名曲案内〜バレエ曲編〜

(ストラヴィンスキー〜ラヴェル)



    
  オーケストラや吹奏楽、ピアノなどからクラシックに親しんだ方にとっては、特にバレエ曲   
  は馴染みの薄いことでしょう。しかし、バレエ経験のある方がバレエ曲からクラシック音楽
  に触れてみるのも、とてもよい方法ではないでしょうか。
  バレエ曲は美しさ、華やかさを誇張する必要があるため、とても魅力的な曲が多いのです。    

ストラヴィンスキ−  ・チャイコフスキー  ・ラヴェル


         
☆ストラヴィンスキー
作品NO.208 火の鳥 ★★★ 2017年2月最新更新
  
 ストラヴィンスキーの3大バレエ曲の中で、どうしても人気の点でイマイチな作品なのですが、ストラ
 ヴィンスキーのデビュー作で、ロシア・バレエ団から委嘱された最初の作品でもあります。
 当時、オリジナル作品を持っていなかったロシア・バレエ団が、無名のストラヴィンスキーに依頼し、
 大好評を博したという作品です。
 1910年の全曲版と、1919年の組曲版があります。双方とも強烈なエキゾティシズムと叙情性
 に富んでいます。
 1919年の組曲版は、オーケストラが小編成になり、明快さが増しています。

何とストラヴィンスキー自作自演!
 ☆推薦盤☆     ・ロト/レ・シエクル(10)(MUSICALES ACTES SUD)           S    S×・ロト/レ・シエクル(10)(MUSICALES ACTES SUD)           S   ◎ブーレーズ/シカゴ交響楽団(92)(グラモフォン)          S    ▲ゲルギエフ/キーロフ劇場管弦楽団(95)(デッカ)          S    ○トーマス/サンフランシスコ交響楽団(96)(RCA)         S        S評価の演奏が4つあります。評価は全く横並びとお考え下さい。すべて全曲盤です。    1番上のロト盤は輸入盤しかなく、現在は廃盤中のようです。    2番目のロト盤はいずれもトップ級の評価のストラヴィンスキーの3大バレエ曲が収録された    CDなのですが、専用プレイヤーが必要なSACDしかなく、かつお値段は1万円以上です。    更に古楽器演奏でもあります。お薦めできません。    よって、S評価の「ペトルーシュカ」とのカップリングであるブーレーズ盤をお薦め度◎とし    ました。    また、ゲルギエフ盤とトーマス盤は、カップリングがA評価の「春の祭典」であるトーマス盤    のお薦め度を○としました。    <更新のポイント> ロト盤とトーマス盤を追加しました。

作品NO.209 ペトルーシュカ ★★★ 2017年2月最新更新
  
 ストラヴィンスキーの3大バレエ曲の中で、「春の祭典」に次ぐ人気を得ているのが、この「ペトルー
 シュカ」です。題材はロシア版のピノキオのような物語で、おがくずの体を持つ人形パペットが、命を
 吹き込まれて恋することを知ってしまうのですが、その恋が実るはずはなく、人形の体の中に閉じ込め
 られた苦悩を描いているという悲しい物語です。
 当然、初演の際は、時にグロテスクな面をもつこの作品に抵抗を感じた人が多かったと言われています。
 また、ロシア・バレエ団がウィーンを訪れた際、ウィーン・フィルは「いかがわしい音楽」と評して、
 演奏するのを渋ったそうです。
 聴く意欲を無くすようなエピソードを連ねてしまったのですが、決して駄作という意味ではなく、詩情
 豊かな物悲しさを見事に音楽化した悲劇的な作品と捉えて頂ければと思います。

第1場より(ゲルギエフ指揮)
 ☆推薦盤☆    S×・ロト/レ・シエクル(13)(MUSICALES ACTES SUD)           S   ○ブーレーズ/クリーヴランド管弦楽団(91)(グラモフォン)      S    ◎ブーレーズ/クリーヴランド管弦楽団(91)(グラモフォン)      S    ▲デュトワ/モントリオール交響楽団(86)(デッカ)          A    以前はブーレーズ盤がSS評価だったのですが、現在はロト盤の方が評価は高くなっています。    ロト盤はいずれもトップ級の評価のストラヴィンスキーの3大バレエ曲が収録されたCDなの    ですが、専用プレイヤーが必要なSACDしかなく、かつお値段は1万円以上です。更に古楽    器演奏でもあります。お薦めできません。    よって、以前と変わらずブーレーズ盤がお薦めなのですが、上のCDはS評価の「火の鳥」と    のカップリングのSHM−CDで、下のCDはS評価の「春の祭典」とのカップリングのお安    いCDです。お好みによるのですが、下のお安いCDの方をお薦め度◎としました。    これだけでは寂しいですので、前回の更新と同様、デュトワ盤を挙げておきました。        <更新のポイント> ロト盤とブーレーズのSHM−CDを追加しました。        

作品NO.210 春の祭典 ★★★ 2017年2月最新更新
  
 「春の祭典」はストラヴィンスキーの最高傑作との呼び声も高く、「火の鳥」「ペトルーシュカ」と並 
 ぶ、ストラヴィンスキーの3大バレエ曲の1つです。
 民俗風の不規則なリズムを基調とし、不協和音で知られるこの作品は、1913年の初演の際は(指揮
 モントゥー)不評が飛び交い、野次がひどくなるにつれ、賛成派と反対派の観客達がお互いを罵り合い、
 殴り合り、野次や足踏みなどで音楽がほとんど聞こえなくなり、ついには、振付師のニジンスキー自ら
 が舞台袖から拍子を数えてダンサーたちに合図しなければならないほどであったと言われています。
 しかし、時が経つにつれ、管弦楽曲としては傑作であるという評価が確立されました。
 バレエの方は、当時としては異様な音楽に奇妙な振り付けをしたために悪評をかってしまいました。
 バレエといえばチャイコフスキーの愉快で流麗な音楽を想像する方が多いと思いますが、この「春の祭
 典」は全く異質な作品です。
 一番の特徴は、やはりリズムです。民族の枠を、時代の枠を超え、人間の感覚を鼓舞するものがありま
 す。そして興奮、熱狂へと導きます。
 また、不規則なリズムと不協和音のため、指揮をするのが非常に困難な曲で、指揮者が生演奏にも関わ
 らず途中で分からなくなったというエピソードにもことかかない作品です。
 構成は、第1部「大地の礼賛」、第2部「生贄の儀式」の2部構成で、合計約30分。バレエ曲として
 は短い作品です。

第1部「大地の礼賛」より
 ☆推薦盤☆   B2▲クルレンツィス/ムジカエテルナ(13)(SONY)          S    ○ゲルギエフ/キーロフ劇場管弦楽団(99)(デッカ)          S    ◎ブーレーズ/クリーヴランド管弦楽団(91)(グラモフォン)      S  S×・ロト/レ・シエクル(13)(MUSICALES ACTES SUD)           S        前回の更新時は共にS評価のゲルギエフ盤とブーレーズ盤のみでしたが、その後評価の高い録    音が2つ登場しました。とは言え、評価以外の要素を考慮しますと、素直にお薦めはできない    面があります。  まず、クルレンツィス盤ですが、カップリングがよくない上にお高いです。しかも古楽器演奏    ですので万人向けではありません。お薦め度は▲にしました。    ゲルギエフ盤のカップリングはスクリャービンの交響曲第4番「法悦の詩」というマイナーな    作品です。同作品ではトップ評価の演奏ではありますが、作品がマイナー過ぎます。よってお    薦め度は○にしました。    私としては、カップリングに次でご紹介しているS評価の「ペトルーシュカ」も入っていて、    かつお安いブーレーズ盤の方をお薦めしたいです。ただ、評価は急落していまして、今までの    実績を考慮しなければ、実質はよくてA評価といったところではあります。    ロト盤は、極端に言いますと論外です。いずれもトップ級の評価のストラヴィンスキーの3大    バレエ曲が収録されたCDなのですが、専用プレイヤーが必要なSACDしかなく、かつお値    段は1万円以上です。更に古楽器演奏でもあります。    クルレンツィス盤、ロト盤を推薦盤に追加しましたが、お薦め度◎と○は変わっていません。    <更新のポイント> クルレンツィス盤、ロト盤を追加しました。

☆チャイコフスキー
作品NO.217 白鳥の湖 ★ 2017年2月最新更新
  
 「白鳥の湖」は下でご紹介している「くるみ割り人形」、「眠りの森の美女」と共にチャイコフスキー
 のバレエ曲の代表作であるだけでなく、これら3つは「3大バレエ」と呼ばれます。その中でも最も有
 名なのはこの「白鳥の湖」なのではないでしょうか。あるいはバレエの作品としても最も有名かもしれ
 ません。「3大バレエ」の中で初めに作られました。
 曲は序奏と第1幕〜第4幕からなり、とりわけ、第1幕の「ワルツ」、第2幕の「情景」はことに有名
 で、この2曲を含めた組曲として演奏されることがあります。
 「白鳥の湖」は旋律が美しく、非常に有名ですので、バレエ曲の入門には最適な作品の1つでしょう。

第2幕 第10曲「情景」
 ☆推薦盤☆   ★◎プレヴィン/ロンドン交響楽団(76)(ワーナー)    全曲    SS    ○デュトワ/モントリオール交響楽団(91)(デッカ)   全曲     A   ▲ゲルギエフ/キーロフ劇場管弦楽団(06)(デッカ)   全曲     A      プレヴィンは3大バレエ曲を得意としていまして、いずれの演奏も評価が高いです。    とりわけ、この「白鳥の湖」では以前から不動のSS評価を得ています。録音も古くはありま    せんので、文句なしのお薦め度★です。    それに次ぐのがデュトワ盤、ゲルギエフ盤です。    どちらが上とも言えませんし、お値段もほぼ同じですので、お好みでどうぞ。    お薦め度○▲は便宜的につけておきました。    CDは以上3枚が抜きん出た評価を得ています。    <更新のポイント> 特に変わっておりません。

作品NO.218 くるみ割り人形 ★ 2017年2月最新更新
  
 序曲と第1幕、第2幕からなる作品です。「白鳥の湖」の美しさに対して、こちらは大変愉快なバレエ
 曲となっています。
 アニメ映画に使われた曲もありますので、馴染みのある方も少なくないのでは。特に第2幕の第13番
 「花のワルツ」はチャイコフスキーお得意のワルツの中でもとりわけ有名で優雅な曲で、ご存知の方は
 多いと思われます。
 この「くるみ割り人形」も愉快な曲あり、優雅なワルツもありで、バレエ曲入門にはぴったりです。

第1幕より「行進曲」  第2幕より「ロシア人の踊り」  第2幕より「花のワルツ」
         ☆推薦盤☆    ・プレヴィン/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(86)(EMI) 全曲   S    ○ラトル/ベルリン・フィル(09、10)(ワーナー)        全曲   S    ◎ゲルギエフ/キーロフ劇場管弦楽団(98)(デッカ)        全曲   A      「くるみ割り人形」のCDは以前はプレヴィンの86年盤がダントツの評価を得ていたのです    が、旧EMIの音源のまま未だ廃盤中です。輸入盤もありません。    そこでお薦めはラトル盤とゲルギエフ盤です。    現時点ではラトル盤の方が評価は上ということにはなりますが、ゲルギエフ盤は全曲盤なのに    1枚ものですので非常にお安いです。こちらをお薦め度◎としました。    お値段を気にしない方にはラトル盤の方がお薦めです。    ラトル&ベルリン・フィルのコンビで、やっとこれというCDが出てきました。    <更新のポイント> ラトル盤を追加し、プレヴィンの旧盤を外しました。

作品NO.219 眠りの森の美女 ★★ 2017年2月最新更新

 序曲と第1幕〜第3幕からなります。チャイコフスキーの「3大バレエ」の中では最も長く、約3時間
 を要しますので、やはり「白鳥の湖」か「くるみ割り人形」でバレエ曲に親しんでから聴くべきかと思
 われます。
 「眠りの森の美女」のタイトルの通り、ディズニーのアニメに使われている曲があります。アニメを見
 た方は詳しいでしょうが、3大バレエの中では一番親しみがないかもしれません。その長さゆえに、今
 日でもノーカットで上演されることは滅多にありません。

第3幕より「ワルツ」
 ☆推薦盤☆    ◎ドラティ/アムステルダム・コンセルト・ヘボウ(79〜81)(デッカ)全曲 SS    ・プレヴィン/ロンドン交響楽団(74)(EMI)           全曲  A    ・プレヴィン/ロンドン交響楽団(74)(EMI)           全曲  A  S×・プレヴィン/ロンドン交響楽団(74)(ワーナー)          全曲  A   ○ゲルギエフ/キーロフ劇場管弦楽団(92)(デッカ)         全曲  A    前回の2011年3月の更新時はやたらと廃盤が多かったのですが、なんとか整ってきました。    SS評価のドラティ盤の国内盤が復活しました。このCD、お値段もお安いですので、お薦め    度は◎としました。今後もSS評価が続くようでしたら、お薦め度は★にしたいと思います。    「眠りの森の美女」に関しては、文句なくプレヴィン盤とはいかないようですが、いずれにし    ても旧EMIの音源のままですので、国内盤、輸入盤共に完全廃盤中です。    それでも、どうしてもという方には、非常にお高く、かつ専用のプレイヤーが必要なハイブリ    ッドSACDがあります。    ゲルギエフ盤は以前、フィリップスから発売されていた時は異常にお高かったのですが、デッ    カからの再発売で2枚組となったこともあってか、大変お安くなりました。    このCDがお薦め度○です。         <更新のポイント> アンセルメ盤を外しました。

☆ラヴェル
作品NO.165 マ・メール・ロワ ★★ 2016年9月最新更新
  
 20世紀のフランスの作曲家、例えばラヴェルドビュッシーなどの作品は、溢れんばかりの「詩情」
 が一番の魅力と言われています。ここでご紹介する「マ・メール・ロワ」は、特にその点で魅力溢れる
 作品として名高いです。
 なお、ラヴェルの作品でよく使われる「色彩感」というのは、もちろん音に色があるはずがないわけで、
 20世紀の音楽になって、様々な楽器を用いることによって表現される、「色とりどりの音の共演」の
 ことです。ラヴェルの音楽の最大の魅力の一つでもあります。
 さて、この作品の「マ・メール・ロワ」とは、「マザー・グース」というイギリス童話のフランス語訳
 のことでして、童話が題材になっています。原曲はピアノ曲でしたが、「管弦楽法の魔術師」ラヴェル
 がバレエ曲用に編曲したものです。CDには全曲盤と組曲盤があります。
 日本でバレエと言えば、ここで紹介しているチャイコフスキーの作品がほとんどで、ラヴェルのバレエ
 曲など全く馴染みが無いでしょうが、ぜひ管弦楽曲として味わって頂きたい、詩情豊かな逸品です。

第2場より「眠れぬ森の美女のパヴァーヌ」
 ☆推薦盤☆   ★◎クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団(62)(エラート)  全曲盤      SS    ・ブーレーズ/ベルリン・フィル(93)(グラモフォン)   全曲盤       A    ○ブーレーズ/ベルリン・フィル(93)(グラモフォン)   全曲盤       A    やはり、ラヴェル=クリュイタンスという牙城は、この作品においても堅固でして、以前から    断然のSS評価を確立しています。それにしても、このスペシャリストぶりは尋常でないです。    絶対的な1枚と言えるCDでして、これだけで充分ではないでしょうか。    62年という録音が古いと感じる方には93年録音のブーレーズ盤がお薦めです。    国内盤は廃盤中のようなので輸入盤を挙げておきました。    <更新のポイント> デュトワ盤を外しました。   


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