現役の指揮者達





  ゲルギエフ  1953〜  GERGIEV  S  ロシア

 21世紀に入りヴァントクライバーアーノンクールらの個性派指揮者達が他界しまして、  指揮者界もいよいよ没個性化してしまいました。  そんな現在、パーヴォ・ヤルヴィらと共に指揮者での名盤制作者と言えるのがゲルギエフです。  その意味では、現役最高の指揮者の1人と言うこともできます。しかもほとんど来日機会も多  いですので、世界最高級の指揮者の演奏を生で聴けるのです。  ゲルギエフはロシアの指揮者で、元々キーロフ劇場(現在はサンクトペテルブルク・マリイン  スキー劇場ですが、このサイトでは字数の都合で、すべて「キーロフ劇場」と表記してありま  す)の監督でしたので、バレエ音楽も大得意です。他の名盤の数も多いのですが、詳しい方は  良く見て頂きますと、「お国もの」の演奏ばかりであることが分かります。同じくロシア出身  のムラヴィンスキーもロシア音楽に名盤を残しましたが、名盤の数からすれば、指揮者史上最  高のロシア音楽の指揮者と言うこともできます。ウィーン・フィルの信頼も厚いと言われてい  ますから、今後期待されるのはロシア音楽以外のレパートリーの広さということになります。  演奏スタイルは、柔と剛を併せ持ったものです。世界中を飛び回り、その体力と気迫溢れる姿  には音楽関係者も舌を巻くほどとか。ですが、気分がノラないときの演奏はさっぱりだそうで  す。 
チャイコフスキー「交響曲第4番」第4楽章
 ☆推薦盤☆  ・ショスタコーヴィチ 交響曲第5番/キーロフ劇場O他(02)(デッカ)      A  ・ショスタコーヴィチ 交響曲第7番/キーロフ劇場O他(01)(デッカ)      S  ・ストラヴィンスキー 春の祭典/キーロフ劇場管弦楽団(99)(デッカ)      S  ・ストラヴィンスキー 火の鳥/キーロフ劇場管弦楽団(95)(デッカ)       S  ・チャイコフスキー 交響曲第4番/ウィーン・フィル(02)(デッカ)       A  ・チャイコフスキー 交響曲第5番/ウィーン・フィル(98)(デッカ)       S  ・チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」/ウィーン・フィル(04)(デッカ)   A  ・チャイコフスキー 白鳥の湖/キーロフ劇場管弦楽団(06)(デッカ)       A  ・チャイコフスキー くるみ割り人形/キーロフ劇場管弦楽団(98)(デッカ)    A  ・チャイコフスキー 眠りの森の美女/キーロフ劇場管弦楽団(92)(デッカ)    A  ・プロコフィエフ 交響曲第1番「古典交響曲」/ロンドン交響楽団(04)(デッカ) A  ・プロコフィエフ ロメオとジュリエット/キーロフ劇場管弦楽団(90)(デッカ)  A  ・ムソルグスキー 展覧会の絵/ウィーン・フィル(00)(デッカ)         A  ・ラフマニノフ 交響曲第2番/キーロフ劇場管弦楽団(93)(デッカ)       A  ・リムスキー=コルサコフ シェエラザード/キーロフ劇場O(01)(デッカ)   SS   <情熱強><バレエ音楽◎><ロシア音楽◎><安定性やや劣>

  デュトワ  1936〜  DUTOIT  A  スイス

 クラシック界では、有名な演奏家が必ずしも名盤を数多く残しているとは限らないですし、逆  に、世界的知名度は今一つでも、残した録音が高い評価を得ている演奏家もいます。  デュトワは後者の一人で、ヨーロッパでは、ウィーン・フィルやベルリン・フィルとよく共演  したというタイプではないですし、マスコミとあまり関わりをもたなかったため、知名度は今  一つなのですが、カナダのモントリオール交響楽団の音楽監督を25年間務め、同楽団を世界  レベルの楽団に育て上げました。  デュトワは日本と非常に深い関係があります。大の親日家ということもあって、以前はNHK  交響楽団の常任指揮者だったこともあり、同楽団を率いて海外ツアーを行ったり、NHKの大  河ドラマの音楽の指揮をしたり、更には「徹子の部屋」に出演することもありました。また、  2011年まで宮崎国際音楽祭の芸術監督を務めていました。  このように、身近な存在のデュトワなのですが、実は我々クラシックファンにはお宝級の名盤  を数多く残している大変な実力者なのです。  また、フランス音楽においては、アンセルメ、クリュイタンスの後継とも言える存在です。  そして、残した名盤の数々を考えますと、指揮者としての実力は、現役では世界最高レベルに  あるといっても過言ではありません。  なお、プレヴィン同様、深刻な交響曲には弱いのが難点ですが、管弦楽曲には滅法強いのが特  徴です。
ラヴェル「ボレロ」他
 ☆推薦盤☆   ・サン=サーンス 交響曲第3番/モントリオール交響楽団(86)(デッカ)    S  ・ストラヴィンスキー ペトルーシュカ/モントリオール交響楽団(86)(デッカ) A  ・チャイコフスキー 白鳥の湖/モントリオール交響楽団(91)(デッカ)     A  ・プロコフィエフ 交響曲第1番/モントリオール交響楽団(88)(デッカ)   SS  ・ホルスト 惑星/モントリオール交響楽団(86)(デッカ)           A  ・ムソルグスキー 展覧会の絵/モントリオール交響楽団(85)(デッカ)     A  <管弦楽曲◎><フランス音楽○><親日派>

  ドゥダメル  1981〜 DUDAMEL  A  ベネズエラ
 
21世紀だからこそ誕生したとも言える、スター指揮者です。南米の、西洋音楽とは縁が遠い  ベネズエラの地で、当時ベルリン・フィルの音楽監督ラトルをして「クラシック音楽の未来は  ベネズエラにある」とまで言わしめた指揮者です。  ドゥダメルは、1981年生まれで、指揮者としては非常に若いのですが、17歳でシモン・  ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(SBYOV)の音楽監督に就任。20  04年に指揮者の国際コンクールで優勝しました。  簡潔にまとめますと、ベネズエラ(南米です)というクラシックとは縁が遠い国で、青少年の  更生のために音楽教育を取り入れた教育システムが根付き、その最高位にあるのがSBYOV。  同じ音楽教育を受けたドゥダメルの指揮棒の元、ベートーヴェンチャイコフスキーのCDを  完成し、演奏旅行も行いました。  プロと呼べるほどの演奏家の集団ではありませんので、確かに、世界的なオケに比べればアン  サンブルの雑さは目立ちますが、若いオケと指揮者ゆえに、その情熱あふれる演奏スタイルは、  本場のプロ中のプロの心をも掴んだのです。  ベルリン・フィルのメンバーが直接指導にあたったり、前述のラトル、そしてアバドという第  一級の指揮者が指揮台に立ったりということは、いかにドゥダメルとオケに彼らを惹きつける  ものがあったかということを如実に示しています。  そしてドゥダメルは、ウィーン・フィルを指揮したり、2017年にはニューイヤー・コンサ  ートの指揮台に上るなど、期待通り、今や世界的な指揮者となりました。  2009年に音楽監督に就任したロサンジェルス・フィルとのコンビは、現在世界で”最も熱  い”コンビとも呼ばれています。これという名盤を早く聴きたいです。
ベートーヴェン「交響曲第7番」第4楽章
 ☆推薦盤☆   特になし   <情熱強>

  パーヴォ・ヤルヴィ  1862〜  PAAVO JARVI  S  エストニア⇒アメリカ

 現役の指揮者で、今世界で最も忙しいと言われているのがパーヴォ・ヤルヴィです。指揮者の  ネーメ・ヤルヴィを父に持ちます。  近年、ドイツのカンマー管弦楽団と行ったベートーヴェンの全交響曲録音のCDが好評を博し、  指揮者としての評価もうなぎ上りで、最も脂がのっている時期かと思われます。  ウィーン・フィル、ベルリン・フィルなどの世界の主要オーケストラに客演で呼ばれたりと、  世界をまたにかける指揮者で、来日も多かったのですが、一番我々にとって大きいことは、何  とこのヤルヴィが、2015年9月にNHK交響楽団の初代主席指揮者に就いたことでしょう。  それにより、来日を気にすることなく、世界の第一級の指揮者の演奏を頻繁に聴くことができ  るようになったのです。  ヤルヴィの演奏スタイルはまさに現代的なもので、スピード感、躍動感を伴い、弦楽器主体に  ニュアンスに富んだデリケートな表現を主体とするものです。  ただそれだけでしたらつまらないベートーヴェンになってしまうのですが、そうでないところ  にヤルヴィの良さがありまして、卓越した音楽性を感じさせます。指揮姿も流麗です。  現在のところ、推薦盤に挙げられるのは主にベートーヴェンですが、他の北欧の作曲家やドビ  ュッシーも得意としています。  今後のヤルヴィの活躍に乞うご期待といったところで、ぜひ実演にも接して頂きたいです。
ベートーヴェン「交響曲第5番『運命』」全楽章
 ☆推薦盤☆  ・グリーグ ペールギュント/エストニア国立交響楽団(04)(エラート)     A  ・シューマン 交響曲第3番「ライン」/ドイツ・カンマー管弦楽団(09)(RCA)S  ・ベートーヴェン 交響曲第1番/ドイツ・カンマー管弦楽団(06)(RCA)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第2番/ドイツ・カンマー管弦楽団(07)(RCA)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」/    〃   (05)(RCA)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第4番/ドイツ・カンマー管弦楽団(05)(RCA)   A  ・ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」/    〃   (06)(RCA)   A  ・ベートーヴェン 交響曲第8番/ドイツ・カンマー管弦楽団(05)(RCA)   S  ・ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」/    〃   (08)(RCA)   A   <テンポやや速><柔軟>

  ラトル  1955〜  RATTLE  S  イギリス

アバドの後を受けてベルリン・フィルハーモニーの第6代目の首席指揮者、すなわち世界の指  揮者界のトップに立っていたのが、サイモン・ラトルです。イギリス出身の指揮者としては断  然の出世頭で、「Sir」の称号も得ています(詳しくはショルティの紹介をご覧下さい)。  前代のアバドは、ベルリン・フィルとはマーラー以外にこれといった名演を残せなかったので  すが、ラトルも同様で、マーラーには名盤を残しています。  ベルリン・フィルを率いるとなると、どうしてもレパートリーの広さが求められ、大衆に迎合  する指揮者になってしまいがちな面はあります。アバドは元々イタリアの指揮者だったのです  が、ベルリン・フィルとコンビを組むことでドイツ音楽の演奏も求められました。得意でない  レパートリーも得意でなければならないという立場に置かれたことで、不評を買ってしまいま  した。ベルリン・フィルの常任になった前後に多くの名演を残しているのは、いかにも皮肉な  話です。  ラトルもそんなパターンな気がしてなりません。  ベルリン・フィルは2018年1月に退任しまして、ロシア出身のペトレンコに後を託して自  身はイギリスに戻り、ロンドン交響楽団の音楽監督になりました。  まだまだ若いですので、今後も多くの名盤を残して欲しいです。
ジョン・ウィリアムズ「スター・ウォーズのテーマ」
 ☆推薦盤☆  ・チャイコフスキー くるみ割り人形/ベルリン・フィル(09、10)(ワーナー)S  ・ブリテン 戦争レクイエム/バーミンガム市交響楽団(83)(EMI)     A  ・ホルスト 惑星/ベルリン・フィル(06)(ワーナー)            S   ・マーラー 交響曲第2番「復活」ベルリン・フィル(06)(ワーナー)     S  ・マーラー 交響曲「大地の歌」/バイエルン放送交響楽団(18)(BR Klassik) A  ・マーラー 交響曲第9番/ベルリン・フィル(07)(ワーナー)        A


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