名曲案内〜交響曲編X〜

(ベルリオーズ〜ベートーヴェン<運命>)



    
  やはりクラシックの華といえば大編成のオーケストラによる交響曲(シンフォニー)でしょう。
  日本のコンサートのプログラムでは常にメインに陣取る大曲ばかりです。
  クラシック鑑賞は、交響曲に始まり交響曲に終わるといってもいいでしょう。

ベルリオーズ     ・ベートーヴェン


交響曲編T(サン=サーンス〜シューベルト)へ     ・交響曲編U(シューマン〜チャイコフスキー)へ

交響曲編V(ドヴォルザーク〜フランク)へ     ・交響曲編W(ブラームス〜プロコフィエフ)へ

交響曲編Y(ベートーヴェン<田園>〜<合唱>)へ      ・交響曲編Z(マーラー〜メンデルスゾーン)へ

交響曲編[(モーツァルト〜ラフマニノフ)へ




☆ベルリオーズ
作品NO.40 幻想交響曲 ★★★ 2021年2月最新更新

  ベルリオーズという作曲家は、この交響曲以外に目ぼしい作品は残していませんが、この作品は失恋の
 悲しみを曲に込めたもので、名作です。「恋を失った芸術家が自殺をはかってアヘンを飲むが、クスリ
 の量が少なすぎ、一連の奇怪な夢をみる」という説明がされています。病的なまでの失恋の物語なので
 す。主人公はベルリオーズ本人で、5つの楽章から成り立っています。
 第1楽章は恋人への情熱を歌ったもの、第2楽章は彼女が他の男と踊る夢をみるもの、第3楽章は散歩
 しながら恋人の幻影をみるもの、第4楽章は夢の中で恋人を殺し、断頭台へ連行される場面、第5楽章
 は死刑の後地獄へ落とされ、地獄の悪魔たちがグロテスクな踊りをおどるもの、となっています。
 まことに異常な物語ですが、感銘度は深いです。
  なお、現実には、何と、ベルリオーズはこの作品に登場する女性とめでたく結婚するに至りました。
 二人の子供ももうけました。しかし・・・。
 幸せな生活は長続きしなかったそうです。「結婚の理想と現実」を考えさせられます・・・。

全楽章
 ☆推薦盤☆    ◎ミュンシュ/パリ管弦楽団(67)(エラート)                  ○ロト/レ・シエクル(19)(ハルモニア・ムンディ)           S    ・T・トーマス/サンフランシスコ交響楽団(97、98)(RCA)     A    ▲ハーディング/スウェーデン放送交響楽団(15)(ハルモニア・ムンディ) A    「ブラ1」と同様、幻想交響曲のCDもミュンシュ盤が定盤でしたが、今やその牙城も崩れて    しまっています。    緊張感溢れるスピードで全曲を駆け抜けていて、その情熱と雄弁な描写は筆舌に尽くしがたい    です。もちろん、その価値は永遠に色褪せることはないでしょう。これ1枚あれば他は必要な    いと言ってもよかったのですが、他に3つ挙げておきます。    ロト盤は録音が非常に新しいです。古楽器演奏ですが、今後、この作品の定盤になるのでしょ    うか。この作品自体はロマン派の作品ですので、お薦め度はミュンシュ盤を上としておきます。    お値段の違いもかなりあります。    T・トーマス盤は、どうも廃盤中のようです。    最後のハーディング盤は、現代楽器での演奏ですので、もうミュンシュ盤は古いという方にお    薦めしたいと思います。

☆ベートーヴェン
作品NO.16 交響曲第1番 ★★ 2021年3月最新更新

 ベートーヴェンが交響曲の作曲に取り組み、初めてこの作品を完成させたのは29歳の時です。それだ
 け、長い時間をかけて構想を練ったベートーヴェンの意図が感じられます。
 この交響曲は第2番以降とは一線を画し、ハイドン古典的交響曲様式に基づいています。ですが、ハ
 イドンが、チャーミングな旋律美の交響曲を多く残したのに対しまして、この「第1番」は、様式こそ
 踏襲してはいますが、若さみなぎるベートーヴェンの、躍進力のある交響曲となっています。
 第2番とは逆に、第3番「英雄」、第5番「運命」的な力強さと迫力がある作品です。
 通称「ベト1」です。

全楽章(パーヴォ・ヤルヴィ指揮)
 ☆推薦盤☆    ◎パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(06)(RCA)      S    ・ファイ/ハイデルベルク交響楽団(00)(ヘンスラー)          S    ○アーノンクール/ヨーロッパ室内管弦楽団(90)(テルデック)      A    ▲ベルリン古楽アカデミー(18)(ハルモニア・ムンディ)         A    ・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団(86)(RCA)   2枚組      A    △ネルソンス/ウィーン・フィル(19)(グラモフォン) 5枚組全集    A    ☆トスカニーニ/NBC交響楽団(51)(RCA)    2枚組          ☆トスカニーニ/NBC交響楽団(51)(RCA)    5枚組全集        第1番だけというCDはあまりありませんので、お薦め度はカップリング等を考慮しました。    ◎のヤルヴィ盤は2006年の録音で、かつカップリングの「運命」もA評価です。    きびきびとしたリズムと速めのテンポで進み、躍動感、力感溢れる現代的なスタイルで、演奏    自体も良いですし、これは◎でお薦めです。    なお、トランペットとティンパニは、古楽器を使用しているようです。    昨今、ベートーヴェンの演奏で評判が良いファイ盤は、S評価の「第2番」とのカップリング    ですので、本来ならば◎にしたいところなのですが、あいにく廃盤中です。    アーノンクール盤はA評価の「英雄」とのカップリングですので、○としました。これは現代    楽器による演奏です。    ベルリン古楽アカデミー盤は、同じくA評価の「第2番」とのカップリングでお得なのですが、    いかんせんお高いのがネックです。    ヴァント盤は廃盤中です。    ネルソンスとトスカニーニの全集はお好みでどうぞ。    トスカニーニは、こういったパンチ力が必要な作品はお得意ですので、演奏自体はベスト盤と    も言える歴史的名盤なのですが、如何せん録音が古い点は痛いです。

作品NO.17 交響曲第2番 ★★ 2021年3月最新更新

 CDの曲名を伏せて、初めてこの作品の第1楽章を少し聴いて、作曲者を答えろと言われたら、おそら
 く「モーツァルト?」と答える方が多いのではないでしょうか。
 それくらい、ベートーヴェンの初期の交響曲第1番と第2番は、古典派の影響をまだ受けていまして、
 「英雄」、「運命」、「第九」などを聴いてベートーヴェンの作風を知っている方にとっては、ベート
 ーヴェンの作品とは思えないところがあります。特にこの「ベト2」は、古典派のように小さくまとま
 った交響曲でして、かつモーツァルティックな旋律のチャーミングさに満ちていますので、ベートーヴ
 ェンの交響曲の中でも「隠れた名作」として愛好者が多い作品となっています。「隠れた」というのは、
 ベートーヴェンの交響曲には、「英雄」、「運命」、「第九」などの大作、有名作が多いからです。
 この「ベト2」は規模も小さく、前記3作品と比べれば聴きやすいと言われています。ベートーヴェン
 の交響曲はやはり一番有名な「運命」を真っ先に、そしてこの第2番よりも前に、「英雄」、「田園」、
 「第7番」、「第九」をまず聴くというのが常道と言われています。
 これらの作品と比べると、「第2番」には、これといった印象的な旋律は特にないため、初心者の方は
 飽きてしまうかもしれません。ベートーヴェンの作品の中でも「マイナー」な作品で、大作の後に聴く
 からこそ光を放っているのだと思われるのです。
 なお、この「第2番」から、大作の「第3番『英雄』」への一大発展はベートーヴェンが「音楽の革命
 児」と呼ばれる大きな要因ともなっています。当時交響曲には「英雄」ほどの大作はなかったからです。
 そして、音楽史は古典派からロマン派へと進んでいきます。

全楽章(パーヴォ・ヤルヴィ指揮)
   ☆推薦盤☆    ・アントニーニ/バーゼル室内管弦楽団(05)(SONY)    全集   S    ・ファイ/ハイデルベルク交響楽団(00)(ヘンスラー)          S    ◎パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(07)(RCA)      S    ○ブリュッヘン/18世紀オーケストラ(88)(デッカ)          A    ▲ベルリン古楽アカデミー(18)(ハルモニア・ムンディ)         A    ・ワルター/コロンビア交響楽団(59)(SONY)            A        アントニーニ盤は廃盤中ですが、CDも同じ音源かの確証が得られておりません。    ファイ盤はS評価の「第1番」とのカップリングという素晴らしいCDなのですが、いかんせ    ん廃盤中です。    ヤルヴィは、21世紀になって、ベートーヴェンの交響曲に評価の高い演奏を残していますが、    この「第2番」も例にもれず、メリハリが効いていて、肝心な部分の力感、躍動感が絶妙で、    素晴らしい演奏に感じられます。国内盤は廃盤中ですので、輸入盤を挙げておきました。    カップリングの「田園」はB評価です。    ブリュッヘン盤は古楽器演奏です。カップリングの「第1番」も悪くありませんし、非常にお    安いですし、交響曲が得意なブリュッヘンですので信頼度は高いです。古楽器演奏の方がお好    みの方には、ヤルヴィ盤よりもこちらをお薦めします。    ベルリン古楽アカデミー盤は、A評価の「第1番」とのカップリングですのでお得なのですが、    お値段が高めです。▲にとどめました。    ワルター盤は廃盤中のようです。   

作品NO.18 交響曲第3番「英雄」 ★★ 2021年3月最新更新

 ベートーヴェンの交響曲の中でも「第九」に次ぐ大作で、あらゆる交響曲の中でも有数の傑作の一つで
 す。作曲当時の基準では、非常に規模(演奏時間等)の大きな”大曲”でした。
 ベートーヴェンが、この作品をもって「音楽の革命児」と呼ばれるゆえんは、単に演奏時間が長かった
 だけではなく、楽器の編成が増えたり、また、第1楽章のように大きな拡がりをもつ作品を書いたこと
 に由来していると言われています。
 「英雄」または「エロイカ(英雄の意味です)」と言いまして、「ベト3」という言い方はあまりしま
 せん。
 スケールが雄大で、風格、立派さの点でも素晴らしい作品なのですが、第2楽章の「葬送行進曲」が冗
 長になる点や、演奏時間が長いですので、いくら有名な作品とは言え、初心者の方が気軽に聴けないの
 が難点ではあります。
 ベートーヴェンの交響曲と言えば「運命」から入り、「第九」へと進み、この「英雄」に戻る聴き方が
 一般的と言われます。これは、「有名な順」「曲を知っている順」ということでもありますが、英雄と
 いう大曲を聴き込めるかどうかが一つの壁ではないでしょうか。ここを突破できなくては、少なくとも
 交響曲や大曲においては、それ以上進むことはできないでしょう。小品の鑑賞に進む方がいいのかもし
 れません。クリアできれば、残りのベートーヴェンの交響曲はおろか、他の作曲家の交響曲もかなり多
  く聴き込めるはずだと思われるのです。その段階に至れば「中級者」でしょう。
 ベートーヴェンは初めこの作品を”英雄”ナポレオンに捧げようとしましたが、ナポレオンがフランス
 皇帝に就いてしまうと烈火のように怒り、「献呈」の文字を塗りつぶしてしまいました。そして「ナポ
 レオンも俗物にすぎなかったのだ」と語り、ナポレオンが死去すると、第2楽章の「葬送行進曲」を指
 し、「私はこれを予言していた」と言い放ったとのエピソードがあまりに有名です。
 下のリンクには、モノーラルと21世紀による第1楽章へのリンクを貼っておきました。
 どちらの演奏がお好みか、聴き比べをお楽しみ下さい。

第1楽章より(何とフルトヴェングラー指揮44年!)
 
第1楽章(パーヴォ・ヤルヴィ指揮日本公演)
   ☆推薦盤☆    ◎フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(52)(ワーナー)            ☆フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(44)(デルタ)  紙ジャケット     ○パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(05)(RCA)      S    ・モントゥー/アムステルダム・コンセルトヘボウO(62)(デッカ)    S    ▲アーノンクール/ヨーロッパ室内管弦楽団(90)(テルデック)      A    ☆トスカニーニ/NBC交響楽団(53)(RCA)                 ☆トスカニーニ/NBC交響楽団(53)(RCA)       2枚組           以前から、「英雄」のベスト演奏にはフルトヴェングラーの演奏が君臨していました。    しかし、21世紀初頭の昨今、さすがに古い録音は風上に追いやられています。    確かに音質は悪いですが、私は、やはりフルトヴェングラーの新盤のCDをお薦めします。    スケールが雄大で、精神的な深みも併せ持ち、まことに立派な演奏です。戦時中の悲壮感から    脱したフルトヴェングラーとウィーン・フィルの誇りや風格があり、格調は高く、あいまいさ    はどこにもありません。特に第2楽章では顕著でしょう。「英雄」という大曲を堂々と、満足    いくまで「聴かせて」くれます。上のリンクからお聴き頂いて比較して頂けば、その「凄み」    をお分かり頂けるのではないでしょうか。    フルトヴェングラー&ウィーン・フィル盤には44年録音の旧盤もありますが、52年の新盤    の方が流通していまして、評価も高いですので、やはり新盤を第一にお薦めします。    上から2番目の、旧盤である44年盤の正規の録音は、旧EMI所有の音源で、国内盤は長ら    く廃盤中です。ワーナーからの再発売に期待です。現在入手できるのは別レーベルからの音源    です。これは「ウラニア盤」と言われ、米ウラニア社から発売された有名な音源のものです。    上にリンクを貼ってあるYOUTUBEの演奏は、画面がCDジャケットと同じですので、おそらく    同じ音源だと思われます。    フルトヴェングラーと言えばライヴでこそ燃える実演派でしたので、音質は悪くても、こちら    の44年盤を採る人もいます。私も新盤をずっと愛聴してきましたが、旧盤の方が熱気、迫力    に満ちているダイナミックな演奏で、「これがフルトヴェングラーのライブか」と思い知らさ    れています。ぜひ上のリンクからお聴き下さい。音質もご確認下さい。    さて、フルトヴェングラーのベートーヴェンの録音において、特に「英雄」「運命」「第九」    は伝説化されているため、録音日が違う多くの「歴史的録音」が存在します。一般的に常に馴    染まれてきたのは、ワーナー(旧EMI)やグラモフォンというメジャーレーベル所有の音源    でした。それ以外の「歴史的録音」「秘蔵音源」は、OPUS蔵、デルタ、ナクソス、アルト    ゥスなどから発売されていますが、国内盤だけでも、かなりややこしいことになっています。    輸入盤も含めれば、わけが分からなくなるほどです。    例えば、この「英雄」においては、一番上に挙げた52年録音の音源は、11月26、27日    の録音なのですが、11月30日や12月7日、はたまた同日のEMI録音後のライヴ録音な    どという音源も多くのレーベルから「発掘」されています。これでは、CDの買い間違えが起    こってしまいます。くれぐれもご注意下さい。    「CLASSIC MUSEUM」でご紹介しているのは、あくまでワーナーやグラモフォンなどのメジャー    レーベル所有の音源によるCDが主体ですので、お間違えのないよう、ご注意下さい。    「運命」「第九」でも同様のことが起こっています。専門書籍等で評価が高く、ご紹介してい    るフルトヴェングラーのベートーヴェンの録音は、原則、ワーナーミュージックか、グラモフ    ォン所有の音源です。他のレーベルのCDや、録音日が異なるものは、はっきりと明記してあ    ります。録音日が違う音源で、そちらの演奏の方がお気に召したということであれば、大変素    晴らしいことですが、ここでご紹介している「評価」とは無関係ですので、その点はご了承下    さい。    話がくどくなりました。ややこしいですねぇ。でも、フルトヴェングラーが人気者である証拠    でもあります。    ヤルヴィによる演奏は、21世紀録音の「英雄」としてはベストの評価を得ています。ダイナ    ミズム、力感、推進力などは素晴らしく、これが21世紀の「英雄」の演奏スタイルなのでし    ょう。その反面、格調の高さやスケールの点では物足りないのですが、それ以上に充実した響    きを聴かせてくれ、常に緊張感に満ちています。音源は違いますが上のYOUTUBEからどうぞ。    モントゥー盤は廃盤中のようです。    アーノンクール盤は現代楽器で、A評価の「第1番」とのカップリングですのでお得です。    トスカニーニ盤は歴史的名盤としました。お値段がお安いのでお薦めです。2番目の2枚組の    CDも同じ音源です。    トスカニーニの正規盤は、RCA発売のものです。戦前に活躍した指揮者ですので、フルトヴ    ェングラー同様、色々なレーベルから音源が発掘されています。そのため、CDも、発売され    たと思ったら、すぐに廃盤になってしまうなど、非常に把握しづらいです。    これは「英雄」に限ったことではないですので、ご承知おき下さい。

作品NO.19 交響曲第4番 ★★ 2021年3月最新更新

 この交響曲第4番は、ベートーヴェンの9つの交響曲の中でも「第2番」、「第7番」と並んで一歩地
 味な存在です。ですが、第3番「英雄」作曲後の一皮向けたベートーヴェンだけに、ダイナミックで爆
 発力に満ち、鋭いリズムの刻みが魅力の作品でして、第2番あたりと比べるといかにもベートーヴェン
 チックな、あるいはロマン派シンフォニックな交響曲であるという印象を受けます。よって、ベート
 ーヴェンの後期の交響曲のように、ダイナミズムに溢れた交響曲が好きな方の中には、この「ベト4」
 のファンの方も多いです。
 特にこれといったドラマ性などはなく、「第7番」のようにベートーヴェン・サウンドを楽しむ交響曲
 と言えると思われます。
 第1楽章の冒頭では約3分半程、もったいぶったような部分が続きますが、そこから軽快なサウンドへ
 と一変します。ベートーヴェンならではのユーモアでしょうか。

全楽章(何とクライバー指揮!)
 ☆推薦盤☆    ◎カルロス・クライバー/バイエルン国立管弦楽団(82)(オルフェオ)    S    ○アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(15)(SONY) S    ▲パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(05)(RCA)       A    ・ファイ/ハイデルベルク交響楽団(01)(ヘンスラー)           A    △シャイー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(09)(デッカ)    A    △ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(73)(アルトゥス)      B    第4番の推薦盤はなぜかお高いものが多いです。    まず、誰にも安心してお薦めできるのはS評価のクライバー盤です。    上のYOUTUBEへのリンクは、音源は違いますが、ぜひご視聴をどうぞ。    アーノンクール盤は古楽器演奏です。アーノンクールは現代楽器での名指揮者でもありますが、    古楽器演奏の交響曲においても、重厚さやスケールの大きさを決して失いません。これは、カ    ップリングの「運命」(S評価)にも言えることです。「ロマン派の古楽器演奏はちょっと…」    という方にもぜひ聴いて頂きたいです。カップリングと、他の推薦盤に比べてお値段がお安い    点を考慮して、お薦め度は○としました。    ヤルヴィムラヴィンスキーと同様で、速いテンポできびきびと鋭いリズムを刻んでいくタイ    プの指揮者ですので、作品との相性いいのでしょう。誠に気分爽快です。    非常にキレがよく、表現もクライバーに似ていて、この「第4番」に限ってはお薦めなのです    が、カップリングの「第7番」が、なぜかあまり評価が芳しくありません。    ファイ盤は元々国内盤はなく、輸入盤も廃盤中です。    シャイー盤も速いテンポが特徴で、作品と相性がいいのだと思われます。お値段もお手頃です。    ムラヴィンスキー盤は非常にお高いのがネックですが、旧ソ連にとどまって録音には恵まれな    かったムラヴィンスキーのCDの中では音質は良好です。終楽章に見られるような、高速のテ    ンポの中で身をえぐられるようなリズムの刻みや、ティンパニの強打が尋常ではなく、単にサ    ウンドを聴かせるだけではない点が魅力的です。クライバーやヤルヴィの演奏に物足りなさを    感じる方にはもってこいでしょう。

作品NO.20 交響曲第5番「運命」 ★ 2021年3月最新更新

 第1楽章冒頭のテーマがあまりにも有名ですので、この作品を知らない方はいないでしょう。交響曲の 
 中で1番有名といっていい作品です。普通はやはり「運命」と呼ばれます。
 第1楽章は冒頭の「運命の動機」が何度も繰り返され、迫りくる運命と戦う姿が描かれています。
 なお、この冒頭をベートーヴェン自身が「運命はこのように扉を叩く」と言ったというのは有名な話で、
 おそらく学校の音楽の先生から聞いた方も多いと思われますが……これは何の根拠もない作り話なのだ
 そうです。この作り話を信じているのも日本人だけらしいとのことです。
 第2楽章、第3楽章では運命と戦う苦悩が描かれ、やがて第4楽章では勝利の曲となります。第3楽章
 から第4楽章へは曲が途切れることなく演奏されます。第2楽章、第3楽章は暗く、凝縮された曲です
 が、第4楽章は明るく、最も演奏効果に富んでいまして、何度聴いても心が弾みます。知名度相応の、
 ベートーヴェンならではの大傑作です。
 「運命」は第2楽章、第3楽章が暗いとはいえ、第1楽章は有名ですし、第4楽章も演奏効果抜群です
 ので、ベートーヴェンの交響曲の入門用はおろか、あらゆる交響曲の入門用にふさわしい作品でしょう。

全楽章(フルトヴェングラー指揮54年静止画)
第1楽章(何とクライバー指揮静止画)
第3楽章終わりから第4楽章へ(バーンスタイン指揮)
 ☆推薦盤☆    ◎カルロス・クライバー/ウィーン・フィル(74)(グラモフォン)          ▲アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(15)(SONY) S    ○フルトヴェングラー/ベルリン・フィル(47)(グラモフォン)       A    ・ロト/レ・シエクル(17)(ハルモニア・ムンディ)            A    △パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(06)(RCA)      A    △ブリュッヘン/18世紀オーケストラ(90)(デッカ)           A    ☆トスカニーニ/NBC交響楽団(52)(RCA)                  ☆トスカニーニ/NBC交響楽団(52)(RCA)    2枚組           クライバー盤は自身の最高傑作の1枚で、特に初心者の方には真っ先にお薦めしたいです。    「運命」がまさに今生まれたかのように活き活きとしていて、クライバーの才能が光ります。    特に、今まで他の「運命」を聴いてきた方は、かなりの衝撃を受けるでしょう。速いテンポか    ら鋭い弦の切れ、金管の強奏、ティンパニの強打、まことに爽快で、ダイナミズムの極。これ    が天才と称されたカルロス・クライバーの世界です。20世紀を代表する名盤にも選ばれまし    た。静止画ですが、ぜひ、音源が同じYOUTUBEを上からご視聴下さい。    クライバーお得意の「第7番」とのカップリングでもあり、お宝級のCDです。    フルトヴェングラーの47年盤は、自身の「運命」のベスト演奏の一つと言われている猛演で、    古くから人類の至宝とされてきたライヴ録音です。運命との戦いのドラマをこれほどまでに表    現しきった演奏は類を見ない、芸術至上主義の演奏です。    第二次大戦のため演奏活動を停止していたフルトヴェングラーが、ようやく指揮台に立った    1947年5月27日に、ベルリンで行なわれたベルリン・フィルとのライヴ録音です。    戦後の荒廃したベルリンで、オケ共に「運命」の演奏に込めたすべての思いが集約されていま    す。そういった背景を踏まえ、表現力が全快している凄演です。特に第1楽章は運命の動機が    出てくるたびにテンポを落とし、壮絶なまでのドラマを展開していきます。まさに、二度と再    現できない不滅の金字塔なのです。    演奏記録としても、すべてのクラシックCDの中で最高クラスの価値をもつ1枚です。    この音源は、フルトヴェングラーにしては珍しくグラモフォン所有の音源です。    クライバー盤とフルトヴェングラー盤は全くスタイルが違いますので、クラシックの聴き方の    勉強という意味でも、両方持っていたいところです。    もちろん、2枚とも、あらゆるクラシックCDの中でも最も有名なCDの1つです。    上のYOUTUBEから聴けるのは54年の演奏で、同じフルトヴェングラーかと思われるほど客観    的な演奏です。こちらはこちらで「54年録音の運命」と区別されていまして、ワーナーから    CDも発売されています。    なお、「英雄」と同様、フルトヴェングラーの「運命」の演奏の音源も多数存在しますのでく    れぐれもご注意下さい。    アーノンクール盤は、従来のこじんまりとした古楽器演奏とは一線を画した見事な「運命」で    す。非常に各楽器の彫が深く、「運命」という交響曲にとって必要な重厚さ、鋭さ、スケール    などを兼ね備えています。21世紀の交響曲の古楽器演奏としては、一つの到達点と言えるの    ではないでしょうか。カップリングの第4番(S評価)と同様、「『運命』の古楽器演奏って    ちょっと…」と敬遠気味の方には是非聞いて頂きたいです。    古楽器のロト盤は廃盤中です。    ヤルヴィ盤はS評価の「ベト1」同様、現代的な速いテンポで、ダイナミズムに溢れ、躍進力    が素晴らしいです。S評価でお薦め度◎の「ベト1」とのカップリングという意味では、CD    としてお得です。    ブリュッヘン盤は、堂々とした重厚な演奏です。古楽器による運命としては、アーノンクール    盤と共にベストとも言える演奏で、古楽器ファンの方にはかなりお薦めの1枚です。古楽器に    よる「運命」に抵抗のある方には是非聴いて頂きたいです。    トスカニーニ盤は、独特のダイナミズムに富んだ演奏で、古くからフルトヴェングラー盤と双    璧をなしてきた名盤なのですが、音が古いですし、今では時代の流れか、歴史的名盤としてお    薦めしておきます。「ベト1」でも「英雄」でもそうなのですが、他の作曲家のCDは高音質    CD化されて、トスカニーニの名演を堪能できるのですが、なぜかベートーヴェンにおいては、    まともな国内盤すらないといったのが現状であるのが不満です。    「運命」も例にもれず、廃盤中のようです。   


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