名曲案内〜鍵盤楽曲編U〜

(ショパン<前奏曲集>〜<ポロネーズ集>)



    
  特に女性は、ピアノを習うことからクラシックに慣れ親しんだ方が多いのではないでしょうか。  
  ここでは、クラシックを代表するピアノの名曲を紹介します。
  クラシック初心者の方、入門者の方は、まずは短くて聴きやすいピアノ曲からクラシックに触
  れていくのも良い方法かと思われます。

ショパン


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☆ショパン
作品NO.63 24の前奏曲集 ★★ 2021年2月最新更新
  
 当然ながらショパンの有名なピアノ曲は多いです。「別れの曲」「子犬のワルツ」「幻想即興曲」「革
 命のエチュード」「英雄ポロネーズ」等々。これらは、単品の作品ではなく、また「ピアノ曲集」のよ
 うに全部一括でまとめられるものでもなく、「練習曲集」「ワルツ集」「夜想曲集」など、曲の特
 徴、作曲意図によって分類されます。
 ここでご紹介するのは前奏曲集で、「プレリュード(PRELUDE)」とも言います。ショパンの曲
 の分類はカタカナ表記になることも多いですので、必ず知っておいた方がいいと思われます。例えば、
 後でご紹介する「別れの曲」は「練習曲」とも言いますし、「エチュード」とも言います。覚えておか
 なければ、CDを買うときに混乱することも考えられます。
 前奏曲集は24曲からなりますが、その中で一番有名な曲は「雨だれのプレリュード」でしょうか。
 なお、曲には長調と短調があることはご存じだと思われますが、「24の前奏曲集」は両方とも12種
 類ずつある構成となっています。
 下のリンク、第7番はあるCMでお馴染みの曲でしたので、ご存じの方も多いことでしょう。

前奏曲第7番     前奏曲第15番「雨だれ」(ユンディ・リ演奏)
 ☆推薦盤☆    ◎アルゲリッチ/(77)(グラモフォン)               S     ○ポリーニ/(74)(グラモフォン)                 A    ・ブレハッチ/(07)(グラモフォン)                A    ▲フランソワ/(59)(エラート)                  A    ・タロー/(07)(ハルモニア・ムンディ・フランス)         A    ☆コルトー/(33、34)(EMI)                           アルゲリッチ盤が一歩抜けだしている状況です。1番上にリンクしてあるCDは「前奏曲集」    だけのCDです。    2番目のCDは、ポリーニの若い頃の録音です。さすがにテクニックは冴えわたっていますが、    抒情性という意味では、アルゲリッチ盤の方が上でしょうか。    今や、将来楽団を背負うほどの期待を受けているブレハッチ盤は、どうも廃盤のようです。こ    のCDは、ブレハッチの録音デビュー盤でもあります。    フランソワ盤は、彼ならではの切れ味鋭いショパンです。このお値段で、前奏曲と即興曲のカ    ップリングは大変ありがたいところです。お薦め度は▲にしました。    次の、近年よく見かけるタロー盤ですが、どうも国内盤、輸入盤共に廃盤中のようです。    コルトー盤は、この「24の前奏曲」のそれぞれの曲に標題をつけた(公には認められていな    いようです)ほどこれらの曲を愛し、また解釈が行き届いていたというエピソードがありまし    て、「ピアノの詩人」と呼ばれたのも、それに由来していると言われています。    ところが、旧EMIの音源ゆえにどうも廃盤中のようです。

作品NO.64 即興曲集 ★★ 2021年2月最新更新
  
 即興曲集は、4つの曲で構成されています。ショパンの曲分類からいけば明らかに少ないのですが、有
 名な「幻想即興曲」が含まれていますし、初心者の方がショパンの曲に親しむにはいい曲集です。
 カタカナ表記は覚えて頂かなくても大丈夫です。
 全部で4曲しかありませんので、CDは即興曲だけでなく、他の曲も入っているのが普通です。ショパ
 ンの他の曲とカップリングされているという意味では、それらも一緒に聴けてお得です。
 なお、ショパン自身、即興演奏の名手だったとされていますが、「即興曲」とは即興演奏を書き留めた
 ものではなく、即興的に浮かんだ楽想をもとに作られた作品のことを指します。ただし、ショパンが生
 きたロマン派の時代では、形式的に分類不能な小曲を「即興曲」と呼ぶ風潮もあったようでして、ショ
 パンの場合もそうだと言われています。
 音楽史上、最初の有名なピアノの即興曲はシューベルトの即興曲です。

即興曲第1番(ブーニン演奏)     即興曲第4番「幻想即興曲」(ユンディ・リ演奏)
 ☆推薦盤☆       ◎ルービンシュタイン/(64)(RCA)              SS    △ケナー/(08)(NIFC)                    A    ▲ペライア(83)(SONY)                    A    ○フランソワ/(57)(エラート)                  A    △キーシン/(04)(RCA)                    A    CDはルービンシュタイン盤がダントツのトップ評価です。即興曲の他には「舟歌」などの単品    が入っていまして、そちらも楽しめます。    収録曲数が12曲というのが寂しいところではありますが内容は充実しています。    ケナー盤は輸入盤しかないのですが、古楽器、フォルテピアノによる演奏ですので、お好きな方    はどうぞ。ショパンの名盤にも古楽器が進出するご時世になりました。    ペライア盤は格安なのですが、期間限定となっていますので、▲にしました。    フランソワ盤はA評価の「24の前奏曲集」とのカップリングですので、4+24=28曲収録    です。ショパンはお得意ですし、CDとしてもかなりお薦めです。    キーシン盤は、思い切りのいいキーシンらしく、まさに「即興」的でスリリングな演奏となって    います。

作品NO.65 夜想曲集 ★★ 2021年2月最新更新
  
 夜想曲は「ノクターン」とも言いまして、ドビュッシーの管弦楽作品にもあります。
 夜想曲は文字の通り、抒情的でしっとりとした雰囲気をもっているサロン風の曲調です。
 ノクターン自体はアイルランドのジョン・フィールドという作曲家が始まりと言われていまして、セレ
 ナーデ(セレナードと表記されることもあります)と同義とされており、自由な形式の小品とされてい
 ます。
 ショパンの夜想曲集は全部で21曲からなり、CDでは1枚で買えないところが痛いところです。その
 ため、1枚の「選集」か、2枚で全曲を揃えるかということになります。
 推薦盤では、なぜか2枚組のCDも21曲全曲が収録されているわけではなく、全曲が入っているのは
 ピリス盤のみです。
 「ノクターン」という曲を聴いたこと、あるいは弾いたことがある方は多いと思われます。
 フィギュアスケートでもよく使われます。この曲は夜想曲第2番にあたりますが、「別れの曲」のよう
 に愛称がありませんので、一般には単に「ノクターン」と呼ばれるだけになってしまっています。
 正式には、第2番のことで、ノクターンの代名詞ともなっている超有名曲です。下のリンクからどうぞ。
 
夜想曲第2番     夜想曲第5番(ツィメルマン演奏)
 ☆推薦盤☆       ○ルービンシュタイン/(65、67)(RCA) 2枚組 19曲   S    ・チッコリーニ/(02)(Cascavelle)8枚組 21曲   S    ◎ピリス/(95、96)(グラモフォン)    2枚組 21曲   A    △ポリーニ/(05)(グラモフォン)       1枚 17曲   A       ▲フランソワ/(65、67)(エラート)    2枚組 19曲   A    ・アファナシエフ(99)(デンオン)       1枚  9曲   A    ここに挙げている推薦盤に限らず、「夜想曲集」の2枚組のCDは19曲収録というものがほ    とんどでして、なぜ全曲21曲収録ではないのか、色々調べましたが分かりませんでした。    ここの「推薦盤」でのお薦めのCDは収録曲数重視にしました。    よって、お薦め度◎のCDは、全21曲が収録されているピリスの2枚組とさせて頂きます。    演奏は、女性のピリスらしく、優しく繊細、デリケートさが滲み出るような夜想曲となってい    ます。CDとしてもお得と考えました。    ルービンシュタイン盤は2枚組で19曲収録です。    演奏自体は威風堂々、ルービンシュタインのショパンで素晴らしいのですが、収録曲数を考慮    してお薦め度は○としました。    チッコリーニ盤は8枚組ですので、どうしてもという方にしかお薦めはできません。    ポリーニ盤は1枚で17曲収録ですので、これもあまりお薦めはできません。    フランソワ盤は2枚組で19曲収録ですので、こちらを▲としました。    アファナシエフ盤は現在廃盤中ですが、9曲収録は少なすぎます。    「夜想曲」のCDは、収録曲数で枚数の違いがありまして、収録曲数重視でお薦めをさせて頂    きましたが、お好みで、と言ったところでしょうか。

作品NO.66 練習曲集 ★★ 2021年2月最新更新
   
 ショパンの曲集の中では最も人気があるのがこの「練習曲集」ではないでしょうか。練習曲は「エチュ
 ード」とも言います。作品10と作品25、それぞれ12曲の2つからなっていまして、合計24曲で
 す。中には27曲入っているCDもあります。
 多くの方が耳にしたことはあるであろう有名曲も多いです。作品10では第3番の「別れの曲」、第1
 2番の「革命のエチュード」、作品25では第11番の「木枯らしのエチュード」など。とりわけ「別
 れの曲」は有名です。
 「練習曲」という名がついてはいますが、極めて高度な技術が必要な難曲が多いです。
 そもそも腕を磨くための「練習」のための曲集ということではなく、表現力などを鍛えるというのが作
 曲意図のようです。
 
作品10−1(アシュケナージ演奏)
作品10−3「別れの曲」(ラン・ラン演奏)
 
作品10−12「革命」(リヒテル演奏)
 
作品25−11「木枯らしのエチュード」(リヒテル演奏)
 ☆推薦盤☆    ◎ポリーニ/(72)(グラモフォン)              SS    ・メルニコフ/(16、17)(ハルモニア・ムンディ)       A    ○ペライア/(01)(SONY)                 A    ▲フランソワ/(58、59、66)(エラート)          A    △アシュケナージ/(71、72、81、82)(デッカ)      A    ☆コルトー/(33、34、49)(ワーナー)               「練習曲集」のCDは、評論家の中ではポリーニ盤が発売以来超絶賛を受けています。ポリー    ニの代表盤の一つというだけでなく、あらゆるクラシックのCDの中でも有名なCDの一つで    して、超名盤とも言えます。ですので、黙ってこれをお薦めするのが道理でしょう。    ですが、ポリーニの「練習曲集」の演奏について、音楽評論家の福島氏はこう評しています。    ・「ドラマもロマンもない即物的な<別れの曲>や、愛国心も怒りもない醒めた<革命>…」    ・「魂を抹殺するためにテクニックを鍛え上げた」    素人の私におこがましいことは言えませんが、うなずける面があります。    「ピアニスト列伝」の項で触れていますように、簡単にご説明させて頂きますと、「練習曲」    ほどの難曲を完璧なまでに弾ききるポリーニのテクニックには脱帽の他ないのですが、曲は当    然、芸術作品としての面ももっているわけですから、「演奏」という行為は、楽譜通りに完璧    に弾ければ「それだけで」いいのだろうか、ということです。「別れの曲」だけでも他のピア    ニストの演奏と聴き比べてみると、確かに技術は卓越しているかもしれませんが、いかにもさ    りげない演奏で、私も同様に感動などしません。    音楽の評価というものはあまりにも難しいです。個人の感受性の問題だからです。    いずれにしても、ポリーニ盤は超絶賛を受けているCDで、反対派は少数なのですから、サイ    トの性質上、第一にお薦めしておきたいと思います。それで演奏に大満足していただければ全    く問題はありません。    ポリーニ盤に違和感を感じる方には、他の演奏をお薦めします。ペライア盤ですが、「21世    紀の新たな『練習曲集』の模範」「ついにポリーニを超えた」等々、人気があるCDです。    フランソワ盤は録音年のわりにはやや音質が気になるかもしれません。    ショパンが得意なフランソワだけありまして、なかなか個性的な演奏ですので、音質が良けれ    ばお薦め度○にしたいのですが。このCDは27曲収録です。    アシュケナージ盤は、ポリーニのように叩かれる要素はないものの、誇張した表現もなく、ま    さに個性が十分に発揮された優等生的な演奏です。現代のショパンの教科書的演奏で、美音と    テクニックがそれを助長しています。このCDも27曲収録されています。    コルトー盤は録音が相当古いですので、音に抵抗がない方向けです。ご愛嬌のミスも多いので    すが、ショパンの心を掴みきっています。「ピアノの詩人」と呼ばれた往年の大巨匠の詩情溢    れるショパンを堪能して頂きたいです。「別れの曲」はコルトーの演奏がベストという声が多い    のですが、私も全く同感です。ルバートを多用した詩的な演奏は手放しで絶賛したいです。    ぜひこちらからお聴き下さい。    ポリーニとの対照という意味で、歴史的名盤として採り上げておきました。    メルニコフ盤は、ショパンには珍しい古楽器演奏です。作品10しか収録されていないのは大    きなマイナスですが、現在は廃盤中のようです。

楽曲NO.67 ポロネーズ集 ★ 2021年2月最新更新
  
 「ポロネーズ」とはフランス語で「ポーランド風」の意味で、ダンスなどのBGMに使われる曲のこと
 を意味します。代表的なのはここでご紹介するショパンの16曲のポロネーズですが、バッハ「管弦
 楽組曲」の中にも「ポロネーズ」という曲はあります。
 「英雄ポロネーズ」「軍隊ポロネーズ」などの名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。「夜想
 曲」のように静かでしんみりとした曲調ではなく、明るく、聴きやすいです。ポロネーズ集は他の曲集
 と違ってあまり感傷的な曲はありませんので、気楽に接することができます。
 ショパンの曲集の中でも接しやすさは屈指で、初心者の方にもお薦めです。
 なお、CDには主に、7曲収録の選集と、16曲収録の全集があります。

ポロネーズ第3番「軍隊ポロネーズ」(ブレハッチ演奏) ポロネーズ第6番「英雄ポロネーズ」(ブレハッチ演奏)
 ☆推薦盤☆    ・ルービンシュタイン/(64)(RCA)      7曲    SS    ◎フランソワ/(68)(エラート)        10曲     A    ○ポリーニ/(75)(グラモフォン)        7曲     A    ▲ブレハッチ/(13)(グラモフォン)       7曲     A    ・アシュケナージ/(76〜84)(デッカ)    16曲     ?    SS評価で、個人的にお薦め度★にしたいルービンシュタイン盤が廃盤中です。    彼はスケールの大きな演奏が持ち味ですので、特に「英雄ポロネーズ」は絶品だと思われるの    ですが。    ◎でお薦めしたいのはフランソワ盤で、単に収録曲数が多いという面もありますが、さすがは    ショパン弾きのピアニスト、フランソワです。スケールが大きく、時には鋭く、聴きこむほど    に味わいのあるポロネーズで、飽きがきません。素晴らしい演奏です。    ポリーニ盤も評価は高いです。何と言っても美音が魅力的ですが、元々スケールの大きさが持    ち味のピアニストではありませんので、その点ではフランソワ盤に部があると思われます。    ブレハッチ盤は、フランソワ、ポリーニは古いという方向けです。非常に若々しい演奏ですの    で、上のYOUTUBEで是非ご試聴下さい(音源が同じかは分かりません)。       残念ながら、全16曲収録で評価が高いCDはないようです。ご希望の方のために、あくまで    個人的に、「無難な」アシュケナージ盤を挙げておきます。


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