オイストラフは、モノーラル録音の19世紀生まれの巨匠達と現役の演奏家達の、中間に位置 する世代の代表的なヴァイオリニストです。 芸風は、若々しく、明るく楽天的なところで、シゲティのようなわび、さびの世界を感じさせ る奏法とは対照的です。かといって、クライスラーのように甘美極まりない弾き方もしません ので、スマートな奏法ではありますが、クレーメルのように冷たい音色でもありません。 よって、一部のファンにうけるタイプではなく、大衆的な人気がありました。 名盤も多く、下の推薦盤にご紹介しているように、有名なヴァイオリン協奏曲には評価の高い 演奏がズラリと顔を揃えています。 オイストラフはライブ、つまり実演で燃えるタイプであったと言われています。サービス精神 も旺盛だったそうですので、人気があったのもうなずける話です。 音が明るく、表現も解りやすいですので、初心者の方にもお薦めのヴァイオイニストです。 チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」第1楽章 ☆推薦盤☆ ・チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲/オーマンディ(59)(SONY) A ・ブラームス ヴァイオリン協奏曲/セル(69)(ワーナー) A ・ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲/クリュイタンス(58)(ワーナー) A ・ベートーヴェン Vnソナタ第5番「春」/オボーリン(p)(62)(デッカ) A ・ベートーヴェン Vnソナタ第9番「クロイツェル」/ 〃 (p)(62)(デッカ) A *ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは同じCDです。 <明るい><実演派>
20世紀を代表するヴァイオリニストのグリュミオーは、戦後になってからソリストとしての 評判が一気に高まった、比較的遅咲きのヴァイオリニストです。そして、ピアニストのハスキ ルとのデュオで一世を風靡したのですが、1960年にハスキルが急逝すると、演奏家として 虚脱感に見舞われてしまったようです(夫婦ではありません)。 グリュミオーは非常に広いレパートリーを誇りました。古典派に始まり、20世紀の現代音楽 までをもレパートリーとしていました。よって名盤も多いです。 グリュミオーの芸風は、何と言っても艶やかで気品のある音色で、旋律を豊麗に歌わせる点に ありました。 有名なヴァイオリンの最高の名器の一つ、ストラディバリウスの魅力を最大限に活かした芸風 でした。よって、モーツァルトなどはまさにピッタリで、ここに挙げた推薦盤は、モーツァル トの粋ともいえる名演ばかりです。 今では、クレーメル、ファウストらのモーツァルトの名盤が登場した以上、手放しでグリュミ オーがすべて最高という訳にはいきませんが、元祖、モーツァルト弾きのヴァイオリニストと 言ったらグリュミオーなのです。 かすかに憂いを漂わせている演奏は絶品です。 モーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第3番」 ☆推薦盤☆ ・サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番/ロザンタール(63)(デッカ) SS ・パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番/ベルージ(72)(デッカ) A ・ベルク ヴァイオリン協奏曲/マルケヴィチ/アムステルダムCG(67)(デッカ) B ・モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番/デイヴィス(61)(デッカ) S ・モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ集/ハスキル(P)(56、58)(デッカ) 伝 ・モーツァルト 弦楽五重奏曲第4番/ゲレッツ(Vn)他(73)(デッカ) A ・ラロ スペイン交響曲/ロザンタール(63)(デッカ) SS <美音><気品><モーツァルト◎>
シェリングは、何といってもバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」 の名手と言われ、この楽曲は代名詞でもありました。不朽の名盤を残しました。 そして、室内楽においては、大ピアニスト、ルービンシュタインのお気に入りのパートナーと され、名演奏を聴かせました。 シェリングはオーソドックス、オールラウンダーなヴァイオリニストだったと言えます。 というのも、ヨーロッパ各地を転々とし、各地の音楽を肌で吸収していったところにあります。 それゆえ、折衷的な演奏スタイルをもち、どんな時代の、どんな地域の音楽も弾きこなす器用 さがありました。レパートリーも幅広く、名盤も多いです。 巧みな弓使いとテクニックは、ハイフェッツの音色のつやを連想させ、ベートーヴェンの演奏 においては、シゲティの精神性の高さを連想させると言われました。 また、クライスラーの作品のような小品においても、常に格調の高さは保ちつつ、典雅な音色 や節回しに富んだ演奏を好んだと言われています。 バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」ソナタ第1番第2曲 ☆推薦盤☆ ・クライスラー ヴァイオリン小品集/ライナー(P)(63)(マーキュリー) A ・シベリウス ヴァイオリン協奏曲/ロジェストヴェンスキー(65)(フィリップス) A ・バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ/(67)(グラモフォン)A ・バッハ Vnとチェンバロのためのソナタ全集/ヴァルヒャ(69)(デッカ) A ・バッハ ヴァイオリン協奏曲集/マリナー(76)(デッカ) A ・パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番/ギブソン(75)(デッカ) A ・ベルク ヴァイオリン協奏曲/クーベリック バイエルン放送SO(68)(Gフォン)A ・ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番「大公」/ フルニエ(Vc)ケンプ(P)(70)(グラモフォン) A <甘美><気品><レパートリー広>
これは!という特筆すべき録音は残してないものの、ミルシテインは20世紀の傑出したヴァ イオリニストの一人でして、「ヴァイオリンの貴公子」と呼ばれました。 結局来日することはなく、またCDも実演に比べて上手く録音されていないこともあり、日本 での評価は本場ほどではないのが残念です。 芸風は、ハイフェッツに代表される超絶技巧と、常に違った演奏スタイルを模索する点を兼ね 備えているものでした。後者についてご説明しますと、弦楽器を弾かれる方はすぐにお分かり になると思いますが、ヴァイオリンという楽器はピアノと違って、同じ音を出すのにもいくつ かの指の押さえ方があります。弦が4本ありますので、最高で4つの指の押さえ方をする音も あります。そして、どの指を使うかで、微妙に音色が違ってきます。ミルシテインは、弾くた びにこの音色の違いを活用しました。 同じメロディーでも、聴衆は聴く時によって違う音色を楽しめたのです。つまり、ミルシテイ ンは聴衆に「聴かせる」「聴いてもらう」ことに最大の重きをおいた、サービス精神旺盛なヴ ァイオリニストだったのです。 ゆえに、聴衆を前にしてこそ個性が発揮されるヴァイオリニストであって、1パターンしか聴 けないCDでその真価をはかろうということには無理があります。冒頭で触れましたように、 これは!という録音が残されていないのもそれが大きな原因でしょうか。 現在、我々はCD等でしか演奏を知るすべがないのが残念です。 バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」 パルティータ第2番第5曲 ☆推薦盤☆ ・サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番/フィストゥラーリ(64)(EMI) A ・チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲/アバド(72)(グラモフォン) B ・ブラームス ヴァイオリン協奏曲/ヨッフム VPO(74)(グラモフォン) A ・メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲/アバド(73)(グラモフォン) A <技巧派><超即興派><実演派>