☆ショパン |
作品NO.68 ワルツ集 ★★★ 2021年2月最新更新 |
ワルツ集は全部で19曲(一説には21曲)からなる曲集です。ワルツというのですから、その名の通
り、舞踏会での踊りのような、楽しくて、心が弾むような音楽だとお思いの方がいらっしゃるかもしれ
ません。確かに、下にリンクがあります有名な「子犬のワルツ」などは愉快な曲なのですが、実は表面
ではワルツという仮面をかぶってはいながらも、憂いを帯びた、感傷的な曲も多いのです。その解りづ
らさが、このワルツ集がショパンの曲集の中でイマイチ人気がない理由なのかもしれません。
初心者の方には「何でこれがワルツなの?」と思われるような曲が多いのが実状です。
よって、この曲集は表面の音だけを単純に聴いていては、その魅力をなかなかお解り頂けないでしょう
から、中級者の方向けにしました。
有名な「別れのワルツ」も下のリンクからお聴き下さい。この曲も、外面はまあ楽しそうな曲と感じら
れなくはないのですが、実は内にやりどころのない悲しみをたたえた曲なのです。
ショパンと相思相愛になった女性がいたのですが、ある理由で別れなければならなかった悲しみをこめ
た曲なのです。また、第7番もノスタルジックな気持ちで聴いて頂ければと思います。
ワルツ第6番(64−1)「子犬のワルツ」(ブレハッチ演奏)
ワルツ第7番(64−2)(キーシン演奏)
ワルツ第9番(69−1)「別れのワルツ」(何とリパッティ演奏!)
☆推薦盤☆
◎リパッティ/(50)(ワーナー) 14曲 SS
・リパッティ/(50)(ワーナー) 13曲 ?
○ルービンシュタイン/(63)(RCA) 14曲 A
▲フランソワ/(63)(エラート) 14曲 A
△タロー/(05)(ハルモニア・ムンディ) 19曲 A輸
リパッティによるワルツの演奏は、まさに涙を禁じえません。
ショパンが書いた感傷的な内面を如実に描いているような素晴らしい演奏です。「別れのワル
ツ」の後ろ髪をひかれるような表現は、真似することすら不可能ではないかと思われるほどで
す。もちろん、他の曲も絶品揃いでため息が出るほどです。
当然この演奏を第1にお薦めしますが、いくら1950年の録音とはいえ、ちょっと音全体が
曇っている感じがします。
また、このCDには、録音年が同じCDが存在するという問題があります。こういうことはク
ラシックCDにはたまにあるのでご注意頂きたいのですが、断然の評価を得ているのは、ほと
んどの曲が1950年7月のスタジオ録音で、同年2月のライヴ録音の2曲が入っている、計
14曲収録のCDです。全曲ライブ録音の13曲入りのCDとお間違えのないようお願いしま
す。そのCDはおそらく2番目のCDだと思われますが、まだ確証はとれておりません。
もっといい音質でという方には、やはりルービンシュタイン盤がお薦めです。ただ、リパッテ
ィほどの悲愴感はありませんので、楽天的な演奏に聴こえる気がしないでもないです。
フランソワ盤は、時にはルバートを多用したり、ルービンシュタインよりも表現力豊かで、個
性が充分に発揮された素晴らしい演奏です。
タロー盤は曲数が豊富ですが、その分お高いのがネックです。
|
作品NO.69 マズルカ集 ★★★ 2021年2月最新更新 |
マズルカは、練習曲、夜想曲などの他のショパン曲に比べると、かなりマイナーな存在です。
ポロネーズ同様、ポーランドの民族舞踊風の曲を指します。
練習曲ならば「別れの曲」、ポロネーズならば「英雄ポロネーズ」のように、副題がついていて、単品
として演奏されるほどポピュラーな作品があるのですが、マズルカには副題のついている曲は1曲もあ
りませんし、これといって有名な曲もありませんので、「かなりマイナー」な存在なのです。
ですが、まとまった曲集としては、ショパンの曲集の中で最も多いです。即興曲集は4曲であるのに対
しまして、マズルカは少なくとも51曲はあります。その中では、下にリンクがあります第21番や第
25番が有名です。第37番は最も美しい曲と言われています。
こういう曲は、他の曲集とのカップリングとしてCDに収録されていることが多いのもマズルカの特徴
ですが、ここにすべてをご紹介するのは難解ですので、51曲、つまり全曲収録されているCDを中心
にご紹介します。
他の曲集のカップリングとしてマズルカが何曲か収録されているCDはここでは割愛させて頂きます。
第21番 第25番 第37番
☆推薦盤☆
★◎ルービンシュタイン/(65、66)(RCA) 51曲 SS
○ステファンスカ/(89、90)(ポニーキャニオン) 57曲 A
・フランソワ/(57)(EMI) 51曲 A
マズルカは少なくとも51曲はありますので、CDも2枚になります。
ショパンのCDとしては例によってルービンシュタイン盤が1番お薦めです。51曲収録です。
断然のSS評価で、ルービンシュタインの芸風にもあっていると判断しましたので、お薦め度
は★としました。上のYOUTUBEへのリンクはすべてルービンシュタイン演奏のもので、画面に
CDジャケットがうつっていますので、おそらく同じ音源だと思われます。
ステファンスカ盤は録音が新しく、素晴らしい名演です。57曲収録されていて曲数は豊富な
のですが、どうも、第55番の初稿となった第54番が収録されていないようです。
フランソワ盤は旧EMIの音源で、現在、国内盤、輸入盤共に廃盤中です。いずれワーナーミ
ュージックから再発売されると思われます。以前はA評価の「即興曲集」とのカップリングが
魅力的だったのですが、再発売盤はどうでしょうか。
推薦盤は51曲収録のCDを中心にさせて頂きましたので、以上です。フランソワ盤が廃盤中
だけに、ちょっと寂しいご紹介となってしまいました。
|
作品NO.70 バラード ★★★ 2021年2月最新更新 |
「バラード」は今のJーPOPでも使われる言葉ですが、ここでの「バラード」の意味はちょっと違い
ます。バラードとはフランスで生まれた詩の形式で、3つから5つの詩からなる詩集のことを指します。
この形式を初めてピアノ曲のジャンルに取り入れたのがショパンです。ショパンのバラードがダントツ
で有名ですが、ブラームスなどにもバラードと呼ばれる曲は残されています。
ショパンのバラードは4つの曲から成り立っています。1曲1曲が、「練習曲」などと比べると長いで
すので、初心者の方は、「練習曲」「夜想曲」「ワルツ」などを聴き込んでからじっくりと堪能なさる
ことをお薦めします。CDは、次にご紹介している「スケルツォ」とカップリングのものが多いです。
最も傑作の誉れ高いのは第4番で、ショパンの全ての作品の中でも最高傑作と評されることがあります。
演奏も困難な難曲でして、カタストロフィー(一般には「悲劇的結末」の意味です)でのピアニズムは
凄いです。1番と共にぜひ下のリンクからお聴き下さい。
バラード1番(ツィメルマン演奏) バラード4番(辻井伸行演奏)
☆推薦盤☆
◎ルービンシュタイン/(59)(RCA) S
○ポリーニ/(99)(グラモフォン) A
・ポリーニ/(99)(グラモフォン) A
△スホーンデルヴルト/(08)(Alpha) A輸
▲ツィメルマン/(87)(グラモフォン) A
△フランソワ/(54)(エラート) A
・ボレット/(86)(ロンドン) A
△ルイサダ/(10)(RCA) A
ルービンシュタイン盤は、評価は高いのですが、私にはどうも相性が悪いようです。それでも
お薦め度は◎にしておきました。
A評価のCDをたくさん挙げました。お好みでどうぞ。
ポリーニ盤は、この作品とは相性がいいと思います。
テクニックに衰えが見え始めたと言われてからの録音ですが、他のピアニストと比べるとそれ
は感じられません。ダイナミズムと美感に満ち、素晴らしい演奏です。
上のCDは「スケルツォ」とのカップリングで、その下は幻想曲、舟歌などとのカップリング
のCDです。
スホーンデルヴルト盤は「夜想曲」とのカップリングで、お安めの輸入盤ですが、古楽器であ
るフォルテピアノによる演奏です。昨今の潮流でも、ショパンの演奏で古楽器は珍しいです。
お薦め度▲のツィメルマン盤は、主観的で、「ナルシスト」と呼ばれる彼の個性が存分に炸裂
している演奏です。上のYOUTUBEの演奏は音源が違います。
ショパンの名手、フランソワ盤はカップリングがスケルツォです。
ボレット盤は廃盤中です。ルイサダ盤は、どうもバラードのみの収録のようです。
|
作品NO.71 スケルツォ ★★★★ 2021年2月最新更新 |
「スケルツォ」という言葉を交響曲の楽章でも目にしたことのある人はいらっしゃるのではないでしょ
うか。それと一体何の関係があるのかと言いますと、スケルツォはイタリア語で「冗談」という意味で、
日本語では、諧謔曲(かいぎゃくきょく)というよく分からない訳し方をされています。簡単に言いま
すと、ちょっとくだけた曲で、テンポの速い3拍子の曲のことを指します。ベートーヴェンの「英雄」、
「第9」にも登場しますし、ブルックナーの交響曲にも多いです。これらは交響曲なので1つの楽章の
みですが、ショパンは4つの曲をまとめ、「スケルツォ」と称して発表しました。
全体的に暗いムードの曲ばかりで、シューマンに「冗談でこれならば、真面目に作曲したらどうなるの
か」と評されたというエピソードがあります。
魅力的な旋律に欠けるので初心者の方には難しいでしょう。「バラード」を難なく聴けるレベルが必要
かと思われます。
スケルツォ2番(ペライア演奏)
☆推薦盤☆
◎ポリーニ/(99)(グラモフォン) S
○ポゴレリチ/(95)(グラモフォン) S
▲ルービンシュタイン/(59)(RCA) A
△フランソワ/(55)(エラート) A
ポリーニ盤のお薦め度を◎にしましたが、どうもこの演奏、専門書籍ではウケが良くても、一
般のクラシックファンには不評のようです。そのあたりの原因は、「名ピアニスト列伝」、あ
るいはショパンの「練習曲集」のところで詳しくご紹介していますが、ポリーニの指の自慢に
過ぎないという声が多いのです。もちろん、ポリーニファンの方には第1にお薦めします。
ポリーニ嫌いの方、ポリーニの演奏を聴いたことがない方にはポゴレリチ盤やルービンシュタ
イン盤がお薦めです。
金銭的な余裕がありましたらポリーニ盤も聴いてみて頂いてはいかがでしょうか。それでつま
らないと感じられましたら、ポリーニのショパン演奏とは無縁だと思われます。
フランソワ盤は、録音が古いのが痛手ですが、3者とはまた違った、「鬼才」フランソワなら
ではの鬼気迫る迫力が魅力です。
|
作品NO.72 ピアノ・ソナタ第2番「葬送」 ★★ 2021年2月最新更新 |
ショパンのピアノ・ソナタは3作品ありますが、1作目は非常に初期に書かれたこともあって、演奏さ
れる機会は滅多になく、一般的には3つの「ピアノ・ソナタ全集」にも組み入れられていません。
この「第2番」を最高傑作と言う人もいますが、かのシューマンは「4つの楽章がバラバラで、統一が
とれていない」という批判もしています。
「葬送」あるいは「葬送行進曲つき」などの副題がついていまして、これは第3楽章の葬送行進曲を指
しています。この曲の冒頭はおそらく誰もが知っているでしょう。同じ音で「ダーン ダーダダーン」
を2回繰り返すあの冒頭。お分かりでしょうか?下のリンクからお聴き下さい。すぐに分かるでしょう。
まさしく「葬送」の名の通り、第3、4楽章は暗い曲ですが、第1楽章などはメリハリの利いた曲です。
第3楽章
☆推薦盤☆
◎アルゲリッチ/(74)(グラモフォン) SS
○ポリーニ/(84)(グラモフォン) A
▲フランソワ/(64)(エラート) A
アルゲリッチ盤は断然の1枚で、他の追随を全く許さない名盤です。第1楽章などは彼女の個
性満点で、シンフォニックな印象さえ受けます。力強く、これぞアルゲリッチという演奏で、
第1のお薦め盤です。CDは、次にご紹介している「ピアノ・ソナタ第3番」とのカップリン
グのCDで、そちらもS評価ですので、ほぼ完璧です。
2番手にはやはりポリーニ盤がきます。ポリーニのファンの方にはぜひとも聴いて頂きたいC
Dです。
3番手にはフランソワ盤をお薦めしますが、カップリングがイマ一つといった感があります。
|
作品NO.73 ピアノ・ソナタ第3番 ★★★ 2021年2月最新更新 |
ショパンのピアノ・ソナタは数が少ないため、「全集」といっても、「第2番」とこの「第3番」を指
します。上の「第2番」で楽曲構成の指摘をされていると書きましたが、こちらはその点では素晴らし
く、ピアノ・ソナタの大曲、あるいは大傑作と言われています。
第1楽章はベートーヴェンの作品を思わせる、壮麗で、ダイナミックな音楽。それに対してフィナーレ
の第4楽章などは、ショパンならではの美しい旋律が繰り広げられて、絢爛な締めくくりとなります。
全曲(アルゲリッチ演奏)
☆推薦盤☆
◎アルゲリッチ/(67)(グラモフォン) S
▲アルゲリッチ/(67)(グラモフォン) S
○ポリーニ/(84)(グラモフォン) S
△アムラン/(08)(ハイペリオン) A輸
「第2番」と同様、ダイナミズム溢れるアルゲリッチ盤がやはり1番のお薦めです。このCD
は上でご紹介しているSS評価のピアノ・ソナタ第2番「葬送」とのカップリングでお安いC
Dです。文句ないでしょう。
録音は新しいとはいえませんが、彼女の若い頃の演奏でもありますし、第1楽章などは、まさ
にベートーヴェンを彷彿とさせる力強さです。
2番手のCDのカップリングはショパンのポロネーズなどですので、お好みでどうぞ。
3番手にはポリーニ盤を挙げました。フィナーレの美しさなどはこちらの方が上でしょう。
4番手には、アムラン盤を取り上げました。輸入盤でややお高めですので、やはり4番手とい
うところでしょうか。
|