紹介指揮者一覧





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1.朝比奈隆  1908〜2001  B  日本

日本人指揮者で有名なのは何と言っても小澤征爾ですが、「隠れた実力者」扱いされてきた名  指揮者が一人います。朝比奈隆です。朝比奈はカラヤンと同い年ながら2001年まで生き、  21世紀になった時には指揮者界の長老というべき存在でした。演奏活動は、「手兵」大阪フ  ィルの海外公演や海外オケでの客演指揮もありましたが、ほとんどは国内にとどまり、同オケ  の常任指揮者として活動し、小澤のような華やかな世界からは遠いところにいました。ですが、  この日本の一指揮者に過ぎない朝比奈を某評論家が絶賛し、固定ファンが徐々に増え、ファン  の間では朝比奈のブルックナーは生年も没年もほぼ同じヴァントと並び称されました。ヴァン  トといえばクラシック史上世界一のブルックナー指揮者とも言える存在で、そのヴァントと並  び称されたのです。  また、ベートーヴェン「英雄」「運命」なども非常に高い評価を受けました。  これはあくまで、「固定ファンの中」ではありましたが、90年代に入ってからの最晩年は、  国内を通して人気がありました。東京公演などでのお得意なレパートリーのコンサートでは、  小澤を凌ぐ人気もあったと言われているほどでした。90歳を超えても指揮台に立ち続けまし  たが、とても90歳を超えていたとは思えない、背筋の伸びた立派な姿をご記憶の方も多いの  ではないでしょうか。  朝比奈の芸風は、徹底した職人仕事で、クレンペラーに近いです。各パートのバランスを整え  たり、表情に味付けをしたりということはせず、ただひたすら楽員全員がしっかりと細部まで  弾くことに専念させました。楽器相互のバランスを絶妙なまでに整える小澤とは正反対ともい  える芸風でした。よって、ステージではどのパートをとってもずっしりと、しっかりとしたハ  ーモニーが響きます。得意なレパートリーといったら、ブルックナー、ベートーヴェンのスケ  ールの大きな交響曲であるという点も、芸風に合っていたのでしょう。  「愚直」という言葉を好み、聴衆にウケそうな演出をするという芝居気は0といってもいいタ  イプの指揮者でした。  クレンペラーやベームなどの音楽が好きな方は是非聴いてみてはいかがでしょうか。  どういうわけか、没後、朝比奈が遺した名盤は次々と廃盤になってしまっていまして、新しく  朝比奈の音楽を知ろうという方には苦々しい時期が続いています。  今後、朝比奈の音楽はどう評価されていくのでしょうか。
ブラームス「交響曲第4番」第1楽章
 ☆推薦盤☆   特になし   <テンポかなり遅><重厚><客観主義>
2.アシュケナージ  1937〜  ASHKENAZY  S  ロシア

アシュケナージは現役の音楽家の中でも屈指の知名度を誇っています。  本業はピアニストだったのですが、高齢のためか、現在では指揮者として活動しています。こ  のまま指揮者が本業となってしまうのかもしれません。  プレヴィンの後を受け、2007年8月までNHK交響楽団の音楽監督を務め、桂冠指揮者の  名を与えられるほど、日本との結びつきが強いです。N響の指揮をしている姿を目にしたこと  のある方は多いのではないでしょうか。ですが、指揮者としては全くといっていいほど名盤を  残してはおらず、実力よりも名前の方がはるかに先行している感があります。  ピアニストとしては、レパートリーが凄まじく多く、バッハからショスタコーヴィチまでほと  んどの作曲家の作品を網羅し、膨大な録音、多くの名盤を残していますし、ショパンにおいて  はほぼすべての作品を録音しています。  ところが、これぞベスト盤と言えるほどの決定的な名盤はないのが特徴でもあります。  と言いますのも、確かに音色は美しく、テクニックもあるのですが、音楽解釈については特に  個性や凄みがある訳ではなく、ハメを外さない優等生で、悪く言えば、無難と平凡が紙一重と  いう印象があるからでしょう。  ポリーニアルゲリッチなど現役の一線級のピアニストが弾かないマイナーな作品まで録音が  あるため、世界的なアシュケナージの演奏を聴けることはありがたいのですが、同じ土俵で戦  った場合今一歩歯が立たないのは、器用貧乏ということなのでしょうか。もちろん、いい意味  ではハズレが少ないピアニストです。  今後ピアニストとしての録音はあるのでしょうか。そして、今後どのような道を進むのでしょ  うか。いずれにしましても、現在、クラシック音楽界の重鎮とも言える存在です。
モーツァルト「交響曲第40番」第3楽章(指揮者として)
ピアニスト編のご紹介へ
 ☆推薦盤☆  <指揮者>   特になし          <ピアニスト>    ・ショパン 練習曲集/(71、72、81、82)(デッカ)           A ・プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番/プレヴィン(75)(デッカ)       A  ・ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番/ハイティンク(84)(デッカ)       A  ・ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番/ハイティンク(85)(デッカ)       A
3.アバド  1933〜2014  ABBADO  S  イタリア

 アバドはフルトヴェングラーカラヤンに次ぐ、世界最高のオーケストラ、ベルリン・フィル  ハーモニーの第5代目の常任指揮者でした。  芸風は「音符主義」まではいきませんが、あまり個性は無く、音楽性で勝負するタイプでした。  従って、ドイツのベートーヴェンなどはどうしてもドラマ性に欠けてしまうのですが、他の作  曲家には結構名盤を残しています。ただの無個性となると平凡なだけですが、客観主義的なが  ら、イタリア出身ならではのカンタービレを効かせた響きの美しさが非常に心地よく、推薦盤  に挙げた演奏は皆、アバドの卓越した音楽性によって魅力が増大しています。  その点や、無難な演奏である点を考慮すると、初心者の方にはもってこいの指揮者でしょう。  皮肉にも、ベルリン・フィルと組んでからは、マーラー以外の大曲にこれといった名演を多く  残すことはできませんでした。簡単に言いますと、不評でした。ですが、本来は、マーラー  (オーストリア出身)やモーツァルト(オーストリア出身)を得意なレパートリーとするイタ  リア系の指揮者でして、やはり精神性重視のドイツ音楽には向かなかったのではないでしょう  か。下の推薦盤をご覧になっても、これだけ多くの名盤を残している名指揮者なのは疑いよう  がないですし、ドイツものに相性が悪いだけで過小評価するのはおかしいと私には思われます。  管弦楽曲、オペラ曲にも名盤を残している万能さが素晴らしいです。  ベルリン・フィルの常任指揮者を退いてからは、一時期、高齢による体調不良で指揮台に立つ  こと自体がありませんでしたが、見事に復帰し、自ら若手中心のオケを結成し、若い音楽家を  育てるなどの精力的な活動をしていました。  21世紀からの演奏は、かつてのカンタービレを効かせたものからピリオド・アプローチによ  るものへと変化しました。現代楽器での演奏を代表する指揮者が、古楽器演奏に近いスタイル  を採ることになったのですが、これがアバドの行き着いた音楽観なのかもしれません。  推薦盤に記載がある「モーツァルト管弦楽団」はアバドが結成した若手中心のオケで、録音か  らまもなく高評価を得ています。ベルリン・フィルの常任指揮者になる前とはガラっと芸風を  変えてしまいましたが、若々しさも見え隠れしている演奏で、貴重な晩年の録音となりました。  
1998年10月、ピリスと共にタワーレコード渋谷店にてサイン会
ブラームス「ハンガリー舞曲」第5番(病気前ベルリン・フィルと)
 ☆推薦盤☆  ・ヴェルディ レクイエム/ミラノ・スカラ座管弦楽団(79、80)(グラモフォン) S  ・シューベルト 交響曲第9番/モーツァルト管弦楽団(11)(グラモフォン)    A  ・ブラームス 交響曲第2番/ベルリン・フィル(88)(グラモフォン)       S  ・ブラームス ハンガリー舞曲集/ウィーン・フィル(82)(グラモフォン)     S  ・プロコフィエフ ロメオとジュリエット/ベルリン・フィル(96)(グラモフォン) S  ・ベートーヴェン 交響曲第1番/ベルリン・フィル(00)(グラモフォン)     B  ・ベートーヴェン 交響曲第2番/ベルリン・フィル(00)(グラモフォン)     A  ・ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」/ベルリン・フィル(00)(グラモフォン) A  ・ベートーヴェン 交響曲第8番/ベルリン・フィル(00)(グラモフォン)     A  ・マーラー 交響曲第1番「巨人」/ベルリン・フィル(89)(グラモフォン)     S  ・マーラー 交響曲第2番「復活」/ルツェルン祝祭管弦楽団(03)(グラモフォン) A  ・マーラー 交響曲第4番/ベルリン・フィル(05)(グラモフォン)        S  ・マーラー 交響曲第5番/ベルリン・フィル(93)(グラモフォン)        A  ・マーラー 交響曲第9番/ベルリン・フィル(93)(グラモフォン)        S  ・ムソルグスキー 展覧会の絵/ベルリン・フィル(93)(グラモフォン)      S  ・メンデルスゾーン 交響曲第3番/ロンドン交響楽団(84)(グラモフォン)    A  ・メンデルスゾーン 交響曲第4番/ベルリン・フィル(95)(SONY)      A  ・メンデルスゾーン 真夏の夜の夢/ベルリン・フィル(95)(SONY)      A  ・モーツァルト 交響曲第35番/モーツァルト管弦楽団(06)(アルヒーフ)    A  ・モーツァルト 交響曲第38番/モーツァルト管弦楽団(06)(アルヒーフ)    A  ・モーツァルト 「フィガロの結婚」/ウィーン・フィル(94)(グラモフォン)   S  ・モーツァルト 「魔笛」/マーラー室内管弦楽団(05)(グラモフォン)      S  ・ロッシーニ 「セビリアの理髪師」/ロンドン交響楽団(71)(グラモフォン)  SS  *メンデルスゾーンの「真夏の世の夢」と「交響曲第4番」は同じCDです   <柔軟><客観主義><万能型><ピリオド・アプローチ><マーラー○> 
4.アーノンクール  1929〜2016  HARNONCOULT  A  オーストリア

 20世紀後半には、しばしば「現代の問題児」と指摘されてきたほどの奇抜な演奏を行ってき  たアーノンクール。いい意味で言えば、没個性的な指揮者が多い時代に、貴重な個性派、いえ、  超個性派とも言える存在でした。  ウィーン・フィルとの共演も多かったのですが、主にウィーン・コンツェントゥス・ムジクス  を率いて活動していました。  アーノンクールは非常に革新的な考えをもった指揮者で、斬新な演奏を常に心がけていた主観  主義者でした。  それがツボにはまった時は強烈な印象を与える名演を残したのですが、不発に終わったときは  批判の的となってしまいました。「無難」(=「平凡な演奏」)という言葉など、自らかなぐ  り捨てていたのですが、そこまで割り切っているのは立派なことだったと私は思うのです。  無難な演奏ばかりを繰り返していては、新鮮な感動を受ける演奏が生まれることは難しいこと  だと思うからです。  現在では当たり前になりましたが、20世紀後半に、古楽器による復古的演奏が行われ始め、  古楽器演奏だから許されたのか、非常に斬新な演奏をする指揮者や奏者が頭角を現してきまし  た。アーノンクールもその先駆者的存在の1人です。  古楽器の演奏家について詳しくはこちらをご覧下さい。  「こんな演奏の仕方があったのか」という、クラシック演奏の一大変革期をもたらしました。  とは言え、他の古楽器指揮者とは違い、現代楽器の本家、ウィーン・フィルなどでも指揮をし  た点は非常に面白い点でもあります。  ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスという楽団を指揮したときは古楽器、ウィーン・フィ  ルや、アムステルダム・コンセルト・ヘボウ(現、ロイヤル・コンセルト・ヘボウ)、ヨーロ  ッパ室内管弦楽団など、現代楽器の有名なオケを指揮したときは現代楽器での演奏です。  アーノンクールは古楽器と現代楽器、二刀流の代表的な指揮者でした。  そして、後者のような現代楽器の有名なオケとの演奏でも、古楽器的な、いわゆる「ピリオド  ・アプローチ」の演奏をするのが一貫したスタイルでした。  かなり晩年になっても有名な作品で評価の高い録音を残したのは素晴らしいことだと思います。
モーツァルト「交響曲第40番」
 ☆推薦盤☆  ・ヴィヴァルディ 「四季」/WCM(77)(テルデック)             A  ・シューベルト 交響曲第5番/アムステルダムコンセルトヘボウ(92)(テルデック)S  ・ハイドン 交響曲第100番/ロイヤル・コンセルトヘボウ(86)(テルデック)  A  ・バッハ 管弦楽組曲/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(83)(テルデック) A  ・バッハ ヨハネ受難曲/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(93)(テルデック)A  ・バッハ マタイ受難曲/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(00)(テルデック)A  ・バッハ カンタータ第147番など/WCMなど(81)(テルデック)       S  ・ブルックナー 交響曲第5番/ウィーン・フィル(02)(RCA)         A ・ブルックナー 交響曲第9番/ウィーン・フィル(02)(RCA)         A  ・ヘンデル メサイア/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(04)(RCA)   S  ・モーツァルト 交響曲第25番/WCM(99)(ハルモニア・ムンディ)      S  ・モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」/WCM(12)(SONY)      S  ・モーツァルト 交響曲第38番/ヨーロッパ室内管弦楽団(93)(テルデック)   A  ・モーツァルト 交響曲第40番/WCM(12)(SONY)            S  ・モーツァルト 交響曲第41番「ジュピター」/WCM(12)(SONY)     S  *WCMはウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの略です。      <主観主義><安定性×><古楽器><ピリオド・アプローチ><モーツァルト○>
5.ヴァント  1912〜2002  WAND  B(ブルックナーファンはS)  ドイツ

1912年に生まれながらも、21世紀まで生きたヴァントは、指揮者の歴史上、類をみない  ほどの大器晩成型の指揮者でした。  何しろ、手兵、北ドイツ放送響との演奏が高い評価を受け始め、世界の表舞台に出たのが齢7  0代〜80代の時で、その後ベルリン・フィルとのブルックナーの演奏が絶賛を浴びたのが9  0歳近くでした。この時点でクラシックの歴史上最高のブルックナー指揮者の名を欲しいまま  にし、一連のベルリン・フィルとのブルックナーの演奏が発売直後に「伝説化」されました。  同じ頃、ベートーヴェンブラームスなどのドイツものも高評価され、超一流の仲間入りをし  た、と思っていたら、数年のうちに亡くなってしまいました。  実際に世界の超一流の評価をされたのは10年ほどなのですが、その間に録音したCDは、ブ  ルックナーを含め、ほぼすべてが第1級の評価を得ています。ドイツのミュンヘン・フィルや  北ドイツ放送響との最晩年のブルックナーの録音も、RCAレーベル以外から発売されていま  すので、ご興味のある方はどうぞ。  90歳近くになって、ようやく自分の打ちこんだものが評価された世界。あえて挙げれば、ヨ  ッフムと同様、ひたすらドイツで、ドイツ音楽の研究に年月を費やしたタイプの指揮者でした。  こういう超晩成の音楽家が育つ土壌がドイツにはあるのかもしれません。  ヴァントは主にブルックナー指揮者ですが、ひたすらスコア(総譜)を読み込んで、緻密な音  楽を創り出します。決してこれといった芝居をうつタイプではありませんが、その適切なテン  ポ設定、音の強弱などを、徹底したリハーサルによってステージにもってくるタイプです。こ  れも、長年のスコアの読み込みの産物なのでしょう。ブルックナーの音楽を聴くにあたっては、  聴き手が、音楽を自然な形で呼吸し、受け容れることがとても重要な要素となります。ヴァン  トの演奏にはその普遍性があります。  いわく「お手本となるものが無かったために、ひたすらスコアを研究するしかなかった」との  ことです。ドイツの精神主義の音楽を、自らの眼で解釈し、音楽化するには、途方もない労力  が必要となったに違いありません。同じタイプのヨッフムもブルックナーに名演を残しました  が、ヴァントはそれ以上に、考えに考えた末の成果のブルックナーの音楽表現と、ベルリン・  フィルという最高の名器を得て、クラシック史上最高のブルックナーの録音を遺しました。  ベルリン・フィルとのブルックナー録音は、ほぼすべてが各作品の最高の評価を得ています。  とはいえ、誰もが100%絶賛、という訳ではなく、ヴァントの緻密な演奏を息苦しく感じる  方も中にはいらっしゃるでしょうが、好みに合うかを試す意味でも、ブルックナーを鑑賞する  上で、ヴァントの演奏を聴かずにはいられないでしょう。  また、ヴァントのブルックナーがいかに素晴らしいとは言え、さすがにブルックナーだけでは  対象がごく一部の上級者の方に限られてしまいます。  ブルックナーだけではなく、ベートーヴェン、ブラームス、モーツァルトシューベルトでも  評価の高い名盤がありますので、円熟の境地に達した演奏を堪能するのもいかがでしょうか。
ブラームス「交響曲第1番」第1楽章
 ☆推薦盤☆  ・シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレイト」/ベルリン・フィル(95)(RCA)S  ・ブラームス  交響曲第2番/北ドイツ放送響(96)(RCA)         A   ・ブラームス  交響曲第3番/北ドイツ放送響(95)(RCA)         A  ・ブルックナー 交響曲第4番/ベルリン・フィル(98)(RCA)       SS  ・ブルックナー 交響曲第5番/ベルリン・フィル(96)(RCA)       SS  ・ブルックナー 交響曲第7番/ベルリン・フィル(99)(RCA)       SS  ・ブルックナー 交響曲第8番/ベルリン・フィル(01)(RCA)     S↑SS  ・ブルックナー 交響曲第9番/ベルリン・フィル(98)(RCA)       SS  ・ベートーヴェン 交響曲第1番/北ドイツ放送響(97)(RCA)        A   <緻密><ドイツ音楽○><ブルックナー◎>
6.小澤征爾  1935〜  S  日本

日本で最も有名な指揮者、「OZAWA」。「世界的指揮者」とされていますが、どれほど世  界的に有名なのかと言いますと、本場のクラシック中級者くらいなら、まずOZAWAの名前  は知っているといったレベルです。つまり、マゼール、ムーティら、一時代を築いた、現役の  指揮者界の重鎮の一人です。なにせニューイヤー・コンサートを指揮した人物なのです。  ニューイヤー・コンサートの指揮台に日本人が立つこと自体、奇跡に近いことです。  指揮者はウィーン・フィルの団員の投票によって選ばれます。  そしてウィーン国立歌劇場の音楽監督にまで上りつめました。指揮者としてこれ以上の出世は  ないと言ってもいいくらいなのです。  ウィーン国立歌劇場はウィーン・フィルの本拠地で、国立歌劇場のオーケストラの中から、ウ  ィーン・フィルのメンバーが選ばれるという、世界最高の歌劇場です。  小澤は現代の「音符主義」を地でいっているような指揮者で、音楽に対する勘と耳のよさで勝  負するタイプです。よって、芝居気はなく、音楽は常に楽譜そのものに、無味無臭、没個性的  に進められます。各パートのバランスは最高に保たれ、気品があるさわやかな音楽を創ります。  あえて言えば、フルトヴェングラーともトスカニーニとも正反対のスタイルでしょうか。  80歳を過ぎたため、近年は指揮者としての活動が少なくなってしまいました。ウィーン国立  歌劇場の音楽監督の座も退きました。一時期はテレビで「咽頭ガン」であることを発表し、克  服したのですが、さすがに高齢なため、なかなか体調が思うようにいかないのでしょうか。  とは言え、日本ではそこそこ指揮台に上がっています。  これからは、日本での活動が中心となるのかもしれません。夏の恒例となっているセイジ・オ  ザワ松本フェスティバルは、長野県松本市を中心に毎年何日かにかけて開催されますので、ご  興味のある方はぜひどうぞ。  手兵であるサイトウ・キネン・オーケストラとは、桐朋学園出身の演奏家を中心に結成されて  いまして、常設の団体ではなく、夏のフェスティバルの時だけ松本に集合します。世界各地で  活躍している演奏家が多いのですので、個々の技術レベルは相当高く、世界の一流オケと比較  しても全くひけをとらないそうです。  なお、2016年に、サイトウ・キネン・オーケストラとの演奏で、ラヴェルの「こどもと魔  法」のCDが米「グラミー賞」を受賞しました。  CDはこちらからどうぞ  まだまだ頑張って欲しいです。
モーツァルト「ディヴェルティメントK136」第2楽章 (サイトウ・キネン・オーケストラと) ニューイヤー・コンサート’2002より
 ☆推薦盤☆  ・オルフ カルミナブラーナ/ベルリン・フィル(88)(デッカ)          A  ・チャイコフスキー 弦楽セレナーデ/サイトウ・キネンオーケストラ(92)(デッカ)A  ・マーラー 交響曲第2番「復活」/サイトウ・キネンオーケストラ(00)(SONY)B ・ニューイヤー・コンサート2002(02)(デッカ)               ?     <音符主義><気品><万能型> 
7.カラヤン  1908〜1989  KARAJAN  S  オーストリア
 
指揮者史上最も有名な指揮者で、「帝王」と呼ばれます。フルトヴェングラーの後を受けてベ  ルリン・フィルの第4代目の常任指揮者に就き、重要なポストを次々と手中にし、クラシック  音楽の全盛期をもたらせた最大の功労者です。どのくらい有名なのかは、クラシックを聴いた  ことがない方でも、カラヤンという名前は知っている程です。クラシックファンではない方々  にとっては、指揮者=カラヤンです。  カラヤンは恐ろしいほど幅広いレパートリーを誇り、膨大な数の録音を世に送り出しました。  ですが、カラヤンほど賛否が分かれる指揮者もいません。いえ、非難の多い指揮者もいないと  言えるかもしれません。  カラヤンはクラシック音楽の普及のため、サウンドとしての音楽を追及しました。哲学的な思  想などが壁となり、とっつきづらいと思われていたクラシック音楽を、何とか大衆に広めよう  としたため、かえって、本来のクラシック音楽のもつ芸術性に欠ける音楽となってしまいまし  た。従って、カラヤンの音楽は、磨きに磨いたベルリン・フィルの技術とあいまって、爽快で、  「かっこよく」、「耳に心地よい」音楽です。この芸風こそが、「罪」となってしまったので  す。詳しくは「指揮者の歴史」もご参考下さい。  とは言え、クラシック音楽の普及に大変な功績を残したのも事実です。レコードだけでなく、  コンサートの映像(ビデオ、LD)の普及にも尽力しました。CDが現在の収録時間にまで拡  大されたのは、「ベートーヴェンの『第九』が1枚のCDに収まるように」と依頼したためだ  という有名な話もあります。  今日ほどクラシックが普及しているのは、カラヤンの功績といっても全く過言ではなく、まし  てや西洋の音楽が遠い日本に普及したのも、カラヤンのおかげでしょう。全盛期、カラヤンと  いう指揮者、ベルリン・フィルというオーケストラ、グラモフォンというレコード会社が揃え  ば怖いものなしといった時代が続きました。クラシックファンでなくても、「カラヤンのレコ  ード」は持っていました。当時は、指揮者がカラヤンというだけでレコードが売れました。  クラシック初心者の方は、あまり深いことを考えずに、カラヤンのサウンドを重視した音楽か  ら入るのも、私は大いにお薦めしたいです。批判も多いですが、下記のように、相当名盤も多  いのは事実です。そして、あまり深いことを考えずに聴くことができます。  そして、クラシック音楽に慣れたら、他の指揮者の演奏を聴いてみると、きっとその方がクラ  シック音楽の芸術としての奥の深さに触れることができると思うのです。  得意なレパートリーは、交響曲では、チャイコフスキードヴォルザークブラームスです。  外面的だと思われる方もいらっしゃるでしょうが…。そしてR.シュトラウスにおいては断然  のトップ評価です。  あとは何と言ってもオペラ曲でしょう。強敵がいないオペラ曲においては、文句なしのSS評  価の名盤がズラリ揃っています。カラヤンともなれば、当時の第1級の歌手陣も揃っています  ので、かなり信頼度は高いです。  苦手な作曲家も挙げておきましょうか。まずはベートーヴェン。音楽に訴える力がありません。  モーツァルトシューベルトあたりもなぜか苦手のようです。他は、マーラーでしょうか。  カラヤンを評価するのは、音楽評論家ではなく、きっとあなたでしょう。
チャイコフスキー「交響曲第6番『悲愴』」第1楽章 ドヴォルザーク「交響曲第9番『新世界より』」第4楽章
 ☆推薦盤☆  ・ヴェルディ 「アイーダ」/ウィーン・フィル(79)(EMI)          S  ・ヴェルディ レクイエム/ベルリン・フィル(72)(グラモフォン)        S  ・チャイコフスキー 交響曲第4番/ベルリン・フィル(71)(ワーナー)      S  ・チャイコフスキー 交響曲第5番/ウィーン・フィル(84)(グラモフォン)    S  ・チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」/ウィーン・フィル(84)(グラモフォン)S  ・チャイコフスキー 弦楽セレナーデ/ベルリン・フィル(80)(グラモフォン)   S  ・ドヴォルザーク 交響曲第9番/ウィーン・フィル(85)(グラモフォン)     S  ・ビゼー 「カルメン」/ベルリン・フィル(82,83)(グラモフォン)     SS  ・フランク 交響曲/パリ管弦楽団(69)(ワーナー)               S  ・ブラームス 交響曲第1番/ベルリン・フィル(87)(グラモフォン)       A  ・ブラームス 交響曲第2番/ベルリン・フィル(86)(グラモフォン)       A  ・プッチーニ 「蝶々夫人」/ウィーン・フィル(74)(デッカ)         SS  ・プッチーニ 「ラ・ボエーム」/ベルリン・フィル(72)(デッカ)       SS  ・ホルスト 惑星/ベルリン・フィル(81)(グラモフォン)            S  ・リスト 前奏曲/ベルリン・フィル(67)(グラモフォン)            A  ・R.シュトラウス アルプス交響曲/ベルリン・フィル(80)(グラモフォン)  SS  ・R.シュトラウス「ツァラストゥトラはかく語りき」/ベルリンフィル(83)(G)SS  ・R.シュトラウス「英雄の生涯」/ベルリン・フィル(85)(グラモフォン)    S  ・R.シュトラウス 四つの最後の歌/ベルリン・フィル(73)(グラモフォン)   A  ・R.シュトラウス「ばらの騎士」/フィルハーモニア管弦楽団(56)(ワーナー) SS  ・ワーグナー 管弦楽曲集/ベルリン・フィル(74)(ワーナー)         SS  ・ワーグナー 「ニーベルングの指環」/ベルリン・フィル(66〜70)(Gフォン) A  ・ワーグナー「パルジファル」/ベルリン・フィル(79、80)(グラモフォン)   A   <客観主義><超万能型><気品><かなり柔軟><R.シュトラウス◎><オペラ◎> 
8.クナッパーツブッシュ  1888〜1965  KNAPPERTSBUSCH  B  ドイツ
 
ドイツにクナッパーツブッシュという、こ難しい名前の指揮者がいました。こんな表現をする  のも、同時期のフルトヴェングラーワルターらと比べて、いかにも地味な存在だったからで  す。特にどのオケの音楽監督であったというようなタイプの指揮者ではありません。  けれども、ウィーン・フィルやベルリン・フィルを振っていますし、バイロイトの音楽祭にも  常連として参加していましたので、当時の第一級の指揮者ではありました。  特に日本ではその傾向が顕著らしいですが、年々クナの音楽のとてつもなさが良く知られると  ころとなってきました。そして神格化するファンが多い指揮者です。  クナのように亜流で、個性が強いカリスマ指揮者のファンは、その指揮者の演奏ならば何でも  とりこになってしまうという意味で、「信者」という用語で呼ばれることがあります。  クナは名指揮者であると同時に迷指揮者といってもいいのですが、デフォルメ(楽譜を無視す  ること)の鬼でした。遊び心のかたまりのような指揮者で、演奏は、もちろん楽譜通りになど  演奏しませんし、演奏を途中で止めてしまったり、指揮中に背中をかいたりという人物でした  が、名演と迷演が紙一重のところがありまして、ツボにはまった時にはとてつもない音楽を聴  かせました。    かなり名前が知れた程度の指揮者でも及びがつかないほどの表現力をもっていました。  この、クナ独特のデフォルメこそがクナの芸風のいのちでありまして、他の誰にも真似できな  いという点では、個性を超えて、天才的な閃きを持っていたとも言えるでしょう。  テンポは概して遅いです。時には常識外に遅い時もありますが、それが巨大なスケールを生み  出し、宇宙的拡がりをみせます。そのため、巨人指揮者の異名をもっています。  クナの凄さは、音を聴いているだけでも解ります。他の指揮者からは聴き得ない、まさに地の  底から大爆発が起こったような音を出すことができるのは、クナ独特の世界です。  現在、クラシックの書籍においても、クナの演奏の評価は難しいです。一部で絶賛する評論家  もいれば、全く名指揮者とも思っていないような評論家もいます。我々クラシックファンにし  ても同様です。  クナの演奏はデフォルメされていて、楽譜通りの演奏ではありません。つまり、オーソドック  スではないため、他の演奏との比較が難しいということもあるのでしょう。  一般的には、クナの得意な作曲家はブルックナーワーグナーで、この2人の作曲家において  は別格といってもいいほどの名演を聴かせたとされています。  ですが、批判派の中では「ブルックナーとワーグナーしかない」との声もあり、多くの評論家  に高評価されている演奏はごく一部です。  クナの音楽は残念ながら初心者の方には解らないでしょう。ブルックナーとワーグナー自体が  初心者の方向けではないこともあるのですが、本当にお好みの問題です。  ブルックナーやワーグナー以外でも、一度は聴いてみる価値のある指揮者だと私は思います。
ベートーヴェン「交響曲第3番『英雄』」第4楽章途中より  ワーグナー「ワルキューレの騎行」
   ☆推薦盤☆   ・ブルックナー 交響曲第8番/ミュンヘン・フィル(63)(ウェストミンスター)B↑A  ・ワーグナー 「パルジファル」/バイロイト祝祭管弦楽団(62)(デッカ)    SS     <テンポかなり遅><スケール巨大><デフォルメ> 
9.カルロス・クライバー  1930〜2004  CARLOS KLEIBER  S  ドイツ

父に名指揮者エーリッヒ・クライバー(録音も残っています)をもったサラブレッドで20世  紀最後のカリスマ指揮者です。90年代、引退を発表したわけではないのに、全く指揮台に立  たない時期が続きました。ウィーン・フィルの定期演奏会で、「指揮者未定」となっている公  演が、「もしかするとカルロスなのではないか」という風評が先走り、真っ先にチケットが売  れたというエピソードもあります。その間、何をしていたのかは本場のファンでも良く分から  なかったので、日本人の我々は余計に分かりませんでした。  クライバーは特定のポストに就いていたわけでもありませんでしたので、尚更その動向は秘密  のヴェールに包まれていました。いつかどこかで指揮台に立ってくれるのだろうと思っていま  した。ところが、2004年の突然の訃報に世界中が落胆しました。正直、病気だったことも  知らなかったのです。現在の指揮者界の重鎮たちと同じ世代であるのに、長らく表舞台から姿  を消していた理由がやっと分かりました。日本では、朝比奈ヴァントに続いたので、ショッ  クも大きかったのです。  現役の時のクライバーは天才指揮者の名を欲しいままにしました。それは、サラブレッドであ  るゆえの尋常でない耳の良さと、音楽に対する勘によるものだと私は思います。  スタイルは現代的でスピード感のあるものですので、外面は現代の客観主義と同じなのですが、  受ける印象が全く違います。”音”が違うのです。今まさにその曲が生まれたかのような新鮮  なニュアンスを持って響くクライバーの音は、音にいのちが吹き込まれているかのように響き  ます。よって音楽は常に活き活きとし、躍動感を伴って流れていきます。それだけでなく、激  しさと柔軟性も併せ持っています。歯切れがいいです。強音と弱音のバランスは最高で、格調  も高いです。「音」で勝負するタイプですので、初心者の方にも分かりやすいでしょう。  それらが「天才」と呼ばれる所以で、他の指揮者からは聴くことの出来ない光彩を放った音を  オケから引き出すことができた稀有な指揮者です。  つまり、フルトヴェングラーのように音の背後にあるドラマ性などを重視するタイプではなく、  鳴っている「音」そのもので勝負というタイプの指揮者だったと言えます。  おそらく、娯楽性、享楽性のある音楽を演奏させたら右に出るものは指揮者の歴史上いないの  ではないでしょうか。「音楽の化身」のように、人々の感性にうったえる「何か」を持ってい  ました。下のYOUTUBEへのリンクがある「カルメン」前奏曲はその一例です。ほとんどの方が  聴いたことのあるこの曲が、今生まれたばかりのような躍動感、新鮮感をもって演奏されてい  ます。これがクライバーの世界です。残念なことに、CD録音はされなかったのですが、この  ような「もし」がどれだけあることか…。  クライバーの得意なレパートリーと言えば、ワルツやポルカとオペラで、父エーリッヒと同じ  です。それに加え、交響曲もほぼすべてが第1級の名盤で、その意味では、発売されているほ  ぼすべてのCDがベスト盤とも言っていいほどなのですが、録音の評価が高いことは、逆にク  ライバーの最大の欠点であるレパートリーの少なさとも関係していまして、絶対の自信のある  曲を、世界の第一級のオケでしか演奏しないという流儀を一生貫き通しました。それゆえに、  ウィーン・フィルと喧嘩をして出入り禁止になったり、当日のドタキャンがあったりと、エピ  ソードにもことかかない指揮者でした。  また、クライバーのカリスマ性を恐れて、カラヤンが、ベルリン・フィルの指揮台に一度もの  せることはありませんでした。  CD、DVDとも、最もはずれの少ない指揮者と言うこともできるでしょう。  なお、指揮姿の流麗さは、まさに「音楽の化身」のようです。  是非DVDもお薦めしたいですね。
ビゼー「カルメン」前奏曲   ベートーヴェン「交響曲第7番」第4楽章
 ☆推薦盤☆  ・ウェーバー「魔弾の射手」/ドレスデン国立管弦楽団(73)(グラモフォン)   SS  ・ヴェルディ 「椿姫」/バイエルン国立管弦楽団(76、77)(グラモフォン)  SS  ・シューベルト 交響曲第8番「未完成」/ウィーン・フィル(78)(グラモフォン)SS  ・ブラームス 交響曲第4番/ウィーン・フィル(80)(グラモフォン)      SS  ・ベートーヴェン 交響曲第4番/バイエルン国立管弦楽団(82)(オルフェオ)  SS  ・ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」/ウィーン・フィル(74)(グラモフォン)SS  ・ベートーヴェン 交響曲第7番/ウィーン・フィル(75、76)(グラモフォン) SS  ・J・シュトラウスU世 「こうもり」/バイエルン国立O(75)(グラモフォン) SS  ・ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」/ドレスデン国立(80〜82)(Gフォン) SS  ・ニューイヤー・コンサート1989&1992(89、92)(SONY)      S  *ベートーヴェンの交響曲第5番と第7番は同じCDです。  <テンポやや速><気品><かなり鋭い><かなり柔軟><オペラ◎>
10.クリュイタンス  1905〜1967  CLUYTENS  B  ベルギー

 クラシック音楽の本場はドイツとオーストリアで、それに続くのが、イタリア、フランス、ロ  シアあたりです。フランス出身の作曲家は、ビゼーラヴェルドビュッシー、フォーレあた  りで、あまり一般の方には馴染みがないのですが、「エスプリ」と呼ばれる優雅な音楽は他と  区別されています。 フランス音楽の指揮者の大家といったら、モントゥーデュトワなどの名前が挙がりますが、  実際にラヴェルなどのCDの評価でいえば、断然、このクリュイタンスです。ベルギー出身な  がらフランスで活躍した指揮者です。  フランス出身の指揮者は数多く、フランス音楽の筆頭であるラヴェルを皆得意としていますが、  ラヴェルはもちろん、フランス音楽の演奏において、このクリュイタンスの右に出るものはい  ないでしょう。20世紀に録音が可能になってから、指揮者は数え切れないほどいますが、フ  ランス音楽のスペシャリスト、CDの評価が飛びぬけて高いのはクリュイタンスなのです。  名盤の数こそ少ないですが、これという演奏、特にフランスの作曲家の作品の演奏は、誰も及  ばぬSS級の超名盤ばかりです。あくまで音楽評論家による評価ではあるとは言え、これは凄  いとしか言いようがありません。まさにスペシャリスト系指揮者の代表格です。  レパートリーは、実際はむしろ幅広いのですが、ここでご紹介している指揮者の中では、世界  的知名度の点でかなり下位です。カラヤンのように「何でも屋」ではないからなのでしょうか。  なお、ベルリン・フィルにも客演指揮者として招かれていますが、ベルリン・フィルとして初  のベート−ヴェンの交響曲全集の録音を行ったのは、フルトヴェングラーでもカラヤンでもな  く、クリュイタンスでした。
ラヴェル「ダフニスとクロエ」第3部「パンの神とニンフの祭壇の前」
 ☆推薦盤☆  ・ビゼー 「アルルの女」第1&第2組曲/パリ音楽院管弦楽団(64)(ワーナー)SS  ・フォーレ レクイエム/パリ音楽院管弦楽団(62)(ワーナー)        SS  ・ラヴェル ボレロ/パリ音楽院管弦楽団(61)(エラート)          SS  ・ラヴェル 「マ・メール・ロア」全曲/パリ音楽院管弦楽団(62)(エラート) SS   <フランス音楽◎>
11.クレンペラー  1885〜1973  KLEMPERER  A  ドイツ

クレンペラーは19世紀生まれの指揮者で、20世紀を代表する大指揮者には違いないのです  が、好みが分かれる方が多いかもしれない大指揮者の1人です。  クレンペラーの音楽は「構造主義」と呼ばれ、フルトヴェングラーバーンスタインのように  感情を込めて、聴き手と共に泣いたり、微笑んだりという演出はしません。  かといって、トスカニーニのようなダイナミズムもないですし、ワルターのように旋律を美し  く詠おうともしません。ということは、いかにも無味乾燥な、そっけない演奏に感じられてし  まいますので、共感できない方は全く共感できないタイプの指揮者です。  クレンペラーの演奏は、楽譜に忠実に、堂々と音楽を響かせていくスタイルです。よって立派  さ、重厚さではこの上なく、ずっしりとした響きが生まれます。「芸術家」と言うよりも「音  楽職人」、「指揮職人」という言葉の方が適切なのかも知れません。  似たようなタイプとしましては、朝比奈隆ベームがいますが、クレンペラーこそが本家本元  の「構造主義」です。  クレンペラーの言葉に、「私とワルターとは性格も音楽に対する考え方も正反対」「フルトヴ  ェングラーの、楽曲の終わりでテンポを速めてゆくのは感心できない」というものがあります  が、感情移入によって、音楽の構築が乱れることを嫌ったという証拠を示すエピソードです。  クレンペラーは晩年(ステレオ録音時代)になって、ガラっと演奏スタイルを変え、上記のよ  うな音楽観に至りました。ナチスに迫害されたり、寝タバコで火だるまになったり、指揮台か  ら落ちて演奏不能に陥ったりと、不幸なエピソードにはことかかない指揮者だったのですが、  イギリスのフィルハーモニア管弦楽団を手に入れ、幸いにもステレオ録音が残っているだけに、  半身不随、言語不明瞭になりながらも指揮をしていた最晩年の頃の演奏の方が評価が高く、多  くの名盤が残っています。テンポが更に遅くなり、音楽も表現も、より深みを増したため、こ  の頃が「全盛期」であると言われています。  得意なレパートリーは、まずは、指揮者として師匠でもあったマーラーです。  あとは、ベートーヴェンワーグナーという、テンポが遅いほど巨大なスケールを生み出す2  人の作曲家ですが、他にも多くの名盤を遺しています。下のリンク、「第九」の第1楽章は1  970年という最晩年のもので、クレンペラーの演奏スタイルを多少象徴するような演奏とな  っていますのでぜひご視聴下さい。どうしてもこの演奏が受けいれられなければ、クレンペラ  ーとは無縁ということになるでしょう。
ベートーヴェン「交響曲第9番『合唱』」第1楽章前半
 ☆推薦盤☆  ・ハイドン 交響曲第100番「軍隊」/ニューフィルハーモニアO(65)(ワーナー)A  ・バッハ ミサ曲 ロ短調/ニューフィルハーモニア管弦楽団(67)(ワーナー)   A  ・バッハ マタイ受難曲/フィルハーモニア管弦楽団(61)(ワーナー)       A  ・ブラームス ドイツ・レクイエム/フィルハーモニア管弦楽団(61)(ワーナー)  A  ・ヘンデル 「メサイア」/ニューフィルハーモニア管弦楽団(64)(ワーナー)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」/フィルハーモニアO(57)(ワーナー)  A  ・ベートーヴェン ミサ・ソレムニス/ニューフィルハーモニアO(65)(ワーナー) S  ・マーラー 交響曲第2番「復活」/フィルハーモニアO(61、62)(ワーナー)  A  ・マーラー 交響曲「大地の歌」/フィルハーモニアO(64、66)(ワーナー)  SS  ・メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」/ 〃 (60)(ワーナー) SS  ・モーツァルト 交響曲第25番/フィルハーモニア管弦楽団(56)(ワーナー)   A  ・モーツァルト 交響曲第31番「パリ」/   〃   (63)(ワーナー)    A  ・ワーグナー 管弦楽曲集/フィルハーモニア管弦楽団 (60、61)(ワーナー)  A     <テンポ遅><スケールかなり大><重厚><マーラー○>
12.クーベリック  1914〜1996  KUBELIK  B  チェコ

 クラシック音楽の本場はヨーロッパで、まずはドイツとオーストリアです。それに次ぐのがイ  タリア、フランス、ロシア、イギリスあたりです。その次に来るのが、北欧やスペイン、そし  て現在のチェコあたりの民族色が強い東欧の音楽(当時とはだいぶ国名が違います)です。  チェコ生まれのクーベリックは、民族色が濃い音楽のスペシャリストと言える存在です。地味  な存在ですが、これらの音楽を振らせたら、右に出るものはいないと言ってもいいほどです。  チェコ・フィルハーモニーの首席指揮者でしたが、チェコの政治的内紛により、祖国を追われ  ることとなってしまいました。アメリカに渡ったものの、多民族国家のアメリカでは音楽観が  合わずに結局ヨーロッパに戻ることとなり、クーベリックほど運に恵まれなかった指揮者も少  ないと言われています。  その後ドイツで18年間、バイエルン放送響を手兵として活躍、ブラームスモーツァルト、  マーラーなどのドイツ、オーストリア系の音楽も好評を博し、ようやく、ヨーロッパでその名  を高め、成功するに至りました。CDではモーツァルトの交響曲が秀逸の名演です。  1986年に指揮者を引退しましたが、89年にチェコで民主化革命がおこり、翌年、首都プ  ラハで「プラハの春」音楽祭が行われた際に、チェコ出身の指揮者の象徴として再びチェコ・  フィルを振ることとなりました。この記念碑的行事ではスメタナの「わが祖国」の歴史的名演  を行い、チェコ・フィルの終身名誉指揮者となりました。  残念なのは、アメリカに渡ってから引退後に「プラハの春」音楽祭で再びチェコ・フィルを振  るまでに、同オケの常任指揮者として録音を残せなかったことです。  バイエルン放送響などとの録音を考えても、更に名盤の数が増えていたのではないでしょうか。  
「プラハの春」音楽祭の模様
 ☆推薦盤☆  ・ウェーバー 魔弾の射手/バイエルン放送響(79)(デッカ)           A  ・シューマン 交響曲第3番「ライン」/バイエルン放送響(79)(SONY)    S  ・スメタナ わが祖国/ボストン交響楽団(71)(グラモフォン)         SS  ・ドヴォルザーク 交響曲第8番/ベルリン・フィル(72)(グラモフォン)     A  ・ドヴォルザーク 交響曲第9番/ベルリン・フィル(72)(グラモフォン)     A  ・ドヴォルザーク スラヴ舞曲集/バイエルン放送響(73,74)(グラモフォン) SS  ・モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」/バイエルン放送響(80)(SONY) A  ・モーツァルト 交響曲第38番「プラハ」/バイエルン放送響(80)(SONY)  A ・モーツァルト 交響曲第40番/バイエルン放送響(80)(SONY)       A ・モーツァルト 交響曲第41番「ジュピター」/バイエルン放送響(80)(SONY)A  *モーツァルトの交響曲第40番と第41番「ジュピター」は同じCDです。   <東欧の音楽◎><モーツァルト○>
13.ゲルギエフ  1953〜  GERGIEV  S  ロシア

 21世紀に入りヴァントクライバーアーノンクールという個性派指揮者達が他界しまして、  指揮者界もいよいよ没個性化してしまいました。  「名盤制作者」であるデュトワプレヴィンも高齢になり、果たして今後録音されるのかどう  かとも思われる現在、パーヴォ・ヤルヴィらと共に指揮者界のエースと言えるのがゲルギエフ  です。と言いましても、ラトルやメストのように世界の主要ポストのお話ではなく、下記のよ  うな名盤の数を考えたらのお話です。現役の指揮者で脂がのっている世代の中で、これだけの  名盤を既に輩出している存在はいません。その意味では、現役最高の指揮者の1人と言うこと  もできます。しかもほとんど毎年来日してくれますので、世界最高級の指揮者の演奏を生で聴  けるのです。  現在、最もスケジュール管理が大変な指揮者の1人とも言われています。  ゲルギエフはロシアの指揮者で、元々キーロフ劇場(現在はサンクトペテルブルク・マリイン  スキー劇場ですが、このサイトでは字数の都合で、すべて「キーロフ劇場」と表記してありま  す)の監督でしたので、バレエ音楽も大得意です。他の名盤の数も多いのですが、詳しい方は  良く見て頂きますと、「お国もの」の演奏ばかりであることが分かります。同じくロシア出身  のムラヴィンスキーもロシア音楽に名盤を残しましたが、名盤の数からすれば、指揮者史上最  高のロシア音楽の指揮者と言うこともできます。ウィーン・フィルの信頼も厚いと言われてい  ますから、今後期待されるのはロシア音楽以外のレパートリーの広さということになります。  演奏スタイルは、柔と剛を併せ持ったものです。世界中を飛び回り、その体力と気迫溢れる姿  には音楽関係者も舌を巻くほどとか。ですが、気分がノラないときの演奏はさっぱりだそうで  す。  いずれにしましても、ゲルギエフは現在最も目が離せない指揮者の1人です。 
チャイコフスキー「交響曲第4番」第4楽章
 ☆推薦盤☆  ・ショスタコーヴィチ 交響曲第5番/キーロフ劇場O他(02)(デッカ)      A  ・ショスタコーヴィチ 交響曲第7番/キーロフ劇場O他(01)(デッカ)      S  ・ストラヴィンスキー 春の祭典/キーロフ劇場管弦楽団(99)(デッカ)      S  ・ストラヴィンスキー 火の鳥/キーロフ劇場管弦楽団(95)(デッカ)       S  ・チャイコフスキー 交響曲第4番/ウィーン・フィル(02)(デッカ)       A  ・チャイコフスキー 交響曲第5番/ウィーン・フィル(98)(デッカ)       S  ・チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」/ウィーン・フィル(04)(デッカ)   A  ・チャイコフスキー 白鳥の湖/キーロフ劇場管弦楽団(06)(デッカ)       A  ・チャイコフスキー くるみ割り人形/キーロフ劇場管弦楽団(98)(デッカ)    A  ・チャイコフスキー 眠りの森の美女/キーロフ劇場管弦楽団(92)(デッカ)    A  ・プロコフィエフ 交響曲第1番「古典交響曲」/ロンドン交響楽団(04)(デッカ) A  ・プロコフィエフ ロメオとジュリエット/キーロフ劇場管弦楽団(90)(デッカ)  A  ・ムソルグスキー 展覧会の絵/ウィーン・フィル(00)(デッカ)         A  ・ラフマニノフ 交響曲第2番/キーロフ劇場管弦楽団(93)(デッカ)       A  ・リムスキー=コルサコフ シェエラザード/キーロフ劇場O(01)(デッカ)   SS   <情熱強><バレエ音楽◎><ロシア音楽◎><安定性やや劣>
14.シューリヒト  1880〜1967  SCHURICHT  B  ドイツ

 シューリヒトはここでご紹介するほどの存在ではないかもしれません。「指揮者列伝」の類の  書籍にはまず載っていることが多いのですが、生涯、特定のポストについていたわけでもない  ですし、これといった名盤は少ないですし、それもブルックナーファンでなければほとんど無  縁と言ってもいいくらいの指揮者です。  ドイツ生まれの指揮者ですが、スター指揮者として脚光を浴びることはありませんでした。  晩年になってようやくウィーン・フィルを振れた指揮者です。  シューリヒトの芸風の真価は非常に解りづらいです。トスカニーニ的な鋭さには富んでいまし  て音で勝負するタイプなのですが、テンポは速めで、スケールが小さいですので、いかにも淡  白な印象を与えます。  ところが、淡々とした流れの中に、実は千変万化の表情の移ろいがあったり、曲の最も大事な  部分を実直に表現していたりという、聴く側に「知」を求めるというものだと言われています。  よって、とても初心者の方向けとは言えませんし、よほど耳の肥えた方でないと、シューリヒ  トの音楽は理解できないかもしれません。地味な存在だったというのも、芸風の解りづらさが  多分に影響していたのでしょう。  晩年は湖のほとりに暮らし、自然を愛し続けました。最後の大傑作がブルックナーの交響曲第  8番、第9番です。ブルックナーにおいてはテンポの速さやスケールの小ささが裏目に出るは  ずなのですが、大自然をこよなく愛し、枯淡の境地に達したからこそ成しえた至芸です。  なお、ベートーヴェンブラームスなどのドイツ音楽も得意としました。  ぜひ下のリンクから「英雄」をお聴き下さい。スマートなだけの演奏とは一線を画しているこ  とがお分かり頂けるはずです。
ベートーヴェン「交響曲第3番『英雄』」第1楽章
 ☆推薦盤☆  ・ブルックナー 交響曲第8番/ウィーン・フィル(63)(ワーナー)      B  ・ブルックナー 交響曲第9番/ウィーン・フィル(61)(ワーナー)      A     <鋭い><テンポ速><スケール小> 
15.ジュリーニ  1914〜2005  GIULINI  B  イタリア

 ジュリーニは、世界的な名声に比べて、特定のポストに就いていた期間が短く、晩年はフリー  としてウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウなどに招かれて客  演指揮者として活躍しました。それゆえ、「孤高の大指揮者」「孤高の巨匠」と呼ばれました。  ジュリーニの言葉に、「私はスコアと共に生き、スコアは私の一部になる。その瞬間、私は作  曲家の召使となる。作曲家は天才で、私は何者でもない。」というものがあります。この、作  曲家至上主義というものはトスカニーニモントゥーと同じで、ジュリーニの場合もやはり、  作曲家、作品に対して愛情を持ち、演奏させて頂く喜びを感じることのできる指揮者でした。  なお、推薦盤にあるヴェルディの「椿姫」は、脂ののった時期の録音で、イタリア出身である  ジュリーニが、イタリアのミラノ・スカラ座管弦楽団を指揮して、イタリアの英雄、ヴェルデ  ィの作品を演奏したもので、ジュリーニの最高傑作の1つと言われています。  晩年、テンポが遅くなり、スケールはより大きくなっていきましたが、テンポを遅くすること  で緻密な表現が可能となりました。作曲者が楽譜に書き入れた音符のすべてが聴き手に伝わる  ように、という考えに基づいていると、本人は語っていたということです。  ジュリーニの音楽観が行き着いた最後の形なのでしょう。  
ベートーヴェン「交響曲第5番『運命』」
   ☆推薦盤☆  ・ヴェルディ 「椿姫」/ミラノ・スカラ座管弦楽団(55)(ワーナー)      A  ・ブルックナー 交響曲第8番/ウィーン・フィル(84)(グラモフォン)     A  ・ブルックナー 交響曲第9番/ウィーン・フィル(88)(グラモフォン)     A  ・ムソルグスキー 展覧会の絵/シカゴ交響楽団(76)(グラモフォン)      A  ・モーツァルト 「フィガロの結婚」/フィルハーモニア管弦楽団(59)(ワーナー)S   <テンポやや遅><かなり柔軟>
16.ショルティ  1912〜1997  SOLTI  B  ハンガリー⇒ドイツ⇒イギリス

 イギリスという国では、依然社会的階層が根ざしておりまして、クラシック音楽や指揮者の地  位は他の国々に比べると驚くほど高いと言われています。例を挙げますと、バルビローリ、マ  リナー、ラトルらには、「Sir(サー)」の称号が与えられています。  ショルティはハンガリー生まれですが、夫人がイギリス出身であることと、イギリス音楽界へ  の功績を認められて、サーの称号を得ています。  なお、イギリスにはEMIやDECCA(デッカ)というメジャーレーベルがあったにも関わ  らず、未だに世界的な大指揮者と呼べるほどの人物は輩出していません。出世頭は間違いなく  ベルリン・フィルの音楽監督にまでなったラトルでしょう。ラトルが今後、更に存在感を増す  ことができるのでしょうか。  ショルティは、名盤も多く輩出していますが、それよりも、クラシック音楽界への功績という  点で大きく評価されてしかるべき指揮者に入ります。  最大の功績は何と言いましても、上演に4日、CDでは13、4枚はかかるという驚異の大作、  ワーグナーの「ニーベルングの指環」の世界初全曲盤録音を果たしたことです。  この録音にデッカとショルティは10年もの時間を費やした(当初はクナッパーツブッシュを  起用しましたが、途中で挫折してしまいました)のです。この録音はありがたいことにステレ  オ録音でもあり、今なお、この作品の断然のベスト演奏との評価を得ている、正真正銘の歴史  的名盤、歴史的録音です。  また、ショルティはオーケストラのトレーナーとしては「血も涙もない」と表現されるほど厳  しく、アメリカのシカゴ交響楽団を、世界最高レベルの技術集団へと鍛え上げました。  芸風は、どちらかというと現代風の没個性的なスタイルなのですが、「一糸乱れぬアンサンブ  ル」をモットーとし、小節の始めにはすべての音がピタリと合わないと気が済まない程の完璧  主義者でした。よって、ヨーロッパの伝統的な解釈が必要とされるロマン派の時代の音楽はあ  まり得意ではないのですが(ウィーン・フィルとのリハーサルの時、楽員が怒って帰ってしま  ったというエピソードもあります)、それ以降の現代音楽には、精密さと重厚さを兼ね備えた  見事なまでの手腕を発揮しています。 
バルトーク「管弦楽のための協奏曲」ショルティ&シカゴ交響楽団
 ☆推薦盤☆  ・エルガー 「威風堂々」第1番/ロンドン交響楽団(77)(デッカ)       A  ・バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽/シカゴSO(89)(〃) A  ・マーラー 交響曲第5番/シカゴ交響楽団(70)(デッカ)           A  ・モーツァルト 「魔笛」/ウィーン・フィル(69)(デッカ)          A  ・ワーグナー 「ニーベルングの指環」/〃(58、62、64、65)(デッカ) SS  ・ワーグナー 「パルジファル」/ウィーン・フィル(71、72)(デッカ)    A   <現代音楽○><やや鋭い>
17.鈴木雅明  1954〜  B(バッハファンはS)  日本

   鈴木雅明は指揮者兼チェンバロ・オルガン奏者です。1990年にバッハ・コレギウム・ジャ  パン(BCJ)を結成し、音楽監督を務めていますが、近年、その演奏や録音が高い評価を得  ています。鈴木&BCJは今や日本が世界に誇る演奏集団と言えます。  バッハ・コレギウム・ジャパンは主にバッハに始まるバロック音楽を古楽器で演奏するオーケ  ストラ及び合唱団です。  下にリンクがあるバッハの「カンタータ集」は、何と18年もの歳月をかけ、CD56枚、1  95曲収録の超大作ですので、大変な功績を残したことになります。  今後もこれらの作品の演奏、再録音が中心となるでしょうが、モーツァルトベートーヴェン  などのプログラムもあります。  鈴木自身は、指揮者としてボストン交響楽団と現代楽器の共演をしたこともあります。  BCJは海外でも演奏活動を行ってはいますが、やはり国内中心です。トップページの「コン  サート情報」に載せていますので、ぜひとも実演に足を運んで頂ければと思います。
バッハ「ヨハネ受難曲」第1曲より 鈴木&BCJ
 ☆推薦盤☆  ・バッハ 「管弦楽組曲」/BCJ(03)(BIS)       A  ・バッハ 「カンタータ集」/BCJ(全集)(BIS)      S  ・バッハ 「ミサ曲 ロ短調」/BCJ(07)(BIS)     A   <古楽器><バッハ○>
18.チェリビダッケ  1912〜1996  CELIBIDACHE  B  ルーマニア

 指揮者の中には、いえ、ピアニストなどの音楽家全般の中には、演奏が独特であるのに加え、  考え方も独特な人がいます。例えばクナッパーツブッシュがそうです。  演奏は主観のかたまり、やりたい放題でありますし、指揮者という仕事自体も「自分の演奏を  聴きたくないものは来るな」という大衆を拒否するものがありました。それぞれ音楽家として  の相当なプライドがあるのでしょう。こういった指揮者は、我々聴き手としては概して好き嫌  いが激しくなり、好きな人はその指揮者を神格化する傾向にあります。なぜなら、それほど個  性に満ちた演奏は、その指揮者にしか演奏しえないからです。  チェリビダッケもそういった指揮者の一人です。録音嫌いで、現役時代はほとんど録音を残さ  なかったため、彼の死後に、遺族の意向でCD化された演奏が多いです。また、相当な毒舌家  として知られ、他の指揮者に対する批判は絶えませんでした。自分の思うような演奏ができな  いという理由で、あのベルリン・フィルとまで犬猿の仲になったというエピソードもあります。  実は、彼は、フルトヴェングラーの後、ベルリン・フィルの第4代目の常任指揮者に就くチャ  ンスに恵まれたのですが、スター性で勝るカラヤンにその座を奪われてしまいました。憤慨?  したチェリビダッケはドイツにこもり、ひたすらミュンヘン・フィルと演奏活動を続け、以後、  スター指揮者として脚光を浴びることはありませんでした。意地もあったのでしょうか。そん  なチェリビダッケのファンは、「チェリ」と呼んで親しみました。  チェリの演奏スタイルは、哲学に深く通じていたこともあり、哲学的な音楽解釈が根底にあり  ました。  「音は鳴らすものではなく、自然現象から発するもの」という持論があったため、テンポは概  して遅いです。まさに、音はオケが鳴らしているというよりも、自然発生的に生じるように聴  こえたり、作曲者の心の響きに聴こえたりします。チェリの演奏は、聴いただけですぐにチェ  リの演奏だと判るものも多いです。チェリのこういった音楽観は、録音嫌いということにも通  じていたのでしょう。「レコードは音楽を破壊する」とまで言い切るほどでした。   そのため、一回一回の演奏の価値というものが高まり、神々しささえ感じさせ、ましてや録音  がないことがチェリを神格化させたので、チェリのファンの中には徹底した信者が多いです。   音楽にダイナミズムを求める方は、とても相性がいいとは言えませんが、興味半分で聴いてみ  てはいかがでしょうか。音楽に対する考え方の幅が拡がると思われます。
ブルックナー「交響曲第8番」第4楽章からフィナーレ(サントリーホールでの貴重映像)
 ☆推薦盤☆(信者ならばすべてSSでしょうか?)   特になし   <テンポ遅め〜超遅><スケール大><主観主義>
19.デュトワ  1936〜  DUTOIT  A  スイス

 クラシック界では、有名な演奏家が必ずしも名盤を数多く残しているとは限らないですし、逆  に、世界的知名度は今一つでも、残した録音が高い評価を得ている演奏家もいます。  デュトワは後者の1人で、ヨーロッパでは、ウィーン・フィルやベルリン・フィルとよく共演  したというタイプではないですし、マスコミとあまり関わりをもたなかったため、知名度は今  一つなのですが、カナダのモントリオール交響楽団の音楽監督を25年間務め、同楽団を世界  レベルの楽団に育て上げました。  デュトワは日本と非常に深い関係があります。大の親日家ということもあって、現在はNHK  交響楽団の名誉音楽監督を務めています。以前はN響の常任指揮者だったこともあり、同楽団  を率いて海外ツアーを行ったり、NHKの大河ドラマの音楽の指揮をしたり、更には「徹子の  部屋」に出演することもありました。また、2011年まで宮崎国際音楽祭の芸術監督を務め  ていました。  このように、身近な存在なデュトワなのですが、実は我々クラシックファンにはお宝物の名盤  を数多く残している大変な実力者なのです。  また、現役では最高のフランス音楽の指揮者で、アンセルメ、クリュイタンスの後継とも言え  る存在です。  そして、残した名盤の数々を考えますと、指揮者としての実力は、現役では世界最高レベルに  あるといっても過言ではありません。  それほどの指揮者の演奏を生で聴けるのですから、指揮台に立つときはぜひ駆けつけたいので  すが、近年、来日の機会が減ってきています。もう高齢のため、演奏活動自体ほとんど行って  いないのでしょうか。  なお、プレヴィン同様、深刻な交響曲には弱いのが難点ですが、管弦楽曲には滅法強いのが特  徴です。
ラヴェル「ボレロ」
 ☆推薦盤☆   ・サン=サーンス 交響曲第3番/モントリオール交響楽団(86)(デッカ)    S  ・ストラヴィンスキー ペトルーシュカ/モントリオール交響楽団(86)(デッカ) A  ・チャイコフスキー 白鳥の湖/モントリオール交響楽団(91)(デッカ)     A  ・ドビュッシー 夜想曲/モントリオール交響楽団(89)(デッカ)        A  ・ドビュッシー 交響詩「海」/モントリオール交響楽団(89)(デッカ)     A  ・ビゼー「アルルの女」/モントリオール交響楽団(86)(デッカ)        A  ・プロコフィエフ 交響曲第1番/モントリオールSO(88)(デッカ)     SS  ・ホルスト 惑星/モントリオール交響楽団(86)(デッカ)           A  ・ムソルグスキー 展覧会の絵/モントリオール交響楽団(85)(デッカ)     A  <管弦楽曲◎><フランス音楽○><親日派>
20.トスカニーニ  1867〜1957  TOSCANINI  S  イタリア
 
トスカニーニは、ドイツのフルトヴェングラーと並ぶ20世紀最大の指揮者です。  フルトヴェングラーの芸風とは常に比較されていますが、音の背後にあるドラマなどを重んじ  たフルトヴェングラーとは正反対の芸風で、スコア(楽譜)こそがすべてでした。  現代の指揮者に「はやり」の、この「客観主義」ですが、トスカニーニの場合は全く似て非な  るものでした。トスカニーニは「音」にすべてを託します。よって演奏中、パッションは炎の  ように燃え立ち、リズムは地の底にまで突き刺さります。楽員一人たりとも気を抜くことは許  されず、全身全霊を込めた音楽を創造していくスタイルです。この、音のダイナミズムこそが  トスカニーニの芸風でした。よって、テンポは速めで、楽譜のffなどの記号も殊更強調され  ます。ただ楽譜どおりに演奏するスタイルと一線を画しているのは、音楽に対する熱意、芸術  家としての格の違いでしょう。スコアには忠実ながらも、最高のエネルギーに満ちた「音」を  聴かせてくれるのがトスカニーニです。その点こそがトスカニーニイズムです。  そこまでの「音」をオーケストラから引き出すには、普通の接し方で通じるはずがありません。  トスカニーニは暴君、あるいは凄まじいかんしゃく持ちとしても知られていました。  リハーサルの最中に納得がいかないと、怒号、罵声が飛ぶことなど当たり前。しかもスコアを  破ったり、指揮棒を投げつけることも日常茶飯事で、裁判沙汰になることさえありました。  けれども、音楽の素晴らしさは楽員も認めざるを得なく、イタリア人ゆえの陽気な性格で、楽  員からは非常に慕われていて、一般の人気も凄かったのです。  得意なレパートリーは、ベートーヴェンの他、ワーグナーなどのオペラ曲。やはりイタリア生  まれだけあって、ヴェルディロッシーニなど、イタリア生まれの作曲家にも相性がいいです。  もちろん、初めはヨーロッパで成功しましたが、後にアメリカに渡り、RCAというメジャー  レーベルと、トスカニーニのために結成されたNBC交響楽団との共演で、大成功を収めまし  た。現在入手できるCDは、NBC交響楽団との録音によるものがほとんどです。  残念ながら、録音は1950年代までで、数枚のステレオ録音が残されているだけです。  ですが、古い録音でも、録音は音質に定評のあるRCAレーベルがほとんどですから、今では  Blu-specCD2などもあり、かなり音質は改善されているのが本当にありがたい限りです。  なお、下のリンクから見れる超貴重映像は、何と80歳を過ぎてのものですので、驚くほかな  いといえますし、トスカニーニの音楽にかける情熱が伝わってきます。  後世に与えた影響も計り知れません。オペラの時にオーケストラが演奏する「オーケストラピ  ット」を考案しましたし、「指揮者は作品を演奏させて頂く」という、「作曲者至上主義」は  指揮法を学ぶ原点とされたり、指揮者たるものはオーケストラという「楽器」を操るためには  君主であるべきだという、19世紀からの伝統的な指揮者の在り方を踏襲する姿は模範とされ  ました(現在ではこうした伝統はほとんど崩壊しました)。  そのカリスマ性もあいまって、トスカニーニは「指揮者の中の王」とも呼ばれています。
ベートーヴェン「交響曲第5番『運命』」第1楽章(超貴重映像)
ワーグナー「ワルキューレの騎行」(超貴重映像)
 ☆推薦盤☆  ・ヴェルディ レクイエム/NBC交響楽団(51)(RCA)            A  ・ベートーヴェン 交響曲第1番/NBC交響楽団(51)(RCA)         S  ・ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」/NBC交響楽団(53)(RCA)     A  ・ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」/NBC交響楽団(52)(RCA)     B  ・ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」/NBC交響楽団(52)(RCA)     B  ・メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」/NBC交響楽団(54)(RCA)  S  ・レスピーギ 交響詩「ローマ三部作」/NBC交響楽団(49〜53)(RCA)  SS   <テンポ速><超鋭い><情熱爆発><客観主義><イタリア音楽○>
21.ドゥダメル  1981〜  DUDAMEL  A  ベネズエラ
 
21世紀だからこそ誕生したとも言える、超新星です。南米の、西洋音楽とは縁が遠いベネズ  エラの地で、ベルリン・フィルの音楽監督ラトルをして「クラシック音楽の未来はベネズエラ  にある」とまで言わしめた逸材です。  ドゥダメルは、1981年生まれのまだ30代で、指揮者としてはあまりに若すぎるのですが、  17歳でシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(SBYOV)の音楽  監督に就任。2004年に指揮者の国際コンクールで優勝しました。  簡潔にまとめますと、ベネズエラ(南米です)というクラシックとは縁が遠い国で、青少年の  更生のために音楽教育を取り入れた教育システムが根付き、その最高位にあるのがSBYOV。  このオケは、あくまで25歳までのユース・オーケストラですので、本職の方からすれば、セ  ミプロ程度にしか感じられないでしょうが、同じ音楽教育を受けたドゥダメルの指揮棒の元、  ベートーヴェンチャイコフスキーのCDを完成し、演奏旅行も行っています。  プロと呼べるほどの演奏家の集団ではありませんので、確かに、世界的なオケに比べればアン  サンブルの雑さは目立ちますが、若いオケと指揮者ゆえに、その情熱あふれる演奏スタイルは、  本場のプロ中のプロの心をも掴んだのです。  ベルリン・フィルのメンバーが直接指導にあたったり、前述のラトル、そしてアバドという第  一級の指揮者が指揮台に立ったりということは、いかにドゥダメルとオケに彼らを惹きつける  ものがあったかということを如実に示しています。  そしてドゥダメルは、ウィーン・フィルを指揮したり、2017年にはニューイヤー・コンサ  ートの指揮台に上るなど、いよいよ世界的な活動をし始めています。  2009年に音楽監督に就任したロサンジェルス・フィルとのコンビは、現在世界で”最も熱  い”コンビとも呼ばれています。  本当にクラシックの将来を担うことになるのでしょうか。これという名盤を早く聴きたいです。
ベートーヴェン「交響曲第7番」第4楽章
 ☆推薦盤☆   特になし   <情熱強>
22.バレンボイム  1942〜  BARENBOIM  A  アルゼンチン⇒イスラエル

バレンボイムは本来はピアニストでした。それも、異常なまでの天才ピアニストでした。何と   7歳の時にすべてのベートーヴェンのプログラムを弾いたというのですから、常識では考えら  れません。当時は神童の名を欲しいままにしていました。  その溢れる才能を他の道でも活かしたかったのか、二十代になると、指揮業も兼ねるようにな  ってきましたが、現在は高齢ということもあるのか、指揮業に専念しているようです。  しかし、指揮業はあまり芳しいとは言えません。パリ管弦楽団の音楽監督に就いた時には、そ  の不評の責任を追及されましたし、これといった名盤も出していません。  音楽の才能はありあまるものをもっていた天才だけに、早熟だったでしょうか。  ワーグナーでは割とよい演奏をしているようです。  疑いない天才音楽家だけに、もう一花咲かせて欲しいところです。
ベートーヴェン「交響曲第5番『運命』(指揮者として)
ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第8番『悲愴』(ピアニストとして)
 ☆推薦盤☆  <指揮者>   特になし         <ピアニスト>    ・モーツァルト ピアノ協奏曲第20番/ベルリン・フィル(88)(テルデック)   A  ・モーツァルト ピアノ協奏曲第21番/ベルリン・フィル(86)(テルデック)   A  ・モーツァルト ピアノ協奏曲第23番/ベルリン・フィル(89)(テルデック)   A  ・モーツァルト ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」/ベルリン・フィル(89)( 〃 )A     *すべてピアノ+指揮(弾き振り)です。  *モーツァルトのピアノ協奏曲第20番と第23番は同じCDです。  
23.バーンスタイン  1918〜1990  BERNSTEIN  S  アメリカ
 
アメリカ生まれのバーンスタインは、カラヤンと同時期の大指揮者で、日本では人気を二分し  ました。  バーンスタインは20世紀後半のステレオ録音時代を代表する大指揮者です。カラヤン以外で  同時期の大指揮者にはウィーン・フィルとの共演で名高いベーム、ロシアのムラヴィンスキー  らがいます。いずれも、モノーラル録音の時代に生まれながら、ステレオ録音で名演を鑑賞で  きる世代の指揮者たちです。  バーンスタインといえば、まず浮かぶのはマーラーです。同じくマーラー指揮者のワルターの  後継でして、先輩ワルター以上といってもよい名演を残しました。マーラーの交響曲に限って  はバーンスタインの演奏を選べばまずは間違いなく、それだけでも歴史に名を残す指揮者です。  ですが、万能型でもありまして、レパートリーはかなり広いです。  そんな世界的指揮者であったバーンスタインですが、ベルリン・フィルの指揮台に上がったこ  とは一度しかありません。ある日、ベルリン・フィルの常任指揮者であったカラヤンが指揮棒  を振ると、いつになく音がよく鳴りました。その前日にバーンスタインがベルリン・フィルを  振ったことを知ったカラヤンは、二度とベルリン・フィルの指揮台にのせなかったというのは  有名な話です。  そのたった一度の共演が、推薦盤に挙げてあるマーラーの「交響曲第9番」です。  バーンスタインは感情をムキ出しにするタイプで、激しい部分では、非常に恰幅がよく豪快で、  情熱的な演奏をする傍ら、叙情的な部分では、内面を吐露するかのような哀切に満ちた演奏を  します。そのため、ライヴ録音の方が評価は高いです。  すなわち、自分の感情の赴くままに演奏します。批判されようが自分のスタイルを貫く主義と  言えます。よって、レパートリーの広さもあって初心者の方にもとっつきやすい指揮者ではあ  るのですが、如何せん、お得意なレパートリーのマーラーは作品自体が初心者の方向けではな  いのが残念です。  マーラー以外の作曲者の演奏から、バーンスタインに触れてみてはいかがでしょうか。  ちなみに、自作の「ウェスト・サイド・ストーリー」は、名指揮者が作曲した作品としては最  も有名な作品でして、演奏曲によっては、ピアニストとしても登場する多才な指揮者です。
ベートーヴェン「交響曲第5番『運命』」第1楽章
自作自演「ウェスト・サイド・ストーリー」
 ☆推薦盤☆  ・ガーシュウィン ラプソディ・イン・ブルー/コロンビアSO(59)(SONY)SS  ・シューマン 交響曲第3番「ライン」/ウィーン・フィル(84)(グラモフォン) A  ・ショスタコーヴィチ 交響曲第5番/ニューヨーク・フィル(79)(SONY)  S  ・ショスタコーヴィチ 交響曲第7番/シカゴ交響楽団(88)(グラモフォン)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第1番/ウィーン・フィル(78)(グラモフォン)    A  ・ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」/ウィーン・フィル(78)(グラモフォン)B  ・ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」/ウィーン・フィル(79)(グラモフォン)B  ・ベートーヴェン ミサ・ソレムニス/アムステルダムCG(78)(グラモフォン) S  ・マーラー 交響曲第1番「巨人」/アムステルダムCG(87)(グラモフォン)  A  ・マーラー 交響曲第2番「復活」/ニューヨーク・フィル(87)(グラモフォン)SS  ・マーラー 交響曲第5番/ウィーン・フィル(87)(グラモフォン)      SS  ・マーラー 交響曲第9番/アムステルダムCG(85)(グラモフォン)      S  ・マーラー 交響曲第9番/ベルリン・フィル(79)(グラモフォン)       S  ・モーツァルト レクイエム/バイエルン放送交響楽団(88)(グラモフォン)   A  *アムステルダムCGはアムステルダム・コンセルト・ヘボウの略です   <やや万能型><実演派><マーラー◎><情熱強><作曲> 
24.フルトヴェングラー  1886〜1954  FURTWANGLER  S  ドイツ

イタリアのトスカニーニと人気を二分した、20世紀最大の指揮者の一人です。特に日本にお  いては神格化されています。  フルトヴェングラーの芸風は、「真芸術主義」とも言えるもので、作品の外面のみを捉えて演  奏するのではなく、作曲家が作品に込めた主張、ドラマを音として表現するものです。こうい  った演奏スタイルはドイツの「精神主義」という伝統的な演奏法でして、見事にそれを具現化  しました。  よって、フルトヴェングラーは作品が持っている哲学性、思想性を表現するのに、デフォルメ  したり、ルバートを多く用いたり、主観的に演奏することに何のはばかりもありませんでした。  すなわち、指揮者という枠を超えた、真の芸術家タイプの指揮者だったのです。「楽譜に忠実」  がモットーのトスカニーニとは正反対の芸風でした。  そんなフルトヴェングラーが最も得意としたのはベートーヴェンでした。ベートーヴェンが作  品に込めた哲学性、思想性を音として表現することと才能とが融合し、人類の至宝ともいうべ  き不滅の演奏を後世に残しました。  フルトヴェングラーは世界最高のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニーの第3代目の常  任指揮者となったのですが、今残されている録音のほとんどは、1940〜1950年頃のモ  ノーラル録音です。よって、いくら名演とはいえ、鑑賞に支障のある録音もあるのは認めざる  を得ないところです。  ですが、たとえ音質が悪くとも、今でも多くの指揮者の中でも屈指の人気を誇っておりまして、  多くの名演がベスト盤とも言える評価を得ていることは、フルトヴェングラーの芸術表現が決  して時代によって色あせるものではないことの証拠でもあります。  フルトヴェングラーは19世紀が生んだ最高の指揮者の一人であったのは紛れもない事実です。  如何せん、音楽解釈が哲学的で奥深く、音楽+αですので、初心者の方には難しいでしょう。  ましてや録音が古いですので、中級者以上向けの指揮者なのではないでしょうか。  なお、実演で燃えるタイプでしたので、代表盤にはライヴ録音が多いです。  トスカニーニと違って、ステレオ録音は全く残されていません。あと10年生きてくれれば。
ベートーヴェン「交響曲第5番『運命』」第1楽章(1947年静止画)
ベートーヴェン「交響曲第9番『合唱』」第4楽章最終部分(超貴重映像)
モーツァルト「ドン・ジョバンニ」より(何とカラーの超貴重映像)
 ☆推薦盤☆  ・シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレイト」/BPO(51)(グラモフォン)   S  ・ブラームス 交響曲第3番/ベルリン・フィル(49)(ワーナー)         A  ・ブラームス 交響曲第4番/ベルリン・フィル(48)(ワーナー)         A  ・ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」/ウィーン・フィル(52)(ワーナー)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」/BPO(47)(グラモフォン)   A↑SS  ・ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」/ウィーン・フィル(54)(ワーナー)   A  ・ベートーヴェン 交響曲第7番/ウィーン・フィル(50)(ワーナー)       A  ・ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」/バイロイト祝祭O(51)(ワーナー)  SS  ・マーラー さすらう若人の歌/ディースカウ(52)(ワーナー)         SS  ・ワーグナー 管弦楽曲集/ウィーン・フィル他(38〜54)(ワーナー)      A  ・ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」/フィルハーモニア管弦楽団(52)(ワーナー)A   <スケールかなり大><実演派><ベートーヴェン◎><主観主義〜デフォルメ><作曲> 
25.ブリュッヘン  1934〜2014  BRUGGEN  B  オランダ

 20世紀後半になって、古楽器による復古的演奏が盛んになってきたのですが、ブリュッヘン  はその中でも代表的な指揮者です。たまに現代楽器のオーケストラの指揮をすることもありま  したが、CDのレコーディングはすべて古楽器による演奏です。  ブリュッヘンは本来ブロックフレーテ(昔の縦笛フルート)の奏者でしたが(何と、奏者とし  て中学生の音楽の教科書に載っています)、それだけでは満足できず、指揮者になりました。  そして「18世紀オーケストラ」という少人数の古楽器グループを結成し、毎年一定期間だけ  演奏旅行に出かけ、その際にレコーディングをしました。  推薦盤を見て頂けばお分かりのように、交響曲の名曲がズラリと並んでいます。演奏の特徴は、  古楽器ながらスケールが大きく、重量感のあるところです。ガーディナーやアーノンクールの  ように、バロック音楽の演奏には力を注ぎません。よって、管弦楽曲等よりは、交響曲におい  てこれだけの名盤を残しています。特にモーツァルトの交響曲においては、現代楽器の演奏を  凌いで、同曲ベストの評価を得ているものもあります。  「古楽器の交響曲演奏なんて所詮」とお思いの方は、是非一度ブリュッヘンの演奏に耳を傾け  て頂ければと思うのです。  おそらく、古楽器演奏の歴史において、最も優れた指揮者の一人と評価されるのではないでし  ょうか。
ベートーヴェン「交響曲第3番『英雄』」全楽章
   ☆推薦盤☆  ・ヴィヴァルディ フルート協奏曲/18世紀オーケストラ(79)(セオン)  S  ・シューベルト 交響曲第5番/     〃     (90)(デッカ)   S  ・ハイドン 交響曲第94番「驚愕」/     〃    (92)(デッカ) S  ・ハイドン 交響曲第100番「軍隊」/     〃   (87)(デッカ) S  ・ハイドン 交響曲第101番「時計」/     〃   (87)(デッカ) S  ・ベートーヴェン 交響曲第2番/        〃   (88)(デッカ) A  ・ベートーヴェン 交響曲第4番/        〃   (90)(デッカ) A  ・ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」/    〃   (90)(デッカ) A  ・ベートーヴェン 交響曲第8番/        〃   (89)(デッカ) A  ・メンデルスゾーン 交響曲第3番/       〃   (12)(グロッサ)A  ・メンデルスゾーン 交響曲第4番/       〃   (09)(グロッサ)S  ・モーツァルト 交響曲第31番「パリ」/    〃   (85)(デッカ) A  ・モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」/  〃   (85)(デッカ) S  ・モーツァルト 交響曲第38番「プラハ」/   〃   (88)(デッカ) A  ・モーツァルト 交響曲第40番/        〃   (10)(グロッサ)A  ・モーツァルト 交響曲第41番「ジュピター」/ 〃 (10)(グロッサ)  A  *ハイドンの交響曲第94番と第101番、モーツァルトの交響曲第40番と第41番は 同じCDです。      <重厚><古楽器><演奏>
26.ブーレーズ  1925〜2016  BOULEZ  B  フランス

 2016年に亡くなったブーレーズは、作曲家兼指揮者でした。若い頃は歯に衣着せぬ発言で  物議を醸したりということがありましたが、クリーヴランド管弦楽団を手に入れてからは、立  て続けに名盤を輩出した晩成型の指揮者です。  ドビュッシー、シェーンベルク、ストラヴィンスキーなど、比較的新しい作曲家の作品の再興  を目指しまして、特にドビュッシー、ストラヴィンスキーの90年代の録音においては、並ぶ  者がいないと言ってもいいほどの名演を残しました。  また、マーラーにも評価の高い名盤があります。  演奏スタイルはどちらかと言いますと音楽性で勝負するタイプですので、あまり深い意味を追  及しない指揮者のように思えます。よって、フランスの指揮者ということもあってか、同じフ  ランスのドビュッシーの作品においては、本質的な相性の良さを感じさせ、誠に色彩感豊かな  演奏となっています。
ストラヴィンスキー「春の祭典」より
    ☆推薦盤☆  ・ストラヴィンスキー 春の祭典/クリーヴランド管弦楽団(91)(グラモフォン) S   ・ストラヴィンスキー ペトルーシュカ/クリーヴランドO(91)(グラモフォン) S  ・ストラヴィンスキー 火の鳥/シカゴ交響楽団(92)(グラモフォン)      S  ・ドビュッシー 夜想曲/クリーヴランド管弦楽団(93)(グラモフォン)     S   ・ドビュッシー 交響詩「海」/クリーヴランドO(93)(グラモフォン)     S  ・ドビュッシー 牧神の午後の前奏曲/クリーヴランドO(91)(グラモフォン) SS   ・バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽/シカゴSO(94)(〃) A  ・マーラー 交響曲「大地の歌」/ウィーン・フィル(99)(グラモフォン)    A ・ラヴェル ボレロ/ベルリン・フィル(93)(グラモフォン)          A  ・ラヴェル 「マ・メール・ロア」全曲/ベルリン・フィル(93)(グラモフォン) A   <色彩感><ドビュッシー◎><ストラヴィンスキー○>
27.プレヴィン  1929〜  PREVIN  A  ドイツ⇒アメリカ

 21世紀になっても指揮活動を続け、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルなどと共演し、世  界的指揮者と呼ばれている指揮者界の大御所達は、どうも名盤が少ないです。  例を挙げますと、マゼール、ムーティ、メータ、ヤンソンス、小澤らです。  そんな中で、名盤を数多く残している実力者がプレヴィンです。特に演出性のある曲を振らせ  たら天下一品で、デュトワと非常に良く似たタイプの指揮者と言えます。  まさしく「名盤制作者」なのです。  プレヴィンはクラシック指揮者の傍ら、アメリカで映画の音楽監督の仕事もしてきました。  おそらくこの、音楽の演出性に秀でているところが、クラシック演奏にも共通しているのでし  ょう。深刻な曲よりは、華やかであったり、ロマンティックな曲に適性があります。  プレヴィンは親日派で、2012年までNHK交響楽団の首席客演指揮者を務めました。この  点もデュトワに似ています。  既に90歳近い年齢ですので、来日の機会も激減しています。果たして指揮活動は行っている  のでしょうか。  来日するのならばN響を振ることになるでしょうが、もし相性の合いそうな曲を振るのであれ  ば必聴です。日本にいながら、世界最高の演奏を生で聴けるチャンスです。  また、プレヴィンはジャズピアニストとしての一面も持っている多才な音楽家です。
ラフマニノフ「交響曲第2番」第3楽章より
 ☆推薦盤☆  ・エルガー 「威風堂々」第1番/ロイヤル・フィル(85)(デッカ)      SS  ・オルフ カルミナブラーナ/ウィーン・フィル(93)(グラモフォン)      A  ・ガーシュウィン ラプソディ・イン・ブルー/ピッツバーグSO(84)(デッカ) S  ・サン=サーンス 動物の謝肉祭/ピッツバーグ交響楽団(85)(デッカ)     A  ・チャイコフスキー 白鳥の湖/ロンドン交響楽団(86)(ワーナー)      SS  ・チャイコフスキー くるみ割り人形/ロイヤル・フィル(86)(EMI)     S  ・チャイコフスキー 眠りの森の美女/ロンドン交響楽団(74)(EMI)     A  ・プロコフィエフ 交響曲第1番「古典交響曲」(86)(デッカ)         A  ・メンデルスゾーン 真夏の夜の夢/ウィーン・フィル&合唱団(85)(デッカ) SS  ・ラフマニノフ 交響曲第2番/ロンドン交響楽団(73)(ワーナー)      SS  ・R・シュトラスス アルプス交響曲/ウィーン・フィル(89)(テラーク)    A  ・R・シュトラウス ツァラトゥストラはかく語りき/VPO(87)(テラーク)  A  ・R・シュトラウス 英雄の生涯/ウィーン・フィル(88)(テラーク)      S  <管弦楽曲◎><親日派><作曲>
28.ベーム  1894〜1981  BOHM  A  オーストリア

ベームはカラヤンバーンスタインと同時期の世界的指揮者で、ウィーン・フィルとの共演が  多く、日本でも大人気でした。19世紀生まれですので、モノーラル録音の時代、ライヴ録音  での白熱した演奏にも定評がありましたが、現在名盤として名高い演奏は、晩年の、ウィーン  ・フィルやベルリン・フィルとのステレオ録音がほとんどです。晩年に自分の演奏スタイルを  確立しました。  ベームはワルターに次ぐモーツァルトの大家としても知られています。  ここでご紹介している指揮者の中では唯一モーツァルトの交響曲全集を録音していますし、モ  ーツァルトの小品の録音も多いです。モーツァルトに対する人一倍の愛情が感じられます。  ベームの演奏スタイルは、徹底した職人タイプだったと言えます。リハーサルでがっしりと仕  込みあげた音楽をステージにもってくるタイプで、常に充実した響きを聴かせました。その意  味では、「構造主義」のクレンペラーと同じスタイルです。ベームの言葉に「音楽は造形であ  る」というものがありますが、柔軟性には富んでいるものの、感情を表に出すタイプではなく、  派手さや誇張はあまりありません。よって音楽は常に崩れることなく、イン・テンポで、地に  足がついた、どっしりとした重厚なものです。ベームは大学で法律を学んだのですが、楽譜に  書いてあることから逸脱することを嫌ったその芸風は、法を遵守するという考えに基づいてい  るとの説もあります。  なお、モーツァルトの音楽において、柔軟で、耽美的な個性は存分に活きてはいるのですが、  如何せん、音楽にダイナミズムを望む方にとっては、ベームの音楽は「重たく」感じられるよ  うです。
モーツァルト「交響曲第40番」全楽章
 ☆推薦盤☆  ・ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」/ウィーン・フィル(71)(グラモフォン) A  ・モーツァルト 交響曲第31番「パリ」/ベルリン・フィル(68)(グラモフォン) B  ・モーツァルト 交響曲第40番/ベルリン・フィル(61)(グラモフォン)     A  ・モーツァルト 交響曲第41番「ジュピター」/BPO(76)(グラモフォン)   A  ・モーツァルト「フィガロの結婚」/ベルリン・ドイツ・オペラ(68)(グラモフォン)A  ・モーツァルト レクイエム/ウィーン・フィル(71)(グラモフォン)       S  ・ワーグナー 「ニーベルングの指環」/バイロイト祝祭管弦楽団(67)(デッカ)  A  ・ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」/バイロイト祝祭O(66)(グラモフォン) A  *BPOはベルリン・フィルの、VPOはウィーン・フィルの略です。   <テンポやや遅><重厚><モーツァルト○>
29.ミュンシュ  1891〜1968  MUNCH  B  ストラスブール⇒フランス

指揮者はピアニスト出身者が多いのですが、弦楽器出身者も多いです。かのトスカニーニがそ  うでした。ここでご紹介するミュンシュもそうで、指揮者デビューはなんと41歳でした。  指揮者としてのエピソードに、リハーサルが短いことで有名だったというものがあります。そ  れは、本番にすべての情熱を捧げるためという、オーケストラ出身のミュンシュなりの美学で  あったと言われています。  実際、ミュンシュの指揮ぶりは、指揮棒を風車のように回すほどの情熱的な指揮ぶりで、演奏  も大変情熱に満ちた熱いものでした。  ミュンシュは晩年、パリ音楽院管弦楽団を元に設立されたパリ管弦楽団の初代音楽監督となり、  最後の力を注ぎました。ミュンシュ自身の名盤の数は少ないですが、推薦盤に挙げた、パリ管  弦楽団との熱演であるブラームスの交響曲第1番ベルリオーズの幻想交響曲は、今なお同作  品の定盤、永遠の名演と言われています。
ブラームス「交響曲第1番」全楽章
 ☆推薦盤☆  ・サン=サーンス 交響曲第3番/ボストン交響楽団(59)(RCA)   S  ・ブラームス 交響曲第1番/パリ管弦楽団(68)(エラート)     SS  ・ベルリオーズ 幻想交響曲/パリ管弦楽団(67)(エラート)     SS  ・ラヴェル ボレロ/パリ管弦楽団(68)(エラート)          A   <情熱かなり強>
30.ムラヴィンスキー  1903〜1988 MRAVINSKY  A  ロシア

ムラヴィンスキーはロシア生まれの世界有数の指揮者でした。時代背景もあり、ロシアのレニ  ングラード・フィルの首席指揮者を50年も務め、ウィーン・フィルやベルリン・フィルなど  を振ることはなく、晩年の海外公演を除けば、終始ロシア(当時のソ連)にとどまりました。  そのため、録音も「メロディア」という国営レーベルがほとんどでして、同時期のカラヤン、  バーンスタインベームらとは環境が全く違いました。  西欧では、「鉄のカーテンの向こう側に凄い指揮者がいるらしい」という噂だけが広まってい  た状況でした。  ムラヴィンスキーの演奏スタイルには2つの面があります。1つは音に関してです。  テンポが速く、リズムはきびきびと刻まれ、身を切るような鋭さがあるため、トスカニーニや  クライバーと似た外面を持っています。  2つめは音楽解釈に関してです。ムラヴィンスキーは演奏する際、一切の常識や伝統などを無  視します。極端に言いますと、楽譜は「素材」で、自分の眼を通して極めて主観的にスコア  (楽譜)を読み、自分なりの音楽に組み直します。そこで当然デフォルメがなされるわけなの  ですが、同じデフォルメにしても、フルトヴェングラーのように解りやすいデフォルメではあ  りません。極めて抽象的なものですので、何を表現したいのかが非常に解りにくいのです。  この神秘性がカリスマ性を抱かせ、信者を生み出します。  よって、上級者の方向けではあるのですが、上級者でさえ一般受けはしないでしょう。  ムラヴィンスキーの音楽は「個」の世界です。  「こんな解釈の仕方があったんだ」と感動できるのなら、ムラヴィンスキーこそが真の天才指  揮者だと思えてくるでしょう。  なお、録音は「お国もの」のロシア音楽が多いですが、実際、レパートリーは幅広いです。  最も一般向けなのは、やはりチャイコフスキーでしょう。珍しくグラモフォンによるステレオ  録音ですので、音質は良好です。  しかし、実際、他のCDは音があまり良くないものがほとんどです。原因は、上記の所属レー  ベル「メロディア」が旧ソ連のレーベルで、あまり海外の最先端の技術を導入しなかったこと  だそうですが、なぜか70年代の録音でさえモノーラルで、この点は覚悟する必要があります。  良い音質で聴きたい方は、「ALTUS」かビクターの録音がお薦めです。
ブラームス「交響曲第4番」全楽章
 ☆推薦盤☆  ・ショスタコーヴィチ 交響曲第5番/レニングラードO(73)(アルトゥス)    S  ・チャイコフスキー 交響曲第4番/レニングラードO(60)(グラモフォン)    S  ・チャイコフスキー 交響曲第5番/レニングラードO(60)(グラモフォン)    A  ・チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」/レニングラードO(60)(グラモフォン)A  ・ベートーヴェン 交響曲第4番/レニングラードO(73)(アルトゥス)      A  *チャイコフスキーの交響曲第4番と第5番と第6番は同じCDです。     <テンポ速〜高速><超鋭い><主観主義〜デフォルメ>
31.メンゲルベルク 1871〜1951 MENGELBERG  B  オランダ

 同じく19世紀生まれのワルタートスカニーニフルトヴェングラーらと比べても、格的に  決して見劣りしないカリスマ性を持っていたのが、このメンゲルベルクです。メンゲルベルク  が指揮台に上がった時の暴君ぶりは、まさしく19世紀の指揮者像そのもので、トスカニーニ  以上とも言えるものだったそうです。この4人を、19世紀生まれの4大指揮者とも呼ぶこと  もあります。  楽員の自主性を許さなかったり、リハーサルでは長々と演説をしたり、徹底してパート練習を  させたり。そうして、当時のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現在のロイヤル・  コンセルトヘボウ管弦楽団)の首席指揮者を約50年間務め、世界でも屈指のオーケストラに  鍛え上げました。  このコンビに、リヒャルト・シュトラウス交響詩「英雄の生涯」(英雄とは自分のことです)  を捧げています。また、マーラーは弟子のワルター以上に、メンゲルベルクのマーラー演奏を  評価していました。  演奏スタイルは、その指揮者ぶりと同様に19世紀風のロマンティシズムに溢れるものでした。  時にはフルトヴェングラー以上に、やりたい放題とも言える主観的な指揮ぶりで、テンポは著  しく変動します。現代のオケならば、そのわがままぶりに、楽員が怒って帰ってしまうと思わ  れかねない程自分の理想を優先させます。  また、弦の音色の甘美さを徹底し、ワルターを基準としますと、やりすぎと思われるほど、濃  厚な甘美さを表出させました。  残念ながら、「名盤」として評価の高いCDはほとんどありません。録音が古いことや、かな  り主観的な演奏で一般向けではないことが理由なのでしょう。  名盤を多く残している三大指揮者に比べると、知名度も数段落ちます。  よって、メンゲルベルクの録音は皆「歴史的録音」という、都合のいい範疇に収められてしま  っています。同じ基準で判断できないということなのでしょう。上級者の方向けの指揮者です。  しかし、年配の音楽評論家の方々は、演奏の素晴らしさは百も承知で、「ぜひ聴いて欲しい伝  説の録音」ということで、バッハのマタイ受難曲チャイコフスキーの悲愴、R・シュトラウ  スの英雄の生涯は、本心では今でも同曲のベストCDに挙げる人も多いです。  また、下にYOUTUBEへのリンクがあるマーラーの第5番の第4楽章(アダージェット)は伝説  的名演としてこの楽章だけがよく採り上げられます。
マーラー「交響曲第5番」第4楽章「アダージェット」
 ウェーバー「オベロン序曲」(超貴重映像)
 ☆推薦盤☆  ・バッハ マタイ受難曲/アムステルダム・コンセルトヘボウ(39)(OPUS蔵)  B  ・チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」/   〃   (37)(OPUS蔵)  B   <ロマンティック><主観主義〜デフォルメ><超柔軟>
32.モントゥー 1875〜1964 MONTEUX  B  フランス

 19世紀生まれの名指揮者の中の一人に挙げてもいい実力者なのが、フランスの指揮者、モン  トゥーです。しかし、同じく19世紀生まれのトスカニーニフルトヴェングラーらと比べる  とカリスマ性に欠ける面がありますので、録音の数自体が少なく、日本ではマニア好みの存在  というのが現状です。  モントゥーはトスカニーニのように、作曲者に対して畏敬の念を常に抱き、演奏者は作曲者の  しもべであるという観念を貫いていました。こういった考え方は「作曲者至上主義」と呼ばれ  れ、ジュリーニも同じです。  スタイルは、基本的にはスコアに忠実で、強弱の誇張もあまりなく、効果を狙うような演出は  しません。加えてテンポも速めですので、いかにもそっけなく感じられてしまいます。総じて  無個性な指揮ぶりなのですが、音楽に対する「愛」がありました。作曲者のしもべであるとい  う考え方は、作曲家や曲に対する「愛」の表れであり、演奏をさせて頂くという喜びに溢れて  いました。外面ではそっけない印象を与えながらも演奏が評価されるのは、モントゥーの音楽  には「愛」があるからなのです。それが演奏をするオーケストラにも伝わり、オーケストラも  喜びに満ちて演奏をするのです。そういった両者の音楽に対する「愛」、「喜び」が聴く者を  惹きつけるのでしょう。  モントゥーは「ブラームスの音楽が自分に一番しっくりくる」と語っていたと言われています。  新しい録音の名盤が続々と出てきた以上、モントゥーの演奏を真っ先にお薦めしたいとは言い  がたいのですが、モントゥー渾身のブラームスで、ぜひ一度耳にして頂ければと思います。  また、フランス出身なので、「お国もの」のラヴェルも得意なレパートリーでした。
ベートーヴェン「交響曲第8番」他
 ☆推薦盤☆  ・フランク 交響曲/シカゴ交響楽団(61)(RCA)              S     <テンポやや速><柔軟性高>
33.パーヴォ・ヤルヴィ  1862〜  PAAVO JARVI  S  エストニア

 現役の指揮者で、今世界で最も忙しいと言われているのがパーヴォ・ヤルヴィです。指揮者の  ネーメ・ヤルヴィを父に持ちます。  近年、ドイツのカンマー管弦楽団と行ったベートーヴェンの全交響曲録音のCDが好評を博し、  指揮者としての評価もうなぎ上りで、最も脂がのっている時期かと思われます。  ウィーン・フィル、ベルリン・フィルなどの世界の主要オーケストラに客演で呼ばれたりと、  世界をまたにかける指揮者で、来日も多かったのですが、1番我々にとって大きいことは、何  とこのヤルヴィが、2015年9月にNHK交響楽団の初代主席指揮者に就いたことでしょう。  それにより、来日を気にすることなく、世界の第1級の指揮者の演奏を頻繁に聴くことができ  るようになったのです。  ヤルヴィの演奏スタイルはまさに現代的なもので、スピード感、躍動感を伴い、弦楽器主体に  ニュアンスに富んだデリケートな表現を主体とするものです。  ただそれだけでしたらつまらないベートーヴェンになってしまうのですが、そうでないところ  にヤルヴィの良さがありまして、卓越した音楽性を感じさせます。指揮姿も流麗です。  現在のところ、推薦盤に挙げられるのは主にベートーヴェンですが、他の北欧の作曲家やドビ  ュッシーも得意としています。  今後のヤルヴィの活躍に乞うご期待といったところで、ぜひ実演にも接して頂きたいです。
ベートーヴェン「交響曲第5番『運命』」全楽章
 ☆推薦盤☆  ・グリーグ ペールギュント/エストニア国立交響楽団(04)(エラート)     A  ・シューマン 交響曲第3番「ライン」/ドイツ・カンマー管弦楽団(09)(RCA)S  ・ベートーヴェン 交響曲第1番/ドイツ・カンマー管弦楽団(06)(RCA)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第2番/ドイツ・カンマー管弦楽団(07)(RCA)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」/    〃   (05)(RCA)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第4番/ドイツ・カンマー管弦楽団(05)(RCA)   A  ・ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」/    〃   (06)(RCA)   A  ・ベートーヴェン 交響曲第8番/ドイツ・カンマー管弦楽団(05)(RCA)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」/    〃   (08)(RCA)   A   <テンポやや速><柔軟>
34.ラトル  1955〜  RATTLE  S  イギリス

アバドの後を受けて現在ベルリン・フィルハーモニーの第6代目の首席指揮者、すなわち世界  の指揮者界のトップに立っている指揮者の一人なのが、サイモン・ラトルです。  現在60代ですのでまだ若いとは言え、既にベルリン・フィルの首席になってから10年以上  が経ちましたが、未だこれといった名盤を残せてはいません。  前代のアバドは、ベルリン・フィルとはマーラー以外にこれといった名演を残せなかったので  すが、ラトルは全くと言っていいほどです。  ベルリン・フィルを率いるとなると、どうしてもレパートリーの広さが求められ、大衆に迎合  する指揮者になってしまいがちな面はあります。前代のアバドがまさにその犠牲者とも言えま  す。アバドは元々イタリアの指揮者だったのですが、ベルリン・フィルとコンビを組むことで、  ドイツ音楽の演奏も求められました。得意でないレパートリーも得意でなければならないとい  う立場に置かれたことで、不評を買ってしまいました。ベルリン・フィルの常任になった前後  に多くの名演を残しているのは、いかにも皮肉な話です。  ラトルもそんなパターンな気がしてなりません。  近年、マーラーの録音に力を入れているようです。  ベルリン・フィルは2018年1月での退任が決まっておりまして、その後はロンドン交響楽  団の音楽監督になるようです。退任までに名演を残せるのでしょうか。  むしろ、退任してからに期待できるのではと思われるのです。
ジョン・ウィリアムズ「スター・ウォーズのテーマ」
 ☆推薦盤☆  ・チャイコフスキー くるみ割り人形/ベルリン・フィル(09、10)(ワーナー)S  ・ホルスト 惑星/ベルリン・フィル(06)(ワーナー)            A   
35.リヒター  1926〜1981  RICHTER  B(バッハファンはS)  ドイツ

カール・リヒターは指揮者兼チェンバロ奏者で、一生をバッハの演奏活動に捧げました。現在  発売されているCDでバッハ以外にはヘンデルくらいしかありません。  そのかわり、リヒターが演奏するバッハはほぼすべてが超一級品と言ってよく、このサイトの  推薦盤紹介でもほぼすべてがトップの評価です。近年は、バッハの評価の高いCDは古楽器演  奏ばかりですので、現代楽器のリヒターの演奏は貴重です。  いくらバッハに限ったこととは言え、これは凄いことです。超スペシャリストです。  確かに録音年が古いものもありますが、ステレオ録音ということもありまして、音質は鑑賞に  全く差し支えないと私は思っています。  バッハのファンの方は、何がなんでもリヒターの名前を覚えておきたいです。「リヒター」と  なっているCDは、イコールそれが現代楽器の最高の演奏ということになるのです。
バッハ「ミサ曲『グローリア』」より
 ☆推薦盤☆  ・バッハ 管弦楽組曲/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(60、61)(アルヒーフ) SS  ・バッハ ブランデンブルク協奏曲/ 〃 (67)(アルヒーフ)        SS  ・バッハ チェンバロ協奏曲第1番/ 〃 (71,72)(アルヒーフ)      A  ・バッハ 音楽の捧げ物/            (63)(アルヒーフ)    SS  ・バッハ オルガン作品集    /    (64〜78)(アルヒーフ)     A  ・バッハ カンタータ集(各種)/ 色々    (各年代)(アルヒーフ)     S  ・バッハ ミサ曲 ロ短調/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(61)(アルヒーフ)  SS  ・バッハ ヨハネ受難曲/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(64)(アルヒーフ)    S  ・バッハ マタイ受難曲/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(58)(アルヒーフ)   SS   <バッハ◎>
36.ワルター  1876〜1962  WALTER  S  ドイツ
 
ブルーノ・ワルターは、トスカニーニフルトヴェングラーと同じ19世紀生まれの指揮者で、  この3人は19世紀生まれの3大指揮者と言われています。しかし、ワルターが二人と決定的  に違い、我々にとって身近な存在である点は、1960年代まで長生きしたために、コロンビ  ア交響楽団(世紀の大指揮者、ワルターの録音のためだけに結成されました)との一連の名演  を、ステレオ録音で存分に鑑賞できるという点です。トスカニーニにはわずかにステレオ録音  が残っていますが、フルトヴェングラーにはありません。ワルターの演奏は、1930年前後  のウィーン・フィルとの一部の古い録音を除き、ステレオ録音で聴くことができるのです。  何という幸せでしょう。しかも、現在では、そのほとんどがBlu-specCDなどに高音質化され  ています。神とワルターに感謝する他ありません。  演奏の特徴は、基本的には楽譜に忠実なのですが、他の指揮者には真似出来ないほど豊麗な旋  律の歌わせ方にありました。極めて人間感情豊かな表現、ロマンチックで、「カンタービレ」  という言葉はワルターのためにあったと言っても過言ではないほどです。  「柔」という表現が似合いますので、演奏の「凄み」や、指揮者としての「君主性」などの点  ではトスカニーニやフルトヴェングラーに一歩を譲るでしょうが、ワルターならではの温かな  人間性や、ウィーン情緒が溢れる表現に満ちた「名演」の数では、ステレオ録音ということも  あってか、両者をはるかに凌いでいまして、相性がいい作品では、今なお多くの名盤がズラリ  と顔を揃えています。  割と万能型の指揮者なのですが、作曲家によってはスペシャリストの面もありました。  モーツァルトとは相性がピッタリで、ベームと並ぶ大家としても知られています。  モーツァルトに加え、ベートーヴェンの偶数番号の交響曲、シューベルトマーラーなどにお  いて、その人間感情の表現の巧みさは、今でも他の追随を許さないほどです。  特にマーラーの演奏においては、指揮者マーラーの弟子、及び唯一の友人ということもあって、  バーンスタインと並ぶマーラー指揮者でもあります。今では録音年代の違いもあってバーンス  タインの方が評価が高いですが、マーラーのファンならばどうしてもワルターの演奏は聴いて  おきたい、第一人者です。  そんなスペシャリストの面を持ちながらも、得意なレパートリーが多く、有名曲の録音も多い  ですので、クラシック鑑賞には絶対に欠かすことのできない、初心者にも上級者にも温かい、  まさに世紀の大指揮者なのであります。  なお、上級者の方向けですが、モーツァルト、マーラーなどに1930年代録音のウィーン・  フィルとのモノーラル録音の名演がありまして、今ではお世辞にも録音がいいとは言えない演  奏なのですが、是非、歴史的名盤として持っていたい逸品が揃っています。
ブラームス「交響曲第2番」第4楽章(リハーサル?)
 モーツァルト「交響曲第40番」第4楽章(超貴重映像)
 ☆推薦盤☆  ・シューベルト 交響曲第5番/コロンビア交響楽団(60)(SONY)       S  ・シューベルト 交響曲第8番「未完成」/ニューヨーク・フィル(58)(SONY) A  ・ブラームス 交響曲第4番/コロンビア交響楽団(59)(SONY)        A  ・ベートーヴェン 交響曲第2番/コロンビア交響楽団(59)(SONY)      S  ・ベートーヴェン 交響曲第4番/コロンビア交響楽団(58)(SONY)      A  ・ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」/コロンビアS0(58)(SONY)   SS  ・マーラー 交響曲第1番「巨人」/コロンビアS0(61)(SONY)       S  ・マーラー 交響曲「大地の歌」/ウィーン・フィル(52)(デッカ)     A↑SS  ・マーラー 交響曲第9番/ウィーン・フィル(38)(ワーナー)        B↑A  ・モーツァルト 交響曲第25番/ウィーン・フィル(56)(SONY)       A  ・モーツァルト 交響曲第38番「プラハ」/コロンビア交響楽団(59)(SONY) A  ・モーツァルト 交響曲第40番/ウィーン・フィル(52)(SONY)       B  ・モーツァルト アイネクライネナハトムジーク/コロンビアSO(58)(SONY) A  ・モーツァルト レクイエム/ニューヨーク・フィル(56)(SONY)       B   <かなり柔軟><スケールやや小><豊麗><万能型><マーラー◎><モーツァルト○>







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