名曲案内〜管弦楽曲・室内楽曲編W〜

(バッハ〜フランク)



    
  クラシックの大曲といえば交響曲ですが、管弦楽曲、室内楽曲も美しい弦の響き、アンサンブル
  などが聴き手を魅了してやみません。交響曲よりも聴きやすいので、クラシックの入門用として
  も高い価値があります。また、一度は聴いたことのある曲も多いことでしょう。
  ちなみに、管弦楽曲とはフルオーケストラ用でない曲のこと、室内楽曲とは各楽器一人ずつによ
  るアンサンブル曲のことを指すようですが、区別は明確ではありません。
   *推薦盤にある(P)はピアノの略です。  

バッハ   ・バルトーク   ・パッヘルベル   ・ビゼー   ・フランク


管弦楽曲・室内楽曲編T(アンダーソン〜グリーグ)へ     ・管弦楽曲・室内楽曲編U(サラサーテ〜シューベルト)へ

管弦楽曲・室内楽曲編V(スメタナ〜ハイドン)へ     ・管弦楽曲・室内楽曲編X(ブラームス〜ヘンデル)へ  

管弦楽曲・室内楽曲編Y(ベートーヴェン〜メンデルスゾーン)へ     ・管弦楽曲・室内楽曲編Z(モーツァルト)へ

管弦楽曲・室内楽曲編[(ラヴェル〜リムスキー=コルサコフ)へ     ・管弦楽曲・室内楽曲編\(レスピーギ〜シュトラウスファミリー)へ




☆バッハ
作品NO.3 管弦楽組曲 全曲 ★★ 2021年2月最新更新
 
  バッハの音楽というとオルガン曲だけと思っている初心者の方も多いのではないでしょうか。確かに、
 「トッカータとフーガ」は学校で習いますが、バッハが管弦楽曲を作曲したということは習わないかも
 しれません。そんな方々にお薦めしたいのがこの「管弦楽組曲」と、次にご紹介する「ブランデンブル
 ク協奏曲」です。バッハの作風というものを知るにはいい材料でしょうし、更にはバロック時代の曲風
 を知るにもよいと思われます。共にバッハのオーケストラ曲の集大成的作品集です。こちらの「管弦楽
 組曲」は、全部で第4番までの組曲で、32曲から構成されています。
 単品で演奏される曲も多く、大変有名な「G線上のアリア」は実はこの管弦楽組曲第3番の第2楽章な
 のでした。実に様々な演奏形式に編曲されている名曲ですが、下のリンクは原曲の管弦楽バージョンで
 す。もう一つの「ポロネーズ」もどこかで聴いたことがある方が多いのではないでしょうか。

第3番 第2楽章「G線上のアリア」   第2番 第5楽章「ポロネーズ」
 ☆推薦盤☆    ・フライブルク・バロック管弦楽団(11)(ハルモニア・ムンディ・フランス)  S    ◎リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(60、61)(アルヒーフ)          ・ゲーベル/ムジカ・アンテクヮ・メルン(82、85)(アルヒーフ)      A    ▲鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン(03)(BIS)          A    ○アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(83)(テルデック) A    △クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(69)(ワーナー)     A        カール・リヒターは指揮者及びチェンバロ奏者で、バッハの大家です。ピアニストのグレン・    グールドと同じく、バッハの作品でリヒターの名がついたCDを選べばまず間違いはないとい    うほどのバッハ演奏の第一人者です。    ところが21世紀になり、時代の流れか、バッハのようなバロック時代の作曲家は、当然のよ    うに新しい録音は限りなく100%近く、古楽器での演奏となっています。この作品も例にも    れません。この点は、学問的な研究の成果でもありますので、考え方を切り替える必要がある    でしょう。    1番上のフライブルク・バロック管弦楽団のCDは、とにかく即興が効いていて、これがバッ    ハの音楽かと感じられる方もいると思われますが、非常に斬新な演奏でして、ある意味、古楽    器演奏の1つの頂点とも言えます。    演奏としては文句なくお薦めしたいのですが、いかんせん、現在は廃盤中です。    お薦め度◎としてリヒター盤を挙げたのは、これは国内盤の現代楽器の演奏ですので、解説も    付いていますし、まずは従来からのバッハ演奏を聴きこんで頂きたいからです。    ゲーベル盤は国内盤の古楽器演奏ですが、廃盤中です。    日本人のバッハの演奏家としては今や第一人者とも言える鈴木雅明のCDですが、国内盤は廃    盤中ですので輸入盤を挙げておきました。    アーノンクール&ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの83年盤は長らく廃盤中ですので、    輸入盤を挙げておきました。66年の旧盤や、ヨーロッパ室内管弦楽団との演奏もありますの    でお間違えのないようにどうぞ。    最後に挙げたクレンペラー盤は最晩年の録音で、古いですが、国内盤の現代楽器の演奏です。    いかにもクレンペラーという荘厳な世界が今でも高評価されています。

作品NO.4 ブランデンブルク協奏曲 全曲 ★★ 2021年2月最新更新
 
  「管弦楽組曲」のところでご説明したように、バッハの作風、あるいはバロック時代の曲風というもの
 を知るにはお薦めの作品で、バッハのオーケストラ作品の傑作です。
 ブランデンブルク辺境伯に献呈された作品集で、宮廷の管弦楽団のために作曲されたものと言われてい
 ます。全部で19曲です。
 この作品には「協奏曲」の名がついていますが、ベートーヴェンチャイコフスキーのような協奏曲と
 はちょっと性質が違いますので、「管弦楽曲」としてここにご紹介しました。
 「管弦楽組曲」と雰囲気は似ていますが、あまり有名な曲はありません。

第3番 第1楽章   第5番
 ☆推薦盤☆    ◎ゲーベル/ムジカ・アンテクヮ・ケルン(86、87)(アルヒーフ)       S    ▲リヒター(指揮&チェンバロ)/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(67)(アルヒーフ)    ・フライブルク・バロック管弦楽団(13)(ハルモニアムンディ・フランス)    S    ○レオンハルト(指揮&チェンバロ)/クイケン他(76、77)(SONY)    A    ・クイケン(指揮&ヴァイオリン)/ラ・プティット・バンド(09)(ACCENT)A        カール・リヒターは指揮者及びチェンバロ奏者で、バッハの大家です。ピアニストのグレン・    グールドと同じく、バッハの作品でリヒターの名がついたCDを選べばまず間違いはないとい    うほどのバッハ演奏の第一人者です。    ところが21世紀になり、時代の流れか、バッハのようなバロック時代の作曲家は、当然のよ    うに新しい録音は限りなく100%近く、古楽器での演奏となっています。この作品も例にも    れません。この点は、学問的な研究の成果でもありますので、考え方を切り替える必要がある    でしょう。リヒター盤以外はすべて古楽器による演奏です。    ◎ゲーベルの旧盤、▲リヒター盤にしたのは、ゲーベルの旧盤が国内盤、リヒター盤が輸入盤    なだけに、ゲーベルの旧盤で解説が読めますし、やはり古楽器で味わって頂きたいからです。    ゲーベルにはSONYからの新盤もありますのでご注意頂きたいのですが、疾走感、躍動感に    満ち溢れていまして、金管の強奏なども、この作品にはピッタリとマッチしている点が素晴ら    しいです。古楽器に慣れている方も、新たな発見のある若々しい演奏です。    フライブルク・バロック管弦楽団のCDはどうも廃盤中のようです。溌剌さと響きの美しさは    これ以上望みえないほどで、演奏だけをとれば◎にしたいくらいなのですが…。    レオンハルト盤も大変魅力的です。古楽器演奏家に詳しい方なら夢のようなメンバーで、レオ    ンハルト他、クイケンビルスマブリュッヘンなどの「銀河系軍団」による名演です。    クイケン盤は日本語解説付きの輸入盤ですが、残念ながら廃盤中のようです。

作品NO.5 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ ★★ 2021年2月最新更新
  
 名前の通り、全く伴奏がない状況で、ヴァイオリンがソロを弾くという作品です。次にある無伴奏チェ
 ロ組曲同様、オケのバランスがどうこう、伴奏のピアノとの息の合い方がどうこうという言い訳は効か
 ず、ただヴァイオリニストにとっては己のみが試される作品です。
 よって、古くから世界的に有名なヴァイオリニストの録音は多いです。「名弦楽器奏者列伝」でご紹介
 しているヴァイオリニストのほとんどがこの作品を録音しています。
 ソナタ3つ、パルティータ3つの計6つから成りますが、それぞれ曲数が多いため、全31曲でCDは
 2枚組になります。

ソナタ第1番第3楽章(ハーン演奏) パルティータ第3番(何とファウスト演奏!)
 ☆推薦盤☆    ◎クレーメル/(01、02)(ECM)              S    ○ファウスト/(09、11)(ハルモニア・ムンディ) VOL.1 S    ○ファウスト/(09、11)(ハルモニア・ムンディ) VOL.2 S    ▲シェリング/(67)(グラモフォン)              A    △クイケン/(99、00)(ハルモニア・ムンディ)        A    クレーメル盤とファウスト盤が高い評価を得ています。    近年、クレーメルの表現は変化しています。元々芸術家肌でしたが、解りづらい面がありまし    た。ですが、表現が主観的で、大胆になってきましたので、深化してはいますが、解りやすく    なったのではないでしょうか。もちろん現代楽器です。    この録音はその象徴でもあります。デッカへの古い録音もありますのでご注意下さい。レーベ    ルはECMです。     ファウストの演奏も、表現はクレーメルに似ています。透徹感のある、冷たい音色で、ヴァイ    オリンの音色が持つある側面、哀切な響きを表出させます。クレーメルもファウストも表現は    似ていまして、痛ましいほどの冷たい音色で全曲を弾き切ります。これが21世紀のバッハ像    ということなのでしょう。VOL.2は廃盤中かもしれません。    初心者の方にはシェリング盤の方が分かりやすいと思われます。    古くから名盤としての地位を築いてきたシェリング盤も、クレーメル盤やファウスト盤が登場    したとは言え、「定盤」のこの演奏の価値は決して薄れないでしょう。シェリングの代名詞と    もなっているほどの名盤です。    シェリング盤は現代楽器ということもあって無難な演奏ですので、輸入盤は嫌な方、特にヴァ    イオリニストにこだわりがない方、または初めてこの作品を聴く方にはお薦めしたいです。    十分にこの作品の魅力を満喫できます。    クイケンは、古楽器を代表するヴァイオリニストです。あまり奇をてらったような表現はあり    ませんので、オーソドックスな古楽器演奏といったらおそらくベスト盤でしょう。

作品NO.6 無伴奏チェロ組曲 ★★ 2021年2月最新更新
  
 こちらは、チェロがソロを弾くという作品です。バッハのこの組曲を世間に広めたのは、他ならぬ「チ
 ェロの神様」カザルスです。詳しくは「名弦楽器奏者列伝」でもご紹介していますが、カザルス抜きに
 してこの組曲は語れないのです。
 カザルスの自伝によりますと、「港のそばの古い楽譜屋に立ち寄った。楽譜の束をめくり始めた。時の
 流れに黄ばみ、触れるとボロボロになりそうな一束の楽譜が出てきた。ヨハン・セバスチャン・バッハ
 の、『チェロ独奏のための六つの組曲』だって?」
 この時のカザルスは13歳でした。そんな背景もあり、発見と演奏が至上のものとなり、カザルスの演
 奏が不滅の金字塔となっています。全部で第6番、それぞれ6曲から成るので、全36曲の組曲です。
 あらゆるクラシックCDの中でも、「永遠の名盤」の一つです。

第1番 第1楽章(何とカザルス演奏!)
 ☆推薦盤☆    ☆カザルス/(36、38、39)(ワーナー)            ・ケラス/(07)(ハルモニア・ムンディ)         S    ◎ビルスマ/(92)(SONY)              A    ○フルニエ/(60)(アルヒーフ)             A    ▲鈴木秀美/(04)(ハルモニア・ムンディ)        A      カザルス盤はあらゆるクラシックCDの中でも一際輝きを放つ不朽の名盤です。もちろん演奏    内容は語らずもがななのですが、80年以上前の録音です。私のように、相当古い録音に慣れ    ている方ならいいのですが、もはや大衆向けではありません。    さすがに録音が古いですので、絶対のお薦め★には出来ません。☆にしました。そして評価も    にしました。この作品が一般的な知名度を得た功労者がそもそもカザルスですし、カザルス    の代名詞ともなっている限り、永遠に語り継がれる演奏です。    古い録音に抵抗のある方には、60年に録音されたフルニエ盤、あるいはビルスマ盤も評価が    高いです。お薦め度◎には、古楽器チェロの第一人者とも言えるビルスマ盤を挙げておきます。    このCDは、古楽器演奏の代表格であるビルスマながら、現代楽器による演奏です。    古楽器演奏として、近年高評価を得ているケラス盤は廃盤中のようです。奏法はいかにも21    世紀のバッハ演奏と言えるもので、バロック音楽のクールさを誇張した表現です。    ぜひとも「現在のバッハ解釈」を聴いて頂きたいものです。もう1つは、世界に誇るバッハの    演奏集団、「バッハ・コレギウム・ジャパン」を主催する、指揮者兼チェンバリストの鈴木雅    の弟、鈴木秀美の演奏です。兄のBCJはもちろんのこと、クイケン率いるラ・プティット    バンドに参加しながら指揮者業も行っていますが、本来はバロック・チェリストです。    カザルス盤を鑑賞用として聴けるには慣れが必要ですが、雑音はないため、聴いていれば気に    ならなくなるでしょう。まずは他のCDから入るとしても、ぜひ極めつけの「歴史的名盤」と    して持っていたいCDです。他の演奏を聴いた後ならば、カザルスの、スケールが壮大で、精    神性の高い演奏がいかに素晴らしいかをお分かり頂けるのではないかと思うのです。

作品NO.247 ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ全集 ★★★ 2021年5月最新更新

 この作品集は「ヴァイオリン・ソナタ」と呼ばれることもあります。「ヴァイオリン・ソナタ」とは、
 独奏ヴァイオリンと伴奏楽器一人ずつによる演奏で、有名なものは、モーツァルトベートーヴェン、
 ブラームスらの作品ですが、通常はピアノが伴奏を務めます。バッハの時代にはピアノよりもチェンバ
 ロが主流でしたので、このような表記の違いが生じているのだと思われます。
 音楽史的にも重要な作品でして、伝統的な4楽章の教会ソナタ形式の中に、モーツァルトらの古典派的
 二重奏(ヴァイオリンとチェンバロ)を盛り込んでいるという点で、後の「ヴァイオリン・ソナタ」に
 受け継がれました。
 第1番から第6番までの6作品をもって「全集」と呼ばれています。

第1番全楽章
 ☆推薦盤☆    ◎ファウスト/ベザイデンホウト(16)(ハルモニア・ムンディ)    S    〇S・クイケン/レオンハルト(73)(ドイツ・ハルモニア・ムンディ) S    ・ビオンディ/アレッサンドリーニ(95)(Opus111)      A    ▲シェリング/ヴァルヒャ(69)(デッカ)              A    ・ゲーベル/ヒル(82、83)(アルヒーフ)             A    CDはほとんどが2枚組です。    一番上のファウスト盤は、現代楽器での演奏かと思われますが、何より非常にお高いです。評    価そのものはS・クイケン盤よりもファウスト盤に分がありますので◎としましたが、お値段    重視の方にはS・クイケン盤の方がお薦めです。チェンバロがレオンハルトというのも大変な    魅力で、古楽器ファンの方には夢のようなデュオです。    ビオンディ盤は廃盤中のようです。    シェリング盤は、S・クイケン盤よりも更にお安いようですので、▲としました。    ゲーベル盤は、同じ音源かの確認がとれておりませんし、廃盤中のようです。

作品NO.229 フルート・ソナタ集 ★★ 2021年2月最新更新
 
 バッハは「音楽の父」と言われますが、バッハが作った作品で、クラシック音楽の幅が相当拡がりまし
 た。この「フルート・ソナタ」も、後のロマン派などでは当たり前となりますが、形態が違いまして、
 完全なフルート独奏の曲もあります。
 通常、「○○(鍵盤楽器以外)ソナタ」と言いますと、○○1人、鍵盤楽器1人という「デュオ」の形
 態を示すのですが、この作品は鍵盤楽器者がいない曲もあるため、「無伴奏フルート・ソナタ」という
 名称が付けられることもあります。

全楽章(パユ演奏)
 ☆推薦盤☆    ◎有田正広/有田千代子他(00)(デンオン)       SS    ○ニコレ/リヒター他(69、73)(グラモフォン)     A    ▲B.クイケン/デメイエール他(02)(Accent)   A      やはり、ソロのフルート奏者によって評価は分かれるようです。    1番上の日本人コンビは圧倒的な評価を得ています。評価もSSとしましたし、デンオンとい    うレーベルからしてお値段がお安めですので、文句なく第一にお薦めです。    ニコレ盤は、録音は古いのですが、現代楽器の演奏の名盤としては貴重です。古楽器演奏に違    和感がある方にはお薦めです。    3番目のクイケン盤は、「クイケンファミリー」による演奏です。特にバッハの古楽器の演奏    においては欠かせないファミリーで、このCDも是非ともお薦めです。

☆バルトーク
作品NO.15 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 ★★★ 2021年2月最新更新
 
 バルトークという作曲家は20世紀半ばまで活躍した、近代ハンガリー最大の作曲家です。あまり耳に
 慣れ親しんだ作品を作曲しているわけではありませんので、ほとんど馴染みのない方が大半でしょう。
 ですが、「有名な作曲家」という方には属すると思いますので、代表作のこの作品をご紹介します。
 「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」という長い名前のこの作品は、バルトークの最高傑作と
 言われています。略して「弦チェレ」です。
 「チェレスタ」という楽器は、鉄琴にピアノのような鍵盤楽器がついた楽器で、19世紀末に発明され
 たため、現代音楽によく用いられます。有名なところでは、チャイコフスキーの「白鳥の湖」ラヴェ
 ルの「ボレロ」ショスタコーヴィチの「交響曲第5番」などがあります。
 この作品は名前の通り、弦楽器と、打楽器(木琴、ティンパニなど)とチェレスタ、ピアノなどによる、
 音の競演です。そのため、旋律が優美な音楽というよりは、音の競演によるサウンドを愉しむという性
 格の作品といった方が適切かもしれません。
 音の競演というのもまた工夫されておりまして、ピアノを打楽器的に用いたり、弦楽器の弓を指で弾く
 (ピィツィカートといいます)技法を用いたりして、変化に富んでいます。そこに木琴などが絡んでき
 ます。
 全4楽章からなる愉快な作品です。

全楽章
 ☆推薦盤☆    ◎ライナー/シカゴ交響楽団(58)(RCA)          SS     ・ブーレーズ/シカゴ交響楽団(94)(グラモフォン)       A       ○ショルティ/シカゴ交響楽団(89)(デッカ)          A    ▲アーノンクール/ヨーロッパ室内管弦楽団(01)(RCA)    A    シカゴ交響楽団が4つのうち3つを占めるというのは、ライナーやショルティによって鍛えに    鍛え抜かれ、世界屈指の技術集団となったということとも関係があるのでしょうか。    ライナーとショルティに関しては、「指揮者の歴史」のこちらもご参照下さい。    ライナー盤は古くから定盤とされてきたCDで、断然のSS評価です。58年という録音年は    古いのですが、RCAレーベルでの録音ということもあってか、音質は非常に良いです。    2番手のブーレーズはバルトークをかなり得意にしていて、バルトークの他の作品でもどれも    評価が高いです。しかし、現在は廃盤中のようです。    お薦め度○はショルティ盤です。お値段はブーレーズ盤よりもお安いです。    お薦め度▲のアーノンクール盤は、現代楽器での演奏です。

☆パッヘルベル
作品NO.41 カノン ★ 2021年2月最新更新
  
 この曲こそまさにクラシック初心者、いえ、入門者の方向けの曲の最有力候補でしょう。
 これほど良く知られているクラシック曲は他にないと断言してもいい曲です。
 曲名から想像できなくても、下のリンクから聴かれた途端にほぼすべての方が思い出すでしょう。CM
 等でも大変よく使われている作品です。
 パッヘルベルのカノンは、まさに室内楽曲ですので、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、
 チェロ、各パート1人ずつ、基本的には、計4人で演奏します。弦楽器奏者にしてみれば、有名な割に
 は非常に技術的には簡単な曲です。とてもプロが弾くレベルの曲ではないのですが、聴衆の皆様にはウ
 ケる曲ということもあり、しかも演奏時間も短いので、アンコールで演奏されることも多いです。
 ちょっと音楽的なご説明をしますと、「カノン」というのは曲名ではなく、音楽形式のことです。
 ですので、本来は「カノン」だけでは誰が作曲したカノンかどうかは分からないのですが、「カノン」
 の中ではこの「パッヘルベル」作曲のカノンが突出して有名なため、「カノン」というだけで、「パ
 ッヘルベルのカノン」を指すようにもなっています。ちなみに、バロック時代の作品です。
 「カノン」とは単純にいえば輪唱のことで、「かえるのうた」と同じと言えば分かりやすいでしょうか。
 音楽形式について詳しくはこちらをご参照下さい。
 YOUTUBEでも様々な編曲バージョンがあります。下のリンクでも、演奏形態の違いを感じて頂けると思
 います。

カノン(現代楽器バージョン)   カノン(古楽器バージョン)
 ☆推薦盤☆    ・イ・ムジチ バロック名曲集/イ・ムジチ合奏団(82)(デッカ)         ?    ・バロック名曲集/パイヤール パイヤール室内管弦楽団(65〜72)(エラート)  ?    ・バロック名曲集/イタリア合奏団(88)(デンオン)               ?    ・バロック・ベスト/オルフェウス室内管弦楽団(89?)(グラモフォン)      ?    ・バロック名曲集/オルフェウス室内管弦楽団(89)(グラモフォン)        ?      あらゆるクラシック作品の中でも最も有名な作品の最有力候補であるにもかかわらず、推薦C    Dを挙げている専門書籍がほとんどありませんので、ほとんど管理人の私「個人的な」お薦め    となります。上からの順番も関係ありません。    この曲は、基本は各パート1人ずつのため即興性がとても強く、パッヘルベルのいた時代(バ    ロック時代)は楽譜が簡単に書かれていることもありまして、テンポや強弱などが演奏者によ    ってまちまちなところがあります。上のYOUTUBEへのリンクから視聴して頂ける2つの演奏も、    かなり受ける印象が違います。現代楽器と古楽器という違いもありますが、テンポが違います。    推薦CDも聴いた印象はかなり異なりますが、特に初心者の方、入門者の方は、「演奏する団    体によってこんなに印象が違うんだ」ということを実感して頂く意味でも、複数の演奏をお聴    きになることをお薦めします。それが、後のクラシック鑑賞に大変大きく影響します。    推薦盤には1000円前後というお安いCDを挙げておきました。    この曲は組曲などと違って単品の曲ですので、CDを探すには推薦盤のようなオムニバスのC    Dを探せばOKです。CDショップでは、パッヘルベルのコーナーか、弦楽合奏のオムニバス、    またはバロック音楽のオムニバスのコーナーにあるはずです。

☆ビゼー
作品NO.42 「アルルの女」第1&第2組曲 ★★★ 2021年2月最新更新
  
 「アルルの女」は初めは劇音楽、つまりオペラの曲として作曲されたのですが、劇の方があまりに不評
 だったため、作曲者であるビゼー自身が4曲を「第1組曲」として発表しました。こちらは非常に評判
 が良かったそうです。そしてビゼーの死後、第2組曲が編成され、今でも「劇音楽」という名は残って
 いるものの、オペラ曲としてではなく、管弦楽曲として演奏されています。とても演奏頻度の高い作品
 です。 
 何と言っても、第2組曲の第3曲「メヌエット」が有名です。

第1組曲 第1曲「前奏曲」   第2組曲 第3曲「メヌエット」
 ☆推薦盤☆    ◎クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団(64)(エラート)             ○ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊(07)(ナイーヴ)           S    ▲デュトワ/モントリオール交響楽団(86)(デッカ)           B       推薦盤は、いずれも、カップリングに「カルメン」からの抜粋曲が入っていますので、曲数は    豊富です。    「真のスペシャリスト」クリュイタンス盤が他を大きく突き放してのトップという状況が続い    ていたのですが、今では評価が下がっています。録音年は古いですが、音質が悪いわけではあ    りません。その分台頭したのが、ミンコフスキの古楽器演奏盤です。現代楽器と古楽器、どち    らをとるかというところでしょう。お値段の差はほとんどありません。    デュトワ盤も加えておきましたが、今や評価は急落しています。   

☆フランク
作品NO.92 ヴァイオリン・ソナタ ★★★ 2021年2月最新更新
 
 フランクという作曲家はかなりマイナーな作曲家です。どうも作曲家というよりは、本職は音大の教授
 で、晩年にその音楽の知識を活かして作曲も行ったという見解の方が正しいようです。そのフランクが
 残した作品の代表作がただ一つの「交響曲」であり、そしてこちらもただ一つの「ヴァイオリン・ソナ
 タ」となっています。
 その唯一のヴァイオリン・ソナタは、旋律がフランス風でとても美しく、数あるヴァイオリン・ソナタ
 の中でも傑作といわれる作品の一つです。フランクの最高傑作としても名高いです。
 いかにもフランス風、オトナ向けのお洒落な印象を受ける作品です。

全楽章(ムター演奏)
 ☆推薦盤☆      ○ファウスト/メルニコフ(P)(16)(ハルモニア・ムンディ)  S    ◎デュメイ/ピリス(P)(93)(グラモフォン)         S    ☆ティボー/コルトー(P)(29)(OPUS蔵)         A    △イブラギモヴァ/ティベルギアン(P)(18)(ハイペリオン)  A    ▲ダンチョフスカ/ツィメルマン(P)(80)(グラモフォン)   A    この作品のCDのベスト盤には、長いことティボーコルトーという、とんでもないコンビに    よる録音が君臨していました。もちろん、今なおその輝きを失ってはいません。しかし、29    年という録音年はあまりに古すぎます。よほど古い音に慣れている方にしかお薦めできないで    しょう。お薦め度は一応☆にはしておきました。    鑑賞にはあまりに音が古いですが、この作品が好きな方は絶対に持っていたいCDであること    には変わりはありません。    現在のイチオシ、デュメイ盤は、フランス音楽を得意とするデュメイならではの豊麗な歌わせ    方が何ともいえない美しさを醸し出し、個性が十二分に活ききっています。美音に酔いしれて    しまったら、他の演奏は聴けないほどです。    ファウスト盤も素晴らしいですが、お高いですし、この作品がフランス音楽であることを考え    ると、デュメイ盤の方がマッチしていると感じられます。    輸入盤にしてはお高いイブラギモヴァ盤とダンチョフスカ盤はお好みでどうぞ。



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