薄幸の女性チェリスト「デュ・プレ」で名高いです。「神様」カザルスと共に、20世紀のチ ェロ四天王(カザルス、ロストロポーヴィチ、フルニエ、デュ・プレ)の1人です。 16歳の時に鮮烈なデビューを飾りましたが、28歳の時に難病にかかり、演奏活動ができな くなってしまいました。そして闘病生活の末、42歳でこの世を去ることとなってしまったの です。実質の演奏活動の期間は約10年ということになりますが、その間、10代から20代 にかけて、歴史に残る名盤を残したのですから、天才肌のチェリストです。 ちょうど20歳の時に演奏したエルガーのチェロ協奏曲が何と言っても看板曲です。人生の哀 愁に満ちていて、ポルタメントを駆使した表情は極めて豊か、スケールは大きく、とても20 歳の女性による演奏とは信じがたいほどです。 当時の夫、バレンボイムとの共演によるドヴォルザークのチェロ協奏曲も、体がもたないので はないかと思われるほどの体当たり的な大熱演に、心を打たれずにはいられません。 演奏スタイルは、叙情性を持ちながらも、男性顔負けの情熱溢れるものでした。わずか10年 の演奏活動とはいえ、いつまでも語り継がれるであろう女性チェリストです。 ブラームス「チェロ・ソナタ」全楽章 ☆推薦盤☆ ・エルガー チェロ協奏曲/バルビローリ(65)(ワーナー) SS ・ドヴォルザーク チェロ協奏曲/バレンボイム(70)(ワーナー) A <雄大><情熱>
1970年代から始まった古楽器演奏ブームの先駆者、中心的人物、及び世界的な名手として 知られ、まさに第一人者であったのが、バロック・チェリスト、ビルスマです。 推薦盤に挙げてあります、1979年録音のバッハの「無伴奏チェロ組曲」の際は現代楽器で の演奏でしたが、その表現に魅了された多くのバロック・チェリストの輩出を促したと言われ ています。それと同時に、ブリュッヘンの「18世紀オーケストラ」やノリントンの「ロンド ン・クラシカル・プレイヤーズ」設立と共に古楽器演奏ブームを巻き起こしただけではなく、 その奏法などで、現代楽器の演奏者にも大きな影響を与えました。 自身は「ラルキブデッリ」という室内楽団を結成し、バロック音楽だけでなく、ロマン派の音 楽にまで手を広げ、多くの名盤を遺しました。 また、教授として教鞭をとったり、著書を残したり、音楽界に与えた影響は計り知れません。 よって、古楽器演奏やチェロのファンの方だけでなく、クラシック鑑賞において欠かせない大 人物であると言えるでしょう。 バッハ「無伴奏チェロ組曲」第1番 ☆推薦盤☆ ・シューベルト アルペジオーネ・ソナタ/インマゼール(97)(SONY) A ・シューベルト ピアノ五重奏曲「ます」/インマゼール(97)(SONY) A ・バッハ 無伴奏チェロ組曲/(92)(SONY) A ・ブラームス 弦楽六重奏曲第1番/ラルキブデッリ(95)(SONY) S ・ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番「大公」/ ベス(Vn)、インマゼール(Cemb)(99)(SONY) A ・モーツァルト ディヴェルティメント第17番/ラルキブレッリ(90)(SONY)S ・モーツァルト 弦楽五重奏曲第4番/ラルキブデッリ(94)(SONY) S <古楽器><レパートリー広>
フルニエは20世紀を代表するチェリストで、神様カザルスと、ロストロポーヴィチ、そして デュ・プレと共に、チェロ四天王として覚えて頂きたいと思います。 奏法は、デュ・プレのように全身全霊を込めて弾くわけでも、ロストロポーヴィチのように豊 富な音量とスケールで圧倒するタイプでもないのですが、気品があり、美しい音を響かせるチ ェリストでした。その容姿もあいまって、「チェロの貴公子」と呼ばれていました。 よって、同じ「チェロ四天王」でも、それぞれ個性が違います。デュ・プレの演奏を「熱すぎ る」と言う人もいれば、特にロストロポーヴィチの場合は、その豊富な音量を、うるさいと感 じる人も少なくありません。デュ・プレもロストロポーヴィチも、録音の悪いカザルスもお気 に召さない方には、きっとフルニエがぴったりでしょう。 当サイトの推薦盤は、あくまで評論家による評価を序列化したものです。演奏をどう感じるか は個人の感受性の問題ですから、フルニエの演奏が必ずしもカザルス、ロストロポーヴィチに 劣ると言い切れるものではありません。こと「チェロ四天王」にとっては、ご自分の最もお好 きなチェリストの演奏をお聴きになるのが良いと思われます。 サン=サーンス「チェロ協奏曲」 ☆推薦盤☆ ・エルガー チェロ協奏曲/ウォーレンステイン(66)(グラモフォン) A ・ドヴォルザーク チェロ協奏曲/セル(62)(グラモフォン) S ・バッハ 無伴奏チェロ組曲/(60)(アルヒーフ) A ・ベートーヴェン チェロ・ソナタ全集/グルダ(P)(59)(グラモフォン) A ・ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番「大公」/ シェリング(Vn)ケンプ(P)(70)(グラモフォン) A <気品>
チェリストとしてカザルスは別格ですが、格やクラシック界への功績という点で、次にくるの はやはりロストロポーヴィチでしょう。 20世紀屈指の大チェリストで、21世紀初めまで生きていましたので、「生ける人間遺産」 とも言える存在でした。 芸風の最大の特徴は、その豊富な音量にありました。また、技巧派でもあり、当代随一のテク ニシャンでもありました。言うまでもなく、協奏曲では、豊富な音量はソリストにとって不可 欠です。しかし、ロストロポーヴィチの音量は他のチェリストに比べて明らかに大きかったの で、音量が大きすぎる、ですとか、大味であると言って嫌う人も中にはいるようです。 晩年は指揮業を副業としていて、この点はカザルスと同じですが、指揮者としてはカザルス以 上といってもよく、評価の高い名盤もいくつか輩出しています。 ロストロポーヴィチといえば、何といってもベートーヴェンのチェロソナタ第3番〜5番が不 滅の金字塔となっています。音量豊富な、スケールの大きい、雄大な演奏で、しかもステレオ 録音とくれば、これを凌ぐCDは当分現れないと言われています。 また、初心者の方が超一流のチェリストの演奏とはどういうものかということを知るためには、 ロストロポーヴィチの録音を聴くと分かりやすいと思われます。 ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」(チェリストとして) チャイコフスキー「交響曲第6番『悲愴』」(指揮者として) ☆推薦盤☆ <チェリスト> ・シューベルト アルペジオーネ・ソナタ/ブリテン(P)(68)(デッカ) A ・ドヴォルザーク チェロ協奏曲/カラヤン(68)(グラモフォン) S ・ベートーヴェン チェロ・ソナタ全集/リヒテル(P)(61〜63)(デッカ) 伝 <指揮者> ・ショパン ピアノ協奏曲第2番/アルゲリッチ(P)(78)(グラモフォン) A ・リムスキー=コルサコフ シェエラザード/パリ管弦楽団(74)(ワーナー) B <音量豊富><技巧派><指揮>