名曲案内〜交響曲編V〜

(ドヴォルザーク〜フランク)



    
  やはりクラシックの華といえば大編成のオーケストラによる交響曲(シンフォニー)でしょう。
  日本のコンサートのプログラムでは常にメインに陣取る大曲ばかりです。
  クラシック鑑賞は、交響曲に始まり交響曲に終わるといってもいいでしょう。 

ドヴォルザーク     ・ハイドン     ・フランク


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☆ドヴォルザーク
作品NO.74 交響曲第8(7)番 ★★★ 2021年2月最新更新

  ドヴォルザークといえば「新世界」と言ってもいいくらい、交響曲第9番「新世界より」は代名詞とも
 なっています。
 交響曲で次にポピュラーなのが、この「第8番」で、第8番、第9番以外が演奏されることはあまりあ
 りません。
 この作品は通称「ドヴォ8」という名で親しまれていて、「イギリス」という副題がつくこともたまに
 あります。
 CDによっては、第8番が第7番、第9番が第8番と表記されていることもあるのでご注意下さい。
 (「ドヴォルザーク」が「ドヴォルジャーク」となっているのは単純な書き方の違いです)
 ドヴォルザークの作品では、チェロ協奏曲や、弦楽四重奏曲「アメリカ」なども人気が高いですが、第
 9番の次に、この「第8番」を選ぶ方は多いです。
 「第8番」はロマン主義と、民族性が融合した作品で、特に第3楽章冒頭の、流麗でどこか物悲しい旋
 律は大変魅力的です。この楽章はドヴォルザークが書いた最も美しい音楽と言われているほどです。
 この楽章の冒頭の旋律に惹かれて、「ドヴォ8」が好きな方も多いと思いのではないでしょうか。全4
 楽章とも、割と短く、聴きやすい交響曲です。

第3楽章(何とセル指揮!)
 ☆推薦盤☆    ◎セル/クリーヴランド管弦楽団(70)(ワ−ナー)         SS    ○クーベリック/ベルリン・フィル(66)(グラモフォン)       A    ▲カラヤン/ウィーン・フィル(85)(グラモフォン)         A    △アーノンクール/ロイヤル・コンセルト・ヘボウ(98)(テルデック) A    ・マッケラス/フィルハーモニア管弦楽団(08)(Signum Classics)   A    セルの「ドヴォ8」はセルのベストCDとも言える名盤として語り継がれています。20世紀の    名指揮者の一人であるセルの、生涯最後のレコーディングとなったメモリアルCDでもあります。    専門家はその点まで考慮して評価しているわけではないと思いますが、評価は堂々たるSS評価    です。まずはこのCDがお薦めです。    これに続くCDとして、クーベリック盤を挙げておきましたが、カップリングの「新世界より」    はA評価ですので、CDとしてお得です。その意味では、同じくカップリングの「新世界より」    がS評価のカラヤン盤もお得なのですが、民族色の濃い作品はお得意のクーベリックの演奏を上    と考えました。これはお好みの問題でしょう。    アーノンクール盤はカップリングが寂しいです。    マッケラス盤は、100%同じ音源かの確証がありませんし、廃盤中です。

作品NO.75 交響曲第9(8)番「新世界より」 ★★ 2021年2月最新更新

  ドヴォルザークの交響曲の中で最も有名なだけでなく、交響曲の中でも最も有名な作品の一つです。
 第4楽章の冒頭は、おそらくほとんどの方が一度は耳にしたことがあるのでは。第2楽章も、弟子のフ 
 ィッシャーが歌曲にアレンジして「家路」という名で流行させましたので、学校の下校やお店の閉店の
 音楽で聴いたことがある方も多いでしょう。
 この交響曲は、アメリカに渡ったドヴォルザークがホームシックにかかり、故郷のボヘミア(チェコ)
 を想って望郷の念を書き残したものです。全体的に垢抜けなく、土俗的な雰囲気が漂っていますが、こ
 れはアメリカの黒人霊歌を基調としたものだからです。
 第1楽章、第3楽章に慣れれば、初心者の方にも充分親しみやすい交響曲です。
 第4楽章は、冒頭から気分が高揚していくワクワク感が何とも言えません。
 「ドヴォ9」と呼ばれることはまずなく、「新世界」と、ちょっと略して呼ばれます。
 CDによっては、第8番が第7番、第9番が第8番と表記されていることもあるのでご注意下さい。

第2楽章(カラヤン指揮)     第4楽章(ドゥダメル指揮)
 ☆推薦盤☆    ◎ケルテス/ウィーン・フィル(61)(デッカ)             S    ○カラヤン/ウィーン・フィル(85)(グラモフォン)          S    ▲アーノンクール/ロイヤル・コンセルト・ヘボウ(99)(テルデック)  S    △クーベリック/ベルリン・フィル(72)(グラモフォン)        A    ・ダウスゴー/スウェーデン室内管弦楽団(06)(BIS)        A    S評価のCDが3枚ありまして、カップリングを考えると、A評価の「ドヴォ8」とのカップ    リングのカラヤン盤が最もお得と思われますが、◎は古くからの名盤、ケルテス盤にしました。    ケルテスの演奏は、第1、第3楽章の金管の立派さ、ティンパニの強打がまことに期待以上に    充実しきっていて、それに応える弦の響きの充実度も素晴らしいです。もちろん、それとは対    照的に第2楽章、第4楽章では望郷の念が存分にこめられており、満点といってもいい演奏で    す。ケルテスという、若くしてなくなった指揮者の遺した最大の遺産です。    演奏重視ならばケルテス盤、カップリング重視ならばカラヤン盤がお薦めです。    アーノンクール盤はカップリングが寂しいです。    クーベリック盤は、土俗的な雰囲気に惹かれる方が多いようです。カップリングはA評価の    「ドヴォ8」ですので悪くはありません。    ダウスゴー盤は廃盤中です。

☆ハイドン
作品NO.99 交響曲第94番「驚愕」 ★★ 2021年3月最新更新

  ハイドンは何と100作以上の交響曲を書き、「交響曲の父」と呼ばれます。昔はここに挙げた「驚愕」
 や次に挙げた「軍隊」、そして「時計」などはモーツァルトの交響曲並みに人気を誇っていたものだっ
 たらしいのですが、今ではコンサートで演奏される機会も激減してしまいました。また、CDも、新し
 い録音はほとんどが古楽器による演奏になっています。これも時代の流れということなのでしょうか。
 ハイドンの交響曲の魅力は、その親しみやすい旋律にあります。各楽章の時間も短いため、初心者の方
 が聴く入門用の交響曲としても適しています。
 ここに挙げた「驚愕」の名はハイドンが生きていた頃から用いられていまして、第2楽章の突然の最強
 音に由来するとされています。
 なお、1791年から1795年に作曲された12の交響曲、具体的には第93番〜第104番を総称
 して「ザロモン・セット」、あるいは「ロンドン・セット」、「ザロモン交響曲」、「ロンドン交響曲」
 と呼んでいます。

第2楽章
 ☆推薦盤☆    ◎ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊(09)(ナイーヴ)         2枚組  SS    ・ファイ/ハイデルベルグ交響楽団(98)(ヘンスラー)        4枚組   S    ・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ(92)(デッカ)         1枚   A    ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシス(08、09)(Ars Produktion)   1枚   A    ▲鈴木秀美/オーケストラ・リベラ・クラシカ(10)(アルテ・デラルコ) 1枚   A    ○アーノンク−ル/ロイヤル・コンセルト・ヘボウ(90)(テルデック)  1枚   B        ほとんどが古楽器演奏ですが、廃盤が多く、悲惨な状況です。    ミンコフスキ盤は録音が新しいこともありますが、何より新鮮な古楽器アプローチが魅力的で    す。ハイドンのチャーミングな旋律美を余すところなく伝えています。2枚組ですが、さほど    お高くもありませんし、SS評価ですので、素直にお薦め度は◎としました。    ファイ盤、ブリュッヘン盤、ヴァイル盤は廃盤中です。    いずれも古楽器演奏です。    鈴木秀美は鈴木雅明の弟です。A評価ですが、お値段はちょっとお高めです。古楽器演奏です。    最後のアーノンクール盤は、現代楽器による1枚ものです。

作品NO.100 交響曲第100番「軍隊」 ★★ 2021年3月最新更新
 
  ハイドンの100を超える交響曲の中では最もポピュラーな作品であると共に、最もチャーミングな、
 いかにもハイドンらしい旋律美を誇っている名作です。「交響曲の父」ハイドンの代表作です。
 ハイドンの交響曲でポピュラーなものと言えば副題のつく交響曲で、「V字」、「奇蹟」、「驚愕」、
 「軍隊」、「時計」などがそれにあたりますが、どれも作風はかなり似ていますので、どれから聴き
 始めてもいいとは思いますが、この「軍隊」が一番旋律がチャーミングですので、まずはハイドンの
 交響曲の入門曲としていかがでしょうか。
 大太鼓、シンバルなどの軍隊用の楽器を用いているのが「軍隊」の由来です。
 なお、1791年から1795年に作曲された12の交響曲、具体的には第93番〜第104番を総称
 して「ザロモン・セット」、あるいは「ロンドン・セット」、「ザロモン交響曲」、「ロンドン交響曲」
 と呼んでいます。

全楽章(ヤンソンス指揮)
 ☆推薦盤☆    ・ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊(09)(ナイーヴ)      2枚組  SS    ▲アーノンクール/アムステルダムCG(86、87)(ワーナー) 5枚組   A    ◎ブリュッヘン/18世紀オーケストラ(90)(デッカ)      1枚   A    ・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニアO(65)(ワーナー)  1枚   A    ○ファイ/ハイデルベルク管弦楽団(13)(ヘンスラー)      1枚   A    ☆ワルター/ウィーン・フィル(38)(OPUS蔵)        1枚   B    「軍隊」のCDも廃盤が多いです。特に、SS評価で古楽器演奏のミンコフスキ盤が廃盤中な    のは痛いところです。    そこで、古楽器演奏のブリュッヘン盤をお薦め度◎としました。    ブリュッヘンの古楽器演奏はほとんどが交響曲で、古楽器オーケストラとは言っても重厚感が    ありますので、評価が高い名盤が多いです。    ○は古楽器演奏のファイ盤としました。    ▲はアーノンクール盤です。輸入盤ですので、5枚組にしてはお安目とはいえ、非効率な点は    否めませんが、これだけ廃盤が多ければ▲にせざるをえません。これは現代楽器の演奏ですの    で、古楽器が苦手な方にはお薦めです。    現代楽器のクレンペラー盤は廃盤中です。    最後のワルター盤は録音が古いですので、上級者の方にお薦めですが、廃盤中です。

作品NO.101 交響曲第101番「時計」 ★★ 2021年3月最新更新
 
 この作品も「驚愕」「軍隊」同様、親しみやすい旋律で、かつ演奏時間は約30分という、ハイドンら
 しい、聴きやすい交響曲です。
 副題の「時計」という名は、ハイドンがつけたものではなく、第2楽章の規則正しい音符の並びが、い
 かにも時を刻む時計の動きを連想させるものとして、19世紀に付けられたものだそうです。
 一度は聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。下のYOUTUBEへのリンクからお聴き下さい。

第2楽章
 ☆推薦盤☆    ・ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊(09)(ナイーヴ)          2枚組  SS    ◎ブリュッヘン/18世紀オーケストラ(87)(デッカ)          1枚   A    ▲S・クイケン/ラ・プティット・バンド(94)(ハルモニア・ムンディ) 4枚組   A    ・マッケラス/セント・ルークス管弦楽団(92)(テラーク)        1枚   A    ・ノリントン/シュトゥットガルト南西ドイツ放送SO(09)(ヘンスラー) 1枚   A    ○アーノンクール/ロイヤル・コンセルトヘボウ(88)(テルデック)    1枚   B    SS評価のミンコフスキ盤、及びマッケラス盤、ノリントン盤が廃盤中です。    そこで「軍隊」同様、ブリュッヘン盤を◎にしました。    クイケン盤は、「驚愕」「軍隊」が入った、4枚組、12作品収録のCDです。これを高いと    みるか、お得とみるかがポイントとなりますが、それよりは、お安く、「驚愕」とカップリン    グで現代楽器での演奏のアーノンクール盤を○としました。

☆フランク
作品NO.91 交響曲 ★★★ 2021年2月最新更新
 
  フランクという作曲家は、どうも作曲が本職ではなく、パリ音楽院の教授が、晩年に音楽の知識を活か
 して作曲活動を行ったようです。
 そのフランクの代表作といったらこの「交響曲」と「ヴァイオリンソナタ」で、作曲数は全く少ないも
 のの、2作品位で作曲家として後世に名を残すほどの評価を得ているのですからすごいです。
 普通は「交響曲第○番」となっている作曲家が多いのですが、フランクにはこの1作品しかありません
 ので、あえて「第1番」とは呼びません。
 曲は短調から長調へ、そして闘争を経て勝利へ、という構成ですが、自らのオルガンの知識を駆使した
 響きやチャーミングな旋律に溢れる作品です。交響曲ですが3楽章構成の短い作品です。

第3楽章
 ☆推薦盤☆    ◎モントゥー/シカゴ交響楽団(61)(RCA)           S    ▲ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管弦楽団(ハルモニア・ムンディ)    S    ○カラヤン/パリ管弦楽団(69)(ワーナー)            A    フランス音楽を演奏させたら天下一品のフランス音楽の大家モントゥー盤は、録音は古いです    が音質は良好で、近年評価を上げています。おそらく、モントゥーの耽美的な表現が、この作    品にマッチしていることが再評価されてきているようです。    お値段もお安いのでかなりお薦めです。    ヘレヴェッヘ盤は古楽器演奏です。お好みの方はどうぞ。    カラヤン盤は、やはり演奏が「パリ管弦楽団」というフランスのオケであるのが大きいのでは    ないでしょうか。カラヤンとパリ管という珍しいコンビのCDです。    


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