20世紀以降の世界的ヴァイオリニスト達





  オイストラフ  ヴァイオリン  1908〜1974  OISTRAKH  S  ウクライナ
 
 オイストラフは、モノーラル録音の19世紀生まれの巨匠達と現役の演奏家達の、中間に位置  する世代の代表的なヴァイオリニストです。  芸風は、若々しく、明るく楽天的なところで、シゲティのようなわび、さびの世界を感じさせ  る奏法とは対照的です。かといって、クライスラーのように甘美極まりない弾き方もしません  ので、スマートな奏法ではありますが、クレーメルのように冷たい音色でもありません。  よって、一部のファンにうけるタイプではなく、大衆的な人気がありました。  名盤も多く、下の推薦盤にご紹介しているように、有名なヴァイオリン協奏曲には評価の高い  演奏がズラリと顔を揃えています。  オイストラフはライブ、つまり実演で燃えるタイプであったと言われています。サービス精神  も旺盛だったそうですので、人気があったのもうなずける話です。  音が明るく、表現も解りやすいですので、初心者の方にもお薦めのヴァイオイニストです。
チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」第1楽章
 ☆推薦盤☆  ・チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲/オーマンディ(59)(SONY)     A  ・ブラームス ヴァイオリン協奏曲/セル(69)(ワーナー)            A  ・ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲/クリュイタンス(58)(ワーナー)     A  ・ベートーヴェン Vnソナタ第5番「春」/オボーリン(p)(62)(デッカ)    A  ・ベートーヴェン Vnソナタ第9番「クロイツェル」/ 〃 (p)(62)(デッカ) A   *ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは同じCDです。     <明るい><実演派>

  グリュミオー  ヴァイオリン  1912〜1986  GRUMIAUX  A  ベルギー

20世紀を代表するヴァイオリニストのグリュミオーは、戦後になってからソリストとしての  評判が一気に高まった、比較的遅咲きのヴァイオリニストです。そして、ピアニストのハスキ  とのデュオで一世を風靡したのですが、1960年にハスキルが急逝すると、演奏家として  虚脱感に見舞われてしまったようです(夫婦ではありません)。  グリュミオーは非常に広いレパートリーを誇りました。古典派に始まり、20世紀の現代音楽  までをもレパートリーとしていました。よって名盤も多いです。  グリュミオーの芸風は、何と言っても艶やかで気品のある音色で、旋律を豊麗に歌わせる点に  ありました。  有名なヴァイオリンの最高の名器の一つ、ストラディバリウスの魅力を最大限に活かした芸風  でした。よって、モーツァルトなどはまさにピッタリで、ここに挙げた推薦盤は、モーツァル  トの粋ともいえる名演ばかりです。   今では、クレーメルファウストらのモーツァルトの名盤が登場した以上、手放しでグリュミ  オーがすべて最高という訳にはいきませんが、元祖、モーツァルト弾きのヴァイオリニストと  言ったらグリュミオーなのです。  かすかに憂いを漂わせている演奏は絶品です。
モーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第3番」
 ☆推薦盤☆  ・サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番/ロザンタール(63)(デッカ)   SS  ・パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番/ベルージ(72)(デッカ)        A  ・ベルク ヴァイオリン協奏曲/マルケヴィチ/アムステルダムCG(67)(デッカ) B  ・モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番/デイヴィス(61)(デッカ)      S  ・モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ集/ハスキル(P)(56、58)(デッカ)    ・モーツァルト 弦楽五重奏曲第4番/ゲレッツ(Vn)他(73)(デッカ)     A  ・ラロ スペイン交響曲/ロザンタール(63)(デッカ)             SS     <美音><気品><モーツァルト◎>

  シェリング  ヴァイオリン  1918〜1988  SZERYNG  A  ポーランド

シェリングは、何といってもバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」  の名手と言われ、この楽曲は代名詞でもありました。不朽の名盤を残しました。  そして、室内楽においては、大ピアニスト、ルービンシュタインのお気に入りのパートナーと  され、名演奏を聴かせました。  シェリングはオーソドックス、オールラウンダーなヴァイオリニストだったと言えます。  というのも、ヨーロッパ各地を転々とし、各地の音楽を肌で吸収していったところにあります。  それゆえ、折衷的な演奏スタイルをもち、どんな時代の、どんな地域の音楽も弾きこなす器用  さがありました。レパートリーも幅広く、名盤も多いです。  巧みな弓使いとテクニックは、ハイフェッツの音色のつやを連想させ、ベートーヴェンの演奏  においては、シゲティの精神性の高さを連想させると言われました。  また、クライスラーの作品のような小品においても、常に格調の高さは保ちつつ、典雅な音色  や節回しに富んだ演奏を好んだと言われています。
バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」ソナタ第1番第2曲
 ☆推薦盤☆   ・クライスラー ヴァイオリン小品集/ライナー(P)(63)(マーキュリー)    A  ・シベリウス ヴァイオリン協奏曲/ロジェストヴェンスキー(65)(フィリップス) A  ・バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ/(67)(グラモフォン)A  ・バッハ Vnとチェンバロのためのソナタ全集/ヴァルヒャ(69)(デッカ)     A  ・バッハ ヴァイオリン協奏曲集/マリナー(76)(デッカ)            A  ・パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番/ギブソン(75)(デッカ)        A  ・ベルク ヴァイオリン協奏曲/クーベリック バイエルン放送SO(68)(Gフォン)A  ・ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番「大公」/            フルニエ(Vc)ケンプ(P)(70)(グラモフォン)      A      <甘美><気品><レパートリー広>

  ミルシテイン  ヴァイオリン  1903〜1992  MILSTEIN  B  ウクライナ

 これは!という特筆すべき録音は残してないものの、ミルシテインは20世紀の傑出したヴァ  イオリニストの一人でして、「ヴァイオリンの貴公子」と呼ばれました。  結局来日することはなく、またCDも実演に比べて上手く録音されていないこともあり、日本  での評価は本場ほどではないのが残念です。  芸風は、ハイフェッツに代表される超絶技巧と、常に違った演奏スタイルを模索する点を兼ね  備えているものでした。後者についてご説明しますと、弦楽器を弾かれる方はすぐにお分かり  になると思いますが、ヴァイオリンという楽器はピアノと違って、同じ音を出すのにもいくつ  かの指の押さえ方があります。弦が4本ありますので、最高で4つの指の押さえ方をする音も  あります。そして、どの指を使うかで、微妙に音色が違ってきます。ミルシテインは、弾くた  びにこの音色の違いを活用しました。  同じメロディーでも、聴衆は聴く時によって違う音色を楽しめたのです。つまり、ミルシテイ  ンは聴衆に「聴かせる」「聴いてもらう」ことに最大の重きをおいた、サービス精神旺盛なヴ  ァイオリニストだったのです。  ゆえに、聴衆を前にしてこそ個性が発揮されるヴァイオリニストであって、1パターンしか聴  けないCDでその真価をはかろうということには無理があります。冒頭で触れましたように、  これは!という録音が残されていないのもそれが大きな原因でしょうか。  現在、我々はCD等でしか演奏を知るすべがないのが残念です。
バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」
パルティータ第2番第5曲
   ☆推薦盤☆  ・サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番/フィストゥラーリ(64)(EMI)  A  ・チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲/アバド(72)(グラモフォン)      B  ・ブラームス ヴァイオリン協奏曲/ヨッフム VPO(74)(グラモフォン)    A  ・メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲/アバド(73)(グラモフォン)      A   <技巧派><超即興派><実演派>


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