楽はあり、ルネサンス時代と呼ばれていますが、現在、当
時の音楽が演奏されることはまずありません。作曲者の名前も曲名も一般の人はご存じないで
しょう。
更に遡れば、伝わっているのは「グレゴリオ聖歌」と一括りでまとめられる、楽器を用いない
歌曲です。およそ9世紀以降といいますから、日本では平安時代以降です。有名な作曲家がい
たわけではなく、これらのグレゴリオ聖歌については作曲者が分からないものがほとんどです。
ルネサンス時代以降、つまり江戸時代以降の、楽器を使った曲や、有名な作曲家が出てきた頃
を「バロック時代」または「バロック」「古楽」と呼んでいます。
ここにご紹介するモンテヴェルディはバロック初期の作曲家で、まあ一般的に名前が通ってい
たり、CDが出されている作曲家としては最古の存在の1人です。バロックといえば何といっ
てもバッハが有名ですが、モンテヴェルディが亡くなった時にはバッハは生まれてもいなかっ
たのですから、まさしくクラシック音楽の原点を築いた作曲家の1人です。
主な作品としては、「聖母マリアの夕べの祈り」がありますが、大変古い作品にも関わらず、
かのバッハの「マタイ受難曲」に匹敵する、宗教音楽の最高傑作と評する人もいるくらいです。
クラシック最古の大作曲家ということで、モンテヴェルディの名はできれば覚えておきたいと
ころです。
☆代表作☆
<声楽曲> 聖母マリアの夕べの祈り
<オペラ曲> オルフェオ
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ハイドン 1732〜1809 HAYDN A オーストリア |
音楽史では、ハイドンが活躍した頃を、それ以前の「バロック時代」と完全に区別します。そ
の頃からベートーヴェンらが活躍する頃までの18世紀の音楽を「古典派」と呼びます。「古
典派」の最も有名な作曲家は何と言ってもモーツァルトです。
バロック時代には、現在「交響曲」と呼ばれるようなフルオーケストラによる音楽形式があっ
たかどうかはほとんど知られていません。ハイドンは、その「交響曲」を何と104作も作曲
し、「交響曲の父」と呼ばれました。主に交響曲に名作を残したベートーヴェン、ブルックナ
ーは9作、マーラーは10作です。
ハイドンの次に多いモーツァルトでさえ41作なのですから、驚くべき数です。また、83作
もの弦楽四重奏曲も作曲し、こちらも最高数です。その他、ミサ曲やカノンなども作曲してい
ます。
ハイドンといえば交響曲から聴くのが一般的です。とはいっても、104作の中で、頻繁にC
D化されている作品は、標題がついた作品を中心にほんのわずかでして、それぞれ1つの楽章
が短く、聴きやすいです。その点では初心者の方でも接しやすいでしょう。
しかし、気軽に聴ける反面、派手さや演出性がなく、モーツァルトのようにこれといって惹か
れる名旋律もないため、交響曲の中では地味な印象の作品ばかりである点は否めません。
近年、コンサートのプログラムに組まれることも減ってきているようで、残念なことです。
☆代表作☆
<交響曲> 第94番「驚愕」 第100番「軍隊」 第101番「時計」
<室内楽曲> 弦楽四重奏曲第77番「皇帝」
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パガニーニ 1782〜1840 PAGANINI C イタリア |
クラシックの作曲家の中には、作曲よりもむしろ演奏活動が本業であった作曲家も多数います。
ごく一部のご紹介になりますが、指揮者ではマーラー、リヒャルト・シュトラウス、ヴァイオ
リニストではクライスラー、ピアニストではリスト、ラフマニノフらがいます。
クラシック音楽史上、最高のヴァイオリニストといえばパガニーニです。パガニーニは「鬼神」
と呼ばれたほどヴァイオリンが上手すぎたそうです。5歳で始め、13歳で、もう学ぶことは
なくなったと言われています。
超絶技巧を身につけたパガニーニは、もう弾く曲がなくなったので、自分で演奏するための超
絶技巧の曲を作曲しました。これらが、今日残されているパガニーニの作品です。
当時、ヨーロッパ中にその名を轟かせたパガニーニの生演奏を聴くには相当な金額が必要だっ
たようで、シューベルトは自らの家財を売ってまで聴きに行ったというエピソードもあります。
もちろん、シューベルトは相当感動したらしいです。
パガニーニは超絶技巧も極めたため、演出にも力を注いだと言われています。例えば、ヴァイ
オリンの代わりに靴に弦をつけて演奏したですとか、演奏中にあえて自分の指でヴァイオリン
の弦を切って、弾くのを難しくしたという話があります。ここまでいくと異常な世界であるた
め、当時の聴衆は、パガニーニを悪魔扱いしたと言われています。
そのためか、死後に埋葬を受け付けてくれる教会がなく、遺族も大変だったそうです。
パガニーニは自分の超絶技巧が絶対に他人に漏れないように、作曲した楽譜の管理には終生余
念がなかったそうです。もちろん、後世に残されることを拒み、すべて焼却されたということ
になっていますので、現在楽譜が残っているはずはないのですが、それでも、数は少なくとも
作品は発見されていますので、実際は相当数の作品が作曲されたのでしょう。
それらを知るすべはありませんが、現存の作品だけでも超絶技巧を垣間見ることは出来ます。
パガニーニの作品と言えば、ヴァイオリンの超難曲の代名詞ともなっている独特な作曲家です。
☆代表作☆
<協奏曲> ヴァイオリン協奏曲第1番 第2番
<室内楽曲> カプリース(奇想曲)
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サン=サーンス 1835〜1921 SAINT−SAENS B フランス |
2歳でピアノを弾き、3歳で作曲。10歳でバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの演奏会
を開いたという、モーツァルトにも匹敵するほどの神童であったのがサン=サーンスです。
その後はピアニストよりもオルガニストの道を選び、第一級のオルガニストとして活躍しまし
た。作曲家、オルガニストとして活躍する傍ら、才能は多岐に及び、何と詩人、天文学者、数
学者としても一流と評されていました。恐ろしいほどの才人です。
その博識ゆえの嫌みな性格も有名でして、かの大ピアニスト、コルトーに向かって、「へぇ、
君程度でもピアニストになれるの?」と言った話は有名です。同時に、超一流にしか関心がな
かったとも言われていますので、コルトーを超一流と認めていたがゆえの嫌みでしょうか。
サン=サーンスはドビュッシーを代表する同時期の作曲家に対しても、批判がきつかったよう
です。このように書くと、どれほど性格の悪い人間だったのかと思われそうですが、同時期の
作曲家との確執は、音楽観の違いによるものだとされています。ドビュッシーらが、印象主義
という新しい形式の音楽を目指す中で、サン=サーンスは従来からのロマン主義に固執しまし
た。それゆえの対立で、ある意味、従来からの音楽形式から20世紀の新しい音楽形式への転
換という、音楽史の過渡期に生まれた犠牲者であったとも解釈できます。
また、サン=サーンスは古いロマン主義に固執しつつも、作品の中には新しい音楽を目指そう
という意図が表れていまして、ロマン主義という枠の中で、先進的な音楽を目指していたこと
も分かります。
よって、近年になってかなりサン=サーンスの音楽の評価が高まっています。現在では、まだ
それほどポピュラーな作曲家ではありませんが、いずれ「できれば覚えたい作曲家」というカ
テゴリーを脱する日も来るかもしれません。
☆代表作☆
<交響曲> 第3番「オルガンつき」
<協奏曲> ヴァイオリン協奏曲第3番 チェロ協奏曲第1番
<管弦楽曲> 動物の謝肉祭
<室内楽曲> 序奏とロンド・カプリチオーソ
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グリーグ 1843〜1907 GRIEG A ノルウェー |
同時期のチャイコフスキー、ドヴォルザークらと同様、グリーグはノルウェーの国民学派(ク
ラシック音楽の主流であった、ドイツ、オーストリア、イタリアなど以外の国で、国民的作曲
家と呼ばれた作曲家のことです)の作曲家でした。一時期は、ノルウェーの紙幣に肖像画が載
っていた程の人気者です。
作風は北欧風で、民族色の強い作品を残しました。北欧のクラシック音楽の、日本にはない独
特の雰囲気に惹かれる方も多いです。
代表作といえば、何といっても教科書にも載っていることが多い「ペールギュント」と、ファ
ンの多い名作「ピアノ協奏曲」です。
また、「北欧のショパン」と呼ばれることもあり、北欧の雰囲気に満ちた抒情小品が魅力的で
す。多くのピアノ曲やヴァイオリン・ソナタなどがそれにあたります。
☆代表作☆
<協奏曲> ピアノ協奏曲
<管弦楽曲> ペールギュント ホルベルク組曲 抒情小品集
<器楽曲> 抒情小品集(ピアノ、ヴァイオリン)
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リヒャルト・シュトラウス 1864〜1949 RICHARD STRAUSS B ドイツ |
リヒャルト・シュトラウスは、ワルツやポルカで有名なヨハン・シュトラウスと区別するため
か、書籍などでは「R・シュトラウス」と表記されます。クラシックにかなり詳しい方でも、
このリヒャルトとヨハンを混同しやすいのですが、親戚関係は全くありません。
旅先で、「あなたがあの『美しき青きドナウ』(ヨハン・シュトラウスU世の曲です)を作曲
された方ですか?」と尋ねられたことも多かったというエピソードも残っているくらいですか
ら、当時の人も区別できなかったようです。
リヒャルト・シュトラウスは、作曲家であると同時に指揮者でもありました。モーツァルトの
大家ベームや、詳しい方ならご存知のセルの師匠でもあります。
当時第1級の指揮者で、自演自作の録音も残っているらしいのですが、なぜか名演と呼ばれる
ものはこれといってありません。
作品は主に、交響詩、オペラ曲、歌曲です。
交響詩とは、リストが創設した標題つきの大規模音楽のことで、1つの楽章しかなく、何曲か
が絶え間なく連続して一気に演奏される形式の作品のことを言います。交響詩でリヒャルト・
シュトラウスの有名な作品と言ったら、やはり「ツァラトゥストラはかく語りき」で、このジ
ャンルにおいては断然の第一人者です。
ワルツやポルカの作曲家ではないので、改めてご注意を、と言いたいところなのですが、オペ
ラも作曲していますので、ワルツも一応作曲してはいます。
本当に紛らわしいのですが、素晴らしい作品を残した人物ですので、是非「リヒャルト・シュ
トラウス」という1人の偉大な作曲家を覚えて頂ければと思います。
☆代表作☆
<管弦楽曲> アルプス交響曲
<交響詩> ツァラトゥストラはかく語りき ドン・ファン 英雄の生涯
<声楽曲> 4つの最後の歌
<オペラ曲> ばらの騎士
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ラフマニノフ 1873〜1943 RACHMANINOV A ロシア |
ラフマニノフは、名前から想像がつくように、ロシアの音楽家です。作曲家であると同時に、
当代有名なピアニストでもありました。また、1943年まで生きたということは、指揮者で
例を挙げますと、トスカニーニやフルトヴェングラーが活躍していた頃ですので、自作自演の
CDも残されています。
代表作といったら、やはりピアノ協奏曲第2番でしょう。映画に使われたり、フィギュアスケ
ートに使われたりしています。ラフマニノフは、交響曲第1番が酷評されたために、極度の神
経衰弱に陥ってしまいました。精神科医の助けを借りながら作曲したピアノ協奏曲第2番です
が、メランコリックな旋律に満ちていて、ことに有名なピアノ協奏曲の名曲となりました。
また、交響曲第2番の第3楽章の甘美なメロディーにも非常にファンが多いです。
ラフマニノフの音楽はほとんどが短調、しかもニ短調です。ナィーブな神経が、こういった作
品を書かせたのかもしれません。
☆代表作☆
<交響曲> 第2番 第3番
<協奏曲> ピアノ協奏曲第2番 ピアノ協奏曲第3番
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ストラヴィンスキー 1882〜1971 STRAVINSKY B ロシア |
ストラヴィンスキーは指揮者、ピアニストとしても活躍した、20世紀を代表する作曲家です。
ロシアの芸術プロデューサー、ディアギレフの委嘱を受け、ロシア・バレエ団のために作曲し
た初期の3作品、「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」で知られています。
他に交響曲、協奏曲なども作曲しましたが、何と言ってもこれらのバレエ曲が代表作となって
います。
特に「原始主義」と呼ばれる作風が結実した「春の祭典」は、20世紀の音楽の最高傑作の1
つとも呼ばれている程です。
また、作曲家としては異例で、コロンビア交響楽団を指揮するなどして遺した自作自演のCD
は22枚に及ぶとされています。
更に、来日してNHK交響楽団を指揮した記録も残っています。
火の鳥 自作自演
☆代表作☆
<バレエ曲> 火の鳥 ペトルーシュカ 春の祭典
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ショスタコーヴィチ 1906〜1975 SHOSTAKOVICH B ロシア |
1906年に生まれ、1975年に没したショスタコーヴィチは完全に20世紀の作曲家でし
て、旧ソビエト連邦時代の作曲家です。多くのジャンルの曲を作曲しましたが、主に交響曲と
弦楽四重奏曲で知られ、特に交響曲についてはマーラー以降の、室内楽曲の弦楽四重奏曲につ
いてはベートーヴェン以降の最大の作曲家としての評価が確立しています。
ショスタコーヴィチは内心は改革派であったため、初期の作品などは、社会主義を標榜するソ
ビエト当局と対立することがありました。よって、交響曲第5番「革命」以降は、「表向きは
社会主義体制に迎合、内心は改革派」というスタイルを貫かざるを得ませんでした。そのため、
皮肉なことに、西側諸国では、「悲劇の作曲家」ということで演奏の機会も急増しました。
作風はと言いますと、代表作である交響曲第5番「革命」は、前向きで熱狂的なのですが、そ
れ以降作風を変えてしまってから、つまり作品の大半はそうなのですが、恐ろしく暗いものと
なっています。悲劇的な内面を吐露する曲が多く、おそらく暗さでいけばクラシック作曲家で
屈指の存在です。ですが、代表作である弦楽四重奏曲、つまりカルテットの第8番などは、こ
のジャンルの最高傑作とまで評価する人もいるほどです。あまりに暗く、虚無感、人生への苦
悩に満ちた作品ですので、好みに合わない方も当然いらっしゃると思われますが、ベートーヴ
ェンの弦楽四重奏曲に匹敵するとまで言われています。
☆代表作☆
<交響曲> 第5番「革命」 第7番「レニングラード」
<室内楽曲> 弦楽四重奏曲第8番
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