超有名曲を作った作曲家達





  ヴィヴァルディ  1678〜1741  VIVALDI  S  ヴェネツィア(現イタリア)

 「四季」の「春」の冒頭部分といえば、おそらく、あらゆるクラシック音楽の中で最も有名な  旋律の一つでしょう。教科書にも載っていますし、いかにも「春」という感じがしますので、  覚えやすいです。では「四季」の作曲家はといえば、「ヴィヴァルディ」ということを知って  いる方も多いと思われます。  いずれにせよ、「四季」はヴィヴァルディのまさに代名詞ともなっています。  ヴィヴァルディはバッハよりも早く生まれた、バロック後期の作曲家です。あまりに「四季」  が有名過ぎますので、クラシックファンの方でも他の作品を答えるのは一苦労かもしれません  が、実は500もの協奏曲、52のオペラ、73のソナタに代表されるように、大変な数の作  品を作曲しています。  特に協奏曲(「四季」もヴァイオリン協奏曲です)においては、様々な楽器の協奏曲を作曲し  たように多大な功績があり、後のバッハ、モーツァルトらに影響を与えました。  ☆代表作☆  <協奏曲>  ヴァイオリン協奏曲集「四季」  フルート協奏曲集  調和の霊感         2つのトランペットのための協奏曲 チェロ協奏曲集 オーボエ協奏曲集         ファゴット協奏曲集  弦楽のための協奏曲集

  ヘンデル  1685〜1759  HANDEL  B  ドイツ⇒イギリス
 
 ヘンデルはバッハに次ぐバロック時代最大の作曲家とされ、バッハが「音楽の父」と呼ばれる  のに対しまして、「音楽の母」と呼ばれることもあります(女性ではありません)。  バッハは主として教会音楽で活躍しましたが、ヘンデルはオペラやオラトリオなど、劇場用の  音楽の分野で活躍しました。オラトリオとは、簡単にご説明しますと、オペラから演劇を除い  たものです。宗教音楽で、聖書から台詞などを引用し、合唱団とオーケストラで演奏するバロ  ック時代の音楽形式のことです。ヘンデルの作品では、オラトリオ「メサイア」の中の「ハレ  ルヤ・コーラス」が今日でも歌われている超有名曲です。他には、オラトリオ「ユーダス=マ  カベウス」の中の合唱曲「見よ、勇者は帰る」が、スポーツなどで優勝者を称える時に頻繁に  用いられている超有名曲です。  このように、誰でも聴いたことのある曲を作曲したヘンデルなのですが、その他には、これと  いって一般に知られている曲はほとんどないと言ってもいいくらいです。「ヘンデル」という  作曲家の名前は学校で習うように大変有名なのですが、いざ作曲した曲はと言われれば、答え  られない方がほとんどでしょう。クラシックファンにとっても同様で、ヘンデルの作品はクラ  シック音楽の中ではマイナーな部類に属します。かなりのマニアでもヘンデルの曲をほとんど  聴いたことのない方は多いのではないでしょうか。  クラシック音楽の世界では、管弦楽曲の「水上の音楽」と「王宮の花火の音楽」が二大作品と  して採り上げられますが、いずれも一般的でなく、やはり、クラシックファンでないのに聴い  たことのある人はほとんどいないのが現実と言ったところです。
「ユーダス=マカベウス」より「見よ、勇者は帰る」
 ☆代表作☆  <管弦楽曲>   水上の音楽  王宮の花火の音楽  <オペラ曲>   セルセ  <オラトリオ>  メサイア  ユーダス=マカベウス       

  ヨハン・シュトラウスT世 1804〜1849 JOHANN STRAUSST S オーストリア
  
   ワルツやポルカで有名な「シュトラウス・ファミリー」をここで整理しておきます。  「ヨハン・シュトラウス」という作曲家の名前をご存知の方は多いのではないでしょうか。で  すが、少しクラシックに詳しくなって、「リヒャルト・シュトラウス」という作曲家がいるこ  とや、「ヨハン・シュトラウス」にもT世とU世がいることまで知るようになるとさすがに混  乱してしまいます。「ヨーゼフ・シュトラウス」まで知ってしまうとなおさらです。  まず、「リヒャルト・シュトラウス」は「シュトラウス・ファミリー」とは親戚でも何でもな  く、全く関係がないことをお知り下さい。リヒャルト・シュトラウスは、「ツァラトゥストラ  はかく語りき」などの作曲家で、ワルツやポルカで有名な作曲家ではありません。  残り3人が、「シュトラウス・ファミリー」です。その系譜をご説明しますと、ここにご紹介  している「ヨハン・シュトラウスT世」が父で、「ヨハン・シュトラウスU世」が子供、その  弟が「ヨーゼフ・シュトラウス」です。ところが、有名な作品(ワルツやポルカといったらほ  とんどです)はU世作曲の作品でして、U世を単に「ヨハン・シュトラウス」と表記すること  もあります。これが非常にややこしいのです。ですが、ここでご紹介している「ヨハン・シュ  トラウスT世」の代表的な作品と言ったら、かの有名な「ラデツキー行進曲」くらいですので、  「ラデツキー行進曲はT世」とだけ知っておけば間違えにくいです。弟の「ヨーゼフ」も相当  数のワルツ・ポルカを作曲しましたが、特に「CLASSIC MUSEUM」でご紹介するほど有名な曲は  作曲していませんので、割愛したいと思います。  ラデツキー行進曲といったら、よく運動会で使われる曲で、おそらく大多数の方が一度は聴い  たことがあるでしょう。  毎年元旦恒例のウィーン・フィルハーモニーの「ニューイヤー・コンサート」でも、必ず最後  の「とり」を務める、軽快で、祝祭的なムード満点の曲です。  ☆代表作☆ <管弦楽曲>  ラデツキー行進曲

  ヨハン・シュトラウスU世 1825〜1899 JOHANN STRAUSSU S オーストリア

 この「ヨハン・シュトラウスU世」こそが、巷でよく呼ばれるワルツ・ポルカの「ヨハン・シ  ュトラウス」のことです。父に「ヨハン・シュトラウスT世」をもち、「ワルツ王」と呼ばれ  ます。単に「ヨハン・シュトラウス」と呼ばれることもあります。  ヨハン・シュトラウスU世は、ブラームスと厚い親交があったことが有名です。他にはリスト  やワーグナーとも親交がありました。  「美しき青きドナウ」は「オーストリアの第二の国家」との評価も受けていた曲で、ブラーム  スをして、「残念ながら、ブラームスの曲にあらず」と言わしめたと言われています。  また、ワーグナーは当時指揮者でもありましたが、ヨハン・シュトラウスU世の曲を指揮して、  「自分にこのような軽い音楽が書けないのが残念」と語ったと言いますし、チャイコフスキー  もヨハン・シュトラウスU世の曲を愛した1人で、バレエ「くるみ割り人形」の中の一曲「花  のワルツ」はヨハン・シュトラウスU世の曲の様式に基づいていると言われています。  このように、ヨハン・シュトラウスU世の曲は当時の第一級の作曲家達にも愛され、評価され  ていました。  元旦恒例のウィーン・フィルハーモニーの「ニューイヤー・コンサート」で演奏されるワルツ  ・ポルカはヨハン・シュトラウスU世の作品が多いです。祝祭的な、優雅な雰囲気をもつ曲ば  かりで、ウィーン情緒たっぷりです。
春の声
 ☆代表作☆  <管弦楽曲> 美しき青きドナウ  春の声  ウィーンの森の物語  ピチカート・ポルカ         トリッチ・トラッチ・ポルカ  アンネン・ポルカ  <オペラ曲> こうもり

  バダジェフスカ  1834〜1861  BADARZEWSKA  A  ポーランド

 クラシックに興味がない方でも、ピアノを弾いたことがない方でも、おそらくほとんどの方が  聴いたことがあるであろう曲、「乙女の祈り」。一度聴いたら忘れられないくらいの美しい、  まさに乙女チックな旋律が魅力の超有名曲なのですが、この曲の作曲者は?となると、クラシ  ックの上級者でも中々答えられないでしょう。バダジェフスカという、日本語ではちょっと覚  えづらい発音なのもその一因かもしれません。それに、作曲した曲が「乙女の祈り」しか知ら  れていないのも大きな要因でしょう。バダジェフスカ=乙女の祈り です。  バダジェフスカは、ポーランド出身の女性ピアニスト兼作曲家で、生年(1838年説もあり  ます)と没年と、「乙女の祈り」の作曲者であること以外、詳しいことはほとんど判っていま  せん。  この曲は18歳の時に作曲され、パリの音楽雑誌で紹介されたのをきっかけに、世界中で演奏  されるようになった、19世紀最大のヒット曲と言われています。いかにも女性が作曲したよ  うな魅力的な旋律と、現在でも知名度が高いことを考えると、それもうなずけます。  バダジェフスカは何と27歳で夭折してしまいました。乙女の「祈り」とは、結婚願望のこと  で、乙女という名の通り、お嬢さんが演奏するための曲だったようです。   27歳にしてこの世を去ったバダジェフスカ。5人の子供をもうけたとされていますが、「祈  り」は本当に叶えられたのか、それを知る術はありません。
乙女の祈り
 ☆代表作☆  <ピアノ曲>  乙女の祈り

  ビゼー  1838〜1875  BIZET  A  フランス
 
 ビゼーの肖像画も学校の音楽室に飾ってあることが多いです。シューベルトと同じく眼鏡をか   けているので混同する方が多いかもしれませんが、シューベルトという名前は知っているけれ  ども、ビゼーという名前を知っているという方はそれほど多くはないでしょう。  ですが、ビゼーには超有名な「カルメン」というオペラ作品、そして誰もが聴いたことがある  であろう「第1幕への前奏曲」という曲があります。シューベルトの交響曲第8番「未完成」  がいかに名作だとしても、クラシックファンでない限り旋律を思い浮かべるのは厳しいと思わ  れますが、ビゼーには、曲名までは知らなくとも(曲名がカルメンだと思っている方も多いの  ではないでしょうか)、ちょっと聴いただけで誰もがすぐに思い出せる曲があります。  実際、ビゼーの劇音楽は約30種類ありますが、名前が通っているのはオペラの「カルメン」  と劇音楽の「アルルの女」くらいです。交響曲なども作曲してはいるのですが、演奏される機  会はまずありません。  いわゆる「一発屋」の類の作曲家なのですが、誰もが知っている超有名曲を残したということ  で、ビゼー=カルメンはぜひ覚えておきたいです。また、オペラのカルメン自体、非常に分か  りやすいですので、オペラ初心者の入門用には最適なオペラの1つでもあります。  ☆代表作☆  <管弦楽曲>   アルルの女  <オペラ曲>   カルメン

  エルガー  1857〜1934  ELGER  A  イギリス
 
「名作曲家列伝」でご紹介している作曲家は主にドイツ・オーストリア系が中心で、そこにイ  タリア系、フランス系、ロシア系、北欧系などが加わっています。これが主なクラシックの作  曲家の地域的区分になります。  ヨーロッパの主な国はほぼ揃った感があるのですが、大英帝国、イギリスの名がありません。  事実、イギリスはヨーロッパの大国であったのにも関わらず、クラシックの主要な作曲家には  恵まれませんでした。そのイギリスの音楽の再興に重要な役割を果たしたのが、エルガーです。  エルガーはクラシックの作曲家の中ではマイナーな部類に入りますが、イギリス音楽において  は英雄視されています。  最も有名な曲は、行進曲としても使われる「威風堂々」第1番ですが、この中間部の旋律は英  国王エドワード七世に気に入られ、その部分だけを歌詞をつけて編曲した作品「戴冠式頌歌」  は、イギリスの第2の国歌として愛されているほどです。イギリスの大きな催しでは必ず演奏  される行進曲です。  また「チェロ協奏曲」も、同じくイギリス出身のチェリストであるデュ・プレの名演によって、  一躍有名曲の仲間入りをした作品です。  最後にご紹介したいのは、ヴァイオリニストならば誰もが一度は弾くといっていいほどの有名  曲「愛の挨拶」です。原曲はピアノ曲で、この曲はその名の通り、エルガーが婚約者のために  作曲した音楽によるラヴレターなのです。今日では弦楽器、管楽器、とにかく様々な楽器のた  めの編曲がなされていますが、ヴァイオリンとピアノによるヴァイオリン・ソナタの形式が最  もポピュラーです。
愛の挨拶(ヴァイオリン版 宮本笑里演奏)
 ☆代表作☆  <協奏曲>   チェロ協奏曲  <管弦楽曲>  「威風堂々」第1番  エニグマ変奏曲    <ピアノ曲>  愛の挨拶(後に様々な管弦楽曲・室内楽曲に編曲)

  ラヴェル  1875〜1937  RAVEL  A  フランス
 
フランス印象派を代表する作曲家が、このラヴェルです。自作の「ボレロ」が大変有名な作曲  家ですが、「オーケストレーションの天才」「管弦楽の魔術師」と呼ばれるほど精緻な管弦楽  手法で知られ、有名な編曲作品にムソルグスキーの「展覧会の絵」の管弦楽曲版があります。  同じくフランス印象派を代表するドビュッシーと親交がありましたが、作風は異なり、ラヴェ  ルの場合はモーツァルトグリーグらの影響を受けていると自ら主張していましたし、また一  方でスペイン音楽やアメリカのジャズに加え、アジアの音楽や各地のフォークソングなど、世  界中の音楽の影響を受けていたと言われています。20世紀風の、現代的な作品も多いです。 代表的作品である「ピアノ協奏曲」については、モーツァルト及びサン=サーンスの協奏曲が  そのモデルとして役立ったと語ったと言われています。  そういう意味で、ラヴェルは自分の感性だけを頼りに曲を創作するといったタイプの作曲家だ  けではなく、既に存在する音楽を、より魅力を増させたり、音楽的に巧みな構造に作り変える、  編曲家のような性質も持ったタイプの作曲家であるということができるでしょう。  ☆代表作☆  <協奏曲>   ピアノ協奏曲  <管弦楽曲>  ボレロ    <室内楽曲>  弦楽四重奏曲 ツィガーヌ   <ピアノ曲>  夜のガスパール  水の戯れ  <バレエ曲>  マ・メール・ロワ  ダフニスとクロエ


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