名曲案内〜管弦楽曲・室内楽曲編U〜
(サラサーテ〜チャイコフスキー)



    
  クラシックの大曲といえば交響曲ですが、管弦楽曲、室内楽曲も美しい弦の響き、アンサンブル
  などが聴き手を魅了してやみません。交響曲よりも聴きやすいので、クラシックの入門用として
  も高い価値があります。また、一度は聴いたことのある曲も多いことでしょう。
  ちなみに、管弦楽曲とはフルオーケストラ用でない曲のこと、室内楽曲とは各楽器一人ずつによ
  るアンサンブル曲のことを指すようですが、区別は明確ではありません。 

サラサーテ   ・サン=サーンス   ・シベリウス   ・シューベルト

ショスタコーヴィチ   ・ショパン   ・スメタナ   ・チャイコフスキー


管弦楽曲・室内楽曲編T(アンダーソン〜グリーグ)へ

管弦楽曲・室内楽曲編V(ドヴォルザーク〜バルトーク)へ     

管弦楽曲・室内楽曲編W(パッヘルベル〜ヘンデル)へ 

管弦楽曲・室内楽曲編X(ベートーヴェン〜メンデルスゾーン)へ

管弦楽曲・室内楽曲編Y(モーツァルト〜リヒャルト・シュトラウス)へ

管弦楽曲・室内楽曲編Z(リムスキー=コルサコフ〜シュトラウスファミリー)へ




☆サラサーテ
ツィゴイネルワイゼン  ★
   
 サラサーテは作曲家として曲も残したが、クライスラーやパガニーニと同様、本業はヴァイオリニスト、
 しかも19世紀で最も優れたヴァイオリニストの一人で、超絶的な技巧を持っていた。その技巧を披露
 するために「カルメン幻想曲」と、この「ツィゴイネルワイゼン」を作曲したのである。もちろん、二
 曲とも超絶技巧を要する曲である。
 そのうち、割とテレビで流されていることもあり、聴いたことのある方が多いのは、この「ツィゴイネ
 ルワイゼン」の方だろう。「ツィゴイネルワイゼン」とは、「ジプシーの歌」という意味である。ドラ
 マチックな冒頭、中間部のジプシー的な哀愁のこもった旋律、そして後半部は伴奏も勢いを増して、ヴ
 ァイオリンもより超絶技巧になり、一気にクライマックスへと向かうという、聴いている方も弾いてい
 る方も気分爽快な曲である。ヴァイオリニストにとっては、ほとんどソロのような形になる中間部が聴
 かせどころとなる。
 原曲は管弦楽が伴奏を務めるが、ピアノだけの場合も多い。

ツィゴイネルワイゼン
 ☆推薦盤☆  ・ハイフェッツ/スタインバーグ RCAビクター交響楽団(51)(RCA)     SS   ・パールマン/フォスター アビー・ロード・Ens(95)(EMI)         S  ・ムター/レヴァイン ウィーンフィル(92)(グラモフォン)            B ・チョン・キョンファ/ゴラン(P)(98)(EMI)                B    技巧派ヴァイオリニストのハイフェッツとパールマンが名を連ねているあたり、いかにも超絶    技巧のこの曲らしい。    まず、SS評価のハイフェッツ盤だが、この曲の演奏の代名詞ともなっている録音である。5    1年録音だが、音の古さは感じさせない。ハイフェッツのやや渋い音色も、ジプシー的なこの    曲に合っているし、何よりこの曲を完璧なまでに弾きこなすハイフェッツに圧倒されるだろう。    この曲は技巧性、娯楽性のある曲とはいえ、特に中間部あたりはもっと深い解釈を求める方も    いるかもしれない。しかし、ハイフェッツ盤は充分哀愁に満ちているし、楽譜通りの、オーソ    ドックスな模範的演奏といったらやはりこのCD以外にないと言われている。    パールマンは評価は高いが、ハイフェッツと違って、彼のやや楽天的な音色が出てしまってい    るのが惜しいところ。もっとも、パールマンの音色、奏法に惹かれる方にはお薦めである。    HMVへのリンクとなっているが、音源はこれで間違いないはず。    ムター盤は、彼女の個性が強く出た演奏である。ジプシー風であるとか、曲の魅力と言うより    は、いかにもムターの魅力に満ちている。彼女のファンにはお薦め。    最後のキョンファ盤であるが、異色のツィゴイネルワイゼンである。彼女は非常に主観的なヴ    ァイオリニストとして知られているが、この曲においても、中間部の感傷的な部分を彼女なり    に最大限に芸術性のある音楽として捉え、楽譜を完全に無視している。従って、オーソドック    スな要素は全くないのだが、こういうツィゴイネルワイゼンがあってもいいのではないかと納    得させられてしまう演奏。彼女のファンは必聴であろうし、また、ツィゴイネルワイゼンに、    単に技巧的な要素や娯楽的な要素を求めているだけではない方に一度は聴いてほしい演奏。
☆サン=サーンス
組曲「動物の謝肉祭」 ★★
   
 「教養人」サン=サーンスによる諷刺音楽。「亀」「象」や、単品でも演奏される有名な「白鳥」など
 短い全14曲からなり、初心者の方にも聴きやすい。
 しかし、これらの曲は描写音楽というよりはユーモア、あるいはブラックユーモアを含んだ曲で、あく
 まで「諷刺音楽」であることを常に意識して聴くと愉しい。

                       
               「白鳥」              「象」

 ☆推薦盤☆
 ・アルゲリッチ(p)クレーメル(Xn)他/(85)(フィリップス)  SS 売れてます!
 ・プレヴィン/ピッツバーグ交響楽団(80)(フィリップス)       S
   
   アルゲリッチ、クレーメルなどの豪華ソリストの共演によるCDが文句なしのSS評価。それ
   ぞれが如何なく個性を発揮しており、素晴らしい演奏。文句なしのお薦め盤。
   一方、プレヴィン盤もS評価であるし、何よりカップリングにジョン・ウィリアムズ指揮、プ
   ロコフィエフの「ピーターと狼」など、演奏効果に富んだ曲が入っているのが興味深い。
   値段もお安いし、こちらはこちらでかなりお薦め。

☆シベリウス
交響詩「フィンランディア」 ★★
   
 シベリウスはフィンランド、すなわち北欧の作曲家である。交響曲が有名だが、いずれも北欧のムード
 と郷愁に満ちており、ファンにはこたえられない魅力がある。
 しかし、彼の交響曲は難しい。クラシック中級者レベルでもチンプンカンプンだと思う。ブルックナー
 と同じで、相性のいい指揮者でないと、とたんに音楽の魅力を壊してしまう。
 そんな彼の作品に、気軽に接することができるのが、この「フィンランディア」である。この曲は単発
 の曲で7分程度なので、聴き易い。彼の作品の中で最も有名な曲である。
 この曲は、残念ながら、彼の交響曲とは違った内容である。フィンランドに対する愛国心に満ちた曲で、
 そのため、作曲当時、圧政をしいていたロシアから演奏禁止命令が出たという逸話もある。
 ちなみに、この曲は映画「ダイ・ハード2」にも使われた。
 単品なので、CDとしては、シベリウスの「管弦楽曲集」に入っているか、交響曲のカップリングとし
 て入っている。

フィンランディア
 ☆推薦盤☆  ・バルビローリ/ハレ管弦楽団(66)(EMI)         S   ・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(72)(RCA)   B  ・カラヤン/ベルリンフィル(84)(グラモフォン)       B    バルビローリ盤が、やや録音年代は古いものの圧倒的な支持を受けて独走状態である。    現時点のリンク先はHMVで1700円だが、11月に1500円で再発売される。    このCDを追従するものは見当たらないが、1枚では寂しいので、何とかもう2枚選んだ。    オーマンディ盤は以前から安定した評価を得てはいるが、安定しすぎているきらいがある。そ    れに対して84年録音で再発売されたばかりのカラヤン盤(カラヤンはEMI時代を含め、何    度もこの曲を録音しているのでご注意)は音質も向上して勢いがあるし、カップリングも充実    しており、CDとしてはこちらの方がお薦め。
☆シューベルト
アルペジオーネ・ソナタ ★★★
   
 アルペジオーネというのは楽器の名前で、19世紀に考案された、ギターのような形をした6弦(普通
 は4弦)の小型のチェロである。響きに味わいがあったそうなのだが、弾くのが難しく、いつの間にか
 忘れ去られてしまったらしい。よって、アルペジオーネ・ソナタというのは、弦楽器のソナタであるか
 ら、ヴァイオリン・ソナタやチェロ・ソナタと同様に、ピアノとのデュオの作品のことである。
 シューベルトは当時、アルペジオーネという楽器に目を付けてこの作品を作曲したのだが、現在では滅
 多に見かけないジャンルの作品であるという意味も込めて、取り上げてみた。しかし、決してマイナー
 な作品ではなく、シューベルトの代表作の一つである。いや、それ以上に、チェロ独奏の曲が少ないこ
 ともあり、チェリストにとっては貴重なソナタ曲、定番曲の一つである。
 現在、6弦もの広い音域を持つアルペジオーネをどうやって代用しているのかというと、ヴァイオリン
 では低音が出ないため、ほとんどはチェロで相当な高音まで出して代用しているが、ヴィオラで何とか
 代用している場合もある。
 時には、「高音のチェロ」もいかがだろう。チェロの魅力は何と言ってもその豊富な音量の低音にある
 のだが、高音はどこか哀切を感じさせ、非常に味わい深い。私はヴァイオリン弾き(プロではありませ 
 ん)だが、改めてチェロの奥深さに目覚めさせられた。
 特に、ヴィオラかチェロのファンの方には是非とも聴いて頂きたい逸品。

 ☆推薦盤☆
 ・マイスキー/アルゲリッチ(84)(フィリップス)             SS
 ・ロストロポーヴィチ/ブリテン(68)(デッカ)               S
 ・ビルスマ/インマゼール(97)(SONY)                 A
 ・バシュメト(Va)/ムンチャン(90)(RCA)              B
 ・シャハム(Vn)/セルシェル(ギター)(02)(グラモフォン)       B

   現在の一番人気はマイスキー&アルゲリッチ盤。マイスキーの技術が高音域に入っても決して
   音量不足になることはなく、まさに美しく切ない。伴奏のアルゲリッチは、あくまで伴奏に徹
   し、力みは全くない。マイスキーはアルゲリッチとの録音について、「波長が合う。自分がこ
   うしたい、と思うことがピタリと合う」と述べているだけに、相性抜群なのだろう。ジャケッ
   トのマイスキーが、まさにヴェルディ一筋のラ○スそっくりである点も、ポイントが高い。ロ
   ストロポーヴィチ盤は更に格調が高く、堂々とした巨匠風の演奏。しかしマイスキー盤の方が
   評価が高いのは、やはりラ○スに…いえいえ、この曲の性格上、スケールの大きな演奏よりも、
   哀切を感じさせるマイスキー盤の方がよりしっくりとくるからという理由が多い。
   この点は人によってお好みがあると思うが、私としては、マイスキー盤の方が無難だと思われ
   るし、曲の魅力を充分に味わえることは間違いないので、マイスキー盤を推したい。
   A評価には、古楽器演奏の大家であるビルスマとインマゼールという夢の共演が来た。もちろ
   ん、ビルスマはチェロピッコロ、インマゼールはフォルテピアノという古楽器を使用している。
   この二人のコンビというだけで、古楽器ファンはたまらないのでは。
   更に、B評価ではあるけれども、使用楽器に特徴があるものを2枚選んだ。
   バシュメトは現在、世界屈指のヴィオリストで、ヴィオラによる演奏。
   シャハム盤は、何とヴァイオリンと、ギターによるデュオという変り種。値段はお高いが、0
   2年の最新録音なのが魅力。どういう演奏をしているのか非常に気になるCD。
   なおこのCDは、「シューベルト フォー トゥー」(shubert for two か?)という名前で、
   ギターのセルシェルとのデュオによる作品が多数収録されている。 

ピアノ五重奏曲「ます」 ★★
   
 「ピアノ五重奏曲」とは聴きなれないジャンルだが、ピアノ5台で弾くわけではなく、ピアノと、あと
 4つの弦楽器によって演奏するスタイルである。「ピアノ○重奏曲」として最も有名なのは、ここでも
 紹介しているベートーヴェンの「ピアノ三重奏曲『大公』」であるが、これはピアノ、ヴァイオリン、
 チェロによるアンサンブルのことである。よって、「ピアノ五重奏曲」とは、ピアノ、ヴァイオリン、
 ヴィオラ、チェロ、コントラバスによるアンサンブルのことを指している。
 この曲はシューベルトの室内楽曲の中では最も有名な曲で、当時としては異例のコントラバスを加える
 ことによって、ピアノと弦楽四重奏(カルテット)が一体になった、何ともいえない美しいアンサンブ
 ルの曲となっている。特に第4楽章は、2年前作曲の歌曲「ます」を変奏曲にしたもので、一番の聴き
 所である。全部で5楽章からなる。

 ☆推薦盤☆
 ・ブレンデル/クリーヴランドSQ団員他(77)(フィリップス)   S 売れてます!
 ・リヒテル/ボロディンSQ団員他(80)(EMI)         A

   CDはブレンデル盤が特筆もの。彼の全盛期といってもいい頃に録音され、当面このCDを上
   回るものは出てこないだろうと思われる。とにかくアンサンブルが素晴らしい。
   リヒテル盤は、ブレンデルに大きく差をつけられてのA評価。
   ブレンデル盤は、カップリングに弦楽四重奏曲があって、しかもカップリングのないリヒテル
   盤よりもお安い。ブレンデルとは相性が悪い方以外は、明らかにこちらの方がお得。
   CDは、寂しいがこの2枚が他を圧倒している状況。

☆ショスタコーヴィチ
弦楽四重奏曲第8番 ★★★
   
 ショスタコーヴィチは20世紀生まれの作曲家なので、まだまだ評価が定まった作曲家とはいいがたい。
 マーラーのように、いつかブームがくるかもしれない予感がする。 
 彼の音楽はクラシック最高といってもいいほど暗く、大衆性に乏しいところはあるが、15曲作曲した
 弦楽四重奏曲、つまりカルテットは、ベートーヴェンに匹敵するほどの傑作だと評する人が多い。
 その15曲の中で、最高傑作との誉れ高いのが、この「第8番」である。「ファシズムと戦争の犠牲者
 の思い出に」捧げられたこの曲は、20世紀という時代背景と、ロシアという国家の背景を如実に表し
 ている。「ファシズム」とはヒトラーやムッソリーニのことではなく、スターリン体制のことを指し、
 「戦争の犠牲者」とは作曲者の友人達を含んだ、文字通りの犠牲者のことである。
 5つの楽章から構成されるが、楽章ごとの区切りはなく、連続して演奏される。深い嘆き、哀愁などに
 彩られ、最後は悲歌となって幕を閉じる。

 ☆推薦盤☆
 ・ボロディン四重奏団/(90)(Virgin)         S
 ・エマーソン弦楽四重奏団/(98)(グラモフォン)       A

   「ボロディン・カルテットによってショスタコーヴィチの魅力が世界に浸透した」と言われ、
   かたやボロディン四重奏団も「ショスタコーヴィチとベートーヴェンのカルテットを演奏する
   ことを自分達の到達点としたい」と言っているように、この両者の結びつきは極めて強い。そ
   れが演奏にも表れており、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲といったらボロディン四重奏団
   の演奏、と相場が決まっているようだ。
   しかしこの演奏、実は国内盤がないという状況にある。評価は当然のごとく断然の一位なのだ
   が、レコード会社の意向も考えものである。仕方がないので、輸入盤をお薦めしておこう。
   国内盤は、再発を待つしかなさそうである。
   もう1枚、エマーソン盤を加えておくが、この2枚が他のCDを完全に突き放している状態な
   ので、これ以上はお薦め盤を挙げなくてもいいと思われる。
   エマーソン盤は1000円とお安いので、国内盤をすぐに手に入れたい方は、こちらがお薦め。  

☆ショパン
チェロ・ソナタ  ★★★
 
  言うまでもなく、ショパンの楽曲はすべてと言っていい程ピアノが関係している。そのうち、ピアノ協
 奏曲2曲を除けば、何と4曲の室内楽曲がある。そのうち、チェロが関係した作品は3つで、すべてチ
 ェロとピアノのデュオであるから、やはりピアノが関係している。そのうちの1つがこの作品であるが、
 実はこの作品は、彼が生前に発表した最後の楽曲でもある。4楽章構成の大作。
 彼がチェロの作品を書いたのは、ピアノの次にチェロを愛していたからで、生涯の友人であったチェリ
 ストのフランショームの影響が大きい。この作品は彼との共演を想定して書かれたものであり、当然、
 フランショームに献呈された。
 チェロ・ソナタとはいうものの、ほとんどチェロとピアノの競演と言った趣が強く、ピアノは伴奏とい
 う存在に甘んじていない。加えて、技術的にも音楽的にも非常に高度な作品である。
 当時のショパンは、亡くなる数年前だったが、ヴァイオリン・ソナタの草稿が残されている。よって、
 彼はこの作品を契機に、ピアノの独奏曲や協奏曲から、新たなジャンルの開拓を目指していたことが伺
 える。
 ショパンがチェロ・ソナタを作曲したということは、ピアニスト側からすれば、嘘のような話であるが、
 チェリスト側にとっては、「あのショパンが書いたチェロの曲」ということで、憧れの1曲の一つに挙
 げられるという。

 ☆推薦盤☆
 ・ロストロポーヴィチ/アルゲリッチ(p)(80)(グラモフォン)     S
 ・デュ・プレ/バレンボイム(71)(EMI)               A
 ・シュタルケル/練木繁夫(78)(デンオン)               B
 ・ヨーヨ・マ/アックス(92)(SONY)                B

   名前だけでも、ロストロポーヴィチアルゲリッチ盤が群を抜いている。このCDが文句なし。
   そもそも作曲の意図が、「チェロとピアノの競演」であるから、豊富な音量であるロストロポ
   ーヴィチと対等に渡り合えるのはアルゲリッチくらいだろう。この両者の相譲らない競演はす
   さまじく、また、技術的にも優れているため、速いテンポになっても楽曲の構築は揺るぎもし
   ない。おそらくショパンが求めた演奏とはこのような演奏だったのではないかと思われる。
   私の個人的な考えでは、この1枚で充分だと思われる。しかし、うるさく感じられる方のため
   に他に3枚を紹介。本当ならば、廃盤中のものも紹介したいところだが。
   デュ・プレ盤は、どちらかというとチェロが主役で、ロストロポーヴィチほどではないが、熱
   い演奏。現在、国内盤は廃盤中。その点、B評価の2枚は、チェロが主体になっていて、静か
   めのスタイルである。特にシュタルケル盤はお安いのが嬉しい。   

☆スメタナ
連作交響詩「わが祖国」  ★★
   
  スメタナはチェコを代表する作曲家である。そのスメタナの代表作といえば、何といってもこの「わが
 祖国」だろう。いや、「わが祖国」なんて曲名は聞いたこともない、という方が多そうだ。では、「モ
 ルダウ」はどうだろうか。少なくとも学校の教科書には載っているので、合唱曲として歌ったことのあ
 る方は多いはずである。この「モルダウ」だけが有名なのでこの楽曲を採り上げたようなものなのだが、
 特に合唱部に所属していた方で、この曲のファンの方はいるだろうと思われるので、思い切って採り上
 げてみた。郷愁に満ちた旋律が何とも言えない。
 「わが祖国」は6曲からなり、「モルダウ」は第2曲である。
 ちなみに、チェコの首都プラハで行われる、「プラハの春音楽祭」では、この「わが祖国」がオープニ
 ングを飾るのが毎年恒例となっているらしい。

「わが祖国」より「モルダウ」
 ☆推薦盤☆  ・クーベリック/ボストン交響楽団(71)(グラモフォン)     SS  ・アンチェル/チェコフィルハーモニー(63)(スプラフォン)    A  ・ノイマン/チェコフィルハーモニー(75)(デンオン)       A    クーベリックの71年盤に及ぶCDは当分出そうにない。完全にベスト・ワンの地位を揺るぎ    ないものにしている。クーベリックは作曲者スメタナと同じチェコ出身なので、お国物は他人    に譲らないといったところか。    しかし、ドヴォルザークやスメタナのように、チェコの音楽には独特の土俗的な要素があり、    「私のベストCD」として重宝されているCDが必ずある。    「モルダウ」の場合はアンセルメ盤とノイマン盤がそれにあたる。共にチェコの音楽は大得意    な指揮者で、オケもチェコフィルで、固定ファンが多いCDである。クーベリック盤の「評論    家筋」での評価はSSとダントツだが、この曲を好きな方はぜひこれらの演奏も聴いて欲しい。
☆チャイコフスキー
弦楽セレナーデ  ★
   
 チャイコフスキーの芸風は、暗いながらもその甘美で魅力的な旋律にある。彼の代表的な作品である交 
 響曲第5番、第6番「悲愴」にはその魅力がつまっているが、初心者には難しい。そこで、初心者が彼
 の哀愁のこもった甘美なメロディーを存分に堪能するのにうってつけなのがこの「弦楽セレナーデ」で
 ある。
 第1楽章の冒頭の主題から彼の魅力満点だ。この部分はコマーシャルに使われたことがあるし、かつて
 携帯電話の着メロに元々入っていることが多かったので、聴いたことのある方は多いと思う。第2楽章
 は彼のお得意のワルツで、こちらも一度は耳にしたことがある方も多いことだろう。第3楽章はエレジ
 ーで暗いので、この楽章だけは初心者にはちょっと苦しい。第4楽章は躍動感溢れる名作で、最後に再
 び第1楽章冒頭の主題が繰り返される。まことに魅力たっぷりのセレナーデの傑作。

                      
              第1楽章            第2楽章

 ☆推薦盤☆
 ・カラヤン/ベルリンフィル(80)(グラモフォン)          A 売れてます!
 ・小澤征爾/サイトウキネン・オーケストラ(92)(フィリップス)  ↑A
 ・バシュメト/モスクワ・ソロイスツ(90)(RCA)         A
 ・デイヴィス/バイエルン放送交響楽団(86)(フィリップス)     A

   一番評判がいいのはカラヤン盤である。やはりベルリンフィルという最高性能をもったオーケ
      ストラの魅力によるところが大きいのだろう。カラヤン盤のやや力みのある表現を好まない方
   には、小澤盤がお薦め。小澤は芝居気は皆無。音楽は常に格調高く進められるため、純粋に楽
   譜通りの気品のある「弦セレ」を堪能させてくれる。オーソドックスさでは一番だ。
   総合的にはB評価だが、カラヤン盤よりオーソドックスだと思われるのでA評価とした。
   バシュメト盤は、ベルリンフィルやサイトウキネンのような大オケでなく、もっと小編成のア
   ンサンブルを聴きたい方にはもってこいだ。評判はカラヤン盤の次に高い。第1楽章冒頭のテ
   ーマの歌い方は小編成ならではで、哀感がたっぷりこもっている。弱音部のデリカシーも絶品
   で、私個人としてはこれを第一に薦めたい。ただ、大オケと違い、第2楽章のワルツが今一つ
   堪能できなかったり、即興性が強いので好みが分かれるところ。
   デイヴィス盤はB評価に近いA評価で、演奏自体もオーソドックス。しかし他の3枚と違うの
   は、何と言っても1000円というお値段の安さ。カップリングにはドヴォルザークの弦楽セ
   レナーデも入っているので、気軽にこの曲を聴きたい方には一番にオススメ。



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