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モーツァルトのヴァイオリン・ソナタは少なくとも43作品あるのですが、モーツァルト作曲でないも のも多数ありまして、主にCDとしては第25番、28番、32番、34番、35番あたりのセットに なったものが多いと思われます。 モーツァルトの作品で、ヴァイオリンとピアノのソロだけですから、重々しくはなく、もちろん、旋律 も明るく、充分にモーツァルティックで魅力的ですので、気軽に聴けるところがいいです。 しかし、第28番だけは、母の死の影響があってか、短調で、内面を吐露するものになってしまってい ます。しかもこの作品は2楽章しかありません。 いずれの作品も、ヴァイオリンとピアノがまさに一体になっているようで、アンサンブルが美しいです。 |
アイネ・クライネ・ナハトムジークという作品名は知らなくとも、特に第1楽章の冒頭のテーマを聴い たことのない方はほとんどいないのではないでしょうか。あらゆるクラシック作品の中でも1位を争う くらい、誰にでも知られている超有名曲です。 その第1楽章冒頭のテーマからしてモーツァルトの旋律美がつまりにつまった名曲で、全4楽章とも、 その純音楽的な美しい魅力にとりこにならずにはいられないでしょう。 すべての楽章に魅力的な旋律があり、覚えやすく、演奏時間も短いですので、クラシック入門用として はうってつけの曲、いえ、ベストを争う1曲と言えるのではないでしょうか。「アイネクライネ」の愛 称で呼ばれます。 その割には、作曲背景、意図などは全く知られていない謎の作品でもあります。 ちなみに、アイネ・クライネ・ナハトムジークとは eine kleine nacht musik というドイツ語で、 アイネは英語の a 、クライネは little 、ナハトは night 、ムジークは music なので、a little night music つまり、日本語では「小さな夜の音楽」という訳になります。 |
ディヴェルティメントという作品名の後にある「K」は、モーツァルトの作品番号です。ケッヘルと読 めばマニアっぽいですが、ケーだけでも構いません。ベートーヴェンはOPで、バッハはBWVである のも同様です。曲を作品番号で呼ぶのは、このモーツァルトの3つのディヴェルティメントくらいです。 CDではほぼ全部といっていいほどK136、K137、K138がセットで入っていますので、ここ でも3つまとめてご紹介することとしました。それぞれ3つの楽章からなるので、計9曲です。 「アイネクライネ」と並び、モーツァルトの弦楽合奏曲としては最も美しく、親しみやすい旋律美をも っている作品の一つです。。特にK136の第1楽章の弦の流麗さといったら美しさの極みで、冒頭の テーマをご存じの方も多いのではないでしょうか。第2楽章の陶酔的な旋律美も特筆ものです。 また、演奏時間の短さもあって、初心者、入門者の方にはうってつけの作品でもあります。 「3つのディヴェルティメント」と呼ばれることもありまして、また、稀に「ザルツブルク・シンフォ ニー」と呼ばれることもあります。その時は、「ザルツブルク・シンフォニー 第1番、第2番、第3 番」と呼びますが、作品番号で呼ぶのが一般的です。 |
前述のK136、K137、K138と違いまして、この作品は「ディヴェルティメント第17番」と 呼ばれる一つの作品で、6つの楽章から成ります。前述の3つのディヴェルティメントほど有名な作品 ではないのですが、モーツァルティックな旋律に溢れた魅力的な作品です。モーツァルトファンの方な らば絶対に聴いておきたいところです。 第3楽章は「モーツァルトのメヌエット」と呼ばれていまして、中でも一番有名な曲で、ヴァイオリン 独奏で弾かれることもあります。冒頭の旋律が何とも言えずチャーミングです。 |
「ポストホルン」とは、郵便馬車の信号楽器のことで、第6楽章で使われている楽器を指しています。 大学の終了式用の音楽と言われています。 モーツァルトがマンハイム・パリ旅行から帰った直後に作曲され、旅行の成果が反映されている作品で す。 成果というのは、マンハイム学派と言いまして、管楽器を中心とした協奏交響曲(詳しくはこちらをご 参照下さい)というジャンルを確立した学派があるのですが、その協奏交響曲的要素がこの作品に色濃 く表れているからです。 6楽章構成ですので、演奏時間は約40分です。モーツァルトの管弦楽曲としては大作の部類に入りま す。 |
モーツァルトには、交響曲第35番「ハフナー」という作品もあります。共にハフナー家のために作曲 された作品ですが、それ以上の関係はありません。このセレナード第7番「ハフナー」は、ハフナー家 の長男の結婚式前夜祭用に作曲されました。 ザルツブルクのセレナードの典型的な様式に基づいているとされていますが、それは、多楽章編成(全 部で8楽章あります)、大きな編成、協奏楽章の挿入(第2〜4楽章)、複数のメヌエット楽章(第3、 第5、第7楽章)のことです。 全楽章で約1時間ですので、大変大規模なセレナードとなっています。 |
これぞ室内楽曲、すなわち弦楽四重奏=カルテットの代表ともいえる、6つをまとめたモーツァルトの 「ハイドン・セット」は、弦楽四重奏曲第14番から第19番までの6つの作品の総称です。 名前の由来は、モーツァルトがハイドンの「ロシア弦楽四重奏曲」に触発されて作曲したことにありま して、6つの関連性については何もないとは言えず、依然研究中のようです。 6つの作品はそれぞれ4つの楽章から成りますので、合わせて24曲です。 代表的なものをご紹介します。 まず、第14番は、「ハイドン・セット」の記念すべき始まりの作品で、抒情溢れるモーツァルティッ クな旋律が魅力的です。第15番は唯一の短調の作品で、やはり全体的に暗いムードです。モーツァル トは、よくこうして明と暗の対照を意識的に楽しみましたので、そういった作曲意図なのではないかと 言われています。 次は、最もポピュラーな第17番「狩」。これは第1楽章の第1主題が狩場の信号のラッパを連想させ ることから、後に付けられた愛称です。とにかく、快活で親しみやすい旋律は、カルテットの醍醐味そ のものと言える作品で、弦楽器ファンの心を惹きつけて止まず、効果満点です。 最後の第19番には「不協和音」という副題がついています。第1楽章冒頭部や主題が、いかにも混沌 としていることから名付けられましたが、天才モーツァルトがそんな不始末をするわけがなく、印刷ミ スという説も流れたほどです。真相は未だ謎のままですが、モーツァルトの伝家の宝刀の「おあそび」 なのでしょうか? というわけで、純粋に、ヒーリング音楽としてもいいですし、また小規模の作品の割には、アンサンブ ルとしての構成が高度で緻密なものらしいですので、「聴き比べ」も面白いと言われています。 |
弦楽五重奏曲はQUINTET(クィンテット)とも言います。弦楽四重奏曲、すなわちQUARTE T(カルテット)に比べますと、圧倒的に曲数が少ないですし、演奏団体も少ないです。共に室内楽の 弦楽重奏の代表的な演奏スタイルで、カルテットはヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1の編成が一 般的ですが、クィンテットは、カルテットの編成に、ヴィオラかチェロがもう一人加わります。稀に、 コントラバスが加わることもあります。 モーツァルトの弦楽五重奏曲は6作品ありまして、すべてヴィオラが2つという編成です。 そして、6作品の中で、最も人気が高いのが、この第4番です。 この作品の魅力は、調性に尽きるとも言われています。モーツァルトが短調では頻繁に用いるト短調に よって第1楽章の冒頭が書かれていまして、小林秀雄は「モーツァルトのかなしさは疾走する」と表現 しました。 第4楽章もト短調の悲痛な序奏から始まるのですが、そこから一変してト長調の明るい曲調となり、幕 を閉じます。この調性の妙が、効果抜群の作品です。 |
クラリネット五重奏曲とは、クラリネット5本による合奏ではなく、弦楽四重奏にクラリネットのソロ が加わったものです。モーツァルトにはクラリネット協奏曲という作品もありますが、クラリネットと いう楽器は弦楽合奏と非常に相性がよく、優雅な雰囲気を醸し出します。 しかしこの作品は、前出のディヴェルティメントのように、すべて明るさが充満した曲ではなく、第3 楽章、第4楽章では短調が突然現れ、モーツァルトの本心を垣間見せます。モーツァルトといいますと 明るい曲だけと考えるのは筋違いでして、時にはこの曲のように、「暗さ」が顔を出すこともあります。 たまには暗い、短調のモーツァルトに触れてみるのもいかがでしょうか。 ところが、この作品では、短調が現れたかと思うと、いつのまにか長調に戻ってしまいます。 モーツァルトのネアカな面が出ているのです。 |
この作品はクラシック音楽の中ではかなりマイナーな作品ですが、モーツァルトファンならば知ってい る方も多いと思われますし、異色中の異色の作品ですので、思い切って採り上げてみました。 簡単にご紹介しますと、4楽章構成の管弦楽曲で、曲名の通り、音楽によって聴き手を笑わせようとい う、天才モーツァルトの面目躍如たる作品です。 タイトルはもちろん、モーツァルト自身がつけました。 どこが面白いのかといいますと、「当時の」下手な作曲家のやりそうなことや、下手な演奏家のやりそ うなことをあえて実現することで、皮肉っている点です。「当時の」という点が大事でして、当時の定 番であった音楽の形式に基づいての作曲ができない下手さ加減を皮肉ったり、当時の流行だった演奏が できないことを皮肉っているのでありまして、21世紀の今ではあまり笑えないという説もあります。 よって、当時の音楽を学究的に知っている方であればかなり笑えるでしょう。音楽の形式などについて の専門的な説明は他のサイトをあたって下さい。その意味では上級者の方向けの作品でもあります。 ですが、ここではあくまでクラシック鑑賞者の方にも分かりやすくご説明します。この作品は、断じて 真面目にクラシック音楽鑑賞をしてはいけません。「何か今の変だな?」と思うところがあればOKで す。音楽として違和感を感じるところです。モーツァルトはわざとそういう楽譜を書いたのです。 主な笑いどころは、突然出だしの場所を間違えて音をだす楽器、あきらかな不協和音、弦が演奏中に切 れてしまう独奏ヴァイオリン、そして最後の第4楽章の終わり方などです。 なお、天才作曲家モーツァルトは、このような「おあそび」の作曲が大好きな人でもありました。音楽 の化身としての余裕なのでしょうか。 |