アメリカを拠点にしている、日本のトップヴァイオリニストの一人です。海外では「Mido ri」として知られています。弟の五嶋龍も有名なヴァイオリニストです。庄司紗矢香のよう にコンクールを次々とものにしていった訳ではないですが、名声を得るまでの過程には庄司紗 矢香以上の天才的なものがあります。 11歳の時にメータ&ニューヨーク・フィルと共演という、驚くほどの鮮烈なアメリカデビュ ーを飾りましたが、更に凄いのは、14歳の時に、何とあのバーンスタインとも共演していま す。そして、本格的にソリストとしてはばたくこととなりました。 五嶋みどりはヴァイオリニストとしての活動の他に、社会福祉授業を行った音楽家としても有 名です。初めて着手したのが20歳そこそこというのだから素晴らしいという他ありません。 その後も自ら非営利団体を次々と創設し、ボランティア活動を行っています。 現在は、演奏活動の傍ら、アメリカの大学の講師も務めています。 なお、得意なレパートリーは、技巧的に難しい曲のようです。 サラサーテ「サパテアード」 ☆推薦盤☆ 特になし <技巧派>
音楽には才能があるものだということを改めて痛感させられます。特に、ピアニストよりもヴ ァイオリニストの方がその傾向が顕著なのかもしれません。 ここでご紹介する庄司紗矢香は、紛れもなく天賦の才を授かってヴァイオリンに出逢うべくし て出逢ったヴァイオリニストなのでしょう。5歳の時にヴァイオリンを始めたのですが、小学 6年生の時に、全日本学生音楽コンクール全国大会で第1位になりました。それからは飛ぶ鳥 を落とす勢いで数々のコンクールで優勝、何と14歳でウィーン・ムジーク・フェラインザー ル(ウィーン・フィルの本拠地です)に立ち、ウィーンデビューを飾るに至りました。また翌 年は、コンクール史上最年少で、日本人としては初めて、パガニーニ国際ヴァイオリン・コン クールで優勝しました。このコンクール優勝者には、クレーメルもいるというコンクールです。 それほどの逸材が日本にもいたのです。 そして、17歳の時にメータと共演したCDを初リリースしました。 2000年以降は、世界の楽団とヨーロッパを中心に活動していまして、名実ともに世界的な ヴァイオリニストです。世界的知名度のある共演者には、メータ、マゼール、アシュケナージ、 マリナー、デュトワ(以上指揮者です)、マイスキー(チェリストです)らがいます。 日本でも毎年必ず全国規模でコンサートを開いていますので、東京、大阪近辺以外の方にも実 演で聴く機会はあります。実演で燃えるタイプだということですので、ぜひ実演に接して頂き たいと思います。 奏法には力強さがあり、音色はやはり女性的で明るいです。また、初CDが超絶技巧で知られ るパガニーニのヴァイオリン協奏曲ですので、どうしても「技巧派」という眼で見られてしま いますが、そのことをかなり嫌がっているようです。音楽に対する研究心は旺盛で、文学、美 術などにも触れていると言います。 実演派だからなのか、録音を聴いても即興的で、やや主観的な演奏をするようですので、一体 これからどういうタイプのヴァイオリニストになるのか、注目です。 メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」全楽章 ☆推薦盤☆ 特になし <技巧派><実演派>
チョン・キョンファは韓国生まれの女性ヴァイオリニストです。10代の時に天才ヴァイオリ ニストとして脚光を浴びましたが、アジアのヴァイオリニストが世界の表舞台に出るのは珍し いケースでした。指揮者のチョン・ミュンフンは弟です。 演奏スタイルはまさしく芸術至上主義です。音色はクレーメルに似ていて、非常に冷たく、透 徹感のある音を響かせます。しかし、クールでストレートなクレーメルとは違い、演奏する作 品の芸術面を最大限に引き出すためにデフォルメ(楽譜を無視すること)を加え、精一杯の情 熱を注ぎ込みます。 「私は、演奏する曲を一度私の眼を通し、主観的に演奏することがモットー」と語っているの ですから、典型的な主観主義演奏家です。一見そっけない印象を与えるクレーメルの演奏は解 りにくいのですが、キョンファの場合は全身全霊を込めて旋律を歌い、デフォルメを誇張しま すので、決して初心者の方に解りにくい演奏ではないと思います。単に、表現力が卓越してい るだけなのだと思うのです。冷たい音色が、何とも言えない哀切に満ちています。 現役では珍しい主観主義のヴァイオリニストです。 一時期、出産で休養していたこともありまして、その後の録音はパッとしたものがありません。 2010年に復帰したそうですが、来日の機会はほぼありませんし、もう高齢になってしまい ました。現在はどんな活動をしているのでしょうか。もう一花咲かせて欲しいところです ヴィヴァルディ「四季」全楽章 ☆推薦盤☆ ・サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番/フォスター(75)(デッカ) A <情熱><主観主義〜デフォルメ><実演派>
「ヴァイオリニスト界の新しい女王」と呼ばれ、ヴァイオリニスト界の将来を担う存在と言わ れていたのがヒラリー・ハーンです。 9歳の時にピーボディ音楽院の名誉リサイタルのオーディションに最年少で優勝し、翌年、ヴ ァイオリニストの英才教育で有名な、アメリカのカーティス音楽院に入学すると、その1年半 後にボルティモア交響楽団と共演します。そこからは飛ぶ鳥を落とす勢いで、ニューヨーク・ フィル、フィラデルフィア管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団という、アメリカの主要オーケ ストラと次々に共演を果たしたのでした。 1995年にはドイツデビューを果たし、2002年にはクラシックCD最大の大手、グラモ フォンと専属契約を結びました。 このように、輝かしい経歴の持ち主で、現代の英才教育の申し子とも言えるハーンは、21世 紀の録音に着々と名盤を残しつつあり、名実ともにヴァイオリニスト界を背負う存在となって います。 本人はバッハにやや重きをおいているようですが、他にもブラームス、ベートーヴェンなど、 ドイツ音楽を主体に演奏しています。 今後の録音に期待したいですし、来日も多いですので、ぜひ実演に接して頂きたいと思います。 シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」 ☆推薦盤☆ ・シベリウス ヴァイオリン協奏曲/サロネン(07)(グラモフォン) A ・バッハ ヴァイオリン協奏曲集/カハーン(02、03)(グラモフォン) A ・パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番/大植英次(05)(グラモフォン) A
21世紀初頭の現在、「ヴァイオリニスト界の女王」と言ったら、ムター、ハーン、そして、 やや遅咲きの感はありますが、このファウストが最有力候補でありましょう。21世紀の高評 価の録音が続々と増えてきています。 ファウストは聴衆に合わせて旋律を意識的に歌うことはあまりしません。その点はクレーメル に似ている印象を受けます。ムターのような女性的な華やかさがあるわけでもありません。音 色に透明感があり、クールで微笑まず、芸術肌のヴァイオリニストなのではないかと思われる のです。 ですので、初心者の方に彼女の音楽を理解するのは難しいのではないでしょうか。この点もク レーメルと同様で、中〜上級者の方向けのヴァイオリニストかもしれません。 また、ファウストの特徴的な点は、現代楽器のヴァイオリニストでありながら、古楽器も弾け る、いわゆる「二刀流」でもあることでしょうか。よって、バロック音楽にも名盤をのこして いるのですが、まさしく”21世紀的な”ヴァイオリニストと言えましょう。 まだ若いですので、今後、最も注目すべきヴァイオリニストの1人です。 メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」 第1楽章 ☆推薦盤☆ ・バッハ ヴァイオリン協奏曲/(07、08)(ハルモニア・ムンディ) S ・バッハ 無伴奏Vnのためのソナタとパルティータ(09、11)( 〃 ) S ・バッハ Vnとチェンバロのためのソナタ全集/(16)(ハルモニア・ムンディ) S ・フランク ヴァイオリンソナタ/メルニコフ(P)(16)(ハルモニア・ムンディ)S ・ブラームス ヴァイオリン協奏曲/ハーディング(10)(ハルモニア・ムンディ) S ・ブラームス ヴァイオリン・ソナタ集/メルニコフ(P)(14)( 〃 ) S ・ベルク Vn協奏曲/アバド モーツァルトO(10)(ハルモニア・ムンディ) SS ・ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲/アバド(10)(ハルモニア・ムンディ) A ・ベートーヴェン Vnソナタ第5番「春」/メルニコフ(P)(08)( 〃 ) S ・ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番「大公」/ ケラス(Vc)メルニコフ(P)(11)(ハルモニア・ムンディ)S ・メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲/エラス=カサド(17)( 〃 ) S ・モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番/アントニーニ(15、16)( 〃 ) A ・モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ集/メルニコフ(P)(17〜19)( 〃 )S <クール><芸術主義><二刀流>
知名度や格、人気などで名実ともに現在のヴァイオリニスト界の女王の1人で、クラシックC D最大の大手であるグラモフォンの看板ヴァイオリニストです。 まだまだ若く、盛んにレコーディングを行なっていますし、名盤を続々と輩出していますので、 今が全盛期とも言えます。今後の録音にも大いに期待できます。 16歳の時に、カラヤン指揮の元、ベートーヴェンの協奏曲をレコーディングしたのですから、 元々天才肌のヴァイオリニストです。それだけに、早熟に終わらなければと懸念されていたの ですが、90年代以降の録音も大変評判がよく、演奏はかなり個性的になりました。歴代のヴ ァイオリニストの中でも最高クラスの「名盤制作者」です。 ムターの演奏スタイルは、美音で旋律の歌いを「聴かせる」タイプです。歌う部分と流す部分 のコントラストが大きく、中には歌う部分をしつこいと感じる方もいるようです。円熟期に差 し掛かり、「女王」の面目躍如たる妖艶な音色、容姿のごとく、艶っぽい音色、表現を、「ね ちっこい」と感じる方がいるようです。 好みの方にとっては、この旋律の歌い方の豊麗さが最大の魅力で、この点において非常に個性 的です。ムターの演奏は総じて華やかになるのが特徴と言えます。 毎年とはいきませんが、来日回数は多い方ですので、是非とも実演に接して頂ければと思いま す。 モーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第5番」 ☆推薦盤☆ ・ヴィヴァルディ 四季/トロンヘイム・ソロイスツ(99)(グラモフォン) A ・サラサーテ ツィゴイネルワイゼン/レヴァイン(92)(グラモフォン) B ・シベリウス ヴァイオリン協奏曲/プレヴィン(95)(グラモフォン) A ・ブラームス ヴァイオリン・ソナタ全曲/オーキス(P)(09)(グラモフォン) A ・ベルク ヴァイオリン協奏曲/レヴァイン シカゴ交響楽団(92)(グラモフォン) A <華やか><明るい><ねっとり>