名曲案内〜協奏曲編W〜
(ベートーヴェン〜モーツァルト)



    
  協奏曲とは、オーケストラを伴奏に、ソロの演奏家が一人で演奏する形式をいい、ヴァイオリン
  協奏曲、ピアノ協奏曲などがあります。主に3つの楽章からなります。
  交響曲と違ってソリストが主役となるので、ソリストの演奏が存分に楽しめ、かつ重厚なオーケ
  ストラの響きも楽しめるという、贅沢なジャンルなのです。
  なお、協奏曲には「カデンツァ」といって、伴奏がストップしてソロだけが演奏する部分が一ヶ
    所ありますが、ソリストだけの演奏を楽しめるという意味で協奏曲の魅力の一つとなっています。
   *推薦盤にある(Vn)はヴァイオリン、(P)はピアノ、(Cl)はクラリネット、
    (Fl)はフルート、(Hp)はハープの略です。

ベートーヴェン   ・メンデルスゾーン   ・モーツァルト


協奏曲編T(ヴィヴァルディ〜シューマン)へ     ・協奏曲編U(ショパン〜ハチャトゥリアン)へ

協奏曲編V(バッハ〜プロコフィエフ)へ    ・協奏曲編X(YOSHIKI〜ロドリーゴ)へ




☆ベートーヴェン
ヴァイオリン協奏曲  ★★★
   
 ベートーヴェンが書いた唯一のヴァイオリン協奏曲であり、4大ヴァイオリン協奏曲の中の一つである。
 ゆえに、「ベトコン」と言ったらこの作品のことを指す。
 特に第1楽章は非常に優美な旋律をもった傑作であるが、作曲当時、36歳のベートーヴェンはヨゼフ
  ィーネに恋をしていたそうだ。
 彼女を想う優しい気持ちが、ベートーヴェンには珍しいこのような音楽を書かせたのだろうか。 

 ☆推薦盤☆
 ・クレーメル/アーノンクール ヨーロッパ室内管弦楽団(92)(テルデック)  A
 ・オイストラフ/クリュイタンス フランス国立放送管弦楽団(58)(EMI)  A
 ・シゲティ/ドラティ ロンドン交響楽団(61)(フィリップス)       ↑B
 ・ハイフェッツ/トスカニーニ NBC交響楽団(40)(RCA)        B
 
    この曲に関しては、クレーメルの新盤をとるかとらないかに問題がある。現在、世間での評判
   は頭一つ抜けているのだが、クレーメルは「奇才」という名の通り、個性が非常に強いヴァイ
   オリニストで、現代の先端をいっている。そして指揮者がアーノンクール。この二人が組んだ
   のだから、ただ事で済むはずがない。現に、カデンツァの楽譜がベートーヴェンの原版に手が
   加えられている。つまりオーソドックスではないのである。
   評判は高いが、初めてこの曲を聴く方にはどうだろう。もっと初心者向けの無難な名演はオイ
   ストラフ盤である。しかし、クレーメル盤には1000円という価格の魅力がある。
   よって、どうしてもクレーメル盤が嫌だという方でなければ、やはりクレーメル盤をお薦めす
   ることにしたい。オーソドックスな演奏を聴きたい方にはオイストラフ盤がお薦め。
   次に、この曲を愛する方に歴史的演奏を2枚紹介しよう。
   シゲティ盤はブラームスと同じく、わび、さびの世界に近いものがある。技術の衰えは痛まし
   いほどだが、その感情の込め方の精神的な高さ、武骨な響きはベートーヴェンの音楽の一つの
   側面ではないだろうか。ピアニストのバックハウスと同様、こういう演奏に感動できれば、ベ
   ートーヴェンの音楽を聴く幅が広がると思う。あまりにテクニックが劣っているので評論家筋
   でも推薦している人はわずかのようだが、やはり解る方には解る演奏なので、B評価とした。
   もちろん無理にはお薦めしない。ましてやこの曲を初めて聴く方には全く不向きなCD。
   ハイフェッツ盤はトスカニーニと組んだ超豪華コンビによる演奏である。1940年の録音な
   ので当然音は貧しいが、歴史的録音としてもっておきたい1枚である。

ピアノ協奏曲第5番「皇帝」  ★★
   
 ベートーヴェンはピアノ協奏曲を5曲書いたが、その中の最高傑作として名高いのがこの第5番「皇帝」
 で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲と並び、このジャンルにおける最高傑作の誉れ高い名作である。
 私個人的にはこちらの方がシンフォニックで好きである。
 しかし、この作品が「ベトコン」と呼ばれることはまずない。
 「皇帝」の名の通り、まことにスケール雄大な第1楽章、主題を次々と変奏させていく第3楽章ともに
 魅力的だ。中にはこの第5番「皇帝」ではなくて、第4番の方が優れているのではないかという評価も
 あるが、第4番はいささか地味であり、よりベートーヴェンらしい「皇帝」の方から聴き始めるべきだ
 と思う。

第1楽章
 ☆推薦盤☆  ・ブレンデル/レヴァイン シカゴ交響楽団(83)(フィリップス)   A  ・ルービンシュタイン/バレンボイム ロンドンフィル(75)(RCA) A  ・グルダ/シュタイン ウィーンフィル(70)(デッカ)        A 売れてます!        この曲のCDはブレンデル盤が頭一歩抜け出しており、それにルービンシュタイン盤とグルダ    盤が続くという構図になっている。従って、1枚お薦めするとなるとブレンデル盤ということ    になるのだが、他の2枚にもそれぞれ魅力があるので、私はブレンデル盤にはこだわらない。    自分好みの演奏を選んでいただければと思う。ブレンデル盤のリンク先はHMV。    ルービンシュタイン盤は何と88歳での録音であるが、さすが超一流だけあって、威風堂々、    そのスケールの大きさはブレンデル盤を凌駕している。    グルダ盤は切れ味鋭いピアニズムで、快刀乱麻を断つような豪快さは、ブレンデル盤を上回る    といってもいいだろう。個人的にはこの演奏がお薦め。  
☆メンデルスゾーン
ヴァイオリン協奏曲  ★★
   
 4大ヴァイオリン協奏曲の一つ。ちなみに、この4曲は、「チャイコン」「ブラコン」「ベトコン」そ
 してこの「メンコン」の略称で呼ばれる。ところで、略称というのはクラシックの世界では常識である。
 どの単語もなるべく短く略そうとするので、慣れた方がいいと思う。一時期の女子高生言葉のようだ。
 「メンコン」は第1楽章冒頭の旋律でよく知られているので、この部分だけで言えば、4大ヴァイオリ
 ン協奏曲の中でも最も有名な曲ということになるだろうか。
 ちなみに、ヴィヴァルディの「四季」もバロック音楽ゆえに形式は異なるが、ヴァイオリン協奏曲に属
 するので、最も有名なヴァイオリン協奏曲はダントツで「四季」ということになる。
 「メンコン」は有名ではあるが、あまり深みがないので、特に上級者の方は飽きがきやすい。

第1楽章
 ☆推薦盤☆  ・ハイフェッツ/ミュンシュ ボストン交響楽団(59)(RCA)  SS かなり売れてます!  ・スターン/オーマンディ フィラデルフィア管弦楽団(58)(SONY)   A  ・チョン・キョンファ/デュトワ モントリオール交響楽団(81)(デッカ)  B 売れてます!  ・ミルシテイン/アバド ウィーン・フィル(73)(グラモフォン)      B  ・クライスラー/ブレッヒ ベルリン国立歌劇場管弦楽団(26)(ナクソス)  A    一般に、小品集でなく、協奏曲なりのクラシック曲をCDとして録音しているヴァイオリニス    トの中で、この曲を録音していない人がいるのかどうかというほどの常連中の常連曲。CDは    おびただしい数にのぼると推測される。    「メンコン」もハイフェッツの演奏が圧倒的に評判がいい。「ブラコン」のように哀愁たっぷ    りに弾いてほしい曲ではハイフェッツの演奏では物足りなさがあるのだが、「メンコン」はそ    こまで要求される曲ではないので、淡々と進めていく彼のスタイルでも構わないと思う。従っ    て、当然このCDがあれば他はいらないほど。しかも、この「メンコン」が入ったCD、先に    触れたように、泣く子も黙る彼の「チャイコン」とのカップリングなのだ。おまけにこのCD    には、チャイコフスキーの「弦セレ」第2楽章のワルツをアレンジしたものまで入っていて、    超オススメのCDなのである。よほどハイフェッツが嫌いな方以外は黙って1700円出そう。    しかし。それでも彼の演奏が淡白に思える方のために、3枚用意した。    スターン盤は、録音年は58年でハイフェッツより古いが、もちろんステレオである。古くか    ら、名手スターンの代表盤として、「メンコン」の名盤の常連として君臨してきたCD。    ハイフェッツの演奏がお好みでない方にはまずこのCDがお薦め。    音質が気になる方には、チョン・キョンファ盤をお薦めしたい。カップリングのブルッフのコ    ンチェルトは、同曲ベストを争う名演。    「ヴァイオリンの貴公子」ミルシテインのCDは、4大ヴァイオリン協奏曲が2枚にまとめら    れたもの。それぞれが彼の録音でベスト評価を得ている演奏という、彼のファンにとってはた    まらない逸品で、お値段も3000円を切っているとくれば、文句は言えまい。    最後に、クライスラーの歴史的録音を紹介。彼の音色の甘美なこと。旋律の味わい深さは比類    がなく、古くから名盤として語り継がれてきたもの。現在でもA評価というのは驚きである。    正直、1926年録音なので、蚊の泣く様な音である。この録音は以前、EMIから国内盤で    発売されていて、音の悪さは有名だった。鑑賞向きではないかもしれない。この音質の悪さに    我慢できる方は、既に相当なクラシック上級者だろう。    現在は輸入盤しかなく、リンク先はHMVである。輸入盤によっては雑音がひどく、とても鑑    賞どころではない物もあるが、このCDは私が確認したので大丈夫である。    間違えても、「メンコン」を初めて聴く方が買うCDではなく、この曲を聴き込んだ方が、歴    史的名盤として、大ヴァイオリニスト、クライスラーの至芸を味わうためのCDである。
☆モーツァルト
ヴァイオリン協奏曲第3番〜第5番  ★★★
   
 実に様々な作曲家がヴァイオリン協奏曲を作曲している中、ベトコン、ブラコン、メンコン、チャイコ
 ンが4大ヴァイオリン協奏曲と呼ばれ、5つも作曲しているモーツァルトのヴァイオリン協奏曲はその
 下におかれる。
 5つ作曲されたことはわかっているのだが、それ以降は詳細が不明なため、演奏されるのは第3番から
 第5番の3つが断然多い。いずれもモーツァルティックな魅力に溢れているので、モーツァルトファン
 は必聴といったところだ。

 ☆推薦盤☆
 ・グリュミオー/ディヴィス ロンドン交響楽団(61、62)(フィリップス)       S
 ・クレーメル/アーノンクール ウィーンフィル(84、87)(グラモフォン)       A
 ・デュメイ/弾き振り ザルツブルク・カメラータ・アカデミカ(96)(グラモフォン)   A
    
   このヴァイオリン協奏曲集に関しては、3者のCDの評価が抜きん出ており、他の演奏が食い
   込む余地はないようだ。まずはこれら3枚の中から選びたい。
   グリュミオー盤は、歌の流麗さ、音色の艶やかさがズバリ、モーツァルトにハマっており、最
   も無難、最も模範的な演奏。グリュミオーの個性が存分に活きている演奏である。
   他の2名をも完全に突き放した断然のS評価だけに、この協奏曲を初めて聴く方は、まずこの
   CDからお薦めしたい。
   クレーメル盤、デュメイ盤は横並びの評価といったところ。クレーメルはアーノンク−ルと組
   んだ演奏は評判が高いものが多いが、このCDもアーノンクールの個性が出ており、多少お遊
   び的な部分がある。デュメイは、彼の持ち味である豊麗な音色が十二分にモーツァルトの美し
   い旋律を歌わせており、曲の魅力を満喫できる。時折、デュメイなりの新鮮な解釈も顔を出し
   て効果を上げている。リンク先はHMV。
   この両者の演奏はいずれも個性が強いので、グリュミオー盤の他にもう1枚欲しい方、あるい
   はクレーメルやデュメイのファンの方は、まずこちらがお薦め。

協奏交響曲 K364  ★★★
   
 「協奏」「交響曲」とは、一体何ものなのだろうか。一風変わったジャンルだけに、ここで紹介したい。
 最も有名なのはモーツァルトのこの作品で、ハイドンなどにも作品はあるが、耳にすることはほとんど
 ない。この曲のタイトルに「K364」という表記がついているが、これは、モーツァルトの作品には
 協奏交響曲が2曲あり、もう片方は偽作の疑いがあって、「K297b」という表記がついているので、
 そちらと間違えないためである。モーツァルトの「協奏交響曲」と言ったら、一般的にこちらを指す。
 協奏交響曲とは、伴奏のオケと、「複数の」独奏楽器による曲のことを言う、協奏曲の変形である。独
 奏楽器はそれこそ曲によって様々。となると、ベートーヴェンの三重協奏曲やブラームスの二重協奏曲
 も、呼び方は違えども、形式は協奏交響曲と同じということになる。なお、ショスタコーヴィチのピア
 ノ協奏曲第1番も、ピアノと共にトランペットも独奏楽器的な役割を担っているので、厳密に言えば協
 奏交響曲であるらしい。
 さて、この曲は、ヴァイオリンとヴィオラという、弦楽器2本が独奏楽器となっている。オケをバック
 に、ヴァイオリンとヴィオラの掛け合いが魅力的な曲。曲風は、いつものモーツァルト調である。

 ☆推薦盤☆
 ・クレーメル/アーノンクール ウィーンフィル(83)(グラモフォン)       SS
 ・デュメイ/弾き振り ザルツブルク・カメラータ・アカデミカ(96)(グラモフォン) S
 ・クイケン/弾き振り ラ・プティット・バンド(95)(デッカ)           A
 ・ブランディス/ベーム ベルリンフィル(64)(グラモフォン)           B
 ・五嶋みどり/エッシェンバッハ 北ドイツ放送響(00)(SONY)         B

   完全にトップ評価、断然の1枚なのがクレーメル盤。アーノンクールとのコンビでは名盤を輩
   出しているが、この曲においてもダントツ。値段もお手ごろで、文句なしのイチオシ盤。
   続くデュメイ盤も魅力たっぷりだが、推薦盤5枚の中では一番お高いのが欠点。デュメイファ
   ンにはお薦め。
   クイケン盤は、おなじみ古楽器バンドによる演奏なので、古楽器で聴きたい方向け。ヴィオリ
   ストでもあるクイケンが満を持して登場。お値段もお安い。
   ブランディス盤は、ベルリン・フィルのヴァイオリンとヴィオラの首席奏者がソリストを務め、
   ベームが指揮をしたという豪華キャストによるもの。A評価に近いが、一番の魅力は1000
   円というお値段。お値段重視の方にはこれがお薦め。
   最後は、ヴァイオリンが五嶋みどり、そしてヴィオラが、日本が世界に誇る今井信子(サイト
   ウ・キネンOにも所属)という、我々日本人にとっては夢のような共演。如何せんB評価であ
   るし、お値段もややお高いのだが、つい応援したくなる魅力を持ったCD。   

ピアノ協奏曲第20番  ★★★
   
 モーツァルトは様々なジャンルにおいて多くの名曲を残したが、ピアノ協奏曲というジャンルは彼の作
 品の中でも重要な位置を占める。自分がピアノを習った経験がないと、どうしても交響曲や管弦楽曲に
 興味が行きがちだが、ピアノ協奏曲というジャンルは、ピアノとオーケストラの共演であるから、非常
 に贅沢なジャンルである。中には1つの楽章が長く、退屈してしまう楽曲もあるが、モーツァルトのピ
 アノ協奏曲は、他の作曲家と比べて比較的短く、旋律がチャーミングなのが特徴。モーツァルトの楽曲
 の魅力の大きな部分を占めているジャンルなのである。楽曲数は27と多いが、本当に有名な曲はごく
 一部なので、ぜひ彼のピアノ協奏曲に触れてほしいと思う。
 彼のピアノ協奏曲の中で一番ポピュラーなのは、この第20番である。彼の曲はどのジャンルをとって
 も長調がほとんどなのだが、この第20番は短調である。彼にしては珍しい暗さが人気なのか。
 曲調は、叙情的な第2楽章を除けば、まさに慟哭そのもの。この「第20番」は彼にしては珍しく、聴
 衆のことを考えずに、内面を吐露した曲であるが、弦の突き刺さるようなダイナミズムは聴いていて痛
 ましささえ感じる。交響曲第40番のような詠嘆の調べというよりはむしろ、交響曲第25番のような
 感傷的な曲である。

                      
              第1楽章              第2楽章
 ☆推薦盤☆
 ・グルダ/アバド ウィーンフィル(74)(グラモフォン)        A 売れてます!
 ・ハスキル/マルケヴィチ ラムルー管弦楽団(60)(フィリップス)   A
 ・バレンボイム/弾き振り ベルリンフィル(88)(テルデック)     B
    
   グルダ盤とハスキル盤が並んでトップの評価を受けている。この2枚のうちどちらかがまずは
   お薦め。世間の評判は今のところ本当にどちらともいえないので、好みで選んでいただくしか
   ないといったところ。価格は、グルダ盤の方が安い。
   あえてバレンボイム盤を推薦したのは、演奏の評判は1ランク落ちるのだが、ピアノ協奏曲第
   20番〜第23番まで4つが入っている2枚組で、その割にはお安い(1900円)からであ
   る。第23番までの他の3曲も魅力たっぷりなので、このCDはかなりお得だと思う。

ピアノ協奏曲第21番  ★★★
  
 ピアノ協奏曲第20番の一ヵ月後に作曲された作品。モーツァルトのピアノ協奏曲の中でポピュラーな
 ものといえば、やはり第20番と第27番が双璧で、その後に第23番、第26番、そしてこの第21
 番あたりになるのだが、曲全体の印象としては、祝祭的で優雅な第23番、第26番に遅れをとってい
 るだろう。
 しかし、この第21番には、モーツァルトのピアノ協奏曲の中では最も有名と言ってもいい、第2楽章
 がある。この楽章は、映画にも使われたので、ご存知の方も多いのでは。
 第1楽章は、モーツァルトのピアノ協奏曲にしてはシンフォニックで、オケに厚みがあり、聴き応えは
 あるものの、やや冗長になるのが欠点。その分、第2楽章はヒーリング音楽の粋と言ってもいいくらい
 の魅力に溢れている。

第2楽章
 ☆推薦盤☆  ・グルダ/アバド ウィーン・フィル(74)(グラモフォン)             S  ・リパッティ/カラヤン ルツェルン音楽祭管弦楽団(50)(EMI)         S  ・バレンボイム/弾き振り ベルリン・フィル(86)(テルデック)          A       同じS評価であるが、グルダ盤がベスト盤である。というのは、リパッティ盤は、何より音質    がひどい。確かに、演奏自体は絶品と言ってもいい程で、特に第2楽章は、彼の「リパッティ    ・マジック」が炸裂しており、これ程繊細なタッチで弾かれると、天国的から奏でられている    よう。多くの評論家が票を投じているのもうなずける。しかし、音質だけは覚悟が必要。かな    り古い音質に慣れている方でないと、最悪、彼のピアノの音色さえ濁って聴こえるので、演奏    の魅力はもとより、楽曲の魅力さえ感じられないかもしれない。もちろん、初心者の方にはお    薦めできない。この楽曲を演奏のみ重視で聴きたい方にはお薦め。    その点、グルダは、モーツァルトのピアノ協奏曲に必要とされる要素を完璧にと言っていい程    兼ね備えていて、万人向けの演奏。第一にお薦め。カップリングは第20番なので、CDとし    てもお得である。    バレンボイム盤は、こちらも演奏は1ランク落ちるのだが、ピアノ協奏曲第20番〜第23番    まで4つが入っていて2枚組で1900円なので、CDとしてはかなりお薦め。
ピアノ協奏曲第23番  ★★
  
 ピアノ協奏曲第20番は人気があるので採り上げたが、短調の曲なので、モーツァルトの曲を紹介する
 サイトとしては、やはり長調の曲も紹介しなければいけないと思う。
 ここで紹介するのはピアノ協奏曲第23番である。第1楽章は非常にチャーミングで、まさにモーツァ
 ルティックなムードが充満している。また、第3楽章のロンドも主題が多彩で魅力的。

第1楽章
 ☆推薦盤☆  ・グルダ/アーノンクール アムステルダム・コンセルト・ヘボウ(83)(テルデック) S  ・ポリーニ/ベーム ウィーンフィル(76)(グラモフォン)             A  ・バレンボイム/弾き振り ベルリンフィル(89)(テルデック)           B       グルダ盤が一歩抜け出した評価を受けていて、ポリーニ盤がそれに次ぐという図式が定着して    いるようだ。グルダの演奏は、さすがにモーツァルトのコンチェルトの第一人者というべきか、    音色がチャーミングそのもの。個人的にはSS評価にしたいくらいである。その割には何と1    000円で買えるので、1枚買うとなればこちらをお薦めしたい。ポリーニはモーツァルトの    演奏自体が少ないので、希少価値からいけばこちらがお薦め。    例によってバレンボイム盤は演奏は1ランク落ちるのだが、ピアノ協奏曲第20番〜第23番    まで4つが入っていて2枚組で1900円なので、CDとしてはかなりお薦めである。
ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」  ★★
  
 モーツァルトの有名なピアノ協奏曲は、普段の大衆向けに作曲する彼の創作意図とは違い、自分の内面
 を吐露する性格がある。特に、有名な第20番や第27番ではそれが顕著である。
 この第26番は副題の通り、レオポルト2世の戴冠式のために依頼作曲したものなので、本来の彼の明
 るい面、優美な面が存分に出ており、チャーミングさでいえば彼のピアノ協奏曲の中でも屈指である。
 第2楽章は、どことなく寂しげな、暗い影を感じさせる曲であるが、結局モーツァルト的「暗さ」を表
 さずに終わってしまう。
 従って、素直に、祝典的、モーツァルティックな曲として楽しめる逸品である。

第2楽章
 ☆推薦盤☆  ・グルダ/アーノンクール アムステルダム・コンセルト・ヘボウ(83)(テルデック) S  ・バレンボイム/弾き振り ベルリンフィル(89)(テルデック)           A  ・カサドシュ/セル コロンビア交響楽団(62)(SONY)             A  ・ペライア/弾き振り イギリス室内管弦楽団(83)(SONY)           B      グルダ盤が1枚抜きんでた評価を得ている。第1楽章などはアグレッシブな表現だが、第23    番と同じく、第2楽章の繊細な表現はチャーミングの極みといえるほど。このCDはS評価の    第23番とのカップリングで1000円。文句なしの超お薦め盤。    バレンボイム盤は第24番〜第27番まで4つが入っていて、2枚組で1900円。第20番    〜第23番までの同じ2枚組のCDの方はみなB評価だが、この第26番においてはA評価な    ので、たくさん聴きたい方にはCDとしてかなりお薦め。    3番手に、同じA評価のカサドシュ盤がくる。このCDは「ピアノ協奏曲選集」なので、第2    0番、21、22、23、24、26、27と7つ入って3枚組なのだが、お値段はお得。    ただ、第26番以外はさほど評価が高いわけではない。リンク先はHMV。    ペライア盤はB評価代表として。かなりA評価に近いB評価で、カップリングは全く無評価の    第21番。お手ごろな価格なので、ファンの方はどうぞ。
ピアノ協奏曲第27番  ★★★
   
 このピアノ協奏曲第27番は、モーツァルトの亡くなった年に書かれ、彼の最後のピアノ協奏曲となっ
 た。この時の彼は病気と貧困で悲惨そのものの状態であり、生活費を得るために子供の絵本のための童
 謡まで作曲したが、この童謡は、第27番の第3楽章から転用したものである。
 かの天才アインシュタインは、この第3楽章について「この世を去った幼な子たちが天国で遊びたわむ
 れるようだ」と評した。死を前にしたモーツァルトの音楽がここにある。彼の心はすでに天に召されて
 いたのだろうか。

第3楽章
 ☆推薦盤☆  ・グルダ/アバド ウィーンフィル(75)(グラモフォン)        A 売れてます!  ・バックハウス/ベーム ウィーンフィル(55)(デッカ)        A 売れてます!  ・ハスキル/フリッチャイ バイエルン国立管弦楽団(57)(グラモフォン)A  ・カーゾン/ブリテン イギリス室内管弦楽団(70)(デッカ)      A       この曲のCDを選ぶのは難しい。ここに推薦した4枚はすべて演奏については横並びと考えて    頂きたい。どれを買えばいいのかは、CDとしての特徴を紹介するので、好みで選んで頂くし    かないといったところだ。    グルダ盤は録音も新しく、一番無難なCDである。悲愴感漂う微妙なニュアンスの表現も抜群    である。バックハウス盤は彼としては珍しいモーツァルトの録音だが、彼にしては極めて繊細    なタッチで、この曲に込められた真のモーツァルト像を表出する。芸術肌だけに、妥協を許さ    ずこの曲の本質に迫ろうとする表現はさすがに世紀の巨匠である。英デッカの録音だけに、音    質は悪くない。私が1枚選ぶとすればこの演奏。カップリングで入っているブラームスのピア    ノ協奏曲第2番は同曲のベストを争う名演だけにCDとしてもお得。    ハスキル盤は第19番とのカップリングだが、低価格で音もいいのは嬉しい。録音年代の近い    CDもあるのでお間違えのないように願いたい。ただ、個人的には、珍しく気迫が強すぎ、デ    リカシーに欠ける点が気になる。    最後のカーゾン盤は、2枚組で第20番、第23番の2曲が入っているのだが、少々お高い。    曲数が聴けて得と考えるか、無駄な出費と考えるか、難しいところ。
クラリネット協奏曲  ★★
 
 クラリネット協奏曲は、モーツァルトが亡くなる年に書かれた作品である。この頃のモーツァルトは病
 気と貧困にあえいでいて、いかに明るいモーツァルトでも、その時の心境が垣間見える。第3楽章の中
 間の短調の部分がそうだ。こういうモーツァルトの「暗さ」は、室内楽曲の項で紹介の「クラリネット
 五重奏曲」にも見られる。
 モーツァルトはクラリネットという楽器をことのほか愛した。友人のクラリネット奏者シュタートラー
 に捧げるために作ったのが、この「クラリネット協奏曲」と「クラリネット五重奏曲」である。

 ☆推薦盤☆
 ・ウラッハ(Cl)/ロジンスキー ウィーン国立歌劇場O(54)(ウェストミンスター) A
 ・ヘープリヒ(Cl)/ブリュッヘン 18世紀オーケストラ(85)(フィリップス)   A  
 ・ライスター(Cl)/カラヤン ベルリンフィル(71)(EMI)           A
  
   CDは、この3枚がベストを争っているのが現状である。どれをとるかは好みの問題だろう。
   現時点ではややウラッハ盤に部があるかという感じ。51年と録音が古いのが難点だが、実際
   の音質は、51年としては非常によいので、私はこれが一番のお薦め。
   ヘープリヒ盤は値段が高い。古楽器の演奏であるから、古楽器ファンにはお薦め。リンク先は
   HMV。
   ライスター盤は、録音もよくて安いのが魅力。

フルートとハープのための協奏曲  ★
   
 フルートとハープが共演して、しかもモーツァルト作曲ときたらどんな曲になるのか想像してみよう。
 ご想像の通り、この曲はモーツァルトのあらゆる曲の中でもその雅なこと、優美なことといったら特筆
 ものである。まさに天国的な音楽がここにある。いつまでもこの音楽美の中に浸っていたいと思わせる。
 初心者にとっても、難しくもなんともない。音色、響きそのものが芸術だからだ。この曲を聴いている
 と、いや浸っていると、余計なことはすべて忘れて音楽美の中に身をゆだねることができる。まさに純
 音楽のヒーリングの極みのような曲だ。
 この曲の純音楽的美しさに満足できないのならば、モーツァルトとは絶対的に相性が悪いということに
 なるだろう。

第1楽章
 ☆推薦盤☆                             ↓かなり売れてます!  ・ランパル(Fl)ラスキーヌ(Hp)/パイヤール パイヤール室内O(63)(エラート)SS  ・パユ(Fl)ラングラメ(Hp)/アバド ベルリンフィル(96)(EMI)       A    この曲には素晴らしいCDがある。パイヤール盤は以前から圧倒的なベストワンの評価を受け    ており、このCDに続くものさえ見当たらない。余裕のSS評価のCDで、しかも約1000    円で買えるのだ。特にラスキーヌのハープの美しさといったら言語に尽くしがたい。    おそらく、このCDを超えるものは2度と現れないかもしれない。    これ1枚あれば他は不要かと思われるが、あまりにこの曲にハマリ過ぎて他の演奏を聴きたい    方のためにもう1枚紹介しておこう。    パユ&アバド&BPO盤で、おそらくこれからNo.2の座を揺るぎないものにしていくと思    われるが、やや古楽器的な、音をあまり伸ばさない奏法のようだ。


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