日本の指揮者達





  朝比奈隆  1908〜2001  B  日本

日本人指揮者で有名なのは何と言っても小澤征爾ですが、「隠れた実力者」扱いされてきた名  指揮者が一人います。朝比奈隆です。朝比奈はカラヤンと同い年ながら2001年まで生き、  21世紀になった時には指揮者界の長老というべき存在でした。演奏活動は、「手兵」大阪フ  ィルの海外公演や海外オケでの客演指揮もありましたが、ほとんどは国内にとどまり、同オケ  の常任指揮者として活動し、小澤のような華やかな世界からは遠いところにいました。ですが、  この日本の一指揮者に過ぎない朝比奈を某評論家が絶賛し、固定ファンが徐々に増え、ファン  の間では朝比奈のブルックナーは生年も没年もほぼ同じヴァントと並び称されました。ヴァン  トといえばクラシック史上世界一のブルックナー指揮者とも言える存在で、そのヴァントと並  び称されたのです。  また、ベートーヴェン「英雄」「運命」なども非常に高い評価を受けました。  これはあくまで、「固定ファンの中」ではありましたが、90年代に入ってからの最晩年は、  国内を通して人気がありました。東京公演などでのお得意なレパートリーのコンサートでは、  小澤を凌ぐ人気もあったと言われているほどでした。90歳を超えても指揮台に立ち続けまし  たが、とても90歳を超えていたとは思えない、背筋の伸びた立派な姿をご記憶の方も多いの  ではないでしょうか。  朝比奈の芸風は、徹底した職人仕事で、クレンペラーに近いです。各パートのバランスを整え  たり、表情に味付けをしたりということはせず、ただひたすら楽員全員がしっかりと細部まで  弾くことに専念させました。楽器相互のバランスを絶妙なまでに整える小澤とは正反対ともい  える芸風でした。よって、ステージではどのパートをとってもずっしりと、しっかりとしたハ  ーモニーが響きます。得意なレパートリーといったら、ブルックナー、ベートーヴェンのスケ  ールの大きな交響曲であるという点も、芸風に合っていたのでしょう。  「愚直」という言葉を好み、聴衆にウケそうな演出をするという芝居気は0といってもいいタ  イプの指揮者でした。  クレンペラーやベームなどの音楽が好きな方は是非聴いてみてはいかがでしょうか。  どういうわけか、没後、朝比奈が遺した名盤は次々と廃盤になってしまっていまして、新しく  朝比奈の音楽を知ろうという方には苦々しい時期が続いています。  今後、朝比奈の音楽はどう評価されていくのでしょうか。
ブラームス「交響曲第4番」第1楽章
 ☆推薦盤☆   特になし   <テンポやや遅><重厚><客観主義>

  小澤征爾  1935〜  S  日本

日本で最も有名な指揮者、「OZAWA」。「世界的指揮者」とされていますが、どれほど世  界的に有名なのかと言いますと、現役の指揮者界の重鎮の一人です。なにせ2002年のニュ  ーイヤー・コンサートを指揮した人物なのです。ニューイヤー・コンサートの指揮台に日本人  が立つこと自体、奇跡に近いことです。  指揮者はウィーン・フィルの団員の投票によって選ばれます。  そしてウィーン国立歌劇場の音楽監督にまで上りつめました。指揮者としてこれ以上の出世は  ないと言ってもいいくらいなのです。  ウィーン国立歌劇場はウィーン・フィルの本拠地で、国立歌劇場のオーケストラの中から、ウ  ィーン・フィルのメンバーが選ばれるという、世界最高の歌劇場です。  小澤は音楽に対する勘と耳のよさで勝負するタイプです。よって、芝居気はなく、音楽は常に  楽譜そのものに進められます。各パートのバランスは最高に保たれ、気品があるさわやかな音  楽を創ります。  高齢なため、近年は指揮者としての活動が少なくなってしまいました。一時期はテレビで「咽  頭ガン」であることを発表し、克服したのですが、なかなか体調が思うようにいかないのでし  ょうか。  これからは、日本での活動が中心となるのかもしれません。夏の恒例となっているセイジ・オ  ザワ松本フェスティバルは、長野県松本市を中心に毎年何日かにかけて開催されますので、ご  興味のある方はぜひどうぞ。  手兵であるサイトウ・キネン・オーケストラとは、桐朋学園出身の演奏家を中心に結成されて  いまして、常設の団体ではなく、夏のフェスティバルの時だけ松本に集合します。世界各地で  活躍している演奏家が多いですので、個々の技術レベルは相当高く、世界の一流オケと比較し  ても全くひけをとらないそうです。  なお、2016年に、サイトウ・キネン・オーケストラとの演奏で、ラヴェルの「こどもと魔  法」のCDが、何と米「グラミー賞」を受賞しました。世界的な音楽家の一人と断言できます。  CDはこちらからどうぞ。  元気で頑張って頂きたいです。
近年の指揮姿     ニューイヤー・コンサート’2002より
 ☆推薦盤☆  ・オルフ カルミナブラーナ/ベルリン・フィル(88)(デッカ)          A  ・チャイコフスキー 弦楽セレナーデ/サイトウ・キネンオーケストラ(92)(デッカ)A  ・メンデルスゾーン 真夏の夜の夢/ボストン交響楽団(92〜94)(グラモフォン) B ・ニューイヤー・コンサート2002(02)(デッカ)               ?     <音符主義><気品><万能型> 

  鈴木雅明  1954〜  B(バッハファンはS)  日本

   鈴木雅明は指揮者兼チェンバロ、オルガン奏者です。1990年にバッハ・コレギウム・ジャ  パン(BCJ)を結成し、音楽監督を務めていますが、近年、その演奏や録音が国内外で高い  評価を得ています。鈴木&BCJは今や日本が世界に誇る演奏集団と言えます。  バッハ・コレギウム・ジャパンは主にバッハに始まるバロック音楽を古楽器で演奏するオーケ  ストラ及び合唱団です。  下にリンクがあるバッハの「カンタータ集」は、何と18年もの歳月をかけ、CD55枚、1  95曲収録の超大作ですので、大変な功績を残したことになります。  今後もこれらの作品の演奏、再録音が中心となるでしょうが、モーツァルトベートーヴェン  などのプログラムもあります。  鈴木自身は、指揮者としてボストン交響楽団と現代楽器の共演をしたこともあります。  BCJは海外でも演奏活動を行ってはいますが、やはり国内中心です。日本が誇る、世界屈指  のバロック(バッハ)オケですので、我々は生で、世界屈指のバッハを聴くことができるわけ  です。  なお、弟の鈴木秀美はバロック・チェリスト兼指揮者で、BCJにも参加しています。
バッハ「ヨハネ受難曲」第1曲より 鈴木&BCJ
 ☆推薦盤☆  ・バッハ 「管弦楽組曲」/BCJ(03)(BIS)       A  ・バッハ 「カンタータ集(全集)」/BCJ(BIS)      S  ・バッハ 「ミサ曲 ロ短調」/BCJ(07)(BIS)     A  ・バッハ 「クリスマス・オラトリオ」/BCJ((BIS)    A   <古楽器><バッハ◎>


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