名曲案内〜協奏曲編V〜

(バッハ〜ベルク)



    
  協奏曲とは、オーケストラを伴奏に、ソロの演奏家が一人で演奏する形式をいい、ヴァイオリン
  協奏曲、ピアノ協奏曲などがあります。主に3つの楽章からなります。
  交響曲と違ってソリストが主役となるので、ソリストの演奏が存分に楽しめ、かつ重厚なオーケ
  ストラの響きも楽しめるという、贅沢なジャンルなのです。
  なお、協奏曲には「カデンツァ」といって、伴奏がストップしてソロだけが演奏する部分が一ヶ
    所ありますが、ソリストだけの演奏を楽しめるという意味で協奏曲の魅力の一つとなっています。
   *推薦盤にある(Vn)はヴァイオリン、(P)はピアノ、(Cl)はクラリネット、
    (Fl)はフルート、(Hp)はハープの略です。

バッハ  ・パガニーニ  ・ブラームス  ・プロコフィエフ  ・ベルク


協奏曲編T(ヴィヴァルディ〜シューマン)へ     ・協奏曲編U(ショパン〜ハチャトゥリアン)へ

協奏曲編W(ベートーヴェン〜モーツァルト<協奏交響曲>)へ

協奏曲編X(モーツァルト<ピアノ協奏曲第20番>〜<フルートとハープのための協奏曲>)へ

協奏曲編Y(YOSHIKI〜ロドリーゴ)へ




☆バッハ
作品NO.1 ヴァイオリン協奏曲集 ★★ 2021年2月最新更新
 
 バッハと言えばどうしてもオルガン曲、宗教曲というイメージがありますが、ヴァイオリン協奏曲も作
 曲しています。さすがに「ブラコン」「メンコン」「ベトコン」「チャイコン」の「4大ヴァイオリン
 協奏曲」の人気には及びませんが、バッハ特有の、いかにもバロック音楽的なメロディーが魅力的な作
 品です。
 同じくバロック時代の作曲家のヴィヴァルディの作品に似ているとの指摘もあります。
 ヴァイオリン協奏曲集と言っても第1番と第2番しかなく、1枚のCDに2つとも入っていて、しかも
 大体は他の曲もカップリングされていますので、CDとしてはお得です。
 ヴィヴァルディの「四季」は、ジャンルではヴァイオリン協奏曲ですので、バロック時代のヴァイオリ
 ン協奏曲としてはダントツに有名な作品ということになりますが、「四季」を除いて、バロック時代の
 ヴァイオリン協奏曲を堪能したいという方には真っ先にオススメの作品です。
 なお、この作品から、協奏曲は3楽章構成になったと言われています(「四季」は4楽章構成です)。

第1番 第1楽章(何とファウスト演奏!)
 ☆推薦盤☆    ◎ファウスト/ベルリン・古楽アカデミー他(07、08)(ハルモニア・ムンディ)   S    ○クイケン/弾き振り ラ・プティット・バンド(81)(ハルモニア・ムンディ)    S    △カルミニョーラ/コンチェルト・ケルン他(13)(アルヒーフ)           S    △ポッジャー/弾き振り ブレコン・バロック(10、12)(チャンネル・クラシックス)A    △シェリング/マリナー アカデミー室内管弦楽団(76)(デッカ)          A    ▲ハーン/カハーン ロスアンジェルス室内管弦楽団(02、03)(グラモフォン)   A    近年、古楽器の演奏がモーツァルトベートーヴェンなどにも採り入れられていますが、バロ    ック音楽ともなればなおさらで、当時の演奏形態の復刻という意味で、特にバッハの作品は格    好の的となっています。古楽器の演奏が、非常に高い評価を得ていることが多いです。    その中で、私は、クイケン盤を○にしました。レヴューでは、89年の録音と表記されていま    すが、このCDは私が所有していますので、81年録音で間違いありません。誤記です。    理由は、溌剌とした表現です。◎にしたファウスト盤も、器用なヴァイオリニストだけに、現    代楽器との二刀流です。キッパリとしたフレージング、透明感あふれる音色が魅力的でして、    深みにおいてクイケン盤よりもやや上と判断しました。    ちなみに、「弾き振り(ひきぶり)」というのは、ソロ楽器の演奏者が指揮もする演奏スタイ    ルのことです。    他のCDのお薦め度は、古楽器演奏に抵抗があるかどうかで決まってきます。    古楽器に抵抗のある方には、現代楽器のハーン盤がお薦めです。まずはこの3枚がお薦めです。    ポッジャー盤は評価は高いのですが、まだ過去の実績がありませんので、A評価にとどめてお    きました。さほどお高くはないですし、この作品には「これ」という1枚がないだけに、ぜひ    お聴きになるのもいかがかと思われます。    この演奏も古楽器です。ポッジャーは、近年、古楽器の演奏では一躍有名な存在となりました。    リンク先のCDは、日本語解説付きの輸入盤です。普通のCDプレイヤーでも再生できます。    現代楽器のシェリングには新盤と旧盤があります。共にお安いですので、お値段重視の方には    お薦めです。 

作品NO.2 チェンバロ協奏曲集 ★★ 2021年2月最新更新

  チェンバロという楽器は、まだピアノのない時代、ルネサンス期からバロック期にかけて隆盛期を迎え
 た、撥弦(はつげん:弦を爪ではじく)鍵盤楽器のことです。クラシックにおいては「チェンバロ」と
 いう名で呼ばれるのが普通なのですが、英語では「ハープシコード」と言われます。それでピンとくる
 方もいらっしゃるのではないでしょうか。何とも言えない、独特の音色に惹かれる方は多いことでしょ
 う。主にバロック音楽で登場し、伴奏楽器として使用されていましたが、バッハが本格的に独奏楽器と
 してこの協奏曲集を作曲してから、一躍注目を浴びるようになりました。
 チェンバロを用いた作品の作曲者と言えば、ヴィヴァルディ、パーセル、ラモーなどのバロック期の作
 曲家になります。古典派の時代ではほとんど用いられていません。
 と言いますのも、古典派の時代になるとピアノが出現したため、全くといっていいほどチェンバロを用
 いた作品は作曲されなくなってしまったからです。
 現在、バロック音楽の演奏の時に使われるチェンバロ(古楽器)を、当時のチェンバロと区別して「ヒ
 ストリカルチェンバロ」とも言います。
 バッハは「チェンバロ協奏曲」を8つ作曲しました。第6番は復刻不可能で、第8番は復刻可能ですが、
 楽譜が断片しかないようですので、現在では主に6つが演奏可能ということになります。
 チェンバロがお好きな方にはたまらない作品だと思われます。

第1楽章(ピノック演奏)
 ☆推薦盤☆    ・シュタイアー/フライブルク・バロック管弦楽団(13)(ハルモニア・ムンディ)  S    ・コープマン/弾き振り アムステルダム・バロックO(88、90)(エラート)VOL.1 S    ○コープマン/弾き振り アムステルダム・バロックO(88、90)(エラート)VOL.2 S    ・ピノック/弾き振り イングリッシュ・コンサート(79〜81)(アルヒーフ)全集 S    ◎リヒター/弾き振り ミュンヘン・バッハ管弦楽団(71、72)(アルヒーフ)       ☆グールド/バーンスタイン他 ニューヨーク・フィル他(57〜69)(SONY)      これというCDがありません。    「弾き振り(ひきぶり)」というのは協奏曲で、ソロ楽器奏者が指揮もする形態のことです。    トップ評価はシュタイアー盤とコープマン盤とピノック盤です。シュタイアー盤は、「ハープ    シコード協奏曲」となっていますが、上記のように、チェンバロと同じです。全部で7曲収録    ですので、これをお薦め度◎にしたいのですが、現在は廃盤中です。    コープマンは1枚目が廃盤中、2枚目だけが現役盤という、ちょっとおかしな状況にあります。    2枚目だけあっても仕方ないのですが、仕方なく2枚目をお薦め度○としました。    次はピノックの全集ですが、5枚組ですのでややお高いです。しかも廃盤中のようです。    近年、バッハの好評な演奏は古楽器演奏ばかりというのが時代の流れですが、古楽器に抵抗の    ある方向けに、現代楽器のリヒター盤とグールド盤を挙げておきます。    リヒター盤は、そもそも全曲が揃っていません。抜粋盤というのが正直なところですが、◎と    しました。    グールドはバッハのスペシャリストで、演奏自体はSS評価なのですが、現代楽器の、しかも    ピアノで演奏していますので、「チェンバロ協奏曲」ではなく「ピアノ協奏曲」となっていま    す。むしろ時代遅れ、という本末転倒な状況ですが、さすがに芸術表現は卓越しています。        パーセルの名が出ましたので、きっと多くの方が聴いたことがあるのではと思われる作品にリ    ンクを貼っておきました。ぜひどうぞ。  パーセル「アブデラザール組曲」より ロンド

☆パガニーニ
作品NO.53 ヴァイオリン協奏曲第1番 ★★ 2015年11月最新更新
 
 パガニーニは自らの技巧を誇示するために作曲もしたのですが、おそらくこの「ヴァイオリン協奏曲第
 1番」が最高傑作ではないかと思われます。確かにパガニーニの作品といえば、超絶技巧曲、超難曲と
 いうイメージが先についてまわるのですが、特に何らかの思想性などを元に作曲しているわけではあり
 ませんので、一つの曲として捉えると、祝祭的で、明るく優雅な曲でして、普通に聴いているだけでも
 楽しいです。初心者の方でも、軽い気持ちで接することができるのではないでしょうか。
 全く聴いたことが無い方は、下のリンクからお聴き下さい。きっと、今まで抱いていたイメージとは違
 うと思われることでしょう。
 ただ、あくまでヴァイオリンが主役の作品ですので、伴奏のオケを控えめにしている面はあります。
 やはりヴァイオリンがお好きな方に是非聴いて欲しい作品ですね。あらゆる技巧を駆使した曲ですので、
 ソロのヴァイオリンの音色を聴いているだけで、どのような技巧を使っているかが分かって楽しいです。
 「鬼人」と呼ばれたヴァイオリニストであった作曲者自身は、一体どう演奏したのでしょうか…

第1楽章(ソロまで2分15秒です)
 ☆推薦盤☆   ★◎アッカルド/デュトワ ロンドン・フィル(75)(グラモフォン)  SS お薦め!    ▲ハーン/大植英次 スウェーデン放送交響楽団(05)(グラモフォン) A    ・シェリング/ギブソン ロンドン交響楽団(75)(デッカ)      A    ○グリュミオー/ベルージ モンテカルロ国立歌劇場O(72)(デッカ) A    アッカルド盤は、さすがにパガニーニのスペシャリスト、アッカルドだけあって、こんな難曲    でもサラっと弾いてしまうかっこよさでも一番の、模範的演奏です。SS評価で、この作品に    おいては断然の1枚の座を揺るぎないものとし、カップリングはパガニーニのヴァイオリン協    奏曲第2番で、しかも約1200円で買えるのですから、絶対のお薦め★です。    2番目のハーン盤は、お高いです。しかも、下の2枚も含めて、カップリングが良くないと思    われます。他の3枚に比べて、21世紀の録音と言うのは嬉しいのですが…その意味でも、ま    さしくアッカルド盤が★の超お薦め盤だと思われます。    シェリング盤、グリュミオー盤も挙げてはおきましたが、この2枚とてお値段がお手頃という    だけでカップリングが良いとは思えません。シェリング盤は廃盤中です。    やはり、アッカルド盤ですね!        <更新のポイント> 廃盤中の庄司盤、カントロフ盤を外し、グリュミオー盤を              追加しました。

☆ブラームス
作品NO.48 ヴァイオリン協奏曲 ★★★ 2021年6月最新更新
 
 チャイコフスキーベートーヴェンメンデルスゾーンの作品と並び、「4大ヴァイオリン協奏曲」と
 言われる名作で、私はその中でも最高傑作だと思います。それどころか、ブラームスの最高傑作と言っ
 てもいいほどの大傑作だと思っています。この作品のファンの方で私と同意見の方は多いのではないで
 しょうか。ファンの方にはこたえられない魅力に溢れる、ブラームスならではの名曲中の名曲です。
 第1楽章のブラームス節全快の哀愁を帯びたメロディは涙を禁じえず、人生の重みをずっしりと背負っ
 た、まさに挽歌のような曲です。また、第2楽章も、哀切が滲み出るようなセンチメンタル(「感傷的」
 という意味です)な曲です。
 ファンの方にとっては一生の宝物のような名作でしょう。
 ブラームスの音楽の中でも、とりわけこの協奏曲は、楽譜というよりも、ブラームスへのシンパシー
 (共感)をもった解釈が演奏に直結します。よって、演奏すること自体が、ヴァイオリニストの「ブラ
 ームス解釈披露」のような性格をもってしまうという作品です。他の「4大ヴァイオリン協奏曲」は録
 音しても、この作品の録音には手をつけないヴァイオリニストもいるくらいです。もちろん、どういっ
 た解釈が良い、悪いと決めることは出来ませんが、それだけ慎重にならざるをえないほど、ヴァイオリ
 ニスト個人の音楽解釈がはっきりと露呈されてしまう、ある意味怖い作品でもあります。
 ですので、CD選びも難しいです。いくら専門家の評価が高く、評判がよい演奏でも、自分流のシンパ
 シーと重なった演奏でないと納得できないでしょう。
 推薦盤は、上記のようなこの作品の性質からして、どうしても万人受けする、無難な解釈の演奏が上位
 に来てしまう点をご了解下さい。なるべくたくさん挙げてはおきました。

第1楽章(ファウスト演奏静止画)     第3楽章(フィッシャー演奏)
 ☆推薦盤☆    ◎ファウスト/ハーディング マーラー室内管弦楽団(10)(ハルモニア・ムンディ) S    〇クレーメル/バーンスタイン ウィーン・フィル(82)(グラモフォン)      A    ▲オイストラフ/セル クリーヴランド管弦楽団(69)(ワーナー)         A    △ハイフェッツ/ライナー シカゴ交響楽団(55)(RCA)                ・ミルシテイン/ヨッフム ウィーン・フィル(74)(グラモフォン)        A    ・オイストラフ/クレンペラー フランス国立放送管弦楽団(69)(ワーナー)    B    ・クレーメル/アーノンクール ロイヤル・コンセルトヘボウO(96)(テルデック) B    ・シゲティ/メンゲス ロンドン交響楽団(59)(フィリップス)          B    ・レーピン/シャイー ライプツィヒ・ゲヴァントハウスO(08)(グラモフォン)  B    ファウスト盤は、やや速めのテンポで若々しく弾き切った快演です。    泥沼さを排除し、あくまで冷ややかで、スマートで、これが21世紀のブラームス演奏なので    あると、素直に納得せざるを得ない透明感溢れる演奏です。だからこそ、ブラームスの悲痛さ    がにじみ出てくるかのような演奏です。特に、澄んだ高音が瑞々しい第2楽章は、絶品の一言    です。上のYOUUBEへのリンクからぜひお聴き下さい。    お薦め度〇はクレーメルの旧盤です。    ファウストに似た、例によってクールな演奏ですが、作品の芸術性をしっかりと捉え切ってい    る表現です。よって、奏法に個性が強いと言われても仕方ないのですが、音色が冷たいだけに、    この演奏もブラームスの嘆きが一層悲痛に聴こえます。    オイストラフセル盤は、上記2枚の演奏に物足りなさを感じる方、古くからのこの作品のフ    ァンの方にはお薦めです。20世紀風のブラームスの模範演奏と言いますか、19世紀からの    解釈に基づいた演奏です。    ハイフェッツ盤は、難曲をスマートに弾いてしまうオーソドックスさでは一番です。特にカデ    ンツァ(協奏曲で、ソロの楽器が第1楽章で独奏する部分のことです。ソリストによって使用    する楽譜が異なる場合があります。)の凄さは尋常でないです。    ファウスト同様、ブラームスの暗さ、陰鬱さを感じさせず、かといって味わいにも欠けず弾き    切る名人芸で、△にしておきます。ハイフェッツの名盤はほとんどそうですが、55年という    録音年はほとんど気になりません。    良い意味でも悪い意味でも、技巧派ハイフェッツの演奏ですから、ブラームスの深い味を求め    る方には不向きかもしれないという面はあります。    ミルシテイン盤は廃盤中のようです。    この作品は複数のCDで聴いて頂きたいと思います。推薦できるのは印をつけた、A評価以上    のCDだけですが、あくまで推薦の範囲でして、興味のある方、特に、お好きなヴァイオリニ    ストがいらっしゃる方は、他のCDも聴いてみてはいかがでしょうか。    シゲティ盤、レーピン盤は廃盤中のようです。

作品NO.49 ピアノ協奏曲第1番 ★★★ 2021年2月最新更新

  ピアノ協奏曲といいますと、チャイコフスキーベートーヴェンの第5番「皇帝」が断然に有名です。
 それらに比べますと、大作曲家ではあっても、ブラームスショパンのピアノ協奏曲はポピュラーとい
 う点では劣ります。
 ブラームスのピアノ協奏曲は2作品あります。こちらの第1番の方が有名です。
 第2楽章のアダージョを抜かせば、いかにもブラームス風な、シンフォニックなピアノ協奏曲で、伴奏
 のオーケストラが非常にぶ厚いのが特徴です。ブラームスは当初、交響曲を作るつもりだったそうなの
 ですが、途中で断念。このピアノ協奏曲第1番に変わってしまったそうです。
 そのため「ピアノ付き交響曲」と形容されることもあるくらいです。
 前述の「ヴァイオリン協奏曲」もそうなのですが、ブラームスの協奏曲は、伴奏のオーケストラが非常
 に重厚なのが特徴です。
 独奏のピアノに派手さ、華麗さは欠けるのですが、荘厳、雄大そのものです。その点が、ピアノの華麗
 な旋律がお好きな方や、女性には渋く感じられるかもしれません。

全楽章(ポリーニ演奏)
 ☆推薦盤☆    ◎ツィメルマン/ラトル ベルリン・フィル(03)(グラモフォン)       S    ○ギレリス/ヨッフム ベルリン・フィル(72)(グラモフォン)        S    ▲ブッフビンダー/アーノンクール ロイヤルCG(99)(Apex)      A    ・ポリーニ/ベーム ウィーン・フィル(79)(グラモフォン)         A    この作品のCD選びはいつも難しいです。なぜかと言いますと、次にご紹介する「第2番」も    収録されていて、かつ両作品ともトップ評価という都合のいいCDがないからです。    ですので、今回もあまりカップリングを重視せずに採り上げました。    1番のお薦めはツィメルマン盤としましたが、上の2枚は差がありません。    ツィメルマン盤は21世紀の録音ながらSHM−CDなのに割安である点で◎としました。    ギレリス盤もお安いです。”ロシア学派”のギレリスの強い打鍵が作品にマッチしています。    ご紹介は以上でとどめておいてもいいのですが、以前から評価が高いA評価の2つのCDも挙    げておきました。ポリーニの旧盤は、お安い、古くからの名盤ですが、廃盤中のようです。    今回追加したブッフビンダー盤は、輸入盤です。お好みでどうぞ。

作品NO.50 ピアノ協奏曲第2番 ★★★ 2021年2月最新更新

  第2番は、ブラームスの創作活動の充実期に作曲され、渋さを感じる第1番よりは、はるかに洗練され
 たと言われている作品です。一般受けするのはこちらの方ですので、ブラームスの渋さに惹かれる方で
 なくともお薦めしたい逸品です。
 まず、長調であることが一つ目の特徴です。二つ目は、第1楽章の魅力です。冒頭の牧歌的なホルンの
 後にピアノが美しい響きを奏で、オケ全体で盛り上がって、再び重量感溢れるピアノのしらべとなるあ
 たりは非常に印象的です。祝祭的で優雅な楽章となっています。
 他の楽章も、ブラームス特有の厚みがありまして、さすがにショパンのような甘美さには欠けるものの、
 躍動感、力強さなどが、明るさと調和しています。
 第1番と同様、ブラームス的でシンフォニックな協奏曲となっています。
 なお、珍しく、協奏曲であるのに4楽章構成となっているのが大きな特徴です。

全楽章(グリモー演奏)
 ☆推薦盤☆    ◎ポリーニ/アバド ウィーン・フィル(76)(グラモフォン)         S    ・フレイレ/シャイー ライプツィヒ・ゲヴァントハウス(05)(デッカ)    S    ○ポリーニ/アバド ベルリン・フィル(95)(グラモフォン)         A    ▲バックハウス/ベーム ウィーン・フィル(67)(デッカ)          A    ブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」も、第1番以上にこれというCDがありません。    その中で、ポリーニの、アバドとの76年録音盤、すなわち旧盤を◎としました。    理由は、録音の時期がポリーニも脂ののっている時期でして、テクニックに冴えがあるからで    す。余裕のある方は、約20年後に録音された新盤との聴き比べも面白いです。    ブラームスのピアノ協奏曲は、「第1番」に比べますと独奏ピアノに華やかさがある「第2番」    の方がポリーニにマッチしていると思われます。    お薦め度○はポリーニの新盤です。今回新しく追加したフレイレ盤もなかなかの名演ですが、    国内盤、輸入盤共に廃盤中です。    お薦め度▲は、バックハウス盤です。    このCDはモーツァルトのピアノ協奏曲第27番とのカップリングで、CDとしてカップリン    グが良いのが魅力です。    それに、67年当時のバックハウス&ベームといえば、ヨーロッパで最高のコンビと言われて    いただけに、記録としても価値がある名盤なのでして、19世紀生まれの大巨匠バックハウス    の格調の高いブラームスは、とても現代のピアニストの及ぶところではないのでは、と思わさ    れます。    バックハウスの音色はそもそも華やかではないです。ましてや曲がブラームスとなれば、渋い    演奏と言わざるをえません。だからこそブラームスそのものと納得させるだけの説得力がある    演奏なのです。デッカの録音ですので67年という録音年もほぼ気にならず、文句なしにお薦    めしたいのですが、さすがに時代遅れの感は否めません…。    よって、まずはポリーニの2枚をお薦めとしておきます。

☆プロコフィエフ
作品NO.154 ピアノ協奏曲第3番 ★★★ 2017年1月最新更新

 プロコフィエフという作曲家は、決して有名な作曲家とは言えません。しかも、「これが有名」という
 作品があるわけでもないですので、一般の方には全くといっていいほど馴染みがないでしょう(相当の
 方が耳にしたと想定されるCM曲がロメオとジュリエットにはありますが、曲名まではご存じないでし
 ょう)。
 プロコフィエフは1891年に生まれ、1953年まで活躍した、20世紀のロシアを代表する作曲家
 です。作曲活動は主に20世紀ですので、作風はいたって現代的です。
 5つのピアノ協奏曲を作曲しましたが、最も有名なのがこの「第3番」で、20世紀に作曲された
 ピアノ協奏曲の代表作の一つと言われます。
 ピアノ協奏曲というと、モーツァルトショパンの曲のように、ピアノ独奏が奏でる美しい旋律に満ち
 たものもあれば、ベートーヴェンチャイコフスキーの曲のように、スケールが壮大で、風格に満ちた
 旋律をピアノが奏でるものが一般的には親しまれています。
 その点、20世紀に作曲されたこの作品は、全くといっていいほど印象は異なります。
 今まで、上記の作曲家達の時代のピアノ協奏曲を愛聴してきた方には果たしてこの作品はどうでしょう。
 モーツァルトやショパンのピアノ協奏曲とは違い、ピアノは美しい旋律を奏でる役割をしていません。
 テンポが速いですので、めまぐるしく変わるピアノの音型やリズムを、オーケストレーションと共に聴
 くといった感じでしょうか。ピアニストに要求されるのは、ダイナミズムや技術、俊敏性といった要素
 の方が強いように感じられます。
 「20世紀、すなわち現代の『ピアノ協奏曲』を聴いてみたい」という方に是非とも聴いて頂きたい作
 品です。

第1楽章(アルゲリッチ&アバド演奏)   第1楽章(自作自演)
 ☆推薦盤☆   ★◎アルゲリッチ/アバド ベルリン・フィル(67)(グラモフォン)    SS お薦め!   ○アシュケナージ/プレヴィン ロンドン交響楽団(75)(デッカ) 全集  A    ▲キーシン/アバド ベルリン・フィル(83)(グラモフォン)       A    アルゲリッチ盤がSS評価で独壇場です。この演奏は67年録音ですので、約50年前の録音    ですが、今でも他の追随を許しません。当時のアルゲリッチが65年にショパン・コンクール    で優勝した後、初めて協奏曲の録音をした時のものです。このCDほど他の演奏との差が歴然    としていているものはそう多くはないほど、あまりにもズバ抜けた評価の演奏です。お薦め度    も★としました。    男勝りのピアニズムで、それは高齢になった今なお健在ですが、当時は20代であった分、更    に若々しさも伴って、見事にこの曲が要求しているピアニズムを十二分に発揮しきっています。    この演奏を超えるには、相当な天才的な閃きとパッションを兼ね備えたピアニストでないと無    理ではないだろうかとも思わせます。今後そういうCDが登場するのでしょうか。    また、このCDはA評価のラヴェルの「ピアノ協奏曲」もカップリングされていますので、C    Dとしてもお得です。    アシュケナージ盤は、現在は第5番までが収録された全集しかありません。演奏こそ劣ります    が、滅多に聴くことのないプロコフィエフのピアノ協奏曲5作品のCDであるのが魅力です。    プロコフィエフのピアノ協奏曲をたくさん聴きたい方には、お薦めのCDです。    最後には、期待の若手、キーシンの演奏がきます。    キーシンのファンの方にはお薦めしたいです。ジャケットにあるカラヤンとの演奏ではなく、    アバドとの演奏です。    <更新のポイント> 特に変わりはございません。

☆ベルク
作品NO.248 ヴァイオリン協奏曲 ★★★ 2021年6月最新更新

 ベルクは、1885年、オーストリア生まれの、現代のクラシック作曲家です。代表作はこのヴァイオ
 リン協奏曲で、他の作品も、文学的なアプローチがされているのが作風です。
 この作品も、「1人の天使の思い出のために」という副題がついていまして、「天使」というのはベル
 ク自身が可愛がっていたマノン(マーラーの未亡人とグロピウスとの子)という子のことで、その子に
 対してのレクイエムとなっています。
 作品は2楽章形式で、ロマンティシズムに溢れており、第2楽章にはバッハのカンタータ第60番のコ
 ラール(合唱)が引用されています。 

全楽章
 ☆推薦盤☆    ・ファウスト/アバド モーツァルト管弦楽団(10)(ハルモニア・ムンディ)  SS    ・ツェートマイアー/ホリガー フィルハーモニア管弦楽団(91)(テルデック)  A    ・クレーメル/デイヴィス バイエルン放送交響楽団(84)(デッカ)       A    ◎ムター/レヴァイン シカゴ交響楽団(92)(グラモフォン)          A    ・シェリング/クーベリック バイエルン放送交響楽団(68)(グラモフォン)   A    〇グリュミオー/マルケヴィチ アムステルダム・コンセルトヘボウ(67)(デッカ)B        ムター盤とグリュミオー盤以外はすべて廃盤中のようです。なおかつ、シェリング盤は音源の    確証が得られておりません。    A評価のムター盤を◎としましたが、お値段で考えれば非常にお安いグリュミオー盤の方がお    薦めですのでお好みでどうぞ。


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