☆シューマン |
作品NO.186 交響曲第3番「ライン」 ★★★ 2017年2月最新更新 |
シューマンといえば何と言ってもピアノが関係した曲を主とした作曲家ですが、交響曲も4曲作曲して
いて、中でもこの第3番「ライン」が最も有名です。
「ライン」という副題はシューマンがつけたものではないのですが、ライン川沿岸を散歩することを大
変好んでいたといわれますし、音楽もライン川と関係が深いことから名づけられたようです。
交響曲ながら、5楽章からなります。シューマンがライン地方に転居した矢先だったこともあって、ラ
イン地方の明るさや、晴れ晴れとした気分が音楽に表れている作品です。
番号では「第3番」ですが、作曲順では4つの交響曲のうち最後に作曲されたものです。
第1楽章
☆推薦盤☆
◎クーベリック/バイエルン放送交響楽団(79)(SONY) S
S○○パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(09)(RCA) S
H▲バーンスタイン/ウィーン・フィル(84)(グラモフォン) A
「おそらく、21世紀に堂々とトップに躍り出る名演奏が出現するのでしょう。」と前回の更
新時に書きましたが、その通り、ヤルヴィ盤が登場しました。
ですがハイブリッドSACDということもあり、お値段がお高いのが欠点です。ですのでお薦
め度◎は以前から定評のあるクーベリック盤のままにしました。
バーンスタイン盤はお薦め度▲としました。これもややお高いです。
<更新のポイント> ヤルヴィ盤を追加し、カラヤン盤を外しました。
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☆ショスタコーヴィチ |
作品NO.190 交響曲第5番 ★★★★ 2017年2月最新更新 |
ショスタコーヴィチという作曲家は20世紀生まれのロシアの作曲家で、1975年に亡くなりました
ので、完全に現代の作曲家です。作風は、とにかく暗いです。暗いという意味ではチャイコフスキーや
ブラームスもその類ではありますが、この両者は暗いながらも旋律が甘美ですし、かなり有名な作品が
ありますので大衆受けする要素があります。その点、ショスタコーヴィチ、略してショスタコは、大衆
受けする要素があまりないのが特徴です。
こんな風に書きますと、「そんな曲聴きたくもない」という方が続出しそうですが、厭世的であったり、
現実逃避であったりと、ショスタコなりの美学を追究していますので、共感する方にとっては芸術性は
非常に高いです。
そんなショスタコの作品の中で唯一といっていいくらい大衆受けする要素をもっているのが、この交響
曲第5番です。
この作品はベートーヴェンの「運命」のように、運命と戦い、そして勝利する、という前向きな内容を
もっています。通称「ショスタ5」または「タコ5」で、「革命」という副題がつくこともあります。
なお、この交響曲は、あまりに暗い曲ばかりを書くショスタコに対して、当時のソビエト当局から指示
があったゆえに作ったのだというエピソードもあります。
第4楽章(ムラヴィンスキー指揮)
☆推薦盤☆
B2◎バーンスタイン/ニューヨーク・フィル(79)(SONY) S
S○・バーンスタイン/ニューヨーク・フィル(79)(SONY) S
H▲ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(73)(アルトゥス) S
○ハイティンク/ロイヤル・コンセルト・ヘボウ(81)(デッカ) S
△ゲルギエフ/キーロフ劇場管弦楽団(02)(デッカ) A
☆△バーンスタイン/ニューヨーク・フィル(59)(SONY) B
☆△バーンスタイン/ニューヨーク・フィル(59)(SONY) B
以前はバーンスタインの新盤が断然の評価を得ていたのですが、現在はムラヴィンスキー盤と
ハイティンク盤も肩を並べています。演奏自体はムラヴィンスキー盤を推したいのですが、お
薦め度◎は今までの実績も考慮してバーンスタインの新盤としました。雄弁さ、恰幅のよさ、
緊張感のあるリズムが曲と合っていて、第3楽章などはマーラーを得意としていることと低通
している気がします。2番目のハイブリッドSACDはお好みでどうぞ。
ムラヴィンスキー盤は1973年の日本でのライヴ録音ですのでお気をつけ下さい。
同じ1973年のスタジオ録音のCDも存在するようです。
ムラヴィンスキーにしては貴重な、音質のいいCDです。と言いますのは、ムラヴィンスキー
は終始旧ソ連にとどまっていましたので、ほとんどの録音がメロディアという、旧ソ連国営の
レーベルによるもので、録音状態が悪かったり、ステレオ時代なのにモノーラル録音であった
りするのです。わずかにグラモフォンや、このCDのようにALTUS(アルトゥス)から発
売されているものもあるのですが、アルトゥスのCDは非常にお高いので、お薦め度は▲とし
ました。演奏はムラヴィンスキーらしい、キビキビとしたリズムとただならぬ緊張感が特徴で
す。音源は違いますが、ぜひ上のYOUTUBEへのリンクからお聴き下さい、
ちなみに、ムラヴィンスキーには「お国もの」で、この作品の初演者でもあります。
ハイティンク盤は、バーンスタイン盤や、ムラヴィンスキー盤に「誇張」を感じる方向けかと
思われます。全体的にバランスがよく、力みがあまりありません。お値段も魅力ですので、こ
のCDをお薦め度○としました。
ゲルギエフ盤が発売された当時は、「お国もの」ですし、将来性に期待しましたが、上記3枚
に比べると評価は劣ります。現在では△が妥当でしょう。
最後のバーンスタインの旧盤ですが、終演後、会場で聴いていた作曲者のショスタコーヴィチ
が絶賛したというエピソードのあるライヴ録音です。現在では☆の歴史的名盤といった感じで
すが、お安い期間生産限定盤も挙げておきましたので、ぜひ聴いて頂きたいです。
<更新のポイント> ムラヴィンスキーの新盤を外しました。
作品NO.191 交響曲第7番「レニングラード」 ★★★★ 2017年2月最新更新 |
ショスタコーヴィチの交響曲の中でポピュラーなのは何といっても「第5番」ですが、ショスタコファ
ンの方々の中では、最高傑作の一つに挙げられる作品です。ショスタコーヴィチの交響曲の中では演奏
時間が最も長いです。
ショスタコーヴィチは旧ソビエトの作曲家ですが、何とナチス(ドイツ)との壮絶なレニングラード
(ソビエトの都市)攻防戦のさなかに書かれたという作品です。その時、ショスタコ自身もレニングラ
ードにいて、敵軍の監視などに携わっていました。
テーマは、平和を破壊するファシズム(ナチス)との戦いです。
第1楽章は侵略者の進軍を描いたものです。中間楽章は美しい、平和を希求する思いを描いたもので、
終楽章では勝利の凱歌となります。
第1楽章
☆推薦盤☆
◎バーンスタイン/シカゴ交響楽団(88)(グラモフォン) S
○ゲルギエフ/キーロフ劇場管弦楽団(01)(デッカ) S
・コンドラシン/モスクワフィルハーモニー管弦楽団(75)(メロディア) A
バーンスタインは20世紀を代表する大指揮者で、レパートリーも広いですが、ワルターと並
ぶ、マーラー指揮者としても知られています。バーンスタインはショスタコーヴィチの作品も
得意としています。マーラーとショスタコーヴィチの作品に共通する要素としては、「暗さ」
「現世肯定」ではないでしょうか。どこかしら低通している気がします。
バーンスタインという指揮者は感情むき出しのタイプの指揮者で、マーラーやショスタコーヴ
ィチの作品は滅法得意としていますが、逆にブルックナーのような人間感情とは関係のない音
楽とは相性が悪いです。
この作品、交響曲第7番においても、人間感情をむき出しにしたスタイルの演奏は素晴らしい
です。この作品を作曲者と共に、そして指揮者と共に勝利の凱歌へと向かわん、という方には、
最高の演奏ではないでしょうか。しかも、88年録音という、バーンスタインの最晩年のステ
レオ録音という音質の良さもあるCDです。
いかんせん、第9番とのカップリングで2枚組ですので少々お高いのが欠点ですが、S評価の
第9番とのカップリングを考えればお得です。
ゲルギエフ盤も非常に評価が高く、演奏だけをとれば、将来はこの作品のベスト盤となりうる
可能性も十分あります。しかし、第7番だけですので、やはりCDとしてはバーンスタイン盤
の方をお薦めします。
以上2枚で十分かと思われますが、二人とも「燃焼系」の指揮者なだけに、コンドラシン盤も
挙げておきました。ところが現在は国内盤、輸入盤共に廃盤中です。
<更新のポイント> コンドラシン盤を追加し、ハイティンク盤を外しました。
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☆チャイコフスキー |
作品NO.211 交響曲第4番 ★★★ 2017年2月最新更新 |
チャイコフスキーは全部で6つの交響曲を書きましたが、コンサートで演奏されたり、CD化されるの
は、ほとんど後期の第4番、第5番、第6番の3つで、その中でも第6番「悲愴」が一番有名です。
この第4番は「悲愴」のようにあまりに深刻な暗さはなく、特に第4楽章などは演奏効果に富んでいま
すので、初心者の方でも聴きやすいのではないでしょうか。
チャイコフスキーは「チャイコ」と呼ばれますので、この作品の通称は「チャイ4」です。
作曲中に結婚、破局、自殺未遂が重なったこともあってか、運命的なものとの対立と抗争という「悲愴」
までの交響曲のテーマはこの作品から始まりました。チャイコフスキー自身の説明によりますと、第1
楽章の序奏部の動機が全体の中核をなし、幸福と平和への妨害を表す運命なのだそうです。
第1楽章 第4楽章(チョン・ミュンフン指揮)
☆推薦盤☆
◎ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(60)(グラモフォン) S 超お薦め!
○カラヤン/ベルリン・フィル(71)(ワーナー) S
▲ゲルギエフ/ウィーン・フィル(02)(デッカ) A
第4番のCDはムラヴィンスキー盤が他を圧倒、断然の評価を受けていて、これだけあればい
いくらいでしたが、近年カラヤンの71年盤が肩を並べてきました。
ムラヴィンスキー独特の個性的な楽譜の読み方で、クレッシェンドを付け加えるなど、この作
品を更に演奏効果に富むように演奏しています。特に第4楽章では猛スピードの冒頭から始ま
り、速いテンポで一気にフィナーレへと向かっていくあたり、高揚感と緊張感は抜群です。
この2枚組は、いずれも評価の高い第5番、第6番とカップリングされている大変有名なCD
です。
カラヤンは6回もこの作品を録音していますが、その中では71年の録音が評価が高いです。
スタジオ録音ですが、ライヴに近い迫力と緊張感がみなぎっている演奏と言われています。
ゲルギエフ盤は、かなりの速さでかけぬける後半2楽章は爽快の一言です。燃焼系のゲルギエ
フだけに熱気は凄まじいのですが、決してうわべだけに終わらないところが長所です。
<更新のポイント> カラヤン盤を84年盤から71年盤に入れ替えました。
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作品NO.212 交響曲第5番 ★★★ 2017年2月最新更新 |
第5番は第6番「悲愴」ほど深刻な音楽ではないですので、チャイコフスキーの甘美な旋律が楽しめる
作品となっています。第3楽章はワルツです。交響曲にワルツを採り入れたのは、いかにもバレエ作曲
家のチャイコフスキーらしいです。第4番と、有名な「悲愴」に挟まれて地味なイメージのある作品で
すが、チャイコフスキーの魅力がつまった逸品で、CDの数も多いです。通称は「チャイ5」です。
第4番同様にやはり運命がテーマで、第1楽章冒頭のクラリネットによる旋律が「運命のモチーフ」と
なっています。
第1楽章 第3楽章
☆推薦盤☆
○カラヤン/ウィーン・フィル(84)(グラモフォン) S
▲ゲルギエフ/ウィーン・フィル(98)(デッカ) S
◎ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(60)(グラモフォン) A 超お薦め!
H・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(60)(グラモフォン) A
△カラヤン/ベルリン・フィル(71)(ワーナー) A
チャイ5のCDはイマ一つこれといったものがない状況です。
カラヤンの84年盤はウィーン・フィルとの演奏です。ベルリン・フィルではありませんので
ご注意下さい。相対的に、ゲルギエフ盤とは頭一つ抜けた評価を得ていてS評価です。
共にカップリングはないですし、お値段も同じくらいですのでお好みの問題ということになり
ますが、私はこちらをお薦め度○としました。
2番目のゲルギエフ盤は、何とウィーン・フィルが乱れるほどの熱演です。特に第4楽章は説
得力抜群で一番の聴きどころとなっていますが、好みの問題でお薦め度は▲にしました。
ムラヴィンスキーの上のCDは、いずれも評価の高い第4番、第6番とカップリングされてい
る大変有名なCDです。
ダイナミズム、メリハリの良さからして初心者の方にも分かりやすでしょうし、ここでご紹介
しているCDでは唯一カップリングがありますので、この2枚組をお薦め度◎としました。
下のCDは、第5番だけ収録のSHM−CDです。
最後に、カラヤンの71年盤もお薦め度△として追加しておきました。
<更新のポイント> カラヤンの71年盤を追加しました。
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作品NO.213 交響曲第6番「悲愴」 ★★★★ 2017年2月最新更新 |
チャイコフスキーの交響曲といったら、当然、この「悲愴」が一番有名です。この作品はチャイコフス
キーの最高傑作であるとも言えますし、更には、あらゆる交響曲の中でもとりわけ有名な作品の一つと
も言えます。
作曲者自身が「悲愴」と名づけ(弟のモデストが提案したとされています)、初演の八日後に亡くなっ
たため(自殺説もありますが、真相は謎のままです)、特に第4楽章は大変暗い曲で、絶望の闇に消え
ていきます。チャイコフスキーの「辞世の句」とも言える作品となりました。
チャイコフスキーの人生や死に関しては、他のサイトなどをご参照下さい。
暗いながらも、所々に、センチメンタルで甘美な旋律が散りばめられていて、さすがはクラシック作曲
家屈指のメロディーメイカー、チャイコフスキーの面目躍如たる作品です。
通称で「チャイ6」と呼ばれることもありますが、そのまま「悲愴」と呼ばれることの方が多いです。
全楽章(何とカラヤン&ウィーン・フィル) 第2楽章より
☆推薦盤☆
○カラヤン/ウィーン・フィル(84)(グラモフォン) S
◎ムラヴィンスキー/レニングラードフィル(60)(グラモフォン) A 超お薦め!
H▲フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団(59)(グラモフォン) A
△カラヤン/ベルリン・フィル(71)(グラモフォン) A
△ゲルギエフ/ウィーン・フィル(04)(デッカ) A
☆メンゲルベルク/アムステルダム・コンセルトヘボウ(37)(OPUS蔵) B
カラヤンは何と7回もこの作品を録音していますが、ウィーン・フィルとの84年盤が最も評
価が高いです。
いかにもカラヤンらしい旋律の歌わせ方、それと対照的な強音部の厚み。ウィーン・フィルが
良くここまで鳴らしきったと思える演奏です。もちろん、甘美なメロディーの歌いはカラヤン
とウィーン・フィルゆえに成し遂げられたもので、特筆に価するでしょう。ベルリン・フィル
との演奏ではありませんのでご注意下さい。上のYOUTUBEへのリンクはおそらく同じ音源です。
ムラヴィンスキー盤は、芸風通り、速いテンポの中に微妙な強弱や香りが漂っていて、何か、
作曲者の魂がさまよっているような幻想的な印象さえ受ける演奏です。「悲愴」にこめられた
独特な愁いを味わうことができるでしょう。
ムラヴィンスキーお得意の、甘さを排した厳しさ、冷酷さが透徹感のある音色に存分に込めら
れていまして、チャイコフスキーの最期を演出します。
この2枚組は、いずれも評価の高い第4番、第5番とカップリングされている大変有名なCD
です。カップリングも考慮してお薦め度◎としました。
3番目のフリッチャイ盤は、59年という古い録音で、かつてから定評があります。
やや遅めのテンポから表情豊かに、そして時にはダイナミックに音楽を奏でます。59年の録
音ですが、音質は古さを感じさせません。「悲愴」を愛する方にはぜひ聴いて頂きたいという
意見が多いです。
カラヤンの71年盤とゲルギエフ盤もお好みでどうぞ。
最後の1枚は、上級者の方向けの歴史的名盤です。チャイコフスキー自身、メンゲルベルクの
演奏に感動したほどで、「悲愴」を聴き込んだ方ほど驚くことうけあいです。メンゲルベルク
はロマンティシズムのかたまりのような指揮者で、いかにも19世紀的な濃厚な演奏は、カラ
ヤンなどの演奏に慣れた方には異質に聴こえるかもしれませんが、「悲愴」の甘美なメロディ
ーを陶酔的なまでに歌わせる、メンゲルベルクの最高傑作の1つです。
<更新のポイント> カラヤンの71年盤とゲルギエフ盤を追加しました。
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