名曲案内〜交響曲編Y〜

(ベートーヴェン<田園>〜<合唱>)



    
  やはりクラシックの華といえば大編成のオーケストラによる交響曲(シンフォニー)でしょう。
  日本のコンサートのプログラムでは常にメインに陣取る大曲ばかりです。
  クラシック鑑賞は、交響曲に始まり交響曲に終わるといってもいいでしょう。

ベートーヴェン


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☆ベートーヴェン
作品NO.21 交響曲第6番「田園」 ★★ 2021年3月最新更新

 この交響曲もまた、あらゆる交響曲の中でも非常に有名な作品の一つです。交響曲としては珍しく、5
 つの楽章から成り立っています。これほど牧歌的なムードに溢れた交響曲は他になく、全体的に明るく、
 愉しい名作で、第5番「運命」とは対称的と言っていいほどの明るい曲風です。
 第1楽章は「田園についた時の晴れ晴れとした気分」を表現しています。第2楽章は「小川のほとりの
 情景」という自然への賛歌で、非常に牧歌的です。第3楽章は「田舎の人々の愉しいつどい」で、人間
 達の楽隊や踊りを表現していまして、愉しいです。第4楽章は「嵐」で自然の猛威を表現しています。
 嵐が吹き荒れる情景が眼前に拡がるようです。
 第5楽章は「羊飼いの歌」で、嵐が去った後の感謝の気持ちを表現しています。
 どの楽章も標題音楽のようにイメージが湧きやすく、あまり冗長にはなりませんので、初心者の方でも
 聴ける作品かと思われます。

全楽章(パーヴォ・ヤルヴィ指揮)
 ☆推薦盤☆    ◎ワルター/コロンビア交響楽団(58)(SONY)             S    ・ノリントン/シュトゥットガルト南西ドイツ放送交響楽団(02)(SWR)  S    ○ヴァイル/ターフェルムジーク・バロック(04)(Tafelmusik Media)    A    ・ベルリン古楽アカデミー/(19)(ハルモニア・ムンディ)         A    ・アバド/ベルリン・フィル(00)(グラモフォン)             A    ▲ベーム/ウィーン・フィル(71)(グラモフォン)             B    「田園」には、大巨匠ワルターの代名詞とも言える名盤があります。そ    れが58年コロンビア交響楽団との録音です。従来からベスト盤の地位を不動のものとしてき    た定盤中の定盤で、昨今は古楽器演奏に押されてきてはいますが、今なおその魅力は決して色    あせるものではありません。ましてや、ワルター晩年のステレオ録音です。    まず、ワルターの芸風と「田園」という交響曲の相性が抜群にいいです。ワルターは柔軟性に    富んだ指揮者ですが、それが作品の牧歌的な旋律美を存分に引き出しています。そして豊麗な    歌においては美しさ満点で、ワルターの魅力全快。こういう作品を振ったときのワルターは本    当に素晴らしいです。    ステレオ録音のワルター盤でさえ音質に抵抗のある方は、クラシック鑑賞の幅がすごくせまく    なってしまうと思うのです。この録音は、19世紀生まれの大巨匠ワルターの録音の中でも音    質がいい方に入りますので、これくらいの音質でも抵抗のある方は、多くの芸術遺産とも呼ぶ    べき録音に接することができなくなってしまいます。ものすごくもったいないお話です。    古楽器演奏のノリントン盤、ベルリン古楽アカデミー盤、現代楽器のアバド盤は廃盤中です。    古楽器演奏の方がお好みの方には、ヴァイル盤をお薦めします。    ベーム盤もワルター盤に迫るほどの、かなりの美演です。ワルターほどの牧歌的な魅力には欠    けるのですが、さすがに、ワルターと並ぶモーツァルトの大家であるベームならではの、細部    まで自然の美しさを追求した、デリケートで耽美的な表現は特筆に価するでしょう。心が洗わ    れるような演奏です。   

作品NO.22 交響曲第7番 ★★ 2021年3月最新更新

 ベートーヴェンの交響曲の中では、「運命」のように副題のつかない交響曲のため、知名度では劣りま
 す。ですが、4つの楽章がそれぞれあるリズムの反復によって書かれているために、とっつきやすく、
 歯切れがよく、演奏効果に富んでいまして、非常にファンが多い作品です。CMなど、テレビでも耳に
 することも多く、リズミカルで愉しいです。ワーグナーは「舞踏の神化」と評しました。
 全編の編成は「英雄」に似ています。第1楽章は大きな拡がりをもったスケールの大きな曲、第2楽章
 は「葬送行進曲」を思わせる深刻な曲ですが、英雄に比べてとっつきやすく、演奏時間も短いですので、
 「小英雄」と言ってもいい作品です。
 各楽章特有のリズムが全曲を貫いているため、おそらく、この作品にハマってしまったら、しばらくは
 脱出不可能な方もいらっしゃるのでは。
 私個人的には、大曲「英雄」を聴くための土台作りとして、この作品を先に聴くのもお薦めです。
 通称「ベト7」です。

第1楽章(クライバー指揮!指揮ぶりもお楽しみ下さい)
 ☆推薦盤☆    ◎カルロス・クライバー/ウィーン・フィル(75、76)(グラモフォン)         ▲久石譲/ナガノ・チェンバーオーケストラ(18)(EXTON)         S    ○フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(50)(ワ−ナー)           A    ・ダウスゴー/スウェーデン室内管弦楽団(00)(Simax)          A    △パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィル(04、06)(RCA)      A    △ブリュッヘン/18世紀オーケストラ(88)(デッカ)             B      この作品を初めて聴く方、あるいは初心者の方には録音の良いクライバー盤がお薦めです。    クライバーは力強さと柔軟性を併せ持った指揮者ですが、それが演奏効果に富むこの交響曲と    抜群に相性がよく、速いテンポから繰り広げるクライバーの世界は爽快感満点。リズムも絶品    で、ベートーヴェン・サウンドを楽しむには、理想的な「ベト7」なのではないでしょうか。    血湧き肉踊るベートーヴェンです。    「運命」とカップリングされていますので、超々お薦めの殿堂入りのCDでもあります。上の    YOUTUBEへのリンクから観れる映像は音源は違いますが、どうぞお楽しみ下さい。    ですが、いささかスポーツ的で、深刻な要素はない演奏ですから、ベートーヴェンの作品とし    ては深みがないと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういう方には、録音は古い    ですが、フルトヴェングラー盤がお薦めです。    娯楽性のある作品とはいえ、この交響曲もしっかりと大曲として受け止めています。50年の    録音ですので音は古いですが、鑑賞に差支える程ではないでしょう。堂々とした巨匠風のテン    ポ運びは立派でスケールが大きく、まさしく一大シンフォニーを聴く印象を与えてくれます。    第2楽章は「英雄」の「葬送行進曲」に通じるものがあり、温かい人間感情があふれています。    爽快なクライバー盤に対して、芸術至上主義的なフルトヴェングラー盤。初心者の方には前者    をお薦めしますが、スタイルが正反対のため、ぜひ両方持っておきたいところです。    カップリングの「運命」は「54年録音」の「運命」ですのでご注意下さい。    久石譲は、アニメの「となりのトトロ」等で知られる「スタジオジブリ」の作品の作曲者で有    名ですが、何とクラシック音楽で名盤を残しました。お値段は高めですが、超快速のテンポな    どから、この作品の魅力を十分に表現しています。是非ともご一聴頂きたいです。古楽器演奏    です。カップリングはA評価の「第8番」です    その他、新しい録音をご希望の方にはヤルヴィ盤、古楽器演奏をご希望の方にはブリュッヘン    盤がお薦めです。   

作品NO.23 交響曲第8番 ★★ 2021年3月最新更新

 この「交響曲第8番」は、ベートーヴェンの9つの交響曲の中で最も演奏時間が短いですが、全体的に
 とても明るく愉しく、ユーモアに溢れた作品として親しまれています。ですが、ベートーヴェンの9つ
 の交響曲のうち、最もマイナーな作品かもしれません。通称「ベト8」です。
 作曲の意図を研究した結果によりますと、当時の作曲家という職業から考えて(モーツァルトは依頼さ
 れた作品を作る「職人」「職業」的作曲家でしたが、ベートーヴェンの頃は、作曲家は意図に基づいて
 作曲をする、自由職であったと言われています)、この作品は真面目に受け止めるよりも、「お遊び」
 といったら言いすぎかもしれませんが、多分にベートーヴェンのユーモア、パロディを含んだ作品のよ
 うです。
 そういう観点から聴くと、例えば第1楽章の最後の部分は確かにユーモアを感じさせますし、第2楽章
 の最後にいきなり大きな音で曲を締めくくるのも、聴き手を驚かせるようでユニークですし、第4楽章
 の最後も、どうやって終わるのだろう、「運命」のように引っ張るのだろうか、と考えているうちに、
 やはり「あれ?」という感じで終わってしまいます。愉快な作品です。

全楽章(バーンスタイン指揮)
 ☆推薦盤☆    ▲シャイー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス(09)(デッカ)       S    ◎パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(05)(RCA)     S    ○久石譲/ナガノ・チェンバーオーケストラ(18)(EXTON)      A    S評価のシャイー盤はお高いですし、カップリングがよくありません。よって、お薦め度◎は    カップリングの「第7番」もA評価のヤルヴィ盤にしました。       お薦め度○は久石譲盤です。このCDもお高いのがネックですが、「第7番」同様、速いテン    ポからキレのある演奏を実現しています。古楽器演奏ということもあるのでしょう。    推薦盤は以上3枚にしました。   

   

作品NO.24 交響曲第9番「合唱」 ★★ 2021年3月最新更新

 クラシックファンではない方にも有名なこの「第九」は、ベートーヴェンの最高傑作であるだけでなく、
 あらゆる音楽作品の中でも最高傑作の一つです。なぜ年末に演奏されることが多いのかということにつ
 きましては、本場のドイツに基づいたとされていますが、これは日本の慣習で、戦後、「第九」ほどの
 名曲ならばお客が入るということで、普段収入が乏しいオケや合唱団が年末年始を裕福に過ごすために
 (!?)今のNHK交響楽団が公演を行ったのが起源とされています。
 さて、有名な「歓喜の歌」は第4楽章から登場するのですが、それを知らない一般の方も多く、「第九」
 といえば「歓喜の歌」だと思われているところがあります。とんでもない!合唱が入るのは第4楽章の
 みです。更に、「歓喜の歌」の大合唱が始まる時間を考えれば、全体の5分の1程度しかありません。
 他の部分はれっきとした「交響曲」です。「第九」は、「交響曲」というジャンルに「合唱」を採り入
 れたという、「革命児」ベートーヴェンならではの、当時では画期的な作品なのです。実際の「第九」
 は、そこに至るまでに、オーケストラによる驚くべき音のドラマが展開され、3つの楽章があるからこ
 そ「合唱」の部分が活きてくるのですが…。
 第1楽章の冒頭のテーマは人間を威嚇する運命の主題です。過酷な運命が目の前に立ちはだかります。
 音楽は終始苦しみながら進み、戦います。
 第2楽章は”一見”明るく、苦しみを忘れようとする音楽です。中間部でガラっと雰囲気が変わりまし
 て、昔のよき想い出に浸る音楽となりますが、やがて悲しみと共に冒頭の主題が戻ってきてしまいます。
 この時のヴァイオリンの名残惜しさが非常に印象的で、重要な部分です。
 第3楽章は、温かい人間感情に溢れた美しい変奏曲です。いつまでもこの中に浸っていたいと思わせ、
 長い間、陶酔的なまでに美しい音楽が続きます。ところが…。
 平穏に満足してはいけなかったのです。過酷な運命から逃避しようとしていた自分に金管が警告を発し、
 ヴァイオリンが悲痛な調べでそれに応えます。一度はまた戻りたいと願い、美しい主題に戻りますが、
 「それではだめ!」と言わんばかりに、再び金管の警告が発せられます。今度こそ魂が目覚めます。
 このあたりは、音楽でここまで表現出来うるものかと感じさせられるほどで、文学、哲学に近いです。
 非常に重要な楽章でして、表現力のある指揮者の演奏によってこそ音楽が活きます。まさにベートーヴ
 ェンが音符に託した音によるドラマです。
 第4楽章は、汚い和音によって始まり、やがて低弦が「我々が求めているのはこんな音楽ではない」と
 言わんばかりに奏します。「こんな音楽」というのは第3楽章までを指していまして、第1楽章から第
 3楽章までの主題が数小節ずつ再現されるのですが、いずれも低弦によって否定されてしまいます。
 音楽は迷いながらも進行していきますが、やがて低弦から”わずかに”有名な「歓喜の歌」の主題が流
 れると、「これこそが我々の求めていた音楽だ!」と言わんばかりに心を弾ませて肯定し、歓喜の主題
 は段々と高音(ヴァイオリン)へと移り、やがて歓喜の主題が全体によって高らかに演奏されます。そ
 してバリトン独唱が「おお、友よ、我々が求めているのはこんな音楽ではない!」と歌い始めると、徐
 々に他の3人のソリストと大合唱が参加していき、有名なシラーの詩(こちらを参考になさって下さい。
 かなり宗教的です。)と「歓喜の歌」の主題が始まります。
 歌詞については、CDに付属の解説書をご覧下さい。
 大合唱による「歓喜の歌」が本格的に始まるのは、行進曲などの後で、まだまだ待たねばなりません。
 「第九」とは、「歓喜の歌」が始まるまでに、これだけの音のドラマが繰りひろげられるのです。
 この作品の初演者は、作曲者のベートーヴェン自身です。この頃には既に耳が不自由で、筆談による会
 話しかできなかったと言われています。
 音によってこれだけの表現を込めた、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」。もはや音楽という範疇
 を超えて、一つの芸術作品、人類の文化遺産と言えるのではないでしょうか。

第1楽章(ドゥダメル指揮)  第4楽章(バーンスタイン指揮)
 ☆推薦盤☆   ☆◎フルトヴェングラー/バイロイト祝祭管弦楽団(51)(ワ−ナー)             ○アントニーニ/バーゼル室内管弦楽団(16)(国立音楽フォーラム)        S    △エラス=カサド/フライブルク・バロック管弦楽団(19)(ハルモニア・ムンディ) A    ▲パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(08)(RCA)         A    ・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(57)(ワーナー)           A       「第九」のCDには不滅の金字塔があります。星の数ほどあるクラシックのCDのうち、最も    有名なCDの最有力候補、フルトヴェングラーの「第九」。「バイロイトの第九」とも呼ばれ    ています。20世紀最大の指揮者が、クラシック音楽の最高傑作とも呼ばれる「第九」を演奏    したのですから、最高の演奏が実現されたのも当然のことなのかもしれませんが、想像を超越    した演奏です。    演奏が再現行為である以上、どんな名演奏でもそれを上回る演奏がいずれ出現する可能性は常    にあるものですが、こと、このフルトヴェングラーのバイロイト盤に限っては、その可能性は    限りなく0に近いとも言われています。その理由には、この演奏自体が素晴らしかったという    だけではなく、第二次世界大戦後、荒廃した戦犯国ドイツで、国を代表する指揮者フルトヴェ    ングラー(ナチスと関係があるのではという疑惑を持たれ、演奏活動を休止させられていまし    た)が、やっと再開したバイロイト音楽祭(詳しくはこちらをどうぞ)の成功を双肩に託され、    バイロイト祝祭管弦楽団共々、世界平和を祈るような心境であったからこそ、空前絶後の名演    が誕生したとも考えられるからです。時代背景が現在とは全く違いますので、当時のような心    境での演奏が可能なはずがありません。同じフルトヴェングラーの「運命」と同様です。    そのような時代背景も加えて、「音楽表現」が、「楽器演奏」という領域を超越しています。    世界的指揮者のブロムシュテットは実際にこの演奏を「生で」聴いたのですが、同じ指揮者と    して自分のしていることが、フルトヴェングラーと比べられると、悩み抜くそうです。そして、    「第九」を演奏する時には、もし聴衆の中に一人でも、「バイロイトの第九」の実演に立ち会    った人がいれば、あるいはCDを聴いたことがある人でさえいることを想像すると、それだけ    で怖くてステージに上がれないのだそうです。    言わば、目標とすらできない、ただ別格中の別格の演奏が存在するということです。    フルトヴェングラーの「バイロイトの第九」についてまだまだ続きます。これだけ筆舌に尽く    しがたい演奏、CDは他にはありません。クラシックファンにとっては「人類の至宝」です。    第1楽章の、スケールが雄大で深遠な表現も非常に素晴らしいのですが、録音の古さもあって、    マイクが捉えきっていないこともあるのでしょう、第1楽章は、もっとダイナミックな演奏が    お好みの方もいらっしゃると思われます。特に再現部は音の拡がりに欠けます。    ですが、その欠点を補って余りあり過ぎる、他の楽章の素晴らしさは、私の言語表現の域を超    えています。    第2楽章の名残惜しそうな弦の響きは、弦楽器が言葉を発しているように聴こえます。    更に、個人的に筆舌に尽くしがたいと思うのは、第3楽章です。フルトヴェングラーが遅いテ    ンポから奏でる冒頭の主題のこぼれ出るような人間感情の温かさ、警告を発する時の金管の悪    魔じみた音色、ヴァイオリンの悲痛な響き。もはや楽器ではなくなって、自然発生的に音を発    する生命体のような…。    おそらくこの楽章は真似をすることすら不可能なのではないでしょうか。ただただ、フルトヴ    ェングラーの芸術の巨きさと演奏者に感服する他なく、これほどの演奏記録が遺されているこ    とに感謝したいです。    第4楽章も、低弦の響きはまるで人間がしゃべるように聴こえます。    耳を澄ましてお聴き下さい。ここまでくると、もはや音楽を超越しているのかもしれません。    クライマックスでは、フルトヴェングラーはオーケストラが乱れて鳴らないくらいに加速させ、    天に召されていくさまを表現しています。この「クライマックスの加速」の、デフォルメはフ    ルトヴェングラーの十八番なのですが、「第九」の第4楽章では最大限に機能しているのでは    ないでしょうか。もうこれ以上、音も言葉も必要ないのでしょう。    この演奏はもちろん、フルトヴェングラーの最高傑作の1枚で、クラシックCDを代表する永    遠の名盤の1枚です。    ということで、「人類の至宝」であるこの演奏を超えるものはないとされているのですが、い    かんせん音が悪いのです。正直、初心者の方には厳しいかもしれません。    このCDは演奏だけを考えますと、もちろん★究極のお薦め盤 なのですが、録音の古さは認    めざるを得ません。21世紀の現在、歴史的名盤という方が適切なのかもしれません。    「第3番『英雄』」、「第5番『運命』」のところでも触れましたが、フルトヴェングラー指    揮による「第九」の演奏もいくつも存在します。「バイロイトの第九」としてご紹介している    のは旧EMI、現在はワーナーミュージックが所有している1951年7月29日、バイロイ    ト祝祭歌劇場でのライヴ録音です。ご注意下さい。    アントニーニ盤、エラス=カサド盤は古楽器演奏ですし、クレンペラー盤は廃盤中ですので、    現代楽器でのお薦めの演奏となりますと、ベートーヴェンの録音に21世紀の名盤を残し続け    ているヤルヴィ盤ですが、ベートーヴェンの交響曲全集しかありません。    やはり「バイロイトの第九」を聴いて頂きたいです。「第九」を聴ける頃になれば中級者クラ    スと思われますので、鑑賞の幅を広げる意味でも、古い音質に慣れて頂くべきだと思われます。


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