名曲案内〜声楽曲編T〜

(秋川雅史〜バッハ)



    
  オーケストラや吹奏楽、ピアノなどからクラシックに親しんだ方にとっては、特に声楽曲は   
  馴染みの薄いことでしょう。しかし、合唱経験のある方は声楽曲からクラシック音楽に触れ
  るのも、とてもよい方法なのです。
  普段はあまり接する機会のない曲が多いですが、これら珠玉の作品たちも、クラシック音楽
  を担う立派な一ジャンルであり、クラシックの上級者の方でも、これらの作品に触れると、
  いかに大きな感動を与えてくれる曲ばかりなのかを実感することでしょう。
  声楽曲にも実は、クラシックを代表する名曲が多いのです。
  
    歌詞対訳のないCDや輸入盤は、インターネットである程度調べることが出来ますが、
  不便なため、評価ランクのところに「輸」あるいは「無」マークがあります。 

秋川雅史   ・ヴェルディ   ・オルフ

シューベルト     ・シューマン     ・バッハ


声楽曲編U(フォーレ〜リヒャルト・シュトラウス)へ




☆秋川雅史
作品NO.85 千の風になって ★ 2021年2月最新更新

 今更ご説明する必要もないほどの、日本のクラシックCD最大のヒット曲です。2007年度シングル
 売り上げが何と年間第1位で、ミリオンセラーも記録した歴史的CDです。
 そもそも、この曲は「クラシック」というジャンルに入れてよいのか、ということになりますと、学問
 的な問題も絡んできまして、相当ややこしいことになります。公では「クラシック曲」に分類している
 ところが多いですので、素直にクラシックの声楽曲としておきたいと思います。
 まず、この曲は、作詞者不詳で、日本語訳&作曲が新井満です。
 詞については、歌詞ではなく、「 Do not stand at my grave and weep 」という詩が元になっていま
 して、この原詩の作者としてはアメリカ人女性、メアリー・フライのものであるという説が有力ですが、
 確証はなく、訳者の新井満自身が「不詳としておくのが適当」と語っています。
 「 Do not stand at my grave and weep」は、「私のお墓の前で、泣かないで」という意味ですが、こ
 の詩の3行目が「I am a thousand winds that blow 」となっていて、ここから「千の風になって」と
 名づけられました。そして訳者の新井満自身が作曲をしたことによってこの楽曲が誕生しました。
 この曲は2003年に新井満がシングルとして発表し、その後も他の歌手によってシングルとして発売
 されたり、アルバムの中の1曲に採りいれられたりしたのですが、大ヒットとなったのは、言うまでも
 なく、日本のテノール歌手、秋川雅史が2006年にシングルとしてリリースしたバージョンです。
 よって、「千の風になって」は秋川独自の曲なのではなく、歌手の1人が秋川という見解が正しいです。
 秋川がリリースしたあとも、直後に、あの中島啓江もシングルとしてリリースしていますが、とにかく
 この曲といったら=秋川雅史としておきます。なにせミリオンセラーにもなったCDですから。

 残念ながら、歌詞はここには転載できません。まだ著作権が有効なので、JASRACに許可を頂かな
 いと(使用料を払わないと)、ここに転載はできないのです。こちらからどうぞ。

歌 秋川雅史
   ☆推薦盤☆ すべて個人のアーティストによるシングルです。シングルだけでも10種類以上あり        ますが、代表的なものを独断でここに挙げました。    ・秋川雅史    ・新井満    ・新垣勉    ・中島啓江     中島啓江盤は廃盤中のようです。

☆ヴェルディ
作品NO.220 レクイエム ★★★ 2017年2月最新更新

 モーツァルトフォーレのレクイエム(鎮魂歌)と並んで、3大レクイエムと呼ばれます。モーツァル
 トは未完、フォーレは規模が小さいのに対して、ヴェルディのレクイエムは規模が大きい大曲です。よ
 って、レクイエムの最高傑作に挙げる人も多いです。
 他の2つのレクイエムと比べますと、ヴェルディの場合はオペラ中心の作曲家ということもありまして、
 全体的にオペラチックで、劇的です。「フォーレの静、ヴェルディの動」とも評されます。また、オペ
 ラ作曲によって合唱というものを知り尽くしているヴェルディだけあって、独唱や合唱の使い方が巧み
 で、メロディも美しいと言われています。
 とりわけ有名なのは第二部「怒りの日」の第2曲で、劇的で恐怖感さえ感じさせるほどです。

「怒りの日」より
 ☆推薦盤☆    ◎アバド/ミラノ・スカラ座管弦楽団(79、80)(グラモフォン)   S    △カラヤン/ベルリン・フィル(72)(グラモフォン)         S    △カラヤン/ベルリン・フィル(72)(グラモフォン)         S    ▲トスカニーニ/NBC交響楽団(51)(RCA)           A    ○トスカニーニ/NBC交響楽団(51)(RCA)           A      アバド盤、カラヤンの72年盤、トスカニーニ盤の3つがお薦め盤です。    中でもアバド盤は録音が新しく、お値段もお手頃ですのでお薦め度◎としました。    このCDはグラモフォンから発売のものです。アバドはワーナーミュージックにも録音があり    ますのでお気をつけ下さい。    カラヤン盤は、現在入手できる国内盤は2つですが、いずれも記念CDのようで、非常にお高    いです。演奏はともかくお薦め度は△としました。これらのCDは72年録音ですが、84年    録音盤もありますのでお気をつけ下さい。    トスカニーニ盤は、古くから名演と語り継がれてきた歴史的演奏です。「怒りの日」などのオ    ケが激しくなる部分では、トスカニーニにしかできえない爆発力に満ち、壮絶の極です。火山    が爆発したかのような、あるいは大地震が起こったかのような、地鳴りに近い音はマイクが捉    えきれず、すべてがぶち壊されてしまいそうなほどの演奏です。    なぜか未だにBlu-specCD2がないのですが、音質はそれほど古くはありません。    1番下に、約1000円とお得な期間生産限定盤を挙げておきました。    <更新のポイント> 特に変わりはございません。

☆オルフ
作品NO.151 カルミナ・ブラーナ ★★★ 2017年2月最新更新

 オルフは亡くなったのが1982年ですから、完全に現代の作曲家です。他にめぼしい作品はありませ
 んので、この「カルミナ・ブラーナ」が代表作となっていますが、胸がわくわくする名作です。
 曲は三部、計22曲からなり、それぞれの前後に序とエピローグがつきます。
 現代音楽ではありますが、台本は13世紀の古い歌集に基づいています。よって原始主義的、民族主義
 的な作品と言われています。

「オ・フォルトゥナ」(ラトル&ベルリン・フィル)
 ☆推薦盤☆  ★◎ヨッフム/ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団(67)(グラモフォン)  SS お薦め!   ○プレヴィン/ウィーン・フィル(93)(グラモフォン)          A    ▲小澤征爾/ベルリン・フィル(88)(デッカ)              A        ヨッフム盤が他のCDを完全に圧倒していまして、録音はやや古いのですが、当面これを超え    るCDは出そうにありません。SS評価でお値段もお手頃ですので、もちろんお薦め度★です。    しかもこのCD、作曲者のオルフ自身が監修したというのですから、決定的な名盤です。また、    ドイツで最も売れたクラシックCDという記録も持っています。    絶対的な1枚ともいえるヨッフム盤の後には、常連の2枚が並びます。プレヴィン盤は93年    という録音年とお安いSHM−CDである点が魅力です。    その他の代表で小澤盤を挙げておきました。プレヴィン盤とは大きく差をつけられていますが、    この作品のお薦め盤の上位には常に顔を出しているCDです。ファンの方はどうぞ。    <更新のポイント> 小澤盤をA評価にした以外は変わりはありません。

☆シューベルト
作品NO.183 歌曲集「美しき水車小屋の娘」 ★ 2017年2月最新更新
  
 この「美しき水車小屋の娘」と、「冬の旅」「白鳥の歌」を、シューベルトの3大歌曲集といいます。
 「名作曲家列伝」の項にも書いてありますが、シューベルトは歌曲の小品の第一人者です。
 この3つの歌曲集の中で最も親しみやすいのが、「美しき水車小屋の娘」です。よって、声楽曲の小品
 を聴いたことのない方は、この作品から聴き始めるのもお薦めです。全20曲からなっています。
 この曲はある物語です。若者が水車小屋の娘に恋をし、幸せに酔いますが、やがて恋敵が出現し、娘の
 心は奪われてしまいます。絶望した若者は小川に身を投げ、小川は彼に子守歌をうたう、という物語で
 す。

全曲(ディースカウ独唱)
 ☆推薦盤☆   ★◎ヴンダーリヒ/ギーゼン(P)(66)(グラモフォン)       SS お薦め!    ○フィッシャー・ディースカウ/ムーア(P)(61)(ワーナー)    A    ・パドモア/ルイス(P)(09)(ハルモニア・ムンディ・フランス)  A    ヴンダーリヒ盤が不滅の名盤として名高いです。SS評価で、録音は古いですが、お薦め度★    としました。「ます」や「野薔薇」がカップリングされているのも嬉しいところです。    2番手にはディースカウ盤を、3番手にはパドモア盤を挙げておきました。    パドモア盤は21世紀録音なのが嬉しいですが、現在は国内盤、輸入盤共に廃盤中です。    フィッシャー・ディースカウは20世紀屈指の男声歌手ですので、ぜひ覚えておきたいです。    <更新のポイント> パドモア盤を追加しました。

作品NO.184 歌曲集「冬の旅」 ★★ 2017年2月最新更新

 「冬の旅」はシューベルトの3大歌曲集の中で最高傑作とされています。3大歌曲集をすべて聴きたい
 方は、まずは親しみやすい「美しき水車小屋の娘」から入り、次にはこの「冬の旅」、そして最後に、
 「白鳥の歌」という順序で聴くのがよいらしいです。
 「冬の旅」は、「美しき水車小屋の娘」の物語と連結してはいますが、ムードは一変、全曲を通して暗
 いムードが漂っています。失恋した若者は冬の旅に出発しますが、若者の心はすさんでいて、わずかな
 希望の光もありません。もはや失恋を超えて、人生への絶望を感じています。よって、曲の旋律よりは
 詩(詞)の内容が重視された歌集となっているので、とっつきにくい面はあります。全24曲です。

第1曲から(クヴァストホフ独唱&バレンボイム伴奏)
 ☆推薦盤☆    ◎フィッシャー・ディースカウ/バレンボイム(P)(79)(グラモフォン)     S    ○フィッシャー・ディースカウ/ムーア(P)(72)(グラモフォン)        S    ・ゲルネ/ブレンデル(P)(03)(デッカ)                   S    ・ゲルネ/ブレンデル(P)(03)(デッカ)                   S    フィッシャー・ディースカウは何と7回もこの歌集を録音しているので、お買い求めの際はど    うかお間違えのないように願います。    フィッシャー・ディースカウは20世紀屈指の男声歌手ですので、ぜひ覚えておきたいです。    S評価で3枚挙げましたが、単純に一番お安いバレンボイムとの演奏をお薦め度◎にしました。    新たにゲルネ盤を追加しましたが、国内盤は廃盤中です。輸入盤を挙げておきましたが、歌詞    対訳のない輸入盤は、どうしてもという方にしかお薦めできません。    <更新のポイント> ゲルネ盤を追加しました。

作品NO.185 歌曲集「白鳥の歌」 ★★ 2017年2月最新更新

 この「白鳥の歌」は、シューベルトの3大歌曲集の中でも知名度、CDの数ともに数段冷遇を受けてい
 る作品です。全14曲です。
 「白鳥の歌」はシューベルトの最後の歌曲集です。シューベルトは亡くなる年に14曲の歌曲を作曲し
 たまま、編集せずにこの世を去りました。それを死後「白鳥の歌」と名づけてまとめられたのが、この
 歌集となっています。

「子守歌」(何とディースカウ独唱!)
 ☆推薦盤☆    ◎フィッシャー・ディースカウ/ムーア(P)(72)(グラモフォン)     S    ・ホッター/ムーア(P)(54)(EMI)                 A    △ホッター/ムーア(P)(54)(ワーナー)                A    ・クヴァストホフ/ツァイエン(P)(00)(グラモフォン)         A    △クヴァストホフ/ツァイエン(P)(00)(グラモフォン)         A    ○ボストリッジ/パッパーノ(P)(08)(ワーナー)            A    結論から言いますと、ディースカウ盤が唯一のお薦めです。    2番目のホッター盤は旧EMIの音源のため輸入盤しかありません。輸入盤は歌詞対訳がない    のでお薦めできませんし、録音も古いです。    クヴァストホフ盤も同様に輸入盤しかありません。    最後に挙げたボストリッジ盤は国内盤があるのですが、異常にお高いです。    よってディースカウ盤が唯一のお薦めとなります。    フィッシャー・ディースカウは20世紀屈指の男声歌手ですので、ぜひ覚えておきたいです。      <更新のポイント> ボストリッジ盤を追加し、スコウフス盤を外しました。

☆シューマン
作品NO.189 歌曲集「詩人の恋」 ★★ 2017年2月最新更新

 「詩人の恋」とは一体どんな恋なのでしょうか。シューマンは主にピアノ曲の作曲家として有名ですが、
 シューベルトと同様、歌曲の作曲者としても名作を残しています。
 その中でも有名なのが、この「詩人の恋」です。シューマンは1840年に「リーダークライス」「女
 の愛と生涯」「ミルテの花」など名作を集中して作曲していまして、「詩人の恋」もその一つにあたり
 ます。他の作品もいずれここでご紹介できればと思っています。
 「詩人の恋」は、ハイネの詩から歌詞を引用しています。「詩人の恋」とはどんな恋なのかといいます
 と、何か変わったものではなく、ある青年が恋をし、失恋した物語です。しかし歌詞を見ますと、かな
 り痛ましいです。全16曲とも1分程度で、歌詞も分かりやすいですし、曲も聴きやすいです。
 歌詞はあくまで青年が主人公なのですが、失恋の胸の痛みは男女とも共通するものがあるはずですので、
 女性にも聴いて頂きたい作品です。

第1曲〜第6曲(何とディースカウ独唱!)
 ☆推薦盤☆   ★◎フィッシャー・ディースカウ/エッシェンバッハ(P)(74〜76)(グラモフォン)SS    ○ヴンダーリヒ/ギーゼン(P)(65、66)(グラモフォン)            A    20世紀最高の男声歌手と言っていいディースカウ盤がダントツのSS評価です。    SS評価の「リーダークライス」もカップリングされている点を考慮すると、このCD1枚で    十分と思われるほどです。絶対的な1枚の評価を以前から確立している文句なしの不滅の名盤    なのです。ただ、ちょっとお高いのが欠点です。    ディースカウと同様、歌曲には必ずと言っていいほど名盤を輩出するヴンダーリヒ盤が2番手    となっています。    なお、ディースカウはバリトン歌手、ヴンダーリヒはテノール歌手です。    <更新のポイント> 特に変わっておりません。

☆バッハ
作品NO.11 カンタータ集 ★★ 2021年2月最新更新
  
 「カンタータ」とは、バッハのいた時代に、主に教会で歌われた歌曲のことです。教会では定期的に新
 しいカンタータが歌われていました。バッハは教会音楽の大作曲家でしたので、バッハの作曲したカン
 タータは200作品以上残されています。
 やはりキリスト教の音楽ですから、キリスト教自体や、歌詞の意味も解れば、より深く鑑賞することが
 出来ます。さらに言えば、そうしないと作品の真の魅力は味わえないのでしょうが、中々そんな時間の
 余裕もありません。下のリンクで視聴して頂いて、音楽そのものに魅力を感じられればそれでいいので
 はないかと私は思っています。
 なお、最も有名なカンタータは第147番(BWV147)「心と行いと生活で」(色々な日本語訳が
 あります)です。
 実は、この作品の中の第1部の6曲目と10曲目(歌詞は違っています)の「コラール(合唱)」は、
 下のリンクから聴ける、別名「主よ人の望みの喜びよ」でして、あまりに魅力的なメロディなために、
 今ではオルガン、ピアノだけでなく、管弦楽曲にもアレンジされていますが、元はカンタータ第147
 番のコラール、声楽曲なのでした。オルガン曲とは思っていても、カンタータとまで知っている方は、
 クラシックファンの方でも少ないのではないでしょうか。
 第○番と言っても複数の曲から構成されていますので、実際の「曲数」は膨大な数になります。
 第147番は10曲から構成されています。
 推薦盤には最も有名な「主よ人の望みの喜びよ」が聴ける第147番が収録されているものを挙げまし
 たが、もう一つご紹介しておきますと、第211番(BWV211)「コーヒーカンタータ」なるもの
 もあります。
 下にYOUTUBEへのリンクを貼っておきましたが、この作品の原題は「おしゃべりはやめて、お静かに」
 というものです。第147番のような作品とは違い、宗教的な意味合いが薄かったり、大衆性が強いた
 め、この作品のように「世俗カンタータ」とも呼ばれているカンタータもあります。この作品は、バッ
 ハ行きつけのコーヒー店で初演され(教会ではないのです)、コーヒーが無ければ夜も明かせないとい
 う娘と、それを止めさせたい頑固親父とのやりとりといったコミカルな音楽です。ぜひ試聴して頂けば
 お分かりになるでしょうが、後のオペラのようです。「バッハ」というだけで宗教的で「お堅い」イメ
 ージがあるかもしれませんが、「カンタータ」も幅が広いのです。

カンタータ第147番より「主よ人の望みの喜びよ」(アーノンクール指揮おそらく音源は違います)
カンタータ第147番より「主よ人の望みの喜びよ」(ピアノ版)
カンタータ第211番「コーヒーカンタータ」(コープマン指揮&演奏おそらく音源は違います)
カンタータ第216番より「結婚カンタータ」
 ☆推薦盤☆    ・鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン(95〜13)(BIS)      全集 S    ◎アーノンクール/ウィーンCM、レオンハルト(70〜88)(テルデック)  全集 S    〇ガーディナー/イギリス・バロック管弦楽団(89〜13)(SDG)     全集 A    ・コープマン/アムステルダム・バロックO(94〜05)(Callenge Classics) 全集 A    ◎アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(テルデック)   抜粋盤 S    〇ガーディナー/イギリス・バロック管弦楽団(アルヒーフ)         抜粋盤 A    ▲リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団      (アルヒーフ)     抜粋盤     ▲リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団      (アルヒーフ)     抜粋盤     ▲リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団      (アルヒーフ)     抜粋盤     △鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン(BIS)            抜粋盤 ?    かなり面倒な推薦盤のご紹介となります。廃盤だの全集だのと色々あります。    お薦め度は、全集、抜粋盤で分けました。現代楽器での演奏はリヒター盤のみです。    鈴木盤とアーノンクール盤が評価S、ガーディナー盤とコープマン盤が評価A、リヒター盤が    評価となります。    まず、上から全集を4つ並べましたが、いずれもとてつもなく枚数が多く、輸入盤です。    鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパンのCDは、55枚、195作品収録の教会カンター    タの全集ですが、廃盤中のようです。    鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパンは、名の通りバッハの演奏主体の、日本の古楽器の    楽団ですが、世界的に評価は高いですので是非覚えて頂きたいところです。    世俗カンタータを抜粋盤でお聴きになりたい方のために、一番下にリンクを貼っておきました。    これは鈴木&BCJによる第6巻です。世俗カンタータ集の中では最もお薦めです。    アーノンクールの全集は、レオンハルトと共同で指揮されたもので、60枚組ですが、意外な    ほどお安いです。◎としました。    ガーディナーの全集は56枚組です。お値段は相応です。コープマンの全集は67枚組ですが、    現在は廃盤中のようですので、ガーディナーの全集を〇としました。    リヒターの全集はありません。    次に、抜粋盤ですが、アーノンクールとガーディナーには1枚もの、リヒターには26枚組、    4枚組、1枚ものがあります。お好みでどうぞ。   

作品NO.12 ミサ曲 ロ短調 ★★★ 2021年2月最新更新
  
 バッハの声楽曲の最高傑作といえば文句なく、下でご紹介する「マタイ受難曲」ですが、この大曲を聴
 く土台作りとして、まずは「ミサ曲 ロ短調」がお薦めです。「バッハの『合唱曲』の最高傑作」との
 呼び声も高い大作でもあります(「マタイ受難曲」は、正確には合唱曲ではありません)。「ロ短調」
 と付け加えたのは、バッハにはミサ曲が多数あるためです。作品番号はBWV232です。
 この作品は元々、カンタータなどを中心にまとめ上げ、その集大成としたものです。1曲ごとに様々な
 様式を用いて、独唱と合唱を織り交ぜ、あらゆる方法論も詰め込んだ点が聴きどころと言われています。

X.「アニュス・デイ」第1曲「アリア」
 ☆推薦盤☆    ・クリスティ/レザール・フロリサン他(16)(ハルモニア・ムンディ) S    ◎鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン(07)(BIS)      A     ○リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(61)(アルヒーフ)         ・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(67)(ワーナー) A    ▲クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(67)(ワーナー) A    カール・リヒターは指揮者及びチェンバロ奏者で、バッハの大家です。ピアニストのグレン・    グールドと同じく、バッハの作品でリヒターの名がついたCDを選べばまず間違いはないとい    うほどのバッハ演奏の第一人者です。    ところが21世紀になり、時代の流れか、バッハのようなバロック時代の作曲家は、当然のよ    うに新しい録音は限りなく100%近く、古楽器での演奏となっています。この作品も例にも    れません。この点は、学問的な研究の成果でもありますので、考え方を切り替える必要がある    でしょう。    古楽器演奏で人気を博しているクリスティ盤はできれば◎にしたいのですが、現在は廃盤中の    ようです。    そこで、◎には、今や日本屈指の古楽器オケ、あるいは名の通り屈指のバッハ演奏集団である、    鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のCDを選びました。    ○は、リヒターの旧盤にしました。69年録音の新盤もありますのでくれぐれもご注意下さい。    評価が高いのは、ここからリンクできる61年の旧盤です。第1曲「キリエ」の冒頭からして    圧倒的な演奏は、全く他の追随を許しません。録音はやや古いのですが、バッハの超スペシャ    リスト、リヒターの演奏は、ステレオ録音ということもありまして、聴きづらさを感じさせな    いからこそ今でも不滅の名盤となっているのでしょうし、所々に、作品の深みを増す表現がな    されているのが特徴です。    そして古くからの名盤のモダン楽器(現代楽器)演奏であるクレンペラー盤もA評価なのです    が、現在は通常盤が廃盤中のようで、ハイブリッドSACDを挙げておきました。

作品NO.13 マタイ受難曲 ★★★★★ 2021年2月最新更新
 
 ここでご紹介する、バッハ作曲の「マタイ受難曲」は、星の数ほどあるクラシック作品の中で、ベート
 ーヴェンの交響曲第9番「合唱」ブルックナーの交響曲第8番などと並び、最高傑作の誉れ高い作品
 です。いずれも「キリスト教」の影響を受けた作品ですが、やはりクラシック音楽と宗教は切り離せな
 いのでしょうか。
 我々リスナーは日本人ですので、キリスト教徒の方、あるいはキリスト教に精通している方でないと、
 音楽の意味を心底から理解するのは難しいでしょう。「マタイ」はイエス・キリストを描いた音楽によ
 る物語です。「マタイ」を鑑賞する上で、キリスト教についての知識が絶対に必要かということにつき
 ましては、私はそうは思いません。そもそもそんな時間の余裕もありませんですから、歌詞の意味(日
 本語訳があれば)が分かればそれでいいと私は思っています。もちろん、歌詞の意味がより深く解れば
 それに越したことはありません。
 マタイ受難曲は声楽曲の最高傑作と言われておりまして、演奏に約3時間はかかる大曲です。クラシッ
 ク音楽に馴染みのない方は、「第九」は合唱部分の旋律があまりに有名なだけに、本来、ジャンルは交
 響曲であるはずなのですが、合唱だけの作品(実際は合唱があるのは第4楽章だけです)というイメー
 ジが独り歩きしてしまっていることが非常に多いのが、管理者の私にとっては残念です。その点、「マ
 タイ」は完全に「声楽曲」の部類に入ります。
 宗教的で奥が深いですので、次にご紹介する「ヨハネ受難曲」同様、詳しくは専用のサイトをあたって
 下さいませ。「マタイ」とは、イエス・キリストの弟子の取税人たちのことです。
 マタイ受難曲は、聖書のマタイ伝を元にした宗教劇です。聖書朗読者とキリストの語るような歌を中心
 とする物語は、群集の合唱や信者の独唱を加えて進行し、有名なユダやペテロの裏切り、キリストの捕
 縛、ピラト総督による裁判、十字架での処刑、そして復活へと続きます。いかに宗教色が強いかがお分
 かりいただけるのではないでしょうか。キリスト教に関心のある方には特に、無常の感動を与えてくれ
 るに違いありません。
 大きく二部から構成されていまして、第一部はキリストの捕縛までを描く29曲で、第二部はピラト総
 督による裁判から処刑される場面などを描く39曲の計68曲から構成される、大曲、大傑作です。
 
全曲(何とリヒター指揮!)
 ☆推薦盤☆    ◎リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(58)(アルヒーフ)                ・リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(58)(アルヒーフ)     ハイライト      ・ヤーコプス/ベルリン古楽アカデミー他(12)(ハルモニア・ムンディ)       S    ○アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(00)(テルデック)    A    ▲ガーディナー/イギリス・バロック管弦楽団(88)(アルヒーフ)          A    ・レオンハルト/ラ・プティット・バンド(89)(ハルモニア・ムンディ)       A    ☆メンゲルベルク/アムステルダム・コンセルトヘボウ(39)(OPUS蔵)          カール・リヒターは指揮者及びチェンバロ奏者で、バッハの大家です。ピアニストのグレン・    グールドと同じく、バッハの作品でリヒターの名がついたCDを選べばまず間違いはないとい    うほどのバッハ演奏の第一人者です。    ところが21世紀になり、時代の流れか、バッハのようなバロック時代の作曲家は、当然のよ    うに新しい録音は限りなく100%近く、古楽器での演奏となっています。この作品も例にも    れません。この点は、学問的な研究の成果でもありますので、考え方を切り替える必要がある    でしょう。    そうは言いましても、やはりリヒターの演奏の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいですし、日本    語の解説もありますので、まずは従来からのオーソドックスな現代楽器による演奏から聴き込    んで頂きたいと思い、リヒター盤を◎としました。長いですので、ハイライト盤から入るのも    お薦めです。国内盤として再発売されることを期待します。    古楽器のヤーコプス盤は現在は廃盤中のようですが、今後、「マタイ」のベスト盤となる最有    力候補のCDです。    次に、同じく古楽器のアーノンクール盤とレオンハルト盤を挙げておきましたが、お薦め度○    は、お安く、録音も新しいアーノンクール盤としました。ガーディナー盤も国内盤ですので、    アーノンクール盤同様にお薦めしたいです。レオンハルト盤は廃盤中です。    最後に、「マタイ」を愛する方、聴き込んだ方には絶対にお薦めしたい、伝説のCDをご紹介    します。19世紀に生まれ、アムステルダム(現ロイヤル)・コンセルトヘボウ管弦楽団を世    界の第一級の楽団に育て上げた往年の名指揮者、メンゲルベルクの「マタイ」です。まず、1    939年という録音に耐えられる方のみ(OPAS蔵ということもあってか、音質はマズマズ    ですが、「マタイ」を聴き込んだ方でないと真価は全く解りません)が聴くことを許される伝    説のライヴ録音です。「聴衆のすすり泣き」さえ録音されています。メンゲルベルクの演奏は、    やりたい放題、デフォルメした主観だらけの演奏に聴こえますが、真に「マタイ」を愛する方    には、これ以上ない感動をもたらしてくれるという伝説的録音、歴史的名盤です。  

作品NO.14 ヨハネ受難曲 ★★★★ 2021年2月最新更新
  
 バッハの声楽曲の最高傑作といえば文句なく「マタイ受難曲」ですが、西洋ではこちらの「ヨハネ受難
 曲」の方が人気があるという話もあります。クラシック音楽でも屈指の大傑作「マタイ受難曲」を聴く
 ための土台作りとして、上でご紹介した「ミサ曲」と共に聴いておきたい作品です。
 「ヨハネ」とは、男性を指す言葉です。
 実は、「マタイ」とは元になっている題材が同じでして、詳しくは専用のサイトをあたって頂きたいの
 ですが、「ヨハネ」はいきなりイエスの捕縛からスト−リーが始まります。曲数も「マタイ」の68
 曲に対して40曲で、「小マタイ」的な作品です。主に二部構成となっていまして、最後はイエスの処
 刑で幕を閉じます。「マタイ」同様、キリスト教を基盤とした音楽だけに、キリスト教に詳しい方はよ
 り堪能できる面はありますが、そうでない方も、抵抗感を持たずに聴いて頂きたいところです。
 中〜上級者の方向けとしてはありますが、単に「マタイ」よりは規模が小さいという理由だけでそうし
 たもので、内容の深さ自体は「マタイ」とそう変わりはなく、「マタイ」の後に聴く方も多いようです。
 どうしても「マタイ」に一歩を譲る作品ですが、あらゆるクラシック音楽の中でも傑作である逸品とさ
 れています。

全曲(何とガーディナー指揮!)
 ☆推薦盤☆    ▲ガーディナー/イギリス・バロック管弦楽団(86)(アルヒーフ)         S    ○アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(93)(テルデック)   S    ◎リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(64)(アルヒーフ)               ・クイケン/ラ・プティット・バンド(87)(ハルモニア・ムンディ)        A    ・コルボ/ローザンヌ室内管弦楽団(77)(エラート)               A       「ヨハネ」ほどの傑作のCDでも廃盤が多い状況です。    S評価なのはガーディナー盤とアーノンクール盤ですが、ガーディナー盤は国内盤が廃盤中で    す。また、共に古楽器演奏ですので、「マタイ」のところで触れましたように、まずは国内盤    で現代楽器演奏であるリヒター盤を◎としました。    演奏自体は、録音は古いのですが音質はいいですし、バッハの大曲になるほど評価が高いリヒ    ターによる名盤ですので、古楽器がお好きな方にもお薦めです。    現代楽器による演奏は他にお薦め盤がありません。    下の2つ、クイケン盤もコルボ盤も廃盤中のようですが、アーノンクール盤は国内盤がありま    すので、お薦め度○、輸入盤のガーディナー盤をお薦め度▲としました。      アーノンクール盤は旧録音もありますのでご注意下さい。

作品NO.228 クリスマス・オラトリオ ★★★ 2021年2月最新更新
  
 オラトリオというのは主にバロック時代の専門用語でして、聖書を元に、「台詞(セリフ)」を主体に
 したオペラと言えば分かりやすいかもしれません。後の、演劇を伴うオペラというよりは、台詞、歌曲
 付きのオペラ形態の音楽のことです。バッハのこの作品は、教会で、教会暦に沿って12月25日から
 1月6日の内、日曜と祝日の計6日間に全6部を1日1部ずつ演奏する、独唱、合唱、及びオーケスト
 ラための作品です。主に6つ、全64曲の大きなカンタータ(声楽曲)から構成されている大規模な作
 品でして、ここでご紹介している「ミサ曲 ロ短調」「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」らと共に、バ
 ッハの「4大宗教曲」と呼ばれることもあります。
 有名なオラトリオには、他にヘンデルの「メサイア」があります。
 バッハのこの作品は、残念ながら、名前の通りのクリスマスメロディーではありません。別にご紹介し
 ている受難曲と同じ作りで、福音史家が聖書を語る合唱曲などから構成されており、いささか宗教的な
 作品となっていますが、一部、「世俗カンタータ(大衆的声楽曲)」から引用された部分もあります。
 カンタータ、世俗カンタータについては、詳しくは上の「カンタータ集」をご覧下さい。 

全楽章(何とアーノンクール指揮!)
☆推薦盤☆    ◎アーノンクール/WCM(06、07)(ドイツ・ハルモニア・ムンディ)    SS    ▲リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(65)(アルヒーフ)              ○鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン(07)(BIS)           A    ・ガーディナー/イギリス・バロック管弦楽団(87)(アルヒーフ)        A   CDは概ね3種類に絞られます。ガーディナー盤は廃盤中のようですので、アーノンクール盤及び、   今や日本のバッハ演奏の第一人者、鈴木雅明の古楽器演奏を選ぶか、古くから定評のある現代楽器   のリヒター盤を選ぶかといったところです。   鈴木雅明は、現在、日本を超えて、世界屈指のバッハ演奏家です。このCDも、楽譜には忠実なが   らも、アーノンクールに勝るとも劣らないほどの古楽器演奏家としての見事な演奏の結実となって   います。これ以上望みえないバッハ演奏と言っても過言ではありません。これほどのバッハ演奏家   が現役として日本にいることは誇りと言えます。   あとはお好み、というところです。アーノンクール盤は古楽器演奏ですが、国内盤ですので、日本   語の解説付きです。   


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